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例えばこんなさとりEND

『藪をつついて饅頭怖い』の続きかもしれないしそうでないかもしれない。
そういうネタがあったので思わず。

浮気をしているわけじゃありません。
ただチェックの目(文字通り)が厳しいだけです。


霖之助 さとり







「ねえ」


 声とともに、トン、とふたつの瓶がカウンターに置かれた。
 霖之助は読書を中断し、視線を移す。

 紅茶の葉と珈琲の豆が並べられていた。
 やはり良いタイミングだ。
 ちょうど喉が渇いたと思ったところだった。


「あら、今日は珈琲なのね。
 ……ええ。今日は少し寝不足だもの。誰のせいよ。
 入れてくるけど、砂糖は要らないわね」
「ああ、ありがとう。さとり」


 霖之助の言葉に、さとりは微笑む。

 心を読まれて当たり前。通じ合って当たり前。
 さとりと霖之助は、そんな習慣が日常になっていた。

 それでも、お礼のような肝心なことは言葉で伝えるようにしていた。
 言葉にしないと伝わらないこともある。


「ふふっ」
「なんだい?」
「もう、さっきから同じ事ばかり考えて……思考が堂々巡りになってるわよ。
 そのマウスという道具、名前ほどネズミとの関連性は高くないと思うけど。
 ……別にあの子に聞くのは構わないけど、怒らせて囓られても知らないわよ」
「そうなったら君に助けてもらわないとね」
「さあ、どうかしら」


 言って、さとりは首を傾げた。

 本当に戦闘になったら助けてくれるつもりなのはわかっている。
 ……とはいえ、まずそんな事態にはならないだろうが。


「しかしナズーリンの小ネズミを見てピンと来たのも事実なんだ……。
 あの形とこのマウス、見れば見るほどそっくりじゃないか」
「形だけなのではなくて?」
「いや、式神を操るこの道具がそれだけであるはずはない。
 僕はもっと深い理由があると考えるね。
 ネズミは子、つまり十二支の始点と考えるとこれで式神の起動を……」
「やっぱり堂々巡りね。
 少し休憩しましょうか」
「……そうだな」


 きっと彼女はここまで読んで飲み物を聞いてきたのだろう。
 読まれることには慣れているため今更気にしない。
 むしろ彼女の思慮に感謝さえ覚えていた。


「さとり」
「なにかしら?」


 答えがわかっているのに、さとりは霖之助の言葉に振り向く。
 さとりの答えもわかっていた。
 それでも霖之助は、彼女に言葉を贈る。


「ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ少し待っててね、あなた」


 ひとりになると、少し店内が広く感じられた。

 不思議なものだと思う。
 以前はずっと、ひとりでこの店をやってたというのに。


「いるかしら?」


 と、そんな感慨に浸る間もなく客がやってきた。

 玄関を開けて入ってきたのは紅魔館のメイド長。
 久し振りの上客に、思わず霖之助の心が躍る。
 もちろん、出来るだけ顔には出さないようにしているつもりではあるが。


「君が来てくれるならなるべくいるようにするよ」
「あら、お上手なのね」


 そう言って咲夜は微笑む。

 完璧な笑顔。
 買い物にも慣れている彼女だ。
 お世辞にも慣れているだろう。


「それで、今日はどんな用件だい?」
「買うとは決まってないけど。何か珍しいものがはあるかしら?」
「ああ、もちろん君のために用意してあるよ。
 気に入るかどうかはわからないがね」


 客に合わせて商品を用意するのも立派な営業努力だろう。
 霖之助は無縁塚で物を拾う際、なるべく彼女の好きそうな道具も拾うようにしていた。

 咲夜のために並べられた商品たち。
 その中で一番目を引いたのは、可愛らしいティーカップだった。

 普段の彼女からは想像できないような、少女らしいカップ。
 それに目を輝かせている咲夜は、歳より幼く、可愛く見えた。









「……ありがとうございました」


 咲夜を見送り、霖之助は大きく息を吐く。

 彼女の手にはつい先ほど購入したばかりの可愛らしいティーカップ。
 きっと紅魔館に帰り、仕事のあとにあのカップでお茶を飲むのだろう。

 実に微笑ましい光景だ。
 それに、久々にまともな商談が出来た。

 ……本来ならもっと晴れ晴れとした気分であるはずなのに、今の霖之助の胸中には何やら薄黒いもやが渦巻いていた。


「楽しそうでしたね、あなた」
「……さとり?」


 いつの間にか側に立っていた彼女に、声をかけてみる。
 咲夜が帰るのを待っていたのだろうか。
 さとりの手にあるコーヒーカップからは、あまり湯気が出ていないようだった。


「専用なんですね」
「お得意様なんだから、仕方ないだろう?」
「…………」


 考えは読めているはずなのに、しかし彼女は何も答えない。


「あの子のために用意してたんですね」
「……頼むから、その冷ややかな視線を止めてくれないか」


 霖之助は恐る恐る彼女に尋ねた。

 ……無駄だということはわかっている。
 そして、原因も。

 たまに彼女はこうなることがあった。
 お客が少女で、そして霖之助が褒めるような思考をしたとき。
 先ほどの咲夜ように……。


「またかわいいって思った」
「……いや、だからだね」


 あくまで驚きの延長上、素直な感想としてのかわいい、である。
 例えばしっかりした一面を見せた妖夢や、ちょっとミスをしたときの藍など……。


「……また思った」
「ほとんど無意識なんだから仕方ないだろう」


 返事の代わりに、ドン、と霖之助の目の前にコーヒーカップが鎮座する。

 会話を切り、一口。
 やはりぬるくなっていた。


「…………」


 さとりが機嫌を損ねると、怒ってそっぽを向く……などという生やさしいものではない。
 冷ややかな……心の底まで見透かすような冷ややかな3つの視線で、ずっと睨み付けてくるのだ。ずっと。


「……だいたいだな。君にはそんな言葉、わざわざ言わなくても伝わっているだろうに」
「なんのことか私にはわからないわ」


 これほどさとりと似合わない言葉も珍しい。
 伝わってないはずはないというのに。
 それに、わざわざそんな言葉を言うのがどんなに恥ずかしいかわかっていないはずがない。


「だから……その、咲夜たちみたいに無意識にじゃなくて、だな」
「なんのことか私にはわからないわ」


 同じセリフを繰り返すさとり。
 無言で彼女は要求していた。

 霖之助は渇いた喉を潤すためにカップを傾け……そこで初めて、既に飲み干していたことに気が付いた。

 おかわりが欲しい。
 そう思うが、さとりはやはり、同じ言葉を繰り返す。


「ねえあなた。私にはわからないのだけど?」









 結局、霖之助が恥ずかしさに耐えかねてさとりをかわいいというまでその責めは続いた。

 肝心なことは言葉にしないと伝わらない。
 わかっていたことだがやはり覚妖怪も同じようだった。


「ねえ、もう一度言って?」


 訂正。
 言っただけでも、伝わらないらしい。

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