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酌取り鬼

SAGさんの絵にSSを書かせていただきました。
酌取り鬼
pixivの小説機能にて先行公開済。
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23293


霖之助 萃香 勇儀









「待ってくれたまえ。鬼の酒を一度にワッと浴びせかけるのは」


 霖之助の言葉に、萃香と勇儀は顔を見合わせた。
 それからふたり同時に肩を竦める。


「なにだらしないこと言ってんのさ。
 こんなのまだまだ序の口でしょ」
「まさに浴びるほど呑む、だねぇ。
 ささ、次いってみようか」


 霖之助の盃に、なみなみと酒が注がれる。
 もう結構呑んでいるのだが、ふたりとも一向にペースを落とす気配がない。


「……僕はゆっくり呑むのが好きなんだがね」
「知ってるよ。
 だからゆっくり呑んでるんじゃない」
「そうさ。店主にあわせてゆ~っくりとね」


 確かに飲む速度自体はゆっくりだ。
 だが量が尋常ではない。
 しかも狙っているのかはわからないが、ことごとく強い酒ばかりなのだ。
 これで酔うなと言うほうが無理な注文だろう。


「次は私の盃だよ。
 はい、しっかり持って持って」
「その次私だからね。
 潰れちゃダメだよ、霖之助」


 勇儀に酒を注がれる間、萃香がじっと霖之助を見つめている。
 逆になればまた然りだ。

 そのような目で見られては、あまり悠長に構えてられなくなるから困るわけで。


「んっ……」


 ふたりが見守る中、霖之助は盃を傾けた。
 別に一気に呑む必要はないのだが……。
 何故かそうしてしまうのが不思議だ。


「ふぅ……」
「おお、なかなかいい呑みっぷりじゃないか」
「その盃も板についてきたねぇ」


 勇儀は霖之助から盃を受け取ると、霖之助に注いだ量の酒を注ぎ、一気に飲み干した。
 ふたりは霖之助以上に呑んでいるはずなのが、全く弱った気配すらない。
 さすが鬼といったところだろうか。


「じゃあ次はこれ呑もうよ」
「いいねぇ。
 あ、そっちのもいいんじゃない?」
「じゃ、両方持って行くね」


 小さな萃香が店内の酒を萃めて持ってきた。


「じゃあ次、私の番だね」


 再び勇儀から受け取った盃に、萃香がなみなみと酒を注いだ。
 盃から溢れんばかりのそれに、霖之助は苦笑を漏らす。


「……多すぎないか?」
「多い日もあるの!」


 萃香と勇儀、ふたりの鬼がやっているのは単純なゲームだ。

 盃に一杯ずつ、交互にお酌をし、先に霖之助を酔い潰してしまった方の負け。
 勝ったらタダ酒、敗者は酒代を出す。
 もし霖之助が勝てば、ふたりに何でも頼み事が出来る、と言う。

 霖之助には、自分がふたりに勝つ姿が全く想像できないのだが……。
 ……それでも霖之助の懐は全く痛まないので、この勝負を続けていた。


「……んぐ」


 痛むのは肝臓くらいのものだろうか。
 空になった盃を置き、霖之助は大きく息を吐き出す。


「はぁ……これでいい……な」
「おー、やるねぇ」


 感心したような萃香の声に、霖之助は肩を竦める。
 霖之助が呑んでいる間にも、その倍以上呑んでいるのだ。この鬼は。


「また私の番だね」


 勇儀が霖之助にすり寄り、腕を掴んだ。
 抱きしめられるような形になり、腕が胸の谷間に埋もれる。

 ……しかしその感触よりも、盃を持った手を押さえられていることのほうが気になった。
 落とさないようにがっちりと。万力のような力で。


「ちょっとその前に、水を飲みたいんだが」
「はいよー。
 いくらでも飲みなー」
「すまない」


 萃香がひとつ指を鳴らすと、小さな萃香が水差しを運んできた。
 グラスに入った氷に冷えた水を注ぐ。

 ふたりとも余裕の表情だった。
 呑み比べで勝つことはまず不可能だろう。


「おつまみも食べる?
 この塩辛美味いよ」
「いや、その余裕はなさそうだ」


 胃の中が酒で一杯だ。
 別のものを詰め込む隙間もない。

 冷水で口の中の感覚を取り戻し、盃を呷る。


「ごほっ……」


 なんとか飲み干す。
 が、そろそろ限界だった。
 これ一杯でどれくらいの量があるのだろう

 次々と一升瓶が空になっているところを見ると、かなりの量が入りそうだが……。


「お、次あたりそろそろ危ないかな?」


 ニヤリと笑う萃香。
 次は萃香の番だ。

 つまり萃香が負けそうだ……と言うことなのだが。


「まだまだイケるよね、店主?」


 勇儀も不敵に笑う。
 自分の番まで回ってこい、と言わんばかりに。


「……ああ……」


 ふたりが何か言っていたが、霖之助は聞いてなかった。
 意識を手放さないようにするのがやっとだ。

 しかし盃を手放そうにも、勇儀ががっちりと押さえている。


「おーい、霖之助~?
 ちょっと零しちゃってるよ~」


 萃香が酒を注いでいたのだろう。
 しかし手に力が入らないのでどうしようもない。


「仕方ないなぁもう」


 困ったような、照れたような萃香の声。
 そして唇に触れる感触と、酒の味。

 ……一瞬、萃香と目が合ったような気がした。


「ちょっと萃香、それは……」
「へへーん、やったもん勝ちでしょ」


 得意げに笑う萃香に、勇儀はニヤリと笑みを浮かべる。


「まだ意識あるよな、店主?」
「あ、勇儀、もしかして」
「やったもん勝ち、なんだろ?」


 耳元で、勇儀の吐息が触れた気がした。
 そんなふたりの喧噪を聞きながら……。

 霖之助の意識は、ゆっくり闇の中へと落ちていった。









 太陽の光に、目を覚ました。
 朝だろうか。
 どうやら気を失っていたらしい。


「痛ッ……!」


 上体を起こし……そこで動きを止める。
 激しい頭痛。
 ……何度も覚えがある。二日酔いによるものだ。


「……また呑みすぎたかな」


 部屋を見渡すと、昨日の喧噪が嘘のように片付いていた。
 酒瓶はまとめられ、使った食器も綺麗になっている。


「やれやれ……まだまだかな」


 霖之助は大きくため息を吐いた。

 無茶な飲み方をしているのには理由がある。
 酒に強い者のことをうわばみというが、元になったのは当然ながら八岐大蛇のことだ。
 つまり八岐大蛇に縁の深い草薙の剣に認められるには、うわばみになってみるのが近道か、と思ったのだが。


「これで何度目だろうか……二日酔いは」


 鬼と呑めば酒に強くなるかと思い、ふたりに相談してみたのがひと月ほど前。
 それからあのゲームを持ちかけられ、何度か付き合ってみた。

 懐が痛まないのは幸いだが、せっかく溜めていた外の世界の酒を味もわからないまま消費してしまうのが難点だろうか。


「お、起きたのかい?」


 居間に移動すると、台所から勇儀が顔を出した。
 エプロン姿にお玉を持っている。
 勝手知ったる他人の家、ということだろうか。


「今回は君か、勇儀」
「ああ。まったく残念だよ」


 勝負に負けた方は霖之助の看病をすることになっているらしい。
 負けたというのに、勇儀は楽しそうに笑っていた。


「味噌汁作ったけど、飲むかい?
 勝手に台所借りたけど」
「構わないよ。
 ありがたく頂くとしよう」


 味噌の匂いが、鼻孔をくすぐる。
 地下から持ってきたのだろうか。
 霖之助の家にはない匂いだった。


「はいよ、お待ち」


 細かく切った豆腐と薬味だけが入った、シンプルな味噌汁。
 箸をほとんど使わず飲む事ができる。

 これも霖之助の体調を配慮してのことだろう。


「……美味い」
「だろ、ダシが決め手なんだ」


 勇儀は自信たっぷりに胸を張った。
 巨大な双丘が、服の下からでも自己主張を始める。


「あ、起きたんだ。
 おはよー、霖之助ー!」


 縁側から響く声に、霖之助は顔を顰めた。
 決して勇儀の胸を見るのを邪魔されたからではない。


「萃香、少し静かにしてくれないか……頭に響く」
「ニャハハ、ゴメンゴメン」


 鬼の大声は弾幕にも使えると文が言っていた気がする。
 本気ではないだろうが、二日酔いの頭には厳しいものがある。


「おや萃香。勝負の勝者が何の用だい?」
「むっ、いいでしょ別に」


 勝ち誇る勇儀に、むくれる萃香。
 ふたりを見ていると勝者が別の意味に聞こえるから不思議だ。


「はい、霖之助。これあげる」
「……なんだい、薬?」


 萃香が差し出した袋に、霖之助は首を傾げた。
 用途は二日酔いを治す、らしい。


「永遠亭まで行って貰ってきたんだよ。
 兎を叩き起こしてさ」
「ああ、助かる。
 ……鈴仙には気の毒だがね」


 苦笑しながら、萃香の薬に手を伸ばす。
 しかし霖之助の手が届く前に、それは横から奪われてしまった。


「はい没収」
「あ、こら! なにすんのさ!」


 薬を手にした勇儀に食ってかかる萃香。
 しかし彼女は素知らぬ顔だ。


「使うか使わないかは私が決めるよ。
 酔いが残っている間は看護するのが敗者の役目だからね」


 そこでわざとらしく肩を竦める。


「面倒くさいけど仕方ないね。ルールだし」
「ぐぬぬ」


 悔しがる萃香をよそに、勇儀は霖之助の後ろに回り込み身体を預けてきた。
 胸が後頭部に乗っかるような形になる。

 痛みで感触が十分楽しめないのが問題だが……。


「霖之助。なんて顔してるの」
「……不可抗力だ」


 そう、頭が痛くて振りほどくことも出来ないのだ。
 まさに不可抗力というものである。

 萃香は悔しそうな表情で、自分の胸を見下ろした。

 そこで閃いたのか、彼女は輝く瞳で顔を上げる。


「じゃあ温泉行こう! 温泉!
 熱い湯でスカッとしよう!」
「温泉かい?」


 味噌汁のおかげか、ようやく頭もはっきりしてきた。
 と言っても、本調子にはまだまだ遠いが。


「そうそう、この前勇儀と発見したとこだよ」
「ああ、あそこか。
 確かにいいかもね。湯加減もちょうどいいし……」


 ふたりのやりとりに、霖之助は首を捻る。


「ん? 秘湯でも見つけたのかい?」
「うん、そんなところ。
 私たち以外は誰も来ないと思うし、行こうよ霖之助」
「ふむ……行きたいのは山々なんだが、動くと頭が痛くてね」
「大丈夫だって、私が運んでやるから。
 一瞬で着くよ」
「そうそう、痛いのも一瞬だけだって」


 どっちにしろ痛いのは確定らしい。
 ……まあ、このままじっとしていても仕方ないのも事実。


「……そこまで言うなら、付き合おうか」
「やった、決まりだね」
「ああ」
「あそこの温泉、二日酔いにも効くんだよ。
 そしたら次こそ私のターンだからね!」


 なにやら自信たっぷりに宣言する萃香。
 しかし勇儀は余裕たっぷりの笑みで、霖之助に耳打ちする。


「なあに、その前に勝負は付けてしまうよ。
 ……温泉でもしっかり、看病してあげるからね」

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さて、本当に勝ったのはどっちなのやら……
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