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ブンキシャ! 第07話

フラグは増えるものだって誰かが言ってた。

霖之助 文 阿求 妖夢 小町







「半人前だって頑張ってるんですよ! 頑張ってるんです!」
「わかる! わかるよ! あたいだって別に働きたくないわけじゃない。
 ただ自分のペースで仕事をさせてほしいと思うだけさ。
 旦那もそう思うだろ?」
「……そうだね」


 霖之助は曖昧に頷いた。
 酔っぱらい相手に何を言っても無駄である。

 ……いや、小町は普段からこの調子かもしれないが。


「私だって……うぅ、幽々子さまぁ……」


 対して、既に泥酔状態の妖夢はもはや何を言っているのかわかりづらい。
 全く会話は成立していなかったが、小町と妖夢は愚痴で意気投合。
 霖之助はそんなふたりに挟まれ、気まずい酒を呑んでいた。


 どうしてこんなことになったのか。

 今日は香霖堂に参拝客が来るのでたまには真面目に道具を売ってみようかと考え、
使用方法と目的のわかりやすい道具……外の世界の小物などを仕入れに来たのが朝早くのこと。
 ある程度見て回り、そろそろ荷物がいっぱいになったところで出勤してきた小町に会った。

 何故かそれからすぐにふたりで酒を呑むことになり、
途中で妖夢が泣きながら走ってきたのを小町が捕まえ、酒を呑ませて今に至る。

 つまりは現状のほぼすべての原因が小町にあると言うことだ。
 それとも真面目に商売をしようと思った時点で躓いていたのか。

 霖之助は真剣に香霖堂の行き末を考えるべきかと悩み始めた。


「なんだ旦那、そんな暗い顔してないでもう一杯」
「もう十分呑んだよ」
「聞いてくださいよ霖之助さん。幽々子様がぁ……」


 手をぶんぶん振り回しながら紅い顔でもにょもにょ言っている妖夢を見下ろし、霖之助はため息を吐いた。


「で、妖夢は何でこんなことになってるんだい?」
「さっき言ってたじゃないか。上司とケンカしたとかなんとか。
 可愛いところもあるもんだねぇ」


 そう言って笑い、酒をあおる小町。


(言っていたか……?)


 酔っぱらい同士、小町がそう言うならそうなのだろう。
 それより妖夢はほとんど呑んでいなかったはずだが、どうしてこんなに酔えるのか。

 さらに気になるのは、桜の裏から別の声がすることだ。


「私だってぇ~妖夢が憎くて言ってるわけじゃないのよぉ~」
「ですよね。部下を思う上司の心を、どうしてわかってくれないのか……。
 それなのに小町ったらいつもサボってばかりで……」
「うちも最近、式が冷たくて……仕事しろってうるさいの……」


 ふたりは酔っていて気づいていないが、追いかけてきた上司だろう。
 様子を見ているうちに幽々子あたりに巻き込まれたのか、あちらも盛り上がっている様子だった。
 この従にしてあの主有りというか、どっちもかなりの絡み酒のようだ。
 そうでなくては話に聞く地獄の閻魔が巻き込まれることなどないだろう。


「とにかく、場所を変えようか」
「お、呑み直すのかい? あたいは構わないよ。むしろどんどん行こう」
「ああ、まあ、そんなところさ」


 霖之助はばれないようにふたりを連れてこの場を離れようとした。
 しかし立ち上がろうとした瞬間、袖に引っ張られる感覚を覚えて腰を落とす。

 見ると妖夢が霖之助の袖を掴んだまま寝こけてしまっていた。
 もう片方の手には2本の刀を抱えているため背負うこともやりづらい。


「あらら、子供だねぇ」
「笑っている場合じゃないんだが」
「妖夢、妖夢」
「いいじゃないか、寝かせておいておやりよ。
 そんなに急がなくてもいいじゃないか、酒は逃げやしないさ」


(急がないと小町が不憫なことになるのだけどね……)


 ため息ひとつ。
 霖之助にとっても、気心の知れた友人をこんなところで失うのは惜しい。

 仕方なく妖夢の背と足に手を回し、抱え上げる。
 いわゆるお姫様だっこというやつだ。

 抱き上げると、妖夢はおじいちゃん……と呟いていた。


(そんなに老けて見えるつもりはないんだが……)


 少しショック。
 だが構っている暇はない。


「小町、そのリアカーを頼めるかい?」
「お、やるねぇ旦那。あたいもやってもらいたいくらいだよ」
「代わってくれてもかまわないよ」
「……たまにこう、軽口を叩ける関係ってのが恨めしくなるね……」


 小町がなにやらぶつぶつ言っていたが、とにかくここを離れることが最優先だった。



     ☆



 妖夢を抱きかかえたまま香霖堂への道を歩く。
 かなり小柄なので重くはない。
 ただ刀がかさばって抱えにくい。


「なんか旦那がそうやって歩いていると、親子みたいだね。銀髪同士」
「そうかい?」


 リアカーを引いて隣を歩く小町が、覗き込むように見上げてくる。
 首を傾げる霖之助に、大きく頷いて見せた。


「ああ。旦那はすごく子煩悩な父親になりそうだ」
「はは、そう言う君もいい奥さんになると思うよ」
「え……ああ、も、もちろんさ」


 思わぬ反撃にたじろぐ小町。
 本人は反撃のつもりはないのだろうが……。


 ――この状況で言われたら、連想してしまうじゃないか。


「相変わらず、無意識にとんでもないことを言う男だねぇ」
「何のことだ?」


 わからないならいいよ、と小町は手を振った。

 程なくして香霖堂が見えてくる。
 今日は参拝客が来る予定のため、準備をする賑やかな音が聞こえてきた。
 ミスティアの屋台はもう座席を広げていたし、
甘いにおいがするのは……諏訪子のケロちゃん饅頭だろう。

 魔理沙はいつものように取材に出て行った。
 考えてみれば、里の人間が集まる催し物に魔理沙が顔を出すとは考えにくい。
 霧雨の親父さんがこういうところに顔を出すかどうかはともかく。


「あー! 何やってるんですか霖之助さん!」
「私だってまだされたことないのに……」
「あんまり大声出すと妖夢が起きるだろう」
「いや、起こしましょうよ」
「そうですよ。と言うか何でそんな状況になってるんですか。小町さんまでいるし……」


 妖夢を抱きかかえている霖之助を見つけ、文と阿求が吠えた。

 小町は驚く阿求に笑顔で近寄っていく。


「やあ、久しぶりだね稗田の」
「こちらこそ。まだお迎えには早いと思いますけど」
「あたいはお迎えはやらないよ。
 それにしても、話には聞いていたけど……」
「羨ましいですか?」


 阿求の言葉に、小町は驚いた表情を浮かべた。


「あんた、変わったねぇ」
「一番人を強くするものが何か、小町さんなら知ってるでしょう。
 それに、転生しても変わらないものがあるんです。もう怖いものはありません」
「はは、違いない」


 幸せ一杯に笑う阿求。
 間違いなく本心なのだろう。


「こりゃ、次運ぶ時楽でいいね」
「前が苦労したみたいな言い方をしますね」
「だってお前さん……いや、いいや。次は看取ってもらいなよ」
「……そのつもりです」
「ふたりとも、僕は妖夢を寝かせてくるから……そっちのリアカーを頼むよ」
「あいよー」
「はーい」


 霖之助の言葉にふたりは声を合わせ……そしてどちらからともなく笑い合った。





「で、寝かせたはいいけど」
「こんなに酔わせて……どうするつもりだったんですか?」


 文の目が怖い。
 しかし霖之助は何もしていないのだ。
 妖夢が勝手に自爆しただけで……。
 いや、ほとんど小町の責任かもしれない。


「どうするつもりもないよ。
 僕はただ呑んでいただけさ」
「……ん~……」
「……離しませんね」
「……離さないな」


 寝かせたはいいが、妖夢は未だに霖之助の袖を掴んだままになっていた。
 これでは動くことも出来ない。


「ごめんください、店主さんいますか?」


 どうしたものかと考えていると、玄関の方から声がかかる。
 永遠亭の妖怪兎、鈴仙が薬箱を背負って入ってきた。


「鈴仙か、ちょうど良かった」
「あ、永遠亭の」


 今日はてゐは居ないようだ。
 てゐが鈴仙と呼んでいたので、霖之助も彼女のことを鈴仙と呼ぶことにしていた。


「先日慧音から薬屋に来るように伝えたと連絡があってね、そろそろかと思っていたよ」
「はい、言われました。でもここにはあまり薬が必要無いと思ってたんですが……」


 霊夢や魔理沙用の買い薬はたまに買っていたのだが、
置き薬などは半妖の霖之助に必要無かったので取ってなかったのだ。


「変われば変わるものですね」
「大して変わってないんだけどね」
「……?」


 霖之助の言葉に首を傾げるが……。
 気にしないことにしたのだろう。
 背中の薬箱を霖之助がいつも座っている机の上におろした。


「置き薬が必要と聞いてきたんですけど。
 というか、お客が来たんですから店先に出てきたらどうですか?」
「ああ。それには深いわけがあってね……。こっちに来てくれたまえ。
 それで、目覚まし薬か何か無いかな?」
「目覚ましですか? ありますけど……」
「ひとつもらうよ」


 鈴仙は居間を覗き込み、驚いた。
 どうして文がいて……あと、妖夢が寝ているのか。
 一体香霖堂に何があったのか。外の連中は何をしているのか。
 何故昼間から屋台が隣接しているのか。


「人間用ですか? 妖怪用ですか?」


 考えても仕方がないので、諦めた。
 妖夢を見る。半人半霊ということは……。


「……どっちなんだい?」
「私に聞かれても。
 両方飲ませてみます?」
「合わない薬は毒ですから、やめたほうが……」
「…………」
「…………」


 沈黙が落ちる。


「寝てるだけなら叩き起こせばいいんじゃないですかね」
「いやいや、寝てるときに叩き起こされるのは辛いんだよ」


 文の言葉に、やってきた小町がすごく実感のこもった声で言った。
 荷物の片付けが終わったらしい。


「何で死神と人間まで……?
 これは何かの異変ですか?」
「ひどいですね、香霖堂に人がいるのは異変だそうですよ。
 まあ、無理もないですけど」
「いや、そこまでは」


 阿求に首を振る鈴仙。
 皆で一斉に話し出したせいだろうか。


「ふぁ……あれ、ここ、どこですか?」


 周りの喧噪に気づいたかのように、妖夢が起きた。


「とりあえず、手を離してくれないかな」
「あああ、すみませんすみません」


 慌てて立ち上がり、頭を下げる。


「あやや、起きたようですね。
 もう、忙しいんですから邪魔しないでくださいよ」
「あたいも手伝ってくるよ、面白そうだ」
「お饅頭がいい塩梅ですよ。出来たらもってきますね」


 それぞれに文句を言いながら、準備を手伝いに行く。
 霖之助と妖夢、そして鈴仙が居間に残された。



     ☆



「それで、何であんなになってたんだい?」
「だって……幽々子様が……」


 場所を香霖堂の店内に移し、妖夢の話を聞く。

 何かまた失敗をしてしまい怒られたので、逃げ出してしまったらしい。
 小町から聞いた通りだった。
 逃げたりするから余計に半人前だと思うのだが、あえて言わないでおく。

 何よりこれはチャンスなのだ。


「つまり君は一人前になりたいと」
「はい、そうです……」


 小さく縮こまる妖夢を見て、霖之助はふむ、と大きく頷いた。


「妖夢が考える一人前とはどういうものだい?」
「えっと……幽々子様とか紫様とか……」


 周りを見渡す妖夢。


「阿求さんや慧音さんや文さん……それに霖之助さんみたいな……」
「やれやれ、これは困ったな」
「なにがですか?」
「僕は阿求から見たらまだまだ半人前だし、阿求は文から見たら小娘らしいよ」


 それに紫から見たら誰でも……と言いかけて、やめる。


「とにかく。そもそも半人前だって言う言葉は半人前であってほしいという気持ちも隠れているものさ。
 つまりはもっと面倒を見てあげたいってことだよ。
 特に君のご主人様の場合はね。愛されていることじゃないか」
「そ、そうでしょうか……」


 その通りよぉ~、とどこから聞こえてきた気がする。
 きっとどこかの妖怪たちがスキマを通して覗いていたのだろう。
 妖夢には……聞こえなかったようだ。


「さて、ところでここに君が言う一人前の者たちが読んでいる新聞があるんだが、冥界でもどうかな?」
「でも私お金無いですし……幽々子様に聞かないと……」


 その言葉に、霖之助は肩を落とした。
 セールスは失敗のようだ。

 なるほど、いちいち主の判断を仰がなければならないのはいかにも半人前らしい。
 これが紅魔館の瀟洒なメイドだったら、自分の目で判断して仕入れていることだろう。
 もちろんお眼鏡にかなえば、だが。


「いいえ!」


 すると突然、鈴仙が立ち上がった。


「半人前と言われたら半人前なんです。そこに愛なんてありません!」


 すごく興奮しているようだ。
 目が紅い。……いや、それはいつものことか。


「師匠はきっと、私を虐めるのが趣味なんですー!」


 そのまま脱兎のごとく駆け出していく。
 何か辛いトラウマにでも触れてしまったのかもしれない。


「……おや、置き薬は……?」


 どこにもないところを見ると、鈴仙が持って行ったようだ。

 そもそも鈴仙が待っていたのは置き薬の説明をするためではなかったのか。
 長くなりそうなので後回しにしていたのだが。
 そして、長くよくわからないと評判の薬の蘊蓄を霖之助は楽しみにしていたというのに。


「半人前仲間は多いようだね、妖夢」



     ☆



「ありがとうございます、霖之助さん」
「え?」
「私、幽々子様に謝ってきます。もう半人前でも挫けません!」
「あ、ああ……。そうするといいよ」


 晴れ晴れとした笑顔の妖夢。

 結局新聞は売れなかった。。
 けどこの笑顔を見るためなら……いいとしよう。


「あの……」
「なんだい?」
「また挫けそうになった時には、お話ししにていいですか?」
「ああ、それくらいならかまわないよ。何か買ってくれるとなおいいけどね」
「それは……善処します」
「またおいで」


 妖夢に手を振って別れを告げる。


「どうなることかと思いましたが」
「どうにもなりませんでしたね」
「…………」


 そんな霖之助の両隣には、いつの間にか文と阿求が控えていた。


「まあ、私の新聞を売り込んでくれたことだけは評価します。ありがとう、霖之助さん」
「ただ、冥界は……幽霊は新聞なんて読めませんよ」
「そうか……」


 阿求の言葉に、さらに霖之助は肩を落とす。
 彼女が言うならそうなのだろう。見てきたわけだし。



     ☆



「いやー、祭りの準備みたいで楽しいね」
「小町……こっちで手伝ってたのか」
「ああ、こういう雰囲気は嫌いじゃないよ」
「それにしても、だんだん大がかりになっている気がするな……」


 霖之助は次第に豪華な装飾になっていく守矢神社の分社と、
そこに据え付けられた大きな賽銭箱を見て呟いた。


「そのうち神社に乗っ取られるんじゃないだろうか……」
「まさか。そんなことはしないよ」


 気づくと隣に神奈子が立っていた。


「お、山の上の神かい」
「ここに来るなんてのは珍しいね」
「私も本当は手伝ってやりたいんだけどね。
 宴会ならともかく、信仰を受ける側が世話を焼いてちゃ格好つかないのさ」


 時と場合を分けると言うことだろう。
 拝みに来ているつもりの人間に、神が友好的に酒を振る舞ったところで信仰が上がるかどうか。
 酒を呑みに来ている時ならむしろ歓迎するのだろうが。


「信仰なんてものは朝起きて心の中で一礼するくらいのものでいいのさ。
 だけど人ってのは制限や対価を払ったときに一番自分の中で信仰心を感じるからねぇ。
 あの賽銭箱も置くつもりはなかったんだけど」


 置いてほしいという要望があったから置いたらしい。
 なるほど、わからなくはない。
 外の宗教でも、断食修行などは宗教問わずあるものと聞く。


(しかし、そんな言葉を霊夢が聞いたらどう思うのやら)


 考えて……やめた。
 不憫すぎる。
 どちらにしろ博麗神社は信仰のあり方について考え直した方がいい。


「あたいは酒を呑んでるときが一番信仰してるって気になるけどね」
「おや、死神の信仰も集められそうかな?」
「まさか。あたいが信仰しているのはただひとりだけさ」


 だからって勤務中に酒を呑んでいい理由にはならないと思う。
 思ったが……またどこからか感極まった泣き声が聞こえてきたので言わないでおく。
 今度は小町の上司だろうか。
 あちらはものすごく盛り上がっているようだ。

 霖之助は会ったことがなかったが、きっと上司は小町に手を焼いているに違いない。


「神奈子ー、もうすぐお客さん来るよー」
「おっと、それじゃ私はこれで」


 諏訪子の呼ぶ声に神奈子は手を挙げ、すっと霞のように消えた。
 神出鬼没とはよく言ったものだ。


「旦那はどうするんだい?」
「僕はいつもと一緒さ。香霖堂で本を読みながら、客でも待つよ」
「で、忙しくなったら手伝わされると」
「それが流れならね」
「じゃあ、今日のところはあたいが客だね。一日相手してもらおうか」


 結局、その日小町は一日中香霖堂でサボっていた。
 やって来た参拝客に、死ぬときの心構えを説きながら。

 夜、妖夢が泣きながら『幽々子様が帰ってこないんです』と香霖堂に来たのは別の話。
 小町が連れ戻されなかった時点で気づくべきだったのだ。

 紫と幽々子と映姫が、一日中無縁塚の桜で酒盛りをしていたことに。









「ウドンゲー、何で持って行ったはずの薬箱がここにあるの?」
「ううう……」
「ちゃんと答えなさい。全く、まだお仕置きされ足りないようね」
「やっぱり愛があるなんて嘘だぁ~……」

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