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バレンタインSS15

15番目だけに15日ネタを。
ナズーリンはいいライバルだと思います。


霖之助 ナズーリン









「やあ、霖之助君。
 今日も暇そうだね」
「そう思うならもう少し通ってくれると有り難いんだがね。
 ……いらっしゃい、ナズーリン」


 店に入ってきたナズーリンの顔を見て……霖之助は読んでいた本を仕舞った。
 賢将を相手にするには、片手間では出し抜かれてしまう可能性があるからだ。

 ……もっとも、客を相手にするならそれが当然だとナズーリンは思う。


「おや、ひょっとして私が来るのを心待ちにしてくれてたのかい?」
「ああ、まあね。
 君と話していると楽しいし……」
「……嬉しいことを言ってくれるじゃないか」


 冗談のつもりだったのだが。
 ナズーリンは思わず面食らってしまった。

 ……しかし、悪い気分ではない。


「それにいろいろと持ち込んだり買っていってくれるからね。
 店主としては、上客の来店をいつも心待ちにしているわけだよ」
「……ああ、なるほどね」


 ため息。
 まあ、そんなことだろうとは思った。

 ……別に悔しくなんてない。


「それはともかく、こんな日だというのに誰も女の子はいないのかい?」
「ああ、いないよ」


 からかうような口調のナズーリンに、霖之助は首を傾げた。


「他に女の子がいると問題でもあるのかな」
「問題は別にないよ。
 ただ、バレンタインなのに暇そうだな、と思っただけで」


 ナズーリンの言葉に、頷く。
 壁に掛けられているカレンダーを確認。


「バレンタイン……ああ」


 霖之助は机の引き出しを開け、机の上に置いた。
 中に入っているのは、色とりどりの箱。
 綺麗にラッピングされたものもあれば、リボンが付いているものや、値札が付いたままのものまである。


「バレンタインと言えばチョコレートだが、
 さすがにまだ全部は食べきれなくてね」
「……ちょっと待て。
 なんでもうそんなに貰ってるんだ?」
「何でって……昨日がバレンタインだったからだが。
 どうやら天狗たちが悪のりしたみたいでね、バレンタインの風習とチョコレートを広め回ったらしい」


 そう言って、霖之助は肩を竦めた。
 しかしナズーリンは彼の言葉に、顔を青ざめさせる。


「昨日……。
 昨日……だったのか……」


 今度は顔を赤らめ、彼女は尻尾の先のカゴを隠す。
 その様子を不思議に思いながら……霖之助は疑問を発した。


「ところで今日は、何をしに来たんだい?」
「あっ、いや、その…何でもないんだ」
「本当に?」
「あ、ああ。すまないな、突然……」
「……もしかして、ただ顔を見に来てくれたとか」
「そんな……。
 いや、もうそれでいい……」


 冗談交じりの霖之助の言葉にも反応せず、肩を落とすナズーリン。
 そのまま出口に向かおうとしたところで……。

 尻尾のカゴに乗っていた小ネズミが、突然暴れ出した。


「あっ、こら……」


 驚くナズーリン。
 その拍子に、カゴの中に入っていた箱が落ちる。

 店の床に落ちたそれを見て……霖之助は口を開いた。


「バレンタインの……チョコレート?」
「……迷惑な能力だな、それは」


 見ただけで道具の名前がわかる程度の能力。
 名を発すれば、用途も知ることができる。

 霖之助が外の世界の道具を扱う店をやっている理由でもある。


「……もしかして、ナズーリン。
 僕がバレンタインは15日と教えたから、今日来たのかい?」
「悪いか」


 どうやら開き直ることにしたらしい。
 霖之助はしばし絶句し……苦笑を浮かべた。


「……いや、すまない。
 実は数日前、火焔猫に言われてね。
 鼠はせっかちだから日にちを1日遅く言ったほうがいい、と。
 ナズーリンが普通に納得してたから、本当の日にちは知っているものと思ってたんだよ」
「猫に……?」


 彼の言葉を、ゆっくりと飲み込む。
 猫。1日。遅く、早く……。


「やられたっ……!」


 ナズーリンは思わず膝をついた。

 十二支のエピソードを持ち出すまでもない。
 しかしこんなところで仕返ししなくてもいいではないか……。


「……ナズーリン?」


 呼び声に応えるかのように、ナズーリンはキッと霖之助を睨み付ける。


「バカー!! 君は馬鹿やろうだっ! そんな猫の口車に乗せられてっ!
 わ、私を騙そうなどと百年早いぞ!」
「悪かった、悪かった…てっ!」


 霖之助の頭に、武骨なデザインの赤い箱が当たった。
 ……先ほど床に落ちた、バレンタインのチョコレートだ。


「……ありがたく受け取れ、詐欺師め」
「……ありがたくいただくよ、ナズーリン」


 結果的に騙してしまったのは霖之助なので、甘んじてその称号を受けることにした。
 ナズーリンは渡したことで安心したのか、もう怒っている様子はない。

 ……顔が赤いのは、照れているせいだろうか。


「バレンタインは過ぎてしまったが、かえってゆっくり過ごせるかもしれないね」
「ふん、他にチョコレートなんてたくさん貰っているんだろう。
 そんなもの、適当に処分してしまえ」
「いや、せっかくだし今食べることにするよ」
「なっ……!」


 驚くナズーリンをよそに、霖之助は早速箱を開ける。
 中から出てきたものを見て……感嘆の声を上げた。


「可愛いチョコレートじゃないか、これは小ネズミを模してるのかい?」
「いいから黙って食え」
「ちょっと待った、洋酒も用意しよう」
「早く食いたまえ」
「ほら、これはクラッカーといって派手な音を鳴らすことが出来るんだ。
 音か、交響曲も流しておこう。
 ……そうすると、全体に洋風だし、スーツでも着た方が、あ、君にピッタリのドレスが」
「私のチョコはそんなにありがたいもんじゃない!!」


 顔を真っ赤にしたナズーリンの叫びが、店内に響き渡る。

 その日は世間より少し遅めのバレンタインが、香霖堂にて発掘されたという。

コメントの投稿

非公開コメント

No title

あの話は有名ですよね
猫がねずみを嫌う理由としての起因だとか(笑)
にしても、ナズー霖いいね、甘酸っぱいね、2828だね
ごっそさん

携帯で開いたら背景かわってて吹いた

普段知的な人がドジるギャップ良いね
しかし霖之介はホワイトデーになったら店の商品の心配をすべき

No title

とりあえず、お燐gj
うっかり(とはちょっと違う気がしますが)したナズーリンもいいものです。
二人は漫才もうまく出来そう、そんなイメージです。

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