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過保護から始まる恋もある

神奈子様が乙女になりすぎた。
八坂大蛇とは繋がってないからご安心ください(?)
あとフラグは折るものだって誰かが


香霖堂に突然やって来た神奈子が言った言葉。
どうやら早苗と関係があるらしいが……。

霖之助 神奈子









「早苗と結婚しなさい」


 霖之助のいらっしゃいより早く、彼女の言葉は店に響き渡った。


「何を言うかと思えば……」


 挨拶を諦めて、手元の本に視線を落とす。
 この時点で客でないことは確定していた。
 だとすれば、相手するだけ労力の無駄というやつだ。


「客じゃないのならお引き取り願おうか。そのまま回れ右をするといい」
「そんなことより!」


 ずんずんと歩み寄ってきた神奈子が、どんと机に両手を突いた。
 ゆさり、と揺れる彼女の胸で本が遮られる。
 胸にかけられた鏡が、霖之助の顔を移し返した。
 ……すごく迷惑そうな顔をしている。

 そもそもそんなこととは何だ。
 道具屋に客以外が来て何になるというのだ。


「早苗と結婚しなさい」


 近すぎて、神奈子はまるで霖之助のつむじに話しかけているようだ。
 霖之助は仕方なく顔を上げ、彼女を見上げる。

 ……なるほど、この迫力はさすが神といったところだ。


「……理由を聞こうか」
「そんなもの、自分の胸に聞いてみるがいいさ」


 そう言われても、霖之助にはさっぱり心当たりがない。


「早苗が最近、この店に入り浸ってるね」
「ああ、確かに。……漫画を読みにね」


 君も読むかい? と霖之助は手に持っていた本を差し出した。
 早苗に勧めるために、吟味を重ねている最中だったのだ。
 道具屋たるもの、やはり商品については熟知しておく必要がある。
 あとはもちろん学術的な興味から、だ。


「早苗が最近よく外の話をするんだよ。
 ……懐かしそうな顔で……。アンタの仕業だね」
「それについては……そうかもしれないな」


 霖之助は漫画や道具の代わりに、外の世界の知識や考え方、風習を早苗から聞いていた。
 いつか外の世界で暮らすために。

 確かに、外の世界を捨ててきた彼女に対していささか無神経だったかもしれない
 ……なのだが、外の世界について聞ける機会など早々あるものではないため、どうしても好奇心のほうが上回ってしまう。
 あの妖怪の賢者に聞くとあとあと面倒そうだし、まともに教えてくれるとも思えない。
 神奈子については、まともに喋るのはこれが初めてだった。


「しかしこちらも商売だ。納得してやりとりしているつもりだが」


 そもそも早苗のほうから持ちかけてきた話だ。
 どこからか……おそらく魔理沙あたりから、外の世界の道具を扱っている店について聞いてきたのだろう。


「うん、それは聞いてる。だからこそ、思ったのさ」


 神奈子は立派な胸を精一杯張って宣言した。
 まるでそれが、唯一絶対の解であるかのように。


「こっちで男でも作ってしまえば、外の世界に未練もなくなるんじゃないかって」


 ……頭が痛くなってきた。
 疑問が次々湧いてくる。
 とりあえず、まずひとつ。


「何で、僕なんだい?」
「手頃だったから。それに、アンタほど幻想郷を体現している奴ってのもなかなかいないと思ってね」


 つまり彼女はたったそれだけの理由で、人を人生の墓場に連れて行こうとしているわけだ。


「それにこの前早苗が夜遅くに帰ってきたんだ」
「この前……?
 ああ、外の道具についてつい盛り上がってしまった時か。
 そんなに遅くはなかったと思うが」
「なに言ってるんだい。太陽が沈んだらもう遅いだろう。
 それに、その」


 突然神奈子はもじもじと、辺りを伺うような声色になった。


「夜、男女が一緒にいると……子供が出来ちゃうじゃないか!
 もしかして手を繋いだりなんかしたら……。
 これはもう結婚するしかないだろう!」
「……うん?」


 霖之助はいよいよもって首を傾げた。

 わからない。
 この神は本当に外の世界に住んでいたのだろうか。
 たまに疑問に思うときがある。
 あまりにも初心というか……古風過ぎはしないだろうか。

 ……わからないことは考えない。
 適当にあしらうことにした。
 最初からそのつもりではあったのだが。


「わかったわかった……早苗には適当に釘を刺しておくよ。すまなかったね、うん。出口はあちらだよ」
「ちょっと、まだ話を……」


 霖之助は神奈子に背を向け、本の世界に没頭する。

 彼女はしばらく睨んでいたようだが、やがて諦めたようでいつの間にかいなくなっていた。






「で、あれから進展はあったかい?」
「ないよ」


 困ったことに、それから神奈子は毎日やって来た。
 さすが神、と言ったところか。
 全く神出鬼没だ。


「あれだけ一緒にいたら、そろそろ子供が……」
「言うほど一緒にいるわけじゃないんだが……。
 それより、一緒にいるだけで子供が出来るなんて本気で思ってるんじゃないだろうね」
「うん?」


 というか早苗とは別に一緒にいるからと言ってもお互い本を読んでいるだけで、会話がメインではない。
 まあ、感想を言い合ったりはするのだが……。


「そもそもそれを言うなら、最近一番一緒にいるのは君だよ、神奈子」


 それは単なる皮肉のつもりだった。


「えっ……」


 しかし神奈子は言葉を詰まらせ、頬を朱に染める。
 きょろきょろと落ち着かない様子で視線を泳がせ……。


「うん? どうかしたかい」
「えー……いや、なんでも……」


 霖之助は挙動不審な神奈子をさておき、カレンダーに視線を移す。
 曜日を確認。そう言えば今日あたり、早苗が来るはずだった。
 霖之助の頭に、ひとつの策が浮かぶ。


「……うん、そうしよう」


 ちょうど外に目当ての人影が見え、霖之助は行動を開始。
 疑いを晴らすいい機会かもしれない。


「ちょっとこっちに来てくれ」
「え?」


 神奈子の手を引き、店の奥にある居住区へ。
 突然だったので抵抗されるかと思ったが、神奈子は大人しく付いてきた。
 妙に動きがぎこちなかったのが少し気になったが。


「えっと、あの、まだ心の……」
「しばらくここにいてくれ」
「へ?」


 神奈子を放置し、急いで店に戻る。
 ちょうどドアが開き、早苗が入ってくるところだった。


「やあ、待ってたよ」
「いつもすみません。入荷してます?」
「ああ、週刊誌から月刊誌、単行本までね」


 勝手な判断だが、風紀的によろしくない本は除外していた。
 まあ彼女にしても、霖之助の前でそのような本を読むことはないと思うが。

 しばらく本をめくる音だけが店内に響く。


「……少し、聞きたいんだが」
「はい?」


 霖之助はタイミングを見計らって……ちゃんと神奈子が立ち聞きしているのを確認した上で、言葉を切り出した。


「不躾な質問で悪いが、外の世界に未練はないのかい?」
「……無いと言えば嘘になります」


 その言葉に、びくっと身をすくめる影……があったような気がした。


「外の世界に帰りたいと思ったことは?」
「そしたら今度は幻想郷に未練ができちゃいますよ」


 つまり、帰る気はない。
 そういうことらしい。


「今は、信仰を集めることで精一杯です。
 外の世界の人間……その名前が役に立つのなら、そのままでいいんです。
 ……いえ、ずっと私は外の世界の人間なんだと思います」
「ふむ?」


 霖之助は残り少なくなった湯飲みに、急須でお茶をつぎ足す。
 早苗は軽く頭を下げると、言葉を続けた。


「諏訪子様に言われたんです。
 私がなにをやっても幻想郷の人間にはなれない。
 そもそも幻想郷の人間ではないのだから、
 なら外の世界の人間のまま、幻想郷に溶け込めばいいんだって。
 諏訪子様も、昔境遇が変わったとき、神奈子様のおかげで神のままでいられたって感謝してました」


 その環境が変わる原因を作ったのも神奈子なのだが……そこまでは聞かされていないようだった。
 もちろん、霖之助が知る由もなかったが。


「……そうか」
「だから、懐かしくなったら懐かしみますし、外の世界の道具も利用します。帰ることは、ないでしょうけど」


 早苗はうって変わって明るい笑顔を浮かべる。


「なんて、外の漫画を読むための言い訳かもしれませんね」
「いや、構わない。……うん、いいんじゃないかな。いい言葉だ」


 霖之助はひとつ笑うと、とっておきのお茶菓子をサービスすることにした。
 あの霊夢からも隠し通した極上の一品だ。


「ああ、そうだ……」
「はい?」
「結婚に興味はあるかい?」
「え、えええ!?」


 突然の申し出に、混乱する早苗。
 霖之助はただの質問に必要以上に驚かれ、目を白黒させる。


「いえその……まだ早いと思います。もっとお互いを知ってからじゃないと。
 ああいえ、決してダメってわけじゃなくてですね」
「……なにを言っているんだ……」


 早苗は何か勘違いしているようだったが……特に気にすることはないと思い、お茶を口に運んだ。

 まあ、これくらいでいいだろう。
 当初の目的は果たしたはずだ。





 その日、結局早苗は一日落ち着かない様子だった。
 読書も早々に切り上げ、ずっと視線を泳がせていた。

 やけに霖之助をチラチラ見ていたのが気に掛かりはするが。
 ……何か失礼でもあったのだろうか。

 また絶対来ます。
 そう言い切っていたので……大丈夫だろう。


 早苗が帰ったことを確認し、霖之助は店の奥に回る。


「ううう、さなえぇ~……」


 居間で神が号泣していた。
 どこから見つけてきたのか、焼酎の一升瓶を抱えている。


「ほんといい子に育って……」


 そう言ってグビリと酒を呷る。
 とてもではないが、妖怪の山の信仰を一身に受ける姿とは思えなかった。


「これで疑いは晴れただろう」
「いやいや、私はアンタを気に入ったよ。
 あそこまで親身に話を聞いてやれるなんてさ」


 それは早く面倒事を片付けたかったからなのだが。
 ひょっとしてこの神の目は節穴なのかもしれない。
 ……盛大に勘違いして怒鳴り込んでくるほどだから、あながち間違っても居ない気がした。

「いっそ本当に早苗の……」


 婿に、と言いかけた口が閉じる。

 神奈子は霖之助をじっと見つめたまま、しばらく固まっていた。


「なにか?」
「……あー、いや、うん」


 何故か頬を赤らめ、口ごもる神奈子。


「私はアンタを気に入ったよ」


 再び神奈子はそう言った。
 そして逃げるように出口へと向かう。


「あの、さ。また来るよ」
「ああ、その時は歓迎しよう」


 霖之助は神奈子に手を振り……言葉を続けた。
 香霖堂の店主にふさわしい言葉を。


「客としてなら、ね」

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非公開コメント

実に面白い

面白いですねぇ(*^-^)b
神奈子様の乙女もイイですな?
ブンキシャの続きって書かないんですか?是非とも続きをお願いします。

No title

霖之助の話大好きな私はこのサイトを見つけられただけで満足です
次も楽しみにしています

これからもがんばってください!
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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