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鵺の呼び声ぷち 11

ぬえ霖紅魔郷編その4。
僕の中で小悪魔のキャラが固まってきました。
本当にそれでいいのかはともかく。


霖之助 ぬえ








「愛ってなんなの?」
「ためらわないことよ」
「なるほど~」


 ぬえの質問に、パチュリーは本から視線を動かさずに即答。
 さすがは動かない大図書館だと感心するぬえだったが……ややあって、首を傾げる。


「……で、つまりどういうこと?
 愛って……」
「くやまないことね」


 再度の問いに、やはり即答。
 しかしますますぬえは疑問の表情を浮かべた。

 パチュリーは仕方なく、といった様子で言葉を続ける。


「一口に愛と言ってもいろいろあるわ。
 友愛、師弟愛、無償の愛。
 愛は好意の延長上にあるものだけど、だからと言って肯定とイコールではないわ。
 愛故に苦言を呈するのもひとつのかたちよ。
 そしてそれには何よりタイミングが大事。
 一瞬のためらいで取り返しが付かなくなるし、後悔するようならそれは愛じゃないということよ」


 文献によると、人を愛するが故に人を喰わずにはいられない妖怪もいるらしい。
 ……もっとも、そんな妖怪が幻想郷にいたとしてもとっくに巫女に退治されているだろう。


「……それで、どうしたの?
 あなたがそんな事を聞くなんて……いえ、わざわざ図書館に来るなんて」


 紅魔館の主、レミリアと何故か仲良くなったぬえは、よく紅魔館に遊びに来ていた。
 パチュリーとは何度もお茶をした仲だ。

 今まで図書館に足を踏み入れたことはなかったのだが……。


「うん、それがね……」


 ぬえは口を開き……やめた。
 なにやら顔を赤らめ、照れたように笑う。

 怪訝な表情を浮かべるパチュリーに、慌てたように彼女は言った。


「えっと、そのね。
 私の友達の話なんだけどね……」
「友達?」
「そう、友達」


 正体不明の妖怪に友達なんているのだろうか。
 しかも愛だのなんだのに関わるような。

 ふと、パチュリーはそんなことを考える。

 ……が、すぐに首を振った。
 自分も似たようなものだ。

 それにこういう場合、その友達とはつまり……。


「ついこないだ、お屋敷の門番に料理を教わったのよ」
「門番に、ね」


 幻想郷で門番と言われて思い浮かぶのはまずひとり。
 竹林や冥界に行けば似たような仕事をしている庭師や兎がいるが、門番と言ったらやはり彼女だろう。
 その時点で既にバレバレだということを、ぬえはわかっているのだろうか。


「それで美鈴……じゃなくて門番がね、えっと、ある人のことを好きなんじゃないかって。
 料理は愛情があれば大丈夫だって」


 そんなことを話した覚えもないのに、そう見えるということだろうか。


「私、ずっとよくわからなかった感情があるんだけど……そのことなのかなって。
 ……ああもちろん、友達の話よ」


 ぬえは慌てて付け加えた。

 隠す気ゼロなのではないかと思うほどわかりやすいが、一応わからない振りをする。
 本人はいたって真面目なのだから。

 ややあって、パチュリーはため息ひとつ。


「美鈴……余計なことを……」
「えっ、何か言った?」
「なんでもないわ」


 読んでいた本を閉じ、テーブルの上に置く。
 久し振りに長く喋った気がする。

 紅茶は冷めてしまっていたが、渇いた喉にはちょうどいい。


「好きと愛は少し違うんだけどまあいいわ。
 あなた……いえ、その子については、詳しいことはわからないんだけど。
 結論から言うと、好きなんでしょうね」
「そ、そお?
 そんなに……わかりやすいのかな」
「まあ好きと言っても……」


 パチュリーは言葉を切り、空になったカップを置いた。


「小悪魔」
「はい、おかわりですね」


 ちょうどいいタイミングで、ポットを持った小悪魔が現れる。
 紅茶を注ぐ小悪魔に、パチュリーは質問を投げかけた。


「私のこと、好きかしら」
「はい、好きですよー」


 好き、という言葉に一切の気負いもない。
 まるで当然のことと言った様子で、彼女は答える。


「愛してるかしら」
「はい? ええまあ、敬愛はしてますが」


 さすがに驚いたような表情を浮かべる小悪魔だったが、これもまたいつも通り。


「……とまあ、こんな感じよ」
「……好きってこと?」
「そう。
 貴方もレミィのこと好きでしょう?」
「うん、それはそうだけど……」


 そう言われてみると、そう特別なことでもない気がしてくる。
 ……同じに考えていいのだろうか、という疑問はともかく。


「そうね、例えば森近霖之助って言う店主がいるんだけど」
「んんん?」
「……どうしたの? 例え話にそんなに食いついて」
「ううん、なんでもないよ。なんでも……」


 そんなふたりを、おかしそうに小悪魔は微笑んでいた。
 コトのあらましについては、この短いやりとりでもだいたい推察できる。

 つまりはまぁ、主人の悪い癖が出たのだろう。


「咲夜のこと好きよ、あの店主」
「えええ!?」


 ガタン、とぬえの椅子が音を立てた。
 無意識だったのだろう、慌てて元に戻す。

 そして、机に突っ伏さんばかりの勢いでパチュリーに詰め寄った。


「ど、どういうこと?」
「どういうことも何も、言葉通りの意味よ」
「しらな……かった……」
「そう? 見てわかると思うけど。
 咲夜が店に行くと嬉しそうでしょう?」


 ぬえは頭を抱えた。
 確かにそういった素振りも……あったようななかったような……。


「もっと来てくれるといいって言ってたんだけどね。
 毎回買い物していってくれるからって、前本貸したとき言ってたわ」
「ああ……そういうこと……」


 パチュリーの言葉に、ぬえは脱力したかのように崩れ落ちた。
 特徴的な羽根がへにゃりと垂れる。

 それはぬえも聞いたことがある。
 数少ない上客だ、と言っていた

 確かに好き……ではあるのだろう。


「神社の巫女も、あの男のことが好きだわ」
「そ、そう?
 えーっと、つまり……」


 先ほどのダメージからまだ回復しきっていないぬえは、突っ伏したままパチュリーを見上げた。
 その視線に、彼女はひとつ頷く。


「お茶と服をツケといてくれるらしいわね。
 あの霖之助のほうは、困ってるみたいだけど……本当に困ってるかはわからないわ」
「それはわかる気がする……」


 ぬえがいるときも、あの巫女は何度かお茶を持って行った。
 霖之助も、もういつものことと割り切っている気がする。


「ついでに私も霖之助のこと好きよ」
「へ、へぇ……。その心は?」
「本貸してくれるからね。
 というわけでこれ、香霖堂に返しておいてくれるかしら」


 パチュリーが小悪魔に視線を送ると、待ってましたとばかりに彼女は本の束をテーブルに置いた。
 なかなかの量だが、妖怪の力なら抱えて飛ぶことなど造作もないだろう。


「まあ、好きとか愛とか言ってもその程度のことよ。
 で、他に何か質問はあるかしら?」
「う、うん……だいたいわかった……かな」
「じゃあそれでいいじゃない」
「そういうもの……なのかなぁ」


 首を傾げたままのぬえだったが、それ以上はなにも言わなかった。
 一応納得はしたようだ。
 いや、そう思い込もうとしているのか。

 図書館から立ち去る彼女を見送り……小悪魔は主に疑問を投げかける。


「パチュリー様」
「なに」
「よろしいのですか? 本当のこと教えなくても」
「図書館は調べに来る場所よ。教えてもらいに来るところじゃないわ」


 知識は集積、知恵は取捨選択である。
 図書館にあるのは、ただ膨大な知識でしかない。

 それをどう役立てるかは、やはり個人個人にかかっている。
 この図書館ではきちんとした備えがないと……悪い魔女にだまされてしまうのだ。


「……まだまだ楽しめそうよね」
「はい、そうですね」


 パチュリーの説明を受け、ぬえの中で感情がまた正体不明に戻ったことだろう。
 楽しそうな主に、小悪魔も笑顔を浮かべた。


「ところでパチュリー様」
「……なによ」


 何となく悪い予感を覚えつつ。
 小悪魔の問いに振り返る。


「さらっと言いましたけど、パチュリー様って香霖堂さんのこと好きなんですね」
「……そうよ。それが何か?」


 パチュリーは小悪魔の視線から隠れるように、本へと視線を移した。
 その様子を見て、彼女はますます笑みを深める。

 こう言うところは、やはり主人に似たのだろう。


「どれくらい、好きなんですか?」









「やったー、直ったー!」
「あまり手当たり次第に驚かそうとするものじゃないよ。
 今回はすぐ直ったからいいけど、傘の骨が折れると修復に時間がかかるからね」
「うんー!」


 香霖堂に戻ったぬえの耳に、そんなやりとりが聞こえてきた。
 そう言えば、小傘が来るという話だった気がする。
 先日、傘を持った妖怪を脅かしに行くという話をしていて……。


「あんなにボロボロだったのにもうぴかぴか!
 ありがとう~、大好きー!」
「ああ、僕もだよ。
 君みたいな妖怪には興味があるからね」


 その言葉を聞いた瞬間、ぬえの身体が動いていた。


「わ、私も!」


 香霖堂のドアを開けるや否や、叫ぶ。
 驚いた顔の霖之助だったが、すぐにいつもの表情に戻った。


「お帰り、ぬえ」
「あ、これ、本……」
「ああ、ありがとう。取ってきてくれたのか」


 霖之助は笑みを浮かべながら、本を改める。
 頼んでいた本も一緒に入っていたらしく、なにやら喜んでいるようだった。


「え、えっと……その」
「ん? どうしたんだい」


 いつもと少し違うぬえの様子に、霖之助は振り返る。


「わ、私も……その……」


 口ごもるぬえに、頷く霖之助。
 それだけで、言いたいことが伝わった気がした。


「ああ、僕もだよ」


 霖之助に頭を撫でられ、ぬえは眼を細める。


 相変わらず、心の中の感情は正体不明のままだ。
 だけど。

 しばらくはこのままでも悪くない。
 そう、ぬえは考えていた。

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あぁ…11まで読み切ったぞ…
正体不明な感情も霖之助にかかれば(ry
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