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一歩、外へ 03

姫海棠はたて、ダブルスポイラーより。
『シュマさんの漫画』の続きかもしれない。

はた霖がもっと増えますように。


霖之助 はたて









「お兄さん、おはよー!」


 元気な声が店内に響き渡った。
 ……と言っても、もう太陽はとっくに高く上がっていたが。

 最近よく店に来るようになったはたての声だ。

 彼女は長いこと引きこもりだったという割に意外と行動的である。
 もっとも、面倒くさがりなのには違いないようだが。


「大きな声を出さないでくれないか……
 頭に響く」


 霖之助はいつもの定位置……カウンターの席に座ったまま、疲れた声を上げた。
 その顔はいつもと違い、疲労の色が濃い。

 そんな彼を見て、はたては驚いた表情を浮かべる。


「ありゃま、もしかしなくても二日酔い?
 大変だねー」
「誰のせいだと思ってるんだ……」


 大きくため息を吐く霖之助。

 はたてに付き合って宴会に顔を出す羽目になったのがつい昨日のこと。
 何の因果か鬼、神、大妖怪勢揃いのその場所で、霖之助は酒の集中砲火を浴びることになった。
 いや、この場合放水だろうか。

 文字通り、浴びるように飲まされた気がする。
 ……一緒にいたはたては、今現在平気そうな顔をしているが。


「ごめんごめん。
 だからこうやって様子を見に来たわけじゃない、許してよー」
「様子を見に来た、ね。
 ここは道具屋なんだが……」


 霖之助の呟きを無視して、はたては歩を進めた。
 そして霖之助の対面、カウンターの向かいに腰を下ろす。


「いやーでも鬼って怖いね。
 お兄さんの言った意味がよくわかったよ。
 まさかあんなに呑めるなんて……」
「……わかってくれたならいいんだけどね。
 だた僕が期待していたのとはちょっと違うな」


 ため息を吐く霖之助。
 確かに、鬼の怖さを教えるとかいう話になっていたのだが。


「そうなの?」
「ああ。そもそも鬼の怖さとは昔話や伝承にあるように……」


 霖之助は言葉を続けようとして……首を振った。
 頭痛のせいで説明するだけの体力がない。


「……まあ、そのうち自分で確かめてくれ」


 解説を諦め、深く息を吐く。
 普段の霖之助を知っている友人が見たらさぞ驚くことだろう。


「お兄さん、辛そうだね」
「君は平気なんだな……。
 確か僕よりもっと呑まされていたように見えたが」
「天狗だもの」


 えへん、と胸を張るはたて。
 挨拶代わりに樽で酒を呑むと称されるほどの種族だ。
 酒の強さは比べるべくもない。

 霖之助は肩を竦め、商品棚の一角を指さした。


「すまないが、そこの薬箱を取ってくれないか」
「ん、これ?」


 はたては箱に手を伸ばし……届かなかったので立ち上がる。


「はい、どーぞー。……って置き薬? なんで商品棚にあるの?」
「ありがとう。決まってるじゃないか、売り物だからだよ」


 置き薬は消費した分だけ対価を払うシステムだが、こんな場所に店を構えているとたまに薬を欲する客というのも現れるのだ。
 薬を分けてやるのは問題ないのだが、その薬の代金を薬屋に払うのは霖之助であり、つまり代金はその場で貰わなければならない。

 ならばいっそ、薬を売っても問題ないではないか。
 ないはずだ。
 きっと。


「……ふぅ」


 二日酔いの薬を、お茶で流し込む。

 はたてに付き添うことになってしまい、昨日は早々と店じまいをしたのだ。
 もし昨日客が来ていたら、改めて今日来るはずだ。
 ならば店を開けておくべきだろう。

 ……と思っていたのだが。
 考えてみれば、上客含めたいていの人妖が神社の宴会に参加していたわけで。
 あの時に香霖堂に買い物に向かう客の可能性などほとんど無かった。

 事実、誰も来ないままこの時間を迎えてしまった。
 ……まだだいぶ酒が残っているのかもしれない。


「あらー、ほんとに辛そう」
「いや……ああ」


 どうやら、気落ちしたところをはたては勘違いしたらしい。
 説明するのも情けないので、曖昧に頷いておくことにする。


「そんなに辛いなら寝てればいいのに」
「そう言うわけにもいかないよ。
 僕は店主だからね。
 そして、今は営業時間だ」
「へー、営業時間って決まってたんだ」
「……ある程度は」


 ついっと霖之助は視線を逸らした。

 いじっぱり、と呟きはたては苦笑を浮かべる。


「じゃあ、営業時間ならお客の相手をしてもらおうかなー」
「む。どこにお客がいると言うんだい」
「目の前にいるじゃない。
 少しならお金は持ってきてるわよ。
 新聞のネタになりそうな道具を紹介してもらおうかと思って」
「……様子見だと言っていたはずが」
「あれ、道具屋の店主はお客の要望を無視するの?」


 挑発的な視線を投げかける彼女に、霖之助はため息を漏らす。

「……いいだろう。
 その挑戦を受けようじゃないか」
「うん、そうこなくっちゃ」
「ただし気に入ったなら買ってもらうよ。
 君はお客なんだからね」


 霖之助は痛む頭を誤魔化し、はたてに向き直った。

 我ながら困った性格だ、と。
 そう、思いながら









 目を開けると、天井が映っていた。

 気が付けば、布団の中にいる。
 いつの間にか眠っていたらしい。

 二日酔いを押して行動したせいだろうか。


「……ん?」


 初めは違和感に首を傾げた。
 その正体が体温と寝息だとわかると……ようやく事態を飲み込む。

 ここまで霖之助を運んだのは彼女なのだろう。
 布団をめくると、霖之助にしがみつくようにしてはたてが眠っていた。


「くー……」
「やれやれ」


 苦笑しながら、肩を竦める。

 薬が効いたのだろう。
 もう二日酔いはほとんどない。

 ……だから。


「……晩酌の用意でもしておこうかな」


 霖之助は彼女を起こさないように抜け出し、台所へと向かっていった。

 ふたり分の酒を、用意するために。









「ふふ」


 ひとりになり、はたては含み笑いを漏らす。

 携帯電話を取り出し、念写。
 ……そこに写っているのは、先ほどの写真だった。

 つまり、霖之助とはたてが一緒に寝ている、そんな写真。


「……便利な能力よね、念写って」


 誰ともなしに、呟く。
 はたてが写しているのは、誰かが撮った写真である。

 つまり先ほどの間に誰かがここに来て、写真を撮っていったと言うことだ。
 もちろんそんな人物などひとりしか知らないわけで。


「私とお兄さんが一緒に寝てる写真を見れば……」


 はたては勝ち誇った笑みを浮かべ……固まった。


「私とお兄さんが」


 じっと、写真を見る。
 ふたりが一緒に寝ている写真を。


「一緒に……寝て……」


 ポン、と言う音が出そうな勢いで真っ赤になるはたて。

 自分が何をしたのか。
 その意味をじっくり噛みしめながら、布団に顔を埋めるのだった。

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No title

添い寝作戦であややを出し抜いたつもりが、我に返って赤面するはたてが実に可愛い…。それはそうと、照れ顔+三角にデフォルメされた口の組み合わせって和みません?

写真を撮った時、あややがどういう表情だったか気になるなぁ。きっといろいろ想像したりしてw
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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