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盃ひとつ

リクを貰った病みを操るヤマメさん。
しかしヤンデレにはならなかった。
反省せざるを得ない。


霖之助 ヤマメ








 封じられた地下というのも今は昔。
 最近では地上で地下の妖怪を見ることも珍しくなくなっていた。

 烏や猫、鬼、さらには新しくできた寺。

 とはいえ、ただ少し妖怪の種類が増えただけだ。
 幻想郷はすべてを受け入れる。


 しかしながら、地下に出かける地上の者は少ない。
 理由は簡単、危険だからだ。

 現在地上に出てきている妖怪は友好的な妖怪ばかりだ。

 必然的に敵意のある妖怪たちや、あるいは地上から離れたくて地下に潜っていった者たちが残ることになる。

 そういった者たちの中に地上の者が紛れ込んだらどうなるか。
 少なくとも、戦闘は避けられないだろう。

 ……勝って帰ってくれば問題ないのだが。
 霊夢たちのように。



「つまりここが境界ということか」


 霖之助は大きな洞穴を覗き込んだ。
 幻想郷にいくつかある地下への入り口。
 そのひとつだ。


「地下世界……。かつて封印された世界。
 そして、封印された道具」


 目の前に未知の世界が広がっている。
 思いを巡らせるだけで心が躍る。

 霊夢たちから聞いた話しによると、地下は地下で発展しているらしい。
 その話を聞き、霖之助は長いものに巻かれるため、一度見に行ってみたいと思っていた。


 人間と妖怪のハーフたる彼は妖怪に襲われることが少ない。
 それは食えないやつという噂が広まっていたり、食ってもまずいという話しになっていたり。
 霊夢や魔理沙と顔見知りであることも理由のひとつだろう。

 しかし、単純に敵意を向けてくる相手には、そのようなことは関係ない。
 荒っぽいことの出来ない霖之助では対処のしようがないのだ。

 それに空を飛べない以上、気軽に行って帰ってくることも出来ない。


 地上から失われて久しい地下の道具にただ思いを馳せながら、霖之助はずっと地下を覗き込んでいた。


「……ん?」


 ふと、ひとつの影に気が付いた。

 いつからいたのだろうか。
 洞窟を覗き込んでいる霖之助とは対照的に、しかし同じように、地上を興味深そうに覗き込んでいる少女がいた。


「あれ?」


 あちらも霖之助に気付いていなかったらしい。
 驚いたような表情を浮かべていた。









「へぇ、あのふたりの知り合いなんだ。
 元気してる?」
「ああ。元気すぎるほどにね。
 君こそ霊夢たちと面識があるとは……。
 迷惑をかけなかったかい?」
「んー、まあ、喧嘩も地下の華だし。
 すると……あんたも結構強い?」
「いや、僕は全然だよ。
 まともな戦いにすらならないだろうね」


 ヤマメと名乗った少女と霖之助はすっかり世間話に花を咲かせていた。
 お互い境界……洞穴の入り口を挟んで腰掛けている。


「しかし、地下もなかなか楽しそうだね」
「毎日がお祭り騒ぎみたいなものだよ。
 たいてい旧都で何かやってるからね。
 お祭りとか、喧嘩とか、花火とか……」
「全部祭りに聞こえるな」
「うん。つまりそういうこと」


 ヤマメはぱっと笑顔を浮かべた。
 最初こそ警戒していたが、話してみると明るく楽しい性格だということがわかる。

 わりと好戦的なところにさえ気をつければ、霖之助は気さくな彼女とすっかり打ち解けていた。


「ね、地上にはどんなことがあるの?」
「そうだね……地下に比べたら静かかもしれない。
 神社あたりは騒がしいけどね」


 目を輝かせて尋ねる彼女に、霖之助はかいつまんで説明していく。

 どれくらい喋っただろうか。
 霖之助は喉の渇きを覚え……用意してきた物を思い出した。


「呑むかい?」
「この匂い……お酒?」


 荷物の中から魔法瓶を取り出す。
 中には熱燗が入っていた。
 さすがにひとりで飲むには多い量だ。


「自分だけだと思って器は持ってきてないんだけどね」
「それなら私に任せて」


 ヤマメはそういうと、なにやらごそごそとたぐり寄せる。
 しばらく経つと、彼女の手の中から白い盃が出てきた。

 まるでガラス細工のような、限りなく透明に近い白。


「ほら」
「これは……すごいな」


 霖之助は感嘆の声を上げ……その盃を受け取った。
 酒を注ぎつつ、口を開く。


「土蜘蛛の盃、か。
 そうか、君は土蜘蛛なのか」
「お、よくわかったね」
「道具の名前と用途がわかるのが僕の能力だからね。
 それにしてもこれはいいものだ」


 ヤマメに盃を返し、自分の分は魔法瓶の蓋に注ぐ。
 お互いの器を軽く合わせ、酒を傾けた。


「……実際話すのは初めてだな」
「まあ、もう地上にはいないだろうしね」


 何となく、彼女の声が沈んだ気がした。


「土蜘蛛の能力、知ってる?」
「いや……僕の能力はそこまではわからないからね」


 ため息混じりに言うヤマメに、首を振る。
 彼女はなにやら躊躇っていたようだが……やがて口を開いた。


「病気を操ること。地下に封印された理由だよ」
「ふぅん……なるほど」


 彼女が地上に興味を持ちながら、それでも動かない理由はそのせいなのだろう。


「失礼するよ」
「あ……」


 霖之助はヤマメの盃を手に取り、残っていた酒を呷る。
 かっと喉の奥が熱くなった。
 我ながらいい酒を選んだと思う。


「そんなことしたら……」
「病気でも伝染されるとでも?
 君はそういう妖怪なのかい?」
「そんなことするわけない! ……けど」
「それに僕はハーフだからね。
 人間の病気にも妖怪の病気にも強いのさ」
「…………」


 ふむ、と頷き、盃を置く。
 空になったそれに酒をつぎ足しながら……ひとつ苦笑を浮かべた。


「……それにしても少しデリカシーがなかったかな。
 すまないね、よく魔理沙にも怒られるんだが……」


 たまに喉が渇いたときに霊夢のお茶を拝借することがあり、ふたりから怒られるのだ。
 霊夢が怒るのはまだわかるのだが……。


「……と、そうか。このまま盃を返したらまた怒られるのかな。
 もうひとつ盃を作って……」
「ううん」


 霖之助の言葉を遮り、ヤマメは首を振った。

 彼女は彼が置いた盃を手に取り、笑顔を浮かべる。
 そしてそのまま、盃に口をつけた。


「ひとつでいいよ。
 ……もっと呑もう」


 ヤマメは空になった盃を霖之助に押しつける。
 これで呑め、と言うことだろう。


「ああ、望むところさ……と言いたいが、お手柔らかに頼むよ」









 魔法瓶を傾けた霖之助は、首を傾げた。
 そしてようやく思い至る。

 酒が尽きたのだ、と。


「あれ、もう空っぽ?」
「みたいだね。
 とはいえずいぶん呑んだ気はするが」
「まだまだ呑み足りないし話し足りないよ」


 ヤマメが駄々をこねる。
 もう十分地下についての話も聞けた気はするが、何となく呑み足りないのも事実だった。


「ヤマメ」
「なに?」
「僕が強いのか、と聞いたね。
 勝負をしようか」
「お、やる気? いいよいいよ」


 なにやる? と表情を輝かせるヤマメに、霖之助は肩を竦めた。


「単純なことさ。力比べをしよう。
 引っ張って相手を引き寄せたら勝ち」
「それだけ?」
「ああ、それだけだよ」


 ヤマメは不思議そうに首を傾げる。

 彼女はいまだに洞穴から一歩も出ていない。
 ふたりの間にあるのは、地上と地下の境界だった。


「僕が勝ったら、香霖堂に酒を取りに行くのを手伝って貰う。
 もしかしたら、その場でおつまみの用意もして貰うかもしれないね」
「香霖堂って……」


 当然、香霖堂は地上にある。
 それが意味するところは、ヤマメもすぐに思い至ったようだ。


「どうする?」


 彼女の顔を見る。
 ヤマメは今にも泣き出しそうに……笑っていた。


「いいよ、やろう。
 ……ありがとう、霖之助」

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非公開コメント

No title

ヤマメってこんなにかわいかったんだ、しらなかった・・・・・・
もう地霊殿の1面クリアできないじゃないですか、どうしてくれるんですか。


No title

しかしさりげなく、紅白と白黒は好意持ってるってのがにじみ出てるな白黒なんてここだと企画以外でメイン一本もないのにw
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道草

Author:道草
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