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バレンタインSS07

皆様、いいバレンタインを。
……もう一週間くらい前のような気がするけどw


霖之助 アリス








「おはよう、霖之助さん」
「……ああ、アリスか。
 いい朝……だね?」


 霖之助は店内にやってきたアリスを、眩しそうに見つめる。

 ……いや、実際眩しいのだろう。
 窓からは冬特有の澄んだ朝日が差し込んでいた。


「なんで疑問形なのよ……。
 大方また徹夜で本を読んでたんでしょうけど」
「よくわかってるね。
 お察しの通りだよ……」


 アリスの言葉に、肩を竦めて頷く霖之助。
 一晩中そこにいたのだろう、カウンターの席に置かれたお茶はすっかり出涸らしになってしまっていた。

 髪もまとまっておらず、顔にも疲れが浮かんでいる。
 だらしない姿ではあるが、こう言う姿を見せるのも彼女くらいなものだ。
 それが何となく、アリスには嬉しかった。

 ……嬉しいついでに、つい世話を焼いてしまうのだが。


「で、朝ご飯は食べたのかしら。」
「……別に食べなくても大丈夫だからね。
 今日はいいかなと思ってるんだけど」


 霖之助の言葉に、しかしアリスは首を振る。


「呆れた。
 食事と睡眠は毎日の基本でしょ?」
「君は両方取らなくても平気だろうに……」
「気分的な問題よ」


 アリスはきっぱりと言い切る。
 自分のルールというやつだろう。

 確かにそれ自体は全く悪いことではないのだが。


「……しかし今から用意するのも面倒だな……」
「そう思って、持ってきたわよ。
 そうでもしないと食べないでしょう?」
「さすが用意がいいね」


 喜ぶ霖之助に、アリスはため息を吐いた、

 カウンターの上にサンドイッチの入ったバスケットを置き、じっと見つめる。


「……その様子だと、今日が何の日か忘れてるみたいね」
「今日? ……何かの」
「はぁ……」


 再びため息。
 指を立てて胸を張り、まるで教師が生徒に教えるようなポーズを作る。


「今日はバレンタインでしょう?
 この前その話をしたじゃない」
「ああ……」


 ようやく思い出したようだ。
 徹夜明けの頭がまだ働いていないのだろう。


「とすると、サンドイッチの具はチョコレートクリームかい?」
「残念。野菜と卵よ。
 チョコレートクリームが希望だったかしら」
「……いや、会話の流れからてっきりね……」


 霖之助は頭をかきながら、バスケットの中にあるサンドイッチに手を伸ばす。

 色とりどりで可愛らしいサイズのそれは、ひとり分の量が入っていた。
 アリスはもう食べてきたのだろう。


「本気で忘れてたのね」
「あまり実感がなかったからね。
 僕が渡すわけでもないし……」
「魔理沙や霊夢あたり、渡しに来るんじゃないかしら」
「どうだろうね。
 それよりツケや借りたものを返しに来てほしいところだけど」
「……そうね」


 霖之助の言葉に、彼女は曖昧に頷いた。

 アリスは知っていたから。
 ふたりが今日のために、霖之助へのチョコレートを用意していることを。

 だから。


「ねえ、霖之助さん」
「ん?」


 ようやく目が醒めてきたのだろう。
 サンドイッチを口に運ぶ霖之助の顔は、いつものものになっていた。


「私からのバレンタイン、受け取ってくれるかしら」
「くれるのかい?」
「ええ、もちろん」


 嬉しそうに笑う彼に、アリスは安堵したような表情を浮かべる。


「ただ、これには魔法がかかっていてね」


 アリスは持ってきた箱をカウンターの上に置いた。
 包みをほどくと、中から現れたのは霖之助を4頭身ほどにディフォルメしたような人形。

 ……特徴をよく掴んでおり、とても似ている。


「はいこれ」
「……これは……人形かい?」


 その人形が大事そうに抱えている箱を見て、霖之助はようやく合点がいったようだ。


「……これがチョコレートか。
 なんだかチョコレートホルダーのほうが立派に見えるね」


 霖之助はいきなり渡された自分そっくりの人形を、どうしたものか持て余しているようだった。

 ……まあ、無理もないだろう。
 アリスは可笑しそうにひとつ笑うと、言葉を続ける。


「さっきも言ったでしょう。
 それには魔法がかかってるのよ」
「魔法?」


 人形遣いの魔法に興味を持ったようで、霖之助の目が輝き出す。
 まったく……わかりやすいことだ。



「今日はそれを目の届く場所……そうね、勘定台の上にでも置いておいて」
「ふむ?」
「そうするとチョコレートが美味しくなるのよ。
 今は普通のチョコレートだけど、今日が終わる頃には、あなた好みの味にね。
 そういう魔法なの」
「ふぅむ、初めて聞く魔法だね。」
「そうでしょうね。
 私のオリジナルだもの」


 霖之助はしばし何かを考え、アリスの顔を見ていたが……。
 やがて最後のサンドイッチを口に放り込むと、頷きとともに手を合わせた。


「わかったよ。置いておこう。
 ……ごちそうさま、美味しかった」
「はい、お粗末様でした」


 アリスも合わせて頭を下げると、バスケットを片付けて立ち上がる。


「もう帰るのかい?」
「ええ。目的は果たせたもの」
「そうか。
 チョコレート、ありがとう」


 つまりは、チョコレートを渡すために来たのだろう。
 霖之助に手を振り、アリスは香霖堂を後にした。


「またね。
 ……いいバレンタインを」









「……そう、目的は果たしたもの」


 ……これでいい。
 あの人形がカウンターにある限り、誰もが一目でわかるはずだ。

 霖之助はチョコレートを既に受け取っていると。
 誰が霖之助にチョコレートを渡したのかを。


「霖之助さんは……何個チョコをもらうのかしら。
 でも……」


 後から来た少女達は、誰かの影を意識せざるを得ない。
 これがアリスなりの、他の少女への牽制だった。

 ……チョコレートが美味しくなる魔法など、あの人形にはかかっていないのだから。


「独占欲……かしらね」


 自分の家へと歩きながら、アリスは呟く。


「私のものでもないのに……」


 でも。
 きっと、いつか。

 アリスはひとり、決意をこめる。



 いつかは彼に、恋人としてのチョコを渡すために。

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No title

ちくしょう
なんで、りんのすけばかりいい思いするんだ
うらやましい

このりんのすけはアリス以外のフラグは立たなくなったということですな?
アリスGJ!!
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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