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退魔巫女ゼロドリーム

たまにバトルものが書きたいと悪ノリした結果がこれだよ!
あと霊夢のコスプレする白(ry

『三本の矢』の続きかもしれないしそうでないかもしれない。

ライダーのつもりがタキシードな仮面になったり、聖さんが戦闘民族っぽくなったり、
早苗さんが早苗さんだったりしますので見られる方はご注意を。

賽銭戦士ゼロドリーム
あらすじ(嘘)


霖之助 白蓮 早苗


追記。
絵とかを描いていただきました。





   ◆第1幕 銀髪の剣士◆


 巫女が妖怪と戦っていた。
 戦況は敗色濃厚、と言ったところか。


「……仕方がないな」


 巫女を失うわけにはいかない。
 そしてこの幻想郷で、人を襲った妖怪は退治されるべきである。


「巫女と人間を守る。妖怪も守る。
 そして正体を知られちゃいけないのが、道具屋店主の辛いところだな。
 ……変身」


 呟きながら、彼は腰のベルトに付けられたスイッチを押しこむ。
 不思議なメロディと、そして発光。

 同時に、持っていた刀をすらりと抜き放つ。


 正体不明の種入りのそのベルトは、見る者に彼の正体をわからなくしてくれる。
 ……らしい。
 種の性質上、自分では確認のしようもないが。

 念のためにマスクを被り……行動を開始した。

 彼は素早い動作で懐から針を取り出し、今まさに巫女に止めを刺さんとしている妖怪に投げつける。
 驚く妖怪と……巫女。


「……誰?」
「通りすがりの商人だよ。
 そうだな……」


 トントン、と抜き身の刀を弄ぶ。
 そして彼は、この刀にちなんだ名前を口にした。


「オロチ仮面とでも、名乗っておこうか」


 どうしてこうなった、と思いながら。







「人間と妖怪のハーフ、そして銀髪の剣士。
 これを放っておく手はないと思うんですよ」


 店に来るなり、早苗が興奮した口調でまくし立てた。
 ……さっぱり意味がわからない。


「当事者としては放っておいてほしいんだがね。
 ……それで、何の話だい? 客じゃないのなら出口はあちらだよ」
「今日の私は客じゃなありません。
 むしろ霖之助さんにお仕事の話を持ってきたんです」
「……仕事?」
「ええ。今度寺でですね、お祭りをやる予定なんですよ」
「ああ、あの住職の……」
「はい。それで、人間と妖怪の友好を訴える出し物をしようという話になりまして」


 目を輝かせながら語られる早苗の話に、しかし霖之助は首を傾げる。
 彼女の口から人間と妖怪の友好という言葉が出たこともあるが、
どうして神社の出し物に山の上の神社が関係しているのかがわからなかった。


「……出し物? 君たちがかい?」
「そうなんですよ。
 あの寺を建てる時に私たちが手伝ったので、いわゆる協力関係みたいなものがあるんです。
 妖怪や人間が入り交じって出店とか出すんですよ。
 それで、私たちは劇をしようかと」
「劇、ねぇ」


 幻想郷にも劇の文化はある。
 アリスの人形劇などがいい例だろう。

 しかし舞台を使った大がかりなものはほぼ皆無と言っていい。

 理由は簡単。
 人間にそこまで余裕がなかったからだ。


「ストーリーとしては妖怪を見るや退治する夢も血も涙もない巫女、ゼロドリームと、
 銀髪の謎の剣士、森近霖之助が戦いの中でお互いをわかっていくという感じでですね」
「待て待て、なぜ僕だけ実名なんだい。
 それにゼロドリームって、零……」


 言いかけて、慌てて首を振る霖之助。
 いつの間にか乗せられていたことに気付き、深呼吸ひとつ。


「いやそもそも、まだ出るとはだね」
「ちなみに巫女は聖さんが演じます」
「……もっと適任もいるだろう、君とか」
「私は監督ですから」


 そう言って早苗はつけていた腕章を霖之助に見せた。
 なるほど大きく監督と書かれている。

 そんな彼女に、霖之助は大きくため息。


「なんにせよ、やる理由がないね」
「ええっ、だって面白いじゃないですか」
「面白いのは君の頭の中だよ」
「だけどお店の宣伝にもなりますし、それにほら、関連グッズとかもお願いしたいですし。
 今なら独占商売の権利がついてきますよ」
「売れる見込みはあるのかい?」
「……多分」


 まるで怪しい勧誘にしか聞こえないのだが。
 実際そうなのだから仕方がない。


「それに僕は見せ物になるのは好きじゃないんでね」
「ええっ、でもでも」


 早苗は慌てた様子で言葉を探していた。
 断られるとは思っていなかったのだろうか。

 ……だとしたら、やはり面白いと言わざるをえない。
 いや、お目出度い、だろうか。


「あ、神奈子様が言ってましたよ。
 手伝ったらその間は剣を抜かせてやるって。
 何のことかわかりませんけど」
「……ふむ」


 その言葉に、霖之助は考え込んだ。
 これは確かに魅力的な提案である。

 いつか自分のものになるとはいえ、練習しておくに越したことはない。
 それに扱うことによって認められる時期を早めることが出来るかもしれない。

 見せ物というのが気になったが……。
 逆に考えれば、見せ物なればこそ存分に力が振るえるのかもしれない。


「どうしたんですか、ニヤニヤして」
「なんでもない。
 ……仕方ないな、やってもいいよ。
 条件付きでね」
「本当ですか?」
「ああ。……商売になりそうだから、ね。
 それとさっきの条件、忘れないでくれよ」


 霖之助はそう言うと、今後のことについて早速計画を練り始めた。









   ◆第3幕 道具屋香霖堂◆


「ねぇ、おやっさん。
 私と同じ退魔針を使う銀髪の剣士に心当たりないですか?」
「さてね。
 僕が妖怪退治の道具を売る相手は君だけではないから、わからないな。
 ……あと、その呼び方はやめてくれないか」
「あら、ごめんなさい。
 霖之助さん」


 店のカウンターを挟んで、霖之助と聖は向かい合っていた。
 正確には、舞台に用意されたセットに、だが。

 巫女の扮装をした聖は、椅子に腰掛け、お茶を飲んでいる。
 巫女の装備はこの店で仕入れている、と言う設定らしい。

 霖之助は観客の存在を意識せず、彼女だけに視線を向ける。


 それにしても、あれだけ言ったのに霖之助の名前はそのままで採用となった。
 ひどい話である。

 ついでにゼロドリームもそのままだ。
 早苗が霊夢に怒られたとしても、知らん顔をしておくことに決めていた。


「この退魔針は誰にでも扱えるよう調整したものだからね。
 ……威力はともかく」


 これでは足止めにしかならないだろう。
 だが、それで十分だった。


「はぁ……」


 ため息に複雑な色が混じっているのを、霖之助は聞き返した。
 巫女の精神的なケアも霖之助の役割……らしい。


「その剣士と、何かあったのかい?」


 素知らぬ様子で、尋ねる。
 こう言う演技は慣れたものだ。

 古道具屋には必須スキルとも言える。


「いえ、先日危ないところをその剣士に助けられてしまいまして」
「ふむ。珍しいね、君が妖怪に後れを取るとは」
「いつもいっぱいいっぱいですよ、私は。
 でも、使命ですから」


 使命という言葉に、霖之助は表情を曇らせた。


「もしもう一度会えたら、どうするつもりだい?」
「ええ……助けられたお礼を言いたいなと」
「お礼……ね」


 そしてゆっくりと首を振る。


「相手もそれを求めているとは限らないよ。
 向こうには向こうの都合があったのかもしれないからね」
「でも……」


 縋るような視線を向けてくる聖に、しかし霖之助はなにも答えなかった。







 幕間の時間を縫って、楽屋の扉をノックする。


「聖」
「あ、霖之助さん」


 戻ってきたばかりなのだろう。
 演技の熱か、彼女の頬はやや上気しているようだった。


「いい演技だったよ、さすがだね」
「そんな、照れます……」


 本当に照れているらしく、彼女の頬が別の色で染まる。
 そんな聖を、霖之助は微笑ましく思っていた。

 正直というか、裏表が無いというか。


「……しかし、やはりその格好はもう少し考えるべきだったか……」
「え? 何か変ですか?」
「いや……君がいいならいいんだが」


 聖が着ている巫女服というのは、仕立て直しはしたものの、霊夢の服の使い回しである。
 なんというか、いろいろとギリギリだった。

 正直、目のやり場に困る。


「……コホン。
 それはともかく、台本ではもっと砕けた口調じゃなかったかな?
 なんて言うか、霊夢のような」
「えっと、やっぱりあの口調は私にはちょっと……」
「そうか、なら仕方ないな」


 彼女の言葉に、苦笑する霖之助。
 台本通りに演技するつもりなど、初めから無かった。

 どのみち台本自体が適当なのだ。
 大まかな流れしか書いてない、とも言える。

 堂々と「このシーンはアドリブで」と書いてあるものを、果たして台本と呼べるのかという疑問もある。


「おっと、あまり長居をしても悪いね。
 じゃあ、次のシーンもよろしく頼むよ」
「はい、霖之助さんも」


 適当な台本、そして監督。
 つくづく苦労するのはいつも現場の人間であるようだった。









   ◆第6幕 敵か味方か◆


 巫女の一撃が、妖怪の弾幕のことごとくを相殺していく。

 演劇用に見栄えのいい、威力の弱い弾幕を使っているとは言え、
ここまで綺麗に相殺できるというのはひとえに聖の実力の賜物だった。


「これで……終わりです」


 次の瞬間、聖は妖怪に肉迫。
 手にしたお祓い棒を振りかぶった。

 聖の魔力で強化されたそれは、鋼の強度を遙かに凌駕する。
 まともに食らえばただではすまないだろう。

 ……退治するつもりなのだから、当然か。
 だが。


「どうして、貴方が……!」
「どうして、か。
 それは僕のセリフだね」


 霖之助は抜き身の刀……草薙で、聖の一撃を受け止めていた。

 彼女に襲われていた妖怪……ミスティアを背中に隠す。
 エキストラ役として先ほど突然採用された妖怪だ。


「この子は人間を襲っていない。
 それなのに、どうして退治する必要があるんだい?」
「妖怪だからです」


 きっぱりと言い切る聖。
 大した演技だった。

 霊夢や早苗でも同じことを言っただろう。
 ただし、彼女たちの場合は素で。


「じゃあ、僕は君の邪魔をしないといけないな」
「貴方……人間と妖怪、どちらの味方なんですか?」
「さてね」


 トントン、と刀を弄ぶ霖之助。
 聖の視線を、軽く受け流す。

 ……芝居だとわかっていても、睨まれて気持ちのいいものではない。


「僕はどちらの味方でもあり、その逆でもある」
「そうですか」


 その言葉に、聖はお祓い棒を突きつけた。


「つまり、私の敵というわけですね」
「ならばどうする?」
「倒します」
「そうか、だが僕には戦う理由がない」


 見ると、話している間にミスティアは逃げおおせていた。
 今頃観客の中に戻っていることだろう。


「目的は果たした。
 あとは僕も逃げるだけさ」
「待ってください!」


 踵を返す霖之助に、聖は声を上げる。


「待って……ください……」


 その声は小さく、彼に届くことはなかった。








 楽屋に戻ってきた霖之助を出迎えたのは、早苗の満面の笑みだった。


「とてもいい感じですよ、霖之助さん」
「……それはどうも」


 早苗の差し出したお茶を受け取り、一息に煽る。
 もう慣れていたつもりだが、やはりどこか緊張していたらしい。


「物語もいよいよ大詰め。
 ゼロドリームと森近霖之助は何度もぶつかりながら、だんだんとお互いのことを気にかけていくんです。
 人間や妖怪の子供を助けている彼を見た時、彼女は自分のやって来たことに疑問を感じ、
 その気持ちに決着を付けるために。霖之助さんに勝負を挑むんですよ。
 とまあそれはともかく、やっぱりここのシーンのエキストラをお客さんから選ぶって言う
 演出はとてもいいアイデアだと思いませんか?
 ヒーローショーの基本ですよね、舞台と客席の一体感は」
「それを自分で言って、何か感じるところはないのかね、君は」


 ……二重の意味で。


「何の話です?」
「……わからないならそれでいいんだが。
 いや、そもそも僕は商売の延長であって、ヒーローショーのつもりはないよ」
「まあまあ、どっちでもいいじゃないですかそんなことは」


 疲れた口調の霖之助。
 だが早苗は聞く耳を持っていないようだ。


「念のために聞いておきたいんだが、この脚本を書いたのは誰だい?」
「え? 私ですけど」


 返ってきたのは予想通りの答えだった。
 痛む頭を押さえつつ、質問を投げかける。


「どうしてふたりはもっと早く決着を付けなかったんだい?
 出会ったときにもう少し踏み込んでいれば、こじれることもなかっただろうに」
「それじゃ話が終わっちゃうじゃないですか。
 多少のご都合主義は不可欠ですよ」
「多少、ねぇ」


 ……まあ、あえて深くは聞くまい。
 聞いてもどうにもならなそうだし。


「不殺な前作の主人公がひたすら戦況を引っかき回すだけってのもまあ、アリと言えばありじゃないでしょうかね」
「振り回される方は大変だろうがね。
 不思議なことに、振り回される側の気持ちがよくわかるんだよ」


 幸いなことに、観客席の評判は上々というのが救いだった。
 早苗の話では男性客にも人気があるらしいのだが……。

 ……多分聖のおかげだろう。


「そういえば、結構聖さん本気で打ち込んできてるみたいですけど、大丈夫ですか?
 霖之助さんの武器って慧音さんから借りたやつですよね」
「……彼女の本気があれくらいなわけないだろう?
 手加減してくれてるから、この程度で済んでるのさ」


 霖之助がこの劇をやることの条件のひとつに、慧音の神器を借りてくることがあった。
 レプリカといえど神剣は神剣である。
 劇に使うには十分な代物だろう。

 と、表向きにはなっている。

 もちろん慧音に借りた剣は荷物に入れたままだ。
 誰も霖之助が使っている剣を本物の草薙だとは思わないだろう。


「ならいいんですけど。
 とにかく、劇ももう終盤、次はいよいよ最大の見せ場ですからね。
 適当に頑張ってください」


 早苗の言うとおり、次はふたりが戦って決着を付けるシーンである。
 存分に力の振るえる一幕。

 しかし早苗の言うとおり。
 その場面の台本には、『殺陣シーン。適当に』とだけ書いてあった。


「お言葉に甘えて、適当に頑張るとするよ」


 霖之助はそう言いながら……。
 少しだけ、微笑んでいた。









   ◆第10幕 決着◆


「勝った方が正しい。
 実にシンプルだね」
「力のない正義は、価値がありませんから」


 霖之助と巫女に扮した聖は、舞台の上で向かい合っていた。
 緊迫した雰囲気のまま、言葉を続ける。


「別に僕は、正義のために戦っているわけじゃないよ」
「じゃあどうして私の邪魔をするんですか」
「君は正義の使者か何かなのかい?」


 霖之助の問いに、聖は答えに窮した様子だった。
 以前なら即答できただろうその問い。

 しかし彼女は即答出来なかった。


「……使命のためです」
「その使命は誰が用意した?
 その使命は妖怪を退治することか?
 人を襲った妖怪も、無害な妖怪ですらも」
「わかりません」
「それに何故……君は妖怪を退治するたび、悲しそうな顔をするんだい?」
「……わかりません」


 首を振る巫女。
 ややあって……霖之助を真っ直ぐ見つめる。


「ですが、貴方と戦えばその理由がわかると思います。
 ……わかりたいんです」
「なるほどね」


 聖の言葉に、霖之助はゆっくり頷いた。
 戦うことでしか掴めない答えというのは、なんとも悲しいことではないか。

 自分なら、そうなる前になんとかしたいものだ……と思いつつ。


「僕もそろそろ、君と決着を付けたかったところだ」
「…………」
「これ以上、君が傷つくのを見たくない。
 戦う理由としては、十分かな」


 ……よくこんな台本を書けるものだ。

 霖之助はある意味感心していた。
 なんだかいろいろ混じっている気がするが、この際どうでもいい。

 ようやく、待ち望んだ場面なのだから。


「参ります」


 聖はお祓い棒を構え、高々と宣言した。
 抑えていた魔力を開放する。

 同時に、観客と舞台の間に生じる結界。
 早苗の力だろうか。


 ――演劇「退魔巫女」


 彼女が使ったのは、演劇用に用意されたスペルカードだ。
 飛んできた針や符を、霖之助は同じ針や符で迎撃する。

 早苗曰く、ここで巫女が道具屋から装備を買っていたというのと
オロチ仮面が同じ道具を使う伏線を回収したいと言っていたのだが。

 ……まあ、そんな事はともかく。

 この攻撃で剣は使わない。
 使う必要がない。

 これは魅せるための弾幕でしかないのだから。


 やがて弾が尽きたのか、聖はお祓い棒を構えて向かってきた。
 霖之助はそれに対し剣で打ち合い……。


「身体は温まりましたか?」


 目の前の聖は霖之助だけに聞こえる声で、そっと囁いてきた。


「では、そろそろお互い本気を出しましょうか」
「……お見通しかい?」
「何のことでしょう?」


 驚く霖之助に、彼女はあくまでも笑顔を浮かべる。


「楽しみを我慢できないような、そんな目をしていらしたので、つい」
「……そんなつもりはなかったんだがね」


 年の功、というやつだろうか。

 どうやら自分は年上に考えを読まれやすいらしい。
 ……これは気を付けるべき点だろう。
 魔理沙にも読まれていた気がするが。


「楽しみですね。
 私も久し振りに身体を動かしたかったですし……。
 霖之助さんの力も見てみたかったですし」
「僕を半人半妖の指標にするのは参考にならないと思うよ……っと」


 言い終わると、鍔迫り合いをやめて聖は距離を取った。
 声に出さないまま、唇を動かす。

 読唇術の心得はあまりないが、何を言っているかはよくわかった。


 ……お芝居なんですから、楽しみましょう?


 ――魔法「魔界蝶の妖香」


 聖を中心に、不思議な紋章のようなものが浮かぶ。
 そして少し離れた場所に、4つの花びらのような文様。

 聖本人のスペルカードである。
 まだ来て日も浅いというのに、彼女は幻想郷のスペルカードルールを正しく理解しているようだった。

 ……実に美しい。


 そこかしこからばらまかられる弾幕が、次々と向かってきた。
 霖之助はそれらをかわし、あるいは斬り払い、負けじと剣気を飛ばして応戦する。


「もっと避けないと当たりますよ?」
「避けても当てるつもりだろうに」


 聖の言葉に答えた瞬間。
 先ほどまで霖之助がいた場所に、レーザーが通り過ぎていった。


「あら、かわされました」
「……本当に、油断も隙もないね、君は」
「いわゆる魔界仕込みというやつですよ」
「そうか……。
 早苗が暴走気味なのも、魔界に行ったからかな」
「来る前から同じだと聞きましたけど」


 軽口を叩き合いながらも、全周囲攻撃の魔法弾とレーザーの波状攻撃をかわしていく。

 草薙の剣といえど、こんな場所で天候操作を使うわけにもいかない。
 ならば。


「……ふぅっ」


 刀を正眼に構え、呼吸を落ち着かせる。
 イメージするのは、巨大な蛇。


 ――秘剣「九頭龍の閃き」


 霖之助の放った9つの斬撃は、それぞれが龍の顎と化して聖に向かっていった。

 蝶の生み出した弾幕は、蛇に飲まれて消える。
 相性のおかげだろう。


「虫は蛇に……食われてしまうがいい」
「まあひどい」


 言葉とは裏腹、彼女は笑っていた。


「これでは、次の手を出すしかありませんね」


 言われなくても、わかっている。
 これは小手調べでしかないのだと。


「お手柔らかに頼むよ」


 聖は消えかけた蝶の残滓を指差し……何事か唱えた。
 紋章はそのまま巨大な魔方陣となり、彼女に別の力を宿らせる。


 ――大魔法「魔神復誦」


 思わず、先ほどの紋章が黒い翼に変化するのを幻視した。

 4つの文様が光ったかと思うと、先ほどとは比べものにならない幅のレーザーが霖之助の逃げ場所を奪う。
 赤い光輪。そして楔のような弾。

 まともに相手すれば苦戦は必至だろう。
 だが。


 ――豪剣「二之太刀不要」


 大きく薙いだ霖之助の剣閃は、巨大な光を伴って聖のスペルカードを斬り裂いた。
 一刀両断、と言うやつである。


「魔の属性なら、神の属性が効果的だ」
「あらら。もうやられてしまいましたか。
 攻撃力はかなりのものですね」


 攻撃の余波か、折れたお祓い棒を聖は床に置いた。
 そしてゆっくりと、霖之助に向き直る。


「困りましたね。
 ここのシーンでは私が貴方の仮面を破して正体を知らなければならないんですが」
「そうだね」


 台本にはそう書いてあった。
 しかしながら、必ずしも従う必要はない。


「だが心配することはない。
 適当にやってくれ、と監督のお墨付きも出ているからね。
 適当にシーンを繋げればいいだけさ」
「魅力的な提案ですけど……」


 ――「聖尼公のエア巻物」


「私はやはり、今の台本が好きですので」


 輝くそれは、具現化され、圧縮され……やがて錫杖へと姿を変えた。


「弾幕では埒があきませんね。
 貴方の弱点、突かせてもらいます」
「なに?」


 霖之助の疑問に、しかし聖は答えないまま。
 次のスペルカードを展開する。


 ――超人「聖白蓮」


 瞬間。
 聖の姿が目の前からかき消えた。

 注意していたはずなのに。
 油断はしていなかったはずなのに。


 ――護剣「草薙」


 反応できたのは、草薙から伝わってくる危険信号と、神代の体技のおかげだった。
 だが、この体術を以てしても、聖の動きについて行けない。
 体術を使いこなすには、霖之助の身体能力が追いつかない。


「まあ、私が勝つことは決まってますけど」


 声は、霖之助の耳元から響いてきた。
 慌てて振り向く……が、しかし誰もいない。


「もうしばらく、楽しみましょうか」









   ◆最終幕 告白◆


「霖之助さん」


 戦いに敗れた霖之助は、聖に膝枕された格好になっていた。
 傍らには、聖の攻撃で裂かれたマスク。

 戦闘の途中でマスクが敗れ正体が発覚、中断……という流れた。
 ……実際には、完膚無きまでに負けたのだが。

 観客からは、ギリギリの戦いに見えたはずだ。
 そのあたりは聖の上手さだろう。


「どうして、貴方が」
「どうして、か」


 彼女の言葉に、霖之助は自嘲気味に呟いた。


「僕が人間と妖怪のハーフだからだよ。
 人も妖も、弱い者を守りたかった。
 それ以外に、理由はない」
「そんな……」


 驚いた表情を浮かべる彼女。


「僕の負けだよ。
 ……殺せ」
「できません!」
「それが君の使命のはずだろう?
 勝者の権利だ。存分に振るうといい」


 首を振る聖。

 感極まってのことだろう。
 その目には、涙が浮かんでいた。


「勝者の権利が正義を決めることなら……。
 私は貴方を正義とします」


 その言葉に、今度は霖之助が驚いた表情を浮かべる。
 と言っても、観客からは見えないはずだが。


「僕は半分妖怪だ。
 妖怪なのに、退治しなくていいと言うのかい?」


 霖之助の言葉に、聖は首を振る。

 私の使命は間違っていたのだと。
 弱い者を守ればそれでいいのだと。


「だって私は、貴方のことを……」











「お疲れ様です、霖之助さん」
「本当に疲れたよ」


 演劇も終わり、控え室での小休止。
 舞台衣装もそのままに、聖は霖之助の元へとやって来た。


「思わず感情移入してしまいまして。
 お恥ずかしいところを……」
「いや、いい演技だったと思うよ」
「そ、そう言ってもらえると……」


 演技を思い出しているのか、それとも褒められてかはわからないが。
 聖は顔を赤らめ、照れた様子だった。

 ……まあ、霖之助も同じようなものかもしれないが。


 何を思って彼女がこの演劇を受けたのかは定かではない。
 しかし少しでも役に立てたのなら、来た意味があったように思う。

 霖之助自身、草薙の力を振るえたわけだし。


「あの私、思い切りやってしまいましたけど……。
 大丈夫でした?」
「ああ、幸いなことに人間より頑丈にできていてね」


 これは本当の話だ。
 多少攻撃を食らいはしたが、直撃はなかったし、すぐに治るだろう。


「そうですか、よかったです
 じゃあ私、そろそろ行きますね」


 聖は控え室のドアに手をかけると、改めて振り返った。


「……今日は本当に、ありがとうございました。
 お疲れ様です」
「お疲れ様。
 またあとで」


 彼女を見送り……霖之助はひとり、ため息を吐く。


「三種の神器……すべて持って行くべきだったな」


 慧音から借りた三種の神器は、手つかずのまま荷物の中だ。
 しかしそれがまずかったのかもしれない。

 草薙の剣は攻撃力と防御力を強化してくれる。
 神ならそれを扱えば十分天下を取れるだろう。

 だが神ならぬ身ならば。

 鏡は魔力を。
 玉は速さを。

 三種揃うことで、天下に手が届くのかもしれない。
 このあたりはまだまだ考察の余地がある。

 聖の身体強化魔法はひとりですべてを強化していた。
 剣しか持たない霖之助では、彼女の動きに追いつけなかった。
 彼女が弱点と言ったのもそれだろう。

 レプリカといえど、持っていれば多少の効果はあったはずだ。
 そう考えると、今回は完全燃焼とは言いがたいかもしれない。

 しかし、まあ。


「いい運動にはなった、かな」


 静かになった部屋の中で、霖之助は大きく息を吐き出した。


「カーテンコールですよ、霖之助さん!」


 しかしその静寂は数秒と持たなかった。
 霖之助は入ってきた少女……早苗に視線を向けると、再び疲れたため息を吐く。


「あらら、お疲れのご様子ですね」
「ああ、おかげさまでね」


 なんだか本当にどっと疲れが出てきた気がした。
 気が抜けたのかもしれない。


「そう言えば、舞台挨拶が残っていたか」
「はい、今片付け中ですので、それが済み次第」
「君は手伝わなくていいのかい?」
「私は監督ですから」


 胸を張る早苗。

 しかし監督だからこそ陣頭指揮を執るべきではないのだろうか。
 ……まあ、出演者を労うのも監督の仕事かもしれないが。


「反応も上々でしたし、私も感心しちゃいましたよ。
 なんだか舞台見てたら、私が演じればよかったなって思うくらいに」
「君だったらはまり役だったろうね。
 ……いろんな意味で」


 特に妖怪を血も涙もなく倒す所など、早苗にぴったりではないだろうか。
 しかしラストで考えが変わるかと……聞かれると悩みどころではある。


「後半台本と全然違いましたけど、結果オーライですよね。
 きっと関連グッズも売れると思いますよ、霖之助さん」
「ん?」


 彼女の言葉に、思わず霖之助は聞き返していた。


「どうしました? グッズ売り上げの取り分のことで質問でも?」
「いや、そうじゃなくて……台本がだね」


 台本通り、と聖は言っていたはずだ。
 しかし早苗は違うという。


「ああ、それですか。
 だってあんなに殺陣のシーン入れるつもりじゃなかったですし。
 そもそも霖之助さんが戦えるなんて思ってませんから」
「……芝居用の動きくらい僕にも出来るさ」


 いざとなったら、慧音の三種の神器のおかげだと言い張ってしまおう。
 そう霖之助は決めていた。

 あちらならば皆存在を知っているし、無理はない……かもしれない。


「それじゃあ、教えてくださいよ」


 言いながら、早苗は笑顔で距離を詰めてきた。
 気が付けば、壁際に追いやられている。


「ねえ、霖之助さん」


 笑顔の早苗は、しかし笑っていなかった。
 鋭い視線に貫かれ、逃げ場はない。答えざるをえない。


「最後の膝枕とキスシーンは、どちらの提案なんですか?」


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No title

膝枕+キスシーン…だと…
やるな白蓮w

No title

霖さんも白蓮さんもカッケェ…

No title

ひじ霖きた!これでもう思い残すことはない・・・
霖ちゃんの戦闘シーンってあんまないけど非戦闘員が強いってのはロマンですよね!?

聖さんなかなかやりますねぇ。
再演の際は是非とも最初から最後まで観たいものです、主にラストシーンを。

可愛いな流石百蓮可愛い
ただ年をかんg うわ 何する やめ

No title

死亡フラグがたったーーーバチィ
聖がかわいすぎて生きテクノがつらい

No title

流石 聖さん、格が違った。

No title

やはり年の功という奴か…

この後の展開がR18にしか考えられない俺は
フランス書院愛読者。

No title

演劇部分がむしろ面白かったです。全幕見たいです!
いやー読み応えありました!
しかし膝枕+キスとは。よく他の少女が殴りこみに来ませんでしたね。観てなかったのかな?
どちらにせよ後が怖そう^^;

>>なんだか舞台見てたら、私が演じればよかったなって思うくらいに
 ラ、ラストシーン?

No title

第二回はゼロドリーム役のオーディションが必要ですねw
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
リンクはフリーですが、ご一報いただけたら喜びます。

バナーはこちら。

<wasre☆hotmail.co.jp>
メールです。ご用のある方は☆を@に変えてご利用ください。

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ついったー。

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