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バレンタインSS11

2柱と書くと読みにくい気がしたので普通にふたりで。
秋姉妹は難しい…w


霖之助 秋姉妹








「妹がお隣になりました、お世話様です」
「次は抜いてみせるからね」


 香霖堂にやってきた秋姉妹……静葉と穣子は、そう言って微笑んだ。
 妖怪の山に登るとよく会うので顔見知りなのだが、彼女たちが香霖堂まで来ることは滅多にない。

 珍しいこともあるものだ、と霖之助はふたり分のお茶を用意した。
 そうでなくても相手は神だ。
 礼儀を尽くすに越したことはないだろう。

 ……裏庭にある家庭菜園の未来にも影響するのだし。


「ああ、そういえばなんだかそういう話を聞いた気がするね。
 ……紅茶でよかったかな?」
「ええ、ありがとう」
「紅いお茶は私の好みよ」


 人気だか知名度だかの順位については天狗の新聞で見たことがある。
 どのみち関係ない話なので放っておいたが……。
 何でも霖之助は穣子の隣だったらしい。


「しかしこんな真冬に、豊穣と紅葉の神が揃って訪れるとはね。
 まさかそのためだけに来たのかい?」
「そんなわけないでしょ」
「そうよね。さすがに私たちもそこまで奇特じゃないわよ。
 暇なことにかわりはないけど」


 言って、ふたりは笑う。
 冬が来ると暗くなると聞いたことがあるのだが、こうして見ているとその様子はない。


「やはり冬は暇かい?」
「そうね。一番収穫から遠い時期だもの」
「一番紅葉からも遠いしね」
「ふむ……確かに」


 冬に行う収穫祈願など、正月くらいのものかも知れない。
 全くないわけではないのだろうが……。


「それで、今日はバレンタインでしょ?
 チョコレートを渡しに来たのよ」
「せっかくのお祭りだもの。楽しまないと損じゃない」


 ふたりはそう言うと、懐から小さな箱を取り出した。
 穣子は黄色、静葉は赤の箱。


「はい、これは私から」
「こっちは私ね。ちゃんと味わってよ、香霖堂さん」
「ああ、ありがとう」


 霖之助はふたりから箱を受け取る。
 能力を使うまでもなく……バレンタインのチョコレートだ。


「まさか君たちから貰えるとはね」
「なによ、期待してなかったみたいじゃない」
「そうじゃないよ」


 首を振ると、霖之助はお茶を一口。
 ふたりのチョコレートを手に、言葉を続けた。


「チョコレートの原料になるカカオは熱帯地方……つまり、ほぼ常夏の地方で作られる。
 つまり四季のない地域の植物、と言うわけだ」
「えー、秋がないなんて面白くないわ」
「そうね……」
「そうは言っても、冬も春もないんだがね」
「別にそのふたつはいいわ」
「常夏も常春もあるんだから、常秋があってもいいと思うのよね」
「常秋か……」


 常春や常夏に比べると聞いたことがない。
 少なくとも、日本には存在しないだろう。


「……とにかく、四季のない菓子とも言えるチョコレートを秋の神から貰えたのが不思議な気分だった、というわけさ」
「ん~、別にそんなこと考えてたわけじゃないけど」
「そうよね。バレンタインはチョコをあげるものだって聞いたからだし」


 彼女たちは顔を見合わせ、軽く笑う。


「それにあげたかったからあげたのよ」
「そうね、姉さん」
「なるほど。
 それはそれでありがたい話だね」


 霖之助はそう言って笑うと、ふたりの空になったティーカップに紅茶を注いだ。


「しかしどうやってチョコレートを手に入れたんだい?」
「天狗が売ってたのよ。安く、大量に」


 静葉の話によると、バレンタインを広めるために天狗自ら売り出していたらしい。
 なんという情熱だろうか。


「私たちはそれを溶かして固めて。
 ……結構失敗しちゃったけどね」
「ふむ、ということはこのチョコレートは君たちの手作りというわけか……」
「びっくりした?」
「ふふ。じゃあ成功ね、姉さん」


 嬉しそうに微笑む秋姉妹に、霖之助は肩を竦めた。
 驚かせることが最近流行でもしているのだろうか。


「今度は妖怪の真似事でも始めたのかい?」
「ううん、そんなんじゃないわ」
「そうよ、そんなもんじゃないわよ」


 彼女たちは首を振る……が、それ以上は答えない。
 考えても仕方がないので、霖之助は別の話題をすることにした。
 せっかくの機会だ。
 聞いてみたいことはいくらでもある。





「……あ、もうこんな時間」


 静葉は空を見上げ、声を上げた。

 冬の昼は短い。
 すぐに暗くなるだろう。


「楽しい時間は早く過ぎるものだね」
「自分で言うのかしら」


 苦笑する穣子に、霖之助は小袋を手渡した。
 続けて静葉にも贈る。


「なにこれ?」
「貰ってばかりだと悪いからね。
 押し花だよ。秋の花のね。
 まあ、正式なお帰りはまた別の機会にだが」
「ふぅん……気が効いてるじゃない」


 言っている間に、ふたりの帰り支度も終わったらしい。


「じゃあね、また会いましょう」
「またね、香霖堂さん」
「ああ」


 秋姉妹を見送り……霖之助はカウンターの席へと戻った。
 貰ったチョコレートを見る。

 名称:バレンタインのチョコレート。
 目的は……。


「私を忘れないで、か」


 紅葉型のチョコとライスチョコ。
 実にあのふたりらしい、と思う。

 霖之助は苦笑いを浮かべ、チョコに齧り付いた。
 秋の残り香は、とても甘い香りだった。

コメントの投稿

非公開コメント

No title

秋姉妹、なんだかんだ言って着実に認識されてっていますよね・・・

No title

「次は抜いてみせるからね」……俺疲れてるのかな……
やっぱ趣味に生きる霖之助に秋姉妹は相性良さそうですね。胡散臭くなくて霖之助の評価も高そうですしw

皆は「またレティさんか…」とか「え?春は?黒幕?」とか思ってるかも知れませんが
苦手とされつつも香霖堂に吹雪と共にチョコ渡しに来るレティさんとか良いと思うよ!

ここまでのバレンタインSSのキャラチョイスから察するに道草さんはいつの間にかロリコンになっているようです

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