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非売品の法則

http://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1244039490&log=77
霖之助は枯れているというわけではなく、
好意を持っても心の中に秘めておくタイプかもしれない。
……かもしれない。

あとアリスには眼鏡が似合うと思う。
東方創想話にアップさせていただいたやつです。

霖之助 アリス








 魔法の森の中にある人形屋敷に足を踏み入れると、たくさんの瞳が霖之助を見つめてきた。
 森の中にあるというのに明るく、物は多いが綺麗に整理整頓されている印象を受ける。
 薄暗く雑然とした香霖堂とは正反対だった。


「ご苦労様。荷物はそこに置いてちょうだい」
「ああ、わかった」


 背負っていた荷物を下ろすと、すぐに人形たちが寄ってきて整理を開始した。

 アリスが香霖堂で買ったのは外の世界の服だ。
 破れたりして着用には向かないものがほとんどだったが、アリスは主にそういう物を選んで購入していた。

 着られなくてもデザインの参考になるし、人形用の生地に使う分には十分なのだ。

 外の世界の生地は幻想郷にある物より良い生地を使っている物が多い。
 もちろん、魔力付与などの特殊効果は望むべくも無いが。

 それに端布に近いため、普通の服よりはるかに安い。


「運んでもらって悪いわね」
「君はお得意様だからね。これくらいのことは商売のうちさ。しかし……」


 霖之助は改めて自分が持ってきた荷物を眺めた。
 先ほどから人形たちが片付け続けているのだが、ようやく半分と言ったところか。
 いくら安い服ばかりとはいえ、これだけの量だとそれなりの値段になった。


「ずいぶん羽振りがいいようだね」
「ええ、おかげさまで」


 今回の量は今まで彼女が購入した中でも群を抜いていた。
 そのため霖之助が配達をすることになったのだが……。

 アリスの家に訪れるのは初めてだったため、結局案内を頼むことになってしまった。


「じゃあ、僕はこれで……」
「そこに座ってて。お茶を入れてくるわ」
「あ、ああ……」


 荷物を置いて失礼するつもりだったが、タイミングを逃してしまい、仕方なく腰掛ける。

 妖怪とは言え年頃の女性がこうも簡単に異性を家に上げるのはいかがなものか。
 まあ、もし霖之助が襲おうとしても即座に返り討ちに遭うのがオチだろう。
 もしくはそういう対象と思われてないのか。
 ……両方かもしれない。


 霖之助はそこまで考えて、苦笑を浮かべた。
 やましい下心があるわけではないが、男としてのプライドというものもあるにはある。

 そうでなくてもアリスは美しく、魅力的な少女だ。
 こうやって堂々と部屋に招かれるのも役得ではあるが……少しだけ複雑な気分だった。


「紅茶でいいかしら?」
「ああ、構わないよ」


 キッチンから飛んできたアリスの問いかけに答え……気分を切り替える。

 改めて周囲を見渡すと、主の性格がよく出ている部屋だった。
 人形が綺麗に並んでいて、そのどれもがひとつひとつ違っている。
 先ほどまで荷物を整理していた人形たちも、仕事を終え元の場所に戻ったようだ。

 少し開けたスペースがあるのは裁縫場所だろうか。
 そこだけはやや散らかっていて、作りかけの人形らしきものが数体置いてあった。


「うん?」


 棚の一角に見覚えのある人影が集まっていることに気づく。
 いや、正確には見覚えのある姿をした人形だ。


「これは魔理沙……こっちが霊夢か。
 よく似ているな」


 霖之助は席を立ち棚に近寄る。
 3頭身ほどの人形が並んでいた。
 特徴を上手く掴んでおり、本人を知っている者ならすぐにピンと来る。


「会った人のは一通り作るようにしてるの」


 棚を凝視していた霖之助は、後ろから声をかけられた。
 振り向くと、アリスが紅茶のティーカップをテーブルに置きながら呆れた顔を浮かべている。


「早速女の子の部屋を物色かしら? 感心しないわね」
「あまりにも出来が良かったのでね。我慢できなかった」
「そう」


 彼女はそれ以上何も言ってこなかった。
 許可が出た、と言うことだろう。

 もう一度、じっくりと見渡す。


「なるほど、実在の人物を象っているのか。
 人形の本来の所以であるヒトガタを……」
「そんなに探さなくても、貴方の人形なら無いわよ」
「…………」


 アリスの一言で、霖之助は言葉を切った。
 無言で席に着き、紅茶をすする。

 ややあって、霖之助は憮然とした表情で答えた。


「別に僕はそんなつもりで見てたわけじゃないよ」
「そんなに拗ねなくてもいいじゃない」


 アリスは可笑しそうに笑った。
 笑われているのが自分でなければ見とれていたかもしれない。そんな微笑み。


「作ってないわけじゃないわ。売れちゃったのよ」
「売れた? 人形の販売もしていたのかい?」
「昔はしてなかったんだけど、最近よく頼まれるようになったから……ね」


 そう言ってアリスは裁縫用の机を見た。
 ということは、あそこにあるのは霖之助人形なのかもしれない。


「さっき言ったでしょう? おかげさまで、って」


 つまりあの服を買った資金というのは、霖之助の人形代も含まれていたということだ。


「驚いた?」
「ああ、そんな物好きがいることに、ね」
「あら? 結構人気なのよ?」
「何に使うと言うんだ……」


 アリスはうーん、と考え、ぽんと手を打つ。


「そういえば、夜中に釘を打つ呪いとかもあるらしいわね……」
「やめてくれ、縁起でもない」
「ふふ、冗談よ。そんなことに使う人には売らないわ」


 コロコロと笑うアリス。
 こんな性格の少女だったかと、霖之助は戸惑いを覚えた。

 何というか……いつもより、輝いて見える。


「売れたらすぐに作るのだけど、追いつかないこともあるの」


 アリスが指を振ると、レミリアとフランドールの人形がアリスの裁縫机からふわりと浮かび、棚に収まった。

 そして霖之助に視線を戻し、不機嫌な表情で睨み付ける。


「貴方の服、難しいのよ」
「そうかい?」
「そうよ。しかもちゃんと作れてなかったら文句が来るし。この前も霊……いえ」


 コホン、と咳払い。
 そしてアリスは霖之助を射るような視線で凝視する。


「それで、ちょっと貴方の服を調べさせてほしいの」
「……今から?」
「今以外のいつって言うのよ」


 言うが早いが、霖之助は人形に拘束された。
 袖を掴まれ、立たされる。


「しばらくじっとしてるだけでいいから」


 そう言ってアリスは霖之助の身体を調べ始める。

 何か言おうと思ったが……。
 彼女は上客であり、お得意様だ。
 機嫌を損ねるのは得策ではない。
 それにあくまで霖之助の服に興味があるということはそれも道具屋の商品の一部……だろう。


「ふーん、意外と……そんなに細いわけじゃないのね」
「どこを見ているんだい、君は」
「人形のためよ、人形のね」


 霖之助の自己弁護も、彼女の言葉であっさりと崩れ去った。
 諦めて、しばらくされるがままになることにする。

 別に、危険があるわけではないのだから。


「この箱はなにかしら……?」


 アリスの白いうなじが霖之助の視線にちらつく。
 甘い香りがするのは、密着しているせいか。それとも気のせいか。

 心臓の音が聞こえはしないかと、心の中で焦っていた。
 霖之助だって女性に興味がないわけではない。
 ただ、いろいろと難しいだけなのだ。

 だがそういう感情もやはり男として見られてないだけなのでは、と言う考えに包まれ、複雑な心境に陥る。

 ……道具屋の主人としてはこちらのほうが都合がいいのではないか。
 そう思い直す。が。


「ちょっと襟、見せて」


 アリスは爪先立ちで背伸びをして、霖之助の襟首に手を伸ばした。

 生地の流れを確認しているのだ。

 ……わかってはいるが、端から見ると抱き合うような姿になるため困る。
 大変困る。


「……あー……」
「もういいわ、ありがとう」


 耐えかねて霖之助が口を開いた瞬間、アリスは満足したかのように微笑んだ。
 至近距離で視線が交差。それだけで、何も言えなくなる。

 人形の拘束が解かれ、再び腰を下ろす。
 紅茶はすっかり冷めていたが、今はそれが心地よかった。


「……店に来たとき、服のスペアを渡せば済んだことじゃないかな」
「あら、いいの?」


 ようやく絞り出した言葉に、しかしアリスは関心を示したようだ。


「……まだ必要なのかい?」
「言ったでしょう。難しいのよ、貴方の服は。
 それに人形は、ただ真似ればいいというわけでもないから」


 アリスはそう言って、紙とペンを取り出す。


「さて、忘れないうちにメモしておかないと」


 心から楽しそうに作業する彼女に、やっと平静を取り戻した霖之助は興味を覚えた。


「……真似ればいいものでもない、か。なかなか奥が深そうだ
 僕も少し、人形服を作ってみてもいいかい?」
「あら、出来るのかしら?」
「服を作るくらいなら、ね」


 自分や霊夢の服くらいなら朝飯前だ。
 アリスほどではないが、裁縫にはそこそこ自信があった。


「そうね、たまには別の作者を参考にするのも悪くないわ。
 じゃあ、貴方は自分の服を作ってちょうだい。サイズはこれね」
「わかった」


 頷くと、アリスに導かれるまま裁縫机に向かい合って座る。
 いつも持ち歩いている裁縫セットを取り出し、顔を上げると……。


「うん?」
「なに?」
「いや、眼鏡を……」
「ああこれ? 別に目が悪いわけじゃないわ。集中力が上がる気がするの。
 変……かしら?」
「……いや、そんなことはないよ」


 アリスは少し照れたように、顔を背けた。
 一種の自己暗示、というやつだろうか。
 それにしても、よく似合っている。


「あんまりじっと見ないでよ……」
「あ、ああ……」


 アリスに注意され、霖之助は手元の作業に意識を集中させた。

 ……自分の服を作るというのがこんなに難しいとは。

 まず単純にサイズが小さいというのがひとつ。
 人形がディフォルメされているため、寸法も違う。


「考えたんだが、インナーは人形の頭が通らないかもしれないな」
「前後で裁断して、着せた状態で縫えばいいのよ。上着とかズボンはあとから着けられるでしょ」
「そうか」


 ……どうしてこう、自分は面倒くさい服を着ているんだ。
 文句を言っても始まらない。


「出来たかしら?」
「もうちょっと待ってくれ……」
「早くしないと、貴方の人形、風邪引いちゃうわよ」


 つまり今霖之助人形はなにも着ていないということだ。
 何という羞恥プレイだろうか。


「インナーとかは出来てるから、それを縫っておいてくれ……」


 あとは上着だけなのだが、小物などが多く手間のいる作業が続いていた。


「……これでいいはずだ」


 ようやく完成した上着をアリスに渡す。


「……うん。
 これでよし……と」


 アリスが操ると、霖之助お手製の服を着た霖之助人形は立ち上がってひとつお辞儀。
 そしてミニチュアの椅子に腰掛け、人形用の本を広げた。


「そっくりね」
「……なにも言い返せないがね」


 慣れない仕事をしたせいで、霖之助の身体には疲労がたまっていた。
 しかし心地よい疲労感だ。


「これでひとつやり遂げた気がするな」
「でも人形の服としてはまだまだね。これじゃ売り物にならないわ」
「……精進するよ」


 ただ単に真似ればいいというものではない。
 まさしくその通りのようだ。


「すっかり長居してしまったな。そろそろお暇することにするよ」
「夜道ひとりで平気かしら?」
「無縁塚に比べたら、なんてことはないさ」


 外はすっかり日が落ちており、夜鳥の声が聞こえてきた。
 まあ、夜だといっても霖之助を襲うような物好きな妖怪は居ない。


「そう、残念ね」
「何か言ったかい?」
「何でもないわ。……また寄らせて貰うわね」
「ああ、待ってるよ」









「待ってるよ、か」


 静かになった部屋で、アリスはひとり呟いた。

 その言葉が自分個人に向けられたものならどれだけ嬉しいだろう。
 客というフィルター越しなどではなく、アリス個人に対してなら。


「全く、鈍感すぎるわよ」


 未だ本を読んでいる霖之助人形を指でつつく。

 霖之助が帰った夜道に視線を送っても、窓にはアリスの顔が映るだけ。
 ひとり、眼鏡越しに映る風景はいつもの風景だというのに少しくすんで見えた。


 あの男は、自分がどんな気持ちで部屋に迎えたかなど考えたことはないのだろうか。
 緊張しすぎて、たまに行動がおかしくなってしまった理由など。
 あんなに……密着してしまうなんて。

 変な子だ、と思われたりはしていないだろうか。


 しかし、彼の身体を調べていたときの表情は面白かった。
 きっと自分は男として見られてないのかなど思って、ひとりで浮き沈みしていたに違いない。

 彼がよくわからない自己弁護をしているときの表情はすぐわかる。
 自分では気づいてないのだろうが、霖之助は考えていることが表情に出るタイプだ。
 それに……。

 ずっと、見ていたから。


「戻ってなさい」


 アリスが呟くと、霖之助人形は椅子から立ち上がった。
 そしてそのまま、裁縫机のよく見える位置……アリス人形の隣に鎮座する。


「……ま、これはこれで悪くないわよね。
 売り物には出来ないけど」


 お気に入りを非売品にするのは霖之助の悪い癖だ。
 しかし今のアリスには、その気持ちがよくわかる気がした。





・おまけ絵
 アリスは少し照れたように、顔を背けた。

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