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子悪魔シリーズ07

霖之助とパチュリーの関係が変わることはないと思います。
極限値的な意味で。


霖之助 パチュリー 小悪魔







「もっとイベントを増やすべきだと思うんですよ!」


 彼女はいつだって唐突だ。

 紅魔館の地下図書館でいつも通り本を読みながら、霖之助はパチュリーと視線を合わせた。
 そのまましばらく見つめ合い……どちらからともなくため息。

 無言のまま、手元の本へと視線を戻す。


「あー、無視しないで下さいよー」


 小悪魔は駄々を捏ねるように、机を叩いた。
 無意味に羽根を羽ばたかせ、くるくると回る。
 パタパタと足を鳴らし……。


「うるさい」
「……すみません」


 パチュリーに怒られた。
 彼女は本から顔を上げぬまま、ただ淡々と言葉を放つ。


「小悪魔。ここの場所の名前。言ってみて」
「えーと、お父様とお母様の愛の巣です」
「…………」
「……図書館です……」
「図書館は?」
「静かに……」
「よろしい」


 肩を落とし、小悪魔は椅子に腰掛けた。
 ……霖之助の隣に。


「うぅ……」


 それからじっと、彼女はもの言いたげな視線を向ける。
 ただ無言で、ひたすらに。


「はふぅ……」
「…………」


 これ見よがしなため息に、霖之助は頭を抱えた。

 仕方なく、小悪魔に視線を向ける。


「イベント……ね。どうしてそう思ったんだい?」
「そうなんですよ、イベントなんです」


 根負けしたような彼の声に、うって変わって小悪魔は目を輝かせた。

 ……たいていいつもこのパターンだ。
 いい加減霖之助も毅然とした態度で臨むべきかもしれない。


 向こう側では、パチュリーのため息が聞こえてきた。
 甘いんだから、と言う呟きも耳に届くが、とんだ誤解である。


「女の子はいつだって刺激を求めてるんですよ!」
「刺激ねぇ」


 ふむ、と考える。
 確かにそう言った話はよく目にする。
 主に外の世界での雑誌などでだが。

 しかしそれが幻想郷の少女にも当てはまるかというと……。


「山があって谷があって、くっついて離れて、男女は激しく燃え上がるんですよ!
 雨降って地固まるってやつです」


 怪訝な表情を浮かべている霖之助に気付かず、小悪魔は早口で捲し立てた。

 ……確かにそういう面もあるだろう。
 だがそれがすべてではない。

 霖之助はそう反論しようとして……。


「まあくっついたままでも燃え上がってますけどね、お父様とお母様は。
 ついこの前もフルネッチョを……」


 ぐふふ、と含み笑いを浮かべる小悪魔に、開きかけた口を閉じる。


「なんですか? まさか否定するとでも?」
「いや、まあ……」


 言葉を選んでいる間に……背後から飛んできた魔法弾が、彼女の頭に命中した。


「……頭が痛いです」
「そう。私も頭が痛いわ」


 同じ言葉なのに、随分と違うものだ。
 霖之助は苦笑を浮かべると、小悪魔に向き直る。


「そういつも何か起こるわけないだろうに」
「起こるんじゃなくてたまには起こしてみてもいいと思うんですよ」
「厄介事なら君がいつも起こしてると思うが」
「何なら面倒事も起こしてあげますけど」


 言って、小悪魔は恐る恐る背後を振り返った。
 ……パチュリーが攻撃してくる様子はない。

 小悪魔はくるりと反転し、胸を張る。


「だってお父様、お母様と久し振りに会うようになったんですよね。最近になってようやく」
「まあ……そうなるね。
 前に会ってたのは……君が生まれる前の話だ」


 一時期霖之助はパチュリーに師事していたことがあった。
 その時のいろいろで、いろいろあったのだが……。


「勝手に自分の役目は終わったとか勘違いして距離を置いたんですよね」
「……うん?
 ああ……一言で言えば……」


 それがすべてではない、
 すべてではないが……間違っているとも言えない。

 答えに窮した霖之助に、小悪魔はニヤニヤとした視線を向ける。


「お母様がいつも愚痴ってましたよ。
 私が召喚された時なんてそりゃもう毎日のように……」
「え……」


 思わずパチュリーを振り返った。


「どうしたの?」


 パチュリーの目からは何の感情も読み取れない。
 いつも通りの深い色。


「言霊に惑わされ過ぎよ。教えたでしょう?
 そんなだから、からかわれるのよ」
「ああ……そうか……」


 彼女の言葉に、霖之助は大きく息を吐き出した。

 しかし。


「嘘だ、なんて言ってないけどね」
「…………」


 なんだか胃が痛くなってきた。
 そんな霖之助の様子を意にも介さず、小悪魔はにこやかな笑みを浮かべる。


「というわけで刺激がある生活を目指すべきだと思うんですよね」
「僕は今まさに刺激を受けてるんだが……悪い意味で」


 いつの間にか額に浮かんでいた嫌な汗を拭い、霖之助は机に肘をついた。
 気怠げな表情で、小悪魔に聞き返す。


「だいたい、どんな刺激がいいんだい?」
「そうですね……例えば」


 う~ん、と首を捻ると、ひとつ指を立てた。


「手料理を用意するとか。
 ごはんにする? みたいな」
「僕は食べなくても平気な体質だからね」
「捨食の法があるわ」
「……じゃあ……」


 もう一本、小悪魔は指を立てる。


「遅刻しそうだと走っていったところに、曲がり角でぶつかるとか。もちろんパンをくわえて」
「何に遅刻しそうなのよ」
「それに紅魔館内で走るとメイドに怒られるからね。
 だいたい飛んで移動していたら高度が違うし、可能性はさらに低くなると思うが」
「泥棒は」
「……うぅ……」


 崩れ落ちそうになりながら、それでも彼女は三つめの指を立てた。


「風呂場でドッキリとか……」
「ドッキリと言ってもねぇ」
「どうせなら一緒に入った方が効率的でしょう?」
「……そうでした……」


 紅魔館で風呂に入るタイミングなど決まっているわけで。
 その状態でなにを遠慮しろと言うのか。


「もう、やる気はあるんですか? おふたりとも!」


 逆ギレしたかのように、小悪魔は声を張り上げる。


「いえ、ヤル気なら満々なんでしょうけど」


 上手いこと言ったと言わんばかりのニヤケ顔。
 ……霖之助はあえて無視することを選んだ。


「ああん、放置プレイはもっと時と場合をですね……。
 そんなことだから動かない古道具屋とか動かない図書館とか言われるんですよ!」
「それが何?」
「……言われたところで何か不都合があるのかい?」
「そうですけど……そうですけどっ!」


 首を傾げるふたりに、小悪魔は今度こそがっくりと膝をついた。


「そもそも、そんなに重要なのかい? イベントとか刺激とか」
「何言ってるんですか! 当たり前ですよ!」


 噛みつかんばかりに、小悪魔は捲し立てる。


「イベントが多いってことはそれだけ一緒にいて盛り上がるってことですよ。
 お母様にはお父様をがっちり捕まえてて貰いたいんです」


 どうやら一応心配していてくれたらしい。
 ……方法はかなり間違っているようだが。


「そうじゃないと、もっと刺激的な出会いがあったらお父様がふらふら~っとどっか行っちゃうかもしれませんし」
「む」


 パチュリーがなにやら呟いた気がしたが……気のせいだろう。


「ハハ、まさか……」


 霖之助は肩を竦め、首を振る。


「何年の付き合いだと思ってるんだい?
 そう簡単に……」
「お母様はそう思ってないみたいですけど」
「ん?」


 座っていた霖之助の首に、腕が回された。
 やわらかいものがすぐ近くにある感触。

 何度も触れた肌。
 いつの間にかパチュリーが、そこにいた。


「――――っ」
「!?」


 耳元での囁きに、思わず目を丸くする。

 ……そのまま彼女は、先ほどまで座っていた席に戻っていく。
 呆然とした霖之助を、残したままで。


「あ、何か言われたんですか?
 お叱りですか? 愛の鞭ですか?」
「いや……」
「えっちなことですか?
 パチュリー様って意外と独占欲が強――」


 再び黙らせられた小悪魔は、ゆっくりと床に崩れ落ちていく。


「パチュリー」
「……なに?」


 顔を上げず、彼女は答える。

 ……なるほど。
 これが彼女の、照れているときの表情らしい。


「僕もだよ」
「……そう」


 やはり小悪魔の言葉に惑わされてはいけない、と霖之助は思った。

 彼女の言うようなイベントも刺激も。


 ――愛してる。


 その一言なので、十分なのだと。

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非公開コメント

No title

やばい、パチュ霖がやばい
もうパチュ霖がない日常は生きれない

No title

糖度が・・・www
貴方のパチュ霖で私は生きてますw

No title

何と言う…何と言う甘さ…!小悪魔シリーズを(ネチョ込みで)読み返す毎に口から糖分が溢れてきtへあぁっ!?

No title

もう駄目。我慢できないのでコメントします。
貴方の書かれるパチュ霖が楽しみで仕方ありません。
小悪魔シリーズの糖分が無いと生きていけない!

以前より拝見させて頂いてました。此方の霖之助SS最高です。
魔理霖至上派だったのに、今やパチェ霖と咲霖との三国時代です。

No title

道草さんのパチュ霖のせいで生きてるのが辛いんですけど・・・
とりあえずマジGJです!!!

パチュ霖は良い。実に、良い。それからちょっとご報告。小悪魔シリーズの5と6、それから「二週目始めました」の三つが携帯からだとなぜか見れませんね。私だけかもしれませんが…

No title

小悪魔はなんでもいけるくちなんですね。

No title

あばばばば、このパチュ霖、甘すぎてやばい。

それにしても小悪魔いいキャラしてますね~w
いいぞもっとやれ!

ちょっと砂糖吐いてきますね^^おろろろろろ・・・・・
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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