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クロースアップ

咲夜さんはかなり天然の入った乙女。
十四朗さんに書いていただいたのを見てよし僕も、と言うことで。


霖之助 咲夜









 咲夜はレミリアの従者であることに誇りを持っている。
 したがって、その証であるメイド服にも常に気を配っていた。

 いつものようにきちんとアイロンがかけられた服に袖を通し、
いつものように、鏡の前でチェックする。

 服装、良し。
 エプロンに皺もない。
 リボンも完璧。

 いつもより髪を整えるのに時間がかかった気がするが、時を止めていたので問題ない。
 カチューシャを綺麗にセットし、準備完了。


「おはようございます、お嬢様」


 早速テラスに出ると、レミリアがあくびをしていた。
 きっとこれから寝るところだろう。

 レミリアは咲夜をじっと見ると……何故かため息。

 そして大きなあくびとともに、投げやりな言葉を吐き出した。


「香霖堂に行くならポテトのお菓子買ってきて。
 今まで食べたことのない味で」
「おおおお嬢様? なぜいきなりそんなここことを?」


 咲夜の目が泳いでいる。
 レミリアは再び大きなため息。


「服。
 いつもそんなに綺麗にしてないでしょ」
「いいえ滅相もない」
「髪。
 三つ編みが普段より細かいわ」
「気のせいです」
「だいたい、昨日早く寝たでしょ」
「たまたまです」
「ああそう」


 あくまで違うと言い張るらしい。

 だいたい、そんな気合いを入れた格好で、幸せそうな笑顔を浮かべて。
 気付くなというほうが無理だ。

 むしろ最近はツッコミ待ちなんじゃないかと逆に心配になっていた。


「……コホン。
 お嬢様。お言葉ですが、今のところそのような予定はございません」
「今のところ、ね」


 あまりの往生際の悪さに、レミリアは苦笑を浮かべる。


「そう。予定がないのならちょうどいいわ。
 パチェが地下の本を片付けようかって言ってたのよ。
 聞きながらになるから、時を止めても何週間かかかるわね」
「すみませんお嬢様。
 予定が入っていたのをすっかり忘れておりました」


 咲夜は曇り無い瞳できっぱりと言った。


「……最初からそう言いなさいよ」
「はい?」


 惚けたように首を傾げる咲夜に、レミリアは首を振る。


「寝るわ。
 お土産よろしく」
「はい。お土産話を期待しておいてください!」
「全力で断るわ」


 言ってレミリアは、楽しそうに外出する咲夜を見送り……。


「上手く行くといいわね」


 ひとつ笑顔を浮かべ、自室へと帰っていった。










「ふぅん、つまりこれがこうなって……」
「いいえ、ここはこうです」
「ん? いや待てよ?」
「こっちでこう……こうですよ」


 霖之助は咲夜に手品を教えて貰っていた。
 きっかけはいつも通り、彼が手品の本を読んでいるところを咲夜が見かけたことだった。

 外の世界の、特殊な能力を持たない人間が編み出した奇術。
 技術だけで不思議を実現する手段。
 それに小手先の技術だけに留まらない、高度で心理的な駆け引き。

 霖之助が興味を持つのにそう時間はかからなかった。

 しかし外の世界の本があるとはいえ、独学では限界がある。
 そこで手品が得意だという咲夜に教えて貰うことにしたのだ。


「こう手を……ううん?」
「いえ、そこでこっちに視線を……あ、手はこうです」


 手品が得意だという咲夜は、しかし誰も手品を見せても驚いてはくれなかった。
 時を止められるのだから無理はない。

 そんな折、手品を見てくれる相手が出来たのは単純に嬉しかった。

 主に今教えているのはカードマジック、それからコインマジックだ。
 派手さはさほどないが、似たような道具があればどこでも出来るという利点がある。
 それに、だからこそ奥が深い。

 ……霖之助には大仰な動作や演出が似合わないから、というのもある。
 むしろ小さな動作で相手を煙に巻くような、そんな手品を好んで教えていた。


「……なるほどね。
 なんとかできそうだよ」
「はい。練習あるのみですよ」


 頷く霖之助に、咲夜は笑顔を浮かべる。

 咲夜のお手本を、霖之助は真剣に見ていた。
 もちろん、手品中彼女は時を止めたりしないという信頼があってのことだ。

 それがわかっているからこそ、咲夜も真剣に望んでいた。
 ……それが祟って、たまに失敗するのだが。


「そうそう。
 君が教えてくれたこの前のやつ、評判良かったよ」
「そうですか?
 それは何よりです」
「……おや、噂をすれば」
「りんのすけぇ~」


 視線をあげると、香霖堂の扉をくぐる小さな影が見えた。
 咲夜は軽く微笑むと、霖之助の後ろに控えるように佇む。


「手品見せて、手品!」
「ちょっとチルノちゃん、慌てすぎだよ」
「なんだよ~。大ちゃんだって楽しみにしてたじゃん」
「そ、それは……」
「とりあえず落ち着くといい」


 慌ただしい来訪者に、霖之助は肩を竦めた。
 すると、チルノが咲夜に気付き声を上げる。


「あ、咲夜だ」
「今日も元気みたいね、チルノ。それにお友達も」
「とうぜんよ。あたいさいきょうだもん」
「……どうも」


 胸を張るチルノに、咲夜も笑顔を浮かべた。
 よく紅魔館周辺にも出没するので顔見知りだ。
 もちろん、チルノも咲夜の能力を知っている。


「で、なんで咲夜がいるの?」
「ん? いちゃおかしいかい?」


 何気ないやりとりに、思わず彼女の心臓が跳ねた。


「彼女は僕の師匠だからね」
「ししょお?」


 続く言葉に、少しだけ気を落とす。
 ……そんな自分に、心の中で苦笑を浮かべながら。


「ほんとうに? りんのすけも時間止められるの?」
「いいや。止める必要はないんだよ。
 君も知っているだろう?」
「うん、だけど忘れちゃった。もう一回教えて!」


 咲夜から一番最初に霖之助が教わったのは、ちょっとコツを掴めば誰にでも出来る手品だった。
 たいして技術も必要無く、ネタを知っていれば不思議でもなんでもない。そんな手品。

 そしてそれを、霖之助はまず手品を見せる相手……つまり妖精たちに教えることにした。
 時間を止めなくても、不思議な力を持ってなくても、こんなことが出来るのだと。

 そうやって初めて、彼女たちは手品を手品として見ることが出来るようになった。


 不思議が跋扈する幻想郷では、これくらいの下準備が必要なのだ。


 もちろん、霖之助が時を止めたり出来ないからでもあるのだが。


「ああ、あとで教えてあげるよ。
 それより……」


 それに妖精たちに手品を教えても、すぐにやり方を忘れてしまう。
 簡単な手品を数個覚えておけば、ずっと妖精たちをあしらうことも可能だった。

 ……最初はそのつもりだったのだが、いつの間にかすっかり妖精の観客が板についてしまっていた。


「ちょうど良いところに来たね。今日は僕も新しいことを覚えたばかりなんだ。
 せっかくだから見せてあげるよ」
「本当?」
「いいんですか?」
「ああ」
「……ふふっ」


 騒ぎの中心に、霖之助の相手に自分がいないことを少し寂しいと思いながら。
 それでも、楽しそうな皆を……霖之助を見て、咲夜は笑みを浮かべた。


「じゃあ、ちょっと待っててくれよ。
 こっちもいろいろ準備があるからね」
「うん!」
「はい」


 はしゃぐ妖精たちを前に、霖之助は微笑む。

 そして咲夜と目が合い、目配せ。
 手順の最終確認をしたいのだろう。

 ふたりはチルノたちから見えない位置に移動し……ふと、咲夜が口を開く。


「まるで家族みたいですね」
「はは、妖精みたいな子どもがふたり、かい?」
「ええ」
「……騒がしくなりそうだね」
「ふふっ」


 咲夜は軽く頷き……そこで動きを止めた。

 聞こえたのは偶然だろう。
 霖之助がぽつりと漏らした一言。
 咲夜とチルノたちを見比べて、漏らした一言。


「確かに子どもが出来たら、こんな感じかもしれないな」









「これはつまり、あれですよね」
「あーそうねー」
「そう思っていいんですかね。まさかあの展開で他の人ってことはないですよね」
「そうかもねー」
「つまりふたりは欲しいってことですよねって何言わせるんですかお嬢様!」
「いや、意味がわからないから。
 言いたいことはきちんとまとめてきなさい。
 それより私のポテ……」
「そうですね。そうします」


 その日。
 一日の出来事を綴った咲夜の香霖堂日誌(仮)は未だかつて無い長さだったと、
レミリアは戦慄しながら友人に漏らしたのだった。

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