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ブンキシャ! 第07.5話

ショートショート。
そそわにアップするまでもない長さなので。


霖之助が鈴仙に持ちかけたのは、ただお互いの話を聞くこと。
それだけのことのはずだったのだが……。

霖之助 鈴仙







「いやまったく、いつもながら君の説明はわかりづらいね」
「はぁ」
「例えば新たしく置くというこの胃薬だが、僕の能力でも単に胃を整えるものであり、
 用法と用量だけ伝えてくれれば十分に過ぎる。
 それでもわざわざ細かい成分まで説明しようとするならそれなりの理由があるのだろう、
 と考えるのだが……きっと君自身完全に理解してるわけではないんじゃないかな?
 なるほど、そう考えれば合点がいく。
 理解していないものを理解させようとすればそれは歪みが生じて当然だ、
 つまりわかりにくい」
「……だって師匠が……」


 涙目で机にのの字を書く鈴仙に、霖之助は苦笑を浮かべる。


「いやすまない、悪気があるわけじゃない」
「ううう」
「機嫌を直してくれ。これでも僕は楽しんでるんだ」
「私が楽しくないです……」


 鈴仙の白い耳が今にも地に着かんばかりにしおれていた。


「やれやれ、ではいつも通り、君の話を聞こうじゃないか」
「はい!」


 先ほどとはうって変わり、元気よく返事をする鈴仙。

 彼女が話すのは主に普段の生活や仕事の愚痴だが、霖之助は適当に相槌を打ちながらただ聞いていた。

 というのも、先日霖之助が拾った外の世界の本に、
『女の子の話はひたすら聞いて頷くだけでいい』と書いてあったからだ。

 これで客が増えるのならば、と思い鈴仙に実践してみたが、
あまりこのやり方は肌に合わずそれきりやめた……つもりだった。

 最初に試したとき、鈴仙があまりにも嬉しそうに話し……そして次に来たとき、
期待した目でじっと見てきたので仕方なく付き合っている。

 とはいえ医療系の知識に乏しい霖之助にとって薬の知識は新鮮なものであり、
その考察を楽しんでいるのも事実だった。
 こっちの話を聞いてくれるのならば、ギブアンドテイクというやつだ。

 少なくとも、すべてお見通しのような態度で語る少女を相手にするよりははるかに可愛げがあるというものである。


「それでですね、師匠が……」
「はい、清く正しい射命丸です! おや、珍しい姿が見えますね」
「ああ、文。実は……」


 霖之助がやってきた文に視線を移した瞬間、肩をがっしりと掴まれた。


「……鈴仙?」
「私はちゃんと仕事を終わらせたのに、てゐがサボったせいで私まで怒られたんですよ。ひどいですよね」


 文の姿が目に入っていないのか、まだ話は終わっていないと言わんばかりに喋り続ける。


「……そうか」
「あやややや」


 ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、文は様子を見ることにしたようだ。


「そしたら姫様が……」


 それから30分ほど喋り続けただろうか。
 やがて満足したのか、鈴仙は気持ちよさそうに大きく伸びをした。


「あれ、文さんじゃないですか。お久しぶりです」
「今気づいたの? ところでなんでここで話し込んでるのか知りたいんだけど」


 文の口調が取材口調でなくなっていることに霖之助は違和感を覚えた。
 何故だろう、風もないのに肌寒い感じがする。


「いえ、単に行商に来ただけですよ」
「定期的に来るようになってまだ3回目くらいだけどね」
「定期的に……ね」


 なにやら考え込んでいる文。
 そう言えば今までタイミングが合わず、ふたりはここで会ったことはなかったはずだ。
 霖之助も文や阿求に言っていなかった。

 彼女たちのためにわざわざ薬を準備していることを知られたら何となく気恥ずかしい。
 そう思ったからなのだが……。


「あ、そろそろ行かないと師匠に怒られる。では私はこれで」
「あ、ああ。またおいで」


 鈴仙は不機嫌な文を気にすることなく帰っていく。


「……で、どういうことか説明してもらえます?」
「いや、僕は別に」


 残された霖之助は、かつて無い背筋の冷たさを感じていた。

 霖之助は鈴仙との会話のきっかけを説明したが……話を聞けば聞くほど、文は不機嫌になるばかり。


「それはすぐにやめるべきです」
「どうしてだい?」


 首を傾げる霖之助。
 ただ話を聞くだけの何が悪いのか。

 相手も喜び、自分も嬉しい。
 何も問題ないではないか。


「そんなことをするから……もう!」


 文は落ち着かない様子で窓の外を見つめていた。








 結局、再招集された鈴仙と急遽連れてこられた阿求を交えての話し合いの結果。
 文や阿求がいるときは、霖之助の蘊蓄を聞いた時間だけ愚痴を話していい、と言うことになった。
 ふたりだけの時は今まで通りなので、あくまで文は心配そうだったのだが。


「うぅ、ひどいです……」
「これでやっとフィフティフィフティなのよ」
「全く、目が離せませんね……」
「ひどいと言うほうがひどくないだろうか?」


 思わず霖之助は首を傾げた。

 しかし、と考える。
 ここまで騒ぐと言うことは、あの本に書いてあったことは意外と真実なのではないだろうか。

 ……まさか、と打ち消した。
 もしそうであれば、もっと香霖堂が繁盛してなければおかしい。


 今日も香霖堂は、いつもの少女たちしかやってこなかったのだから。

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