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嫉妬心をもう一度

突然書きたくてたまらなくなったパル霖。
『味噌汁の対価』あたりの続きかもしれないしそうでないかもしれない。


霖之助 パルスィ







「来客用のティーセット?」


 その注文を、霖之助はオウム返しに聞き返してしまった。

 本来、道具屋の店主にあるまじき事だ。
 しかし時既に遅し。


「あら、なにかしらその目は。
 私が買うのはそんなに不思議かしら?」
「いや……」


 霖之助は言葉を濁すが、言われた少女……パルスィはジト目で睨んでいる。

 地下の橋姫、嫉妬を操る妖怪。
 そんな彼女が来客用の道具を欲しがれば、無理もない反応だと霖之助は思う。


「それと、男の人が好きそうなお茶を選んでくれない?」
「男……かい?」
「ええ。
 知らないの? 地下にも男の妖怪は結構いるのよ」
「いや、それは不思議ではないが……」


 来客用のティーセット。
 そして男。

 このふたつを合わせて考えれば、導き出される答えは自然と絞られる。
 きっと彼女は相手を家に招き入れ、ティーセットでもてなし、さらには……。


「ねぇ、妬ましい?」


 パルスィの楽しそうな声に、霖之助は我に返った。
 ゆっくりとため息を吐き出す。


「パルスィ、人の嫉妬心を煽って面白がるのはやめてくれないか」
「あら、なんのことかわからないわね」


 彼女はとぼけた笑みを浮かべ、彼の頬を指でつつく。

 霖之助はしてやられたとばかりに苦い表情を浮かべ……。
 けれども何も言わなかった。

 嫉妬に駆られていた先ほどの心。
 きっと操られていたに違いない。

 ……そういうことにしておこう、と。


「でも、お客用のティーセットが欲しいのは本当よ。
 用意できるかしら」
「別に疑ってるわけじゃないよ」
「そう? そのわりには不思議そうな顔してたけど」
「……気のせいさ。
 それより……」


 言ってパルスィは不満そうな表情を浮かべる。

 これでは堂々巡りになってしまいそうで、霖之助は話を進めることにした。


「ほら、私の家って地上と地霊殿の合い中に在るじゃない?」
「ああ……確か魔理沙たちが地下に潜る途中に会ったって言ってたね」


 あれは確か、間欠泉異変のしばらく後だったはずだ。
 霖之助の言葉に彼女は頷き、言葉を続ける。


「それでね、最近よく地上に遊びに行った妖怪がうちに来るのよ。
 猫とか烏とか。
 休憩所かなんかと勘違いしてるのかしら」
「……賑やかでいいじゃないか」
「賑やかすぎるわよ」


 苦笑気味にため息を吐くパルスィ。

 その気持ちはよくわかる。
 香霖堂にも、よく客以外の常連が来るからだ。


「一応地霊殿の主から頼まれてるし、経費も出してくれるって言うから相手してるんだけど。
 ……それにあの子たちの楽しそうな話を聞くのは、いい感じに妬ましいから構わないのよね」


 妬ましい。
 その言葉には、いくつもの意味がこめられているようだった。


「ただ、うちってそんなに来客用の食器なんてないし……。
 それに、たまには別の味の紅茶も出してみようかと思って」
「なるほど、それでさっきの注文というわけか」
「ええ。男の人が好きそうな味だったら、別の好みでしょ?
 それに、いつ貴方がうちに来るかもわからないしね」


 パルスィは霖之助を見て笑う。

 からかわれているのか、誘われているのか。


「やれやれ、光栄だよ。
 ……ちょっと待っててくれ」


 判断が付かないまま、霖之助は曖昧に肩を竦め、商品棚へと向かった。


「お茶のランクはどれくらいを希望だい?」
「安いのをメインに頂戴」


 おや、と霖之助は首を傾げる。
 普段の彼女なら、もう少し高いグレードのお茶を好むはずだ。

 そんな彼の背中に、パルスィは言葉を投げかけた。


「別にね、高貴なティータイムを楽しみたいわけじゃないのよ。
 気軽な話には気軽なお茶とお菓子。
 というわけで、お茶菓子もあったら貰えるかしら。
 お茶に合いそうなやつをね」
「ふむ、なるほど」


 言われてみれば、そうかもしれないと思う。

 時間の決められたお茶会ならば手作りのクッキーのような手の込んだお菓子も用意できるだろうが、
相手はいつ現れるかわからない上にいる時間も様々なのだろう。
 ならば必然的に長期保存できるもの、用意に時間のかからないものになってくる。


「それにその方が、変わった味が楽しめそうでしょ?」
「わかった、探してみるよ」


 霖之助はインスタント系を中心に集めてみることにした。
 もちろん味的にハズレも多いだろう。
 だがそれも楽しみのひとつかもしれない。

 ……霖之助にしてみれば、あとで感想を教えて貰えれば商品も売れて一石二鳥というわけだ。


「それにしても……」


 注文した商品を集めていく霖之助を眺めつつ、パルスィはため息。
 店の外に目を向け、口を開く。


「この雨はいつ止むのかしら」
「ん? 降ってきたのかい?」
「呆れた。気付いてなかったの?」


 窓を叩く雨音がだんだん強くなってきた。
 遠くには雷の音もする。

 というのに、霖之助は初めて気が付いたというような表情だった。


「私が来た時に降り始めてたわよ。
 ずっと雨音もしてたじゃない」
「そうだったかな」
「貴方、店の中にいる時は外のことなんて気にしないのね」
「……あまり必要がないからね」


 晴れてても、雨が降っても、香霖堂の来客数はそう変わらない。
 せいぜい雨宿りの客が来るくらいだが……それも来てから対応すればいい。

 雨に向けての準備と言っても、タオルを用意しておくくらいだろうか。


「昨日あたりから雨が降り出しそうではあったんだけどね」
「地下からはそんなの見えないもの。
 地上まで出て来て引き返すより、さっさと用事を済ませたほうが早いわ」
「……それもそうか」


 この雨が過ぎたら梅雨も終わり。
 また暑い夏が来るというわけだ。


「雨の日って、どんなことをするのかしら。
 雨との付き合い方なんてもう忘れてしまったわ」
「何百年も地下にいれば、無理もないね」


 霖之助は手を動かしながら、パルスィと言葉を交わしていく。
 背中を向けたままではあるが、彼女も特に気にした素振りもない。


「晴耕雨読といって、雨の日は読書をするのが昔からの楽しみ方ではあるね」
「あら、晴れた日だって貴方は読書をしているじゃない」

 


「……元々の意味は思いのままのんびりと生活するということだからね。
 間違ってはいないよ」
「ああ言えばこう言うのね」
「そうでもない」


 そう言うと、霖之助はカウンターへと戻ってきた。
 両手に抱えた商品を、説明を交えながら次々と並べていく。

 一通り聞き終わると、パルスィは満足げに頷いた。


「ありがとう。じゃあ、全部頂こうかしら。
 ……濡れないように、包んでくれる?」
「ああ、それは構わないが……」


 頷いて……霖之助は首を傾げた。

 外は雨。
 先ほど会話していたとおりだ。


「この雨の中、帰るのかい?」
「これくらいの雨、妖怪にはどうってことないわよ」
「これくらい……ねぇ」


 窓から外を確認。
 いわゆる土砂降りというやつだろう。

 人間にはきつい天気だが……。


「止むまで待てば……と言いたいところだが、
 2、3日は止みそうにもないね」
「あら、泊めてくれるつもりかしら」


 そう言って妖艶に微笑むパルスィに、霖之助は肩を竦める。

 霖之助にしてはどちらでも構わないのだが。
 ……なんとなく、霖之助から提案することでもないような気がした。

 パルスィにしても同じ考えなのかもしれない。


「水も滴るなんとやら。どうせすぐ乾くわよ」
「あれは女性に使う言葉だったかな……?」


 やれやれ、と首を振る霖之助。

 確かにパルスィの判断は合理的で正しいだろう。

 彼女の決定を霖之助がどうこう言う権利はない。
 ないのだが。


「……妬ましいね」
「え?」
「君の濡れた姿を見ることが出来る地下の妖怪が、だよ」
「……え?」


 その言葉を噛み砕くように、彼女はゆっくりと霖之助を見た。

 そして次の瞬間、ポンと音を立てんばかりに彼女の長い耳が赤に染まる。


「え? ええ?
 だって私、今回は嫉妬心煽ってないわよ?」
「……今回は、と言ったね。
 つまりさっきは操っていたわけだ」
「……もう、そんなことはいいじゃない。
 ね、今の言葉だけど」
「さて、なんと言ったかな。
 忘れてしまったね」


 とぼける霖之助にパルスィは一歩詰め寄った。

 上目遣いに顔を赤らめ……。
 彼の胸に、そっと手を当てる。


「ね、ねえ。
 さっきの嫉妬……もう一度、見せてくれない?」

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非公開コメント

・・・GJです(ゴパァ

No title

GJ(グフッ

No title

うおー、かわいい!
霖之助の嫉妬もそれを向けられたぱるちーの反応も…!

No title

パルスィかわいいよパルスィ

GJでs(吐糖

No title

ネチョは?僕のネチョはどこいったの?

なんでパルスィさんは不意打ち→赤面のコンボが似合いすぎるんだろうか?

No title

パルシィマジ乙女

No title

パルスィマジ乙女

ねたましい
あゝねたましい
ねたましい

No title

GJ・・・ありがとう・・・良いもの見れたぜ・・・パル霖最高!

No title

ヤバイ糖尿寸前

No title

いいパル霖が見れました。
ありがとうございます!!
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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