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唯一無二の

『名前で呼んで』の続きかも知れない。
しかし先代霖を書いていたはずなのにいつの間にか霊霖に……?

それはともかく先代巫女は横乳。
この訴えは続けていきたいと思います。
先代巫女(横乳)
というわけでしゃもじさんに先代を描いていただきました。


霖之助 先代巫女 霊夢






 人間は常に妖怪に怯えて生きてきた……というわけではない。

 人里は妖怪の賢者に保護されているらしいし、妖怪退治を生業とする者もいた。
 そして何より、博麗の巫女がいる。

 異変解決の専門家。
 結界の管理者。
 彼女の二つ名は多々あれど、人間からはだいたい決まった名で呼ばれていた。

 巫女、と。





「調子はどう? 少しは仕事に慣れた?」


 唯一無二の存在だから、それで事足りるのだ。
 そんな博麗の巫女は、店に来るなり決まってそう尋ねてくる。


「僕がここに来て何年経ったと思ってるんだい?
 いつまでも丁稚じゃないよ」
「そう。そろそろ自分の店は持てそう?」
「……そこまではまだまだだね」


 ここ霧雨道具店で働き出してから、もう5年以上になる。

 もうすっかり仕事も覚えたし、困るようなことも少ない。
 今のように、ひとりで店番を任されることもよくあることだ。

 しかし、まだまだ霧雨の親父さんには敵わない、と思うのも事実。
 そのあたりはじっくり学ばせてもらうことにしていた。

 自分には、時間はたくさんあるのだから。


 ……まあ、彼女のことだ。
 心配してくれているのだろう。


「……ありがとう、とは言っておくよ」
「ん? なんのこと?」


 とぼける彼女に、苦笑で返す。

 人間と妖怪のハーフたる彼は、確かに人里では目立つ。
 しかしながら無害な人外に怯えるほど、幻想郷の人間は繊細ではない。

 たまに奇異の目で見られることはあるのだが……。
 それはきっと、人間のように年を取らないことだろう。

 最初にこの店で働き始めた時から、彼の見た目は少しも変化していないのだから。


「まあ、いいさ。それより……」


 いつも自分のことを気にかけてくれる彼女に感謝している。
 しかし、いつまでも半人前扱いされている気がして何となく悔しかった。


「先日、変なことを聞かれてね。
 博麗の巫女に関係することで……」
「なに? わたしの胸囲?」
「……そろそろまた測り直さないといけないが……いや、そうではなく」


 コホン、とひとつ咳払い。


「巫女は強かったか、と尋ねられてね。
 まだ10も行っていないくらいの男の子に、だよ」
「……どういうこと?」


 彼女が首を傾げるのも無理はない。
 最初、なんのことを言っているのか自分でもわからなかった。

 しかし。


「どうやら僕は、昔君に懲らしめられて使役されているように思われているみたいだね。
 まるで式神か何かだよ」
「式神かぁ~」


 まるで式神が身近なものかのように、彼女はうんうんと頷く。

 確かにここに来た時からずっと、博麗の巫女の服や道具の用意は彼の仕事だった。
 見ようによっては専属のようにも見えた……かもしれない。

 さらに問題なのは、その認識がすっかり広まっていることだ。
 その子供は友人から聞いたと言ってた。
 その友人は親から聞いたと聞いていた。
 その親は隣の奥さんから聞いたと言っていた。

 ……面倒なので、いちいち否定はしなかったが。
 明日になればさらに広まっていることだろう。

 いやひょっとしたら、もう広まることはないのかもしれない。
 新しく知る者がいなければ、広まるとは言わないのだから。


「僕は君に調伏された覚えも式をつけられた覚えもないんだがね」
「じゃあ今からやってみる?」


 彼女は笑いながら、符を構える。


「やめてくれ。
 親父さんに怒られてしまうよ」


 そんなことはしないとわかっているが、一応首を振った。
 彼女は間違っても人里で暴れたりはしない。
 ……暴れる必要がないから。


「まあ、このままだと別の意味で怒られてしまうだろうがね」


 時計を見る。
 ……博麗の巫女とすっかり話し込んでしまった。

 客がいない時を見計らって来るのはさすがとしか言いようがないが、
それでも在庫の管理や掃除など、やらなければならないことはたくさんある。


「そっか、仕事があるもんね」
「そう言うことだよ。
 ……帰るかい?」
「ううん、もう少しいる」


 彼女は何をするでもなく、椅子に座ったままお茶を飲んでいた。
 見つめられている気がして何となく落ち着かないが、仕事が優先と思い働くことしばし。


「確かに召使いっぽくはないかも」


 ふと、巫女がそんなことを呟いた。


「そうだろう。僕は歴とした店員だからね」
「店員妖怪……珍しいかな?」
「いつか珍しくなくなることを祈るよ」


 それにはやはり、自分の店を持つことだろうか。
 しかしその言葉に、巫女が笑う。


「いいかも、それ。人里にも妖怪の店が並んだりして」
「……賑やかになりそうだね」
「うん、そうだね。
 ……もしそんな日が来たら」


 ため息は、願望を乗せて。


「博麗と妖怪の関係も変わるかな?」


 妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する。
 幻想郷はそんなバランスで成り立っていた。

 しかし、いつか変わるのなら。


「わたしと、貴方の……」









 とん、と頭に軽いものがぶつかり、霖之助は足を止めた。
 気が付けば随分歩いていた気がする。

 頭にぶつかったものを確認し……近づく影に、視線を移した。


「霖之助さん?」


 視線の先では霊夢が首を傾げていた。
 片手に符を持っている。
 先ほど頭に当たったのはそれだろう。

 これがなければ、あと数歩で霖之助は目の前にある溝に落ちていたに違いない。
 つまり霊夢に助けられた形になる。


「どうしたのよ、ボーッとして」
「いや……すまない、助かった」


 彼女の言うとおり、考え事をしながら歩いていたせいだろう。
 霊夢に礼を言うと……霖之助は彼女に向き直った。


「なんだか懐かしい感じがしてね……この天気のせいかな」
「なに? 昔のことでも思い出してたの?」
「さぁ……どうだろうね」


 どうなのだろう。
 自分でも、よくわからない。


「それにしても、君こそどうしたんだい? こんなところで」
「私が人里にいたらそんなに変かしら」
「いや、そう言うわけではないが……」
「霖之助さんがこんなところにいるほうがよっぽど珍しいわよ」


 そこまで言って……霊夢はため息を吐いた。
 そのため息でわかる。
 彼女は別に、自ら望んでここにいたのではないと。


「いきなりあいつに呼び出されてね……。
 作業を手伝ってきたのよ。あー疲れた」
「あいつ?」
「そう。まあそれはいいんだけど」


 霊夢は首を振ると、懐からなにやら取り出した。
 見たことのある装丁の、見たことのある茶缶。


「はい、これ」
「これは……」
「ついでにちょっと用があってね、魔理沙の家に行ってきたんだけど。
 霖之助さんに渡しておいてって」


 霖之助はしげしげとそれを見つめた。
 懐かしい香りのする、あの茶葉だ。


「ありがとう、霊夢」
「たいしたことはしてないわ。
 それに、報酬ももらってるし」


 気怠げに返す彼女に、霖之助は苦笑を浮かべた。


「霧雨の親父さんに礼を言わないとな」
「霧雨の? そう……そうね。
 いいわよ。私が言っておいたから」
「そうかい? しかし……」
「相手もお礼はいらないって言ってたし、いいんじゃない?」
「ふむ……」


 霊夢の言葉に、霖之助はしばし考える。


「まあ、そう言ってるなら言うとおりにするとしようか。
 今度まとめて挨拶にでも行くとするよ」
「そう」


 それにしても、いい天気だ。
 あと少しで梅雨、そして夏だ。
 茶摘みも今が真っ盛りだろう。


「……なによ」
「お茶の匂いがする、と思ってね」
「鼻がいいのね。
 まあ、さっきまで茶摘みを手伝ってたし……」


 霊夢はなにやら言いかけ……やめる。


「……私、疲れたから帰って寝るわ」
「そうか、邪魔しちゃ悪いな」
「霖之助さんも一緒に寝る?」
「はは、この陽気だ。それもいいかもね……。
 風邪引かないようにするんだよ」
「わかってるわよ」


 ひらひらと手を振り、霊夢は霖之助に背を向けた。









「お礼を、か」


 空というものはいいものだ。

 何物にも縛られない。
 何者にも邪魔はされない。


「……なによ。嬉しそうな顔して」


 嘘は言ってない。

 お礼がいらないと言われたのも本当だ。
 霧雨の家に寄ったのも本当だ。

 ただし、霧雨の家にはただ届け物をしただけ。
 霖之助に渡したものは、最初から霊夢に手渡されたもの。

 もし霖之助が霧雨の家にお礼を言っても、あそこの主人は首を傾げるだろう。


「私は……」


 ひとり、空の上。
 誰にも聞かれることのない言葉が、気持ちが。
 雨のように、溢れて落ちる。


「私は……忘れられないわよね」


 博麗の巫女への復讐を防ぐため。
 妖怪は前の博麗の巫女のことを忘れてしまう。

 だが、今の人間と妖怪の関係ならば。
 霊夢がもし博麗をやめても復讐されるということはないだろう。

 ひょっとしたら、今までも。
 かつての巫女たちにも、妖怪は最初から、復讐するつもりなど無かったのかもしれない。


 そんなこと、天狗にでも聞けばすぐにわかるだろう。
 だが、霊夢はそれが出来ないでいた。


「昔のことなんて……忘れたっていいじゃない。でも……」


 もし、記憶を消す必要がなかったりしたら。
 霊夢が巫女をやめた時、紫があの力を使わなかったら。

 かつての巫女たちの記憶が復活してしまうかもしれない。
 霖之助が思い出してしまうかもしれない。

 気まぐれなスキマ妖怪のことだ。
 必要がないと思えば、無駄な力を使おうとはしないだろう。


「忘れられたくない……思い出して欲しくない……」


 人間と妖怪のハーフである霖之助は、完全に巫女のことを忘れてたわけではないのだろう。
 おぼろげながら覚えている様子は見て取れる。
 そして……彼が抱く感情も。

 忘却は完全ではないのだ。
 突然思い出してしまうことも十分考えられる。

 もしそうなったら。


「……私の居場所……取らないでよ……」


 空というものはいいものだ。
 ただ広く、ただ青く。


「霖之助さん……」


 誰にも邪魔されず、泣けるのだから。

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空というものはいろんなものに連想できますよね
先代巫女の場合では悲しみの寄りどころであったり
はたまた、どこまでも続く可能性を示唆して見せたり
子どもたちには夢を与えてくれたり

幻想郷に似ているのかな?
最後の文でそんなことを思いました
by読む程度の能力
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道草

Author:道草
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