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酉京都幻想 第2話

『酉京都幻想』の続きっぽく。
秘封霖のつもりが蓮子霖になってきた気がする。
あと旧作から岡崎教授。

追記。
おこめさんに挿絵を描いていただきました。
感謝感謝。


霖之助 蓮子 メリー 夢美



PDA! PDA!


「だからね、充電忘れたらただの箱なんだってば」


 霖之助の自室で、蓮子は呆れた表情を浮かべていた。

 手に持っているのは彼のPDA。
 だがその画面は暗く、電源が入っていないことが一目でわかる。


「これ一台でなんでもできるのに、どうして忘れるかなぁ。無いと困るでしょ?」
「いや、別に……」
「私が困るの! 電話とかメールとか……」


 今やひとりに一台となったらしい情報端末は、電話機能も完備であった。

 さすがに通話の着信が来たら霖之助にもわかるのだが、メールの操作がまだよくわからないため放置状態である。
 ……そして、今回は放置しすぎてバッテリーが切れてしまっていた。

 そこを蓮子に見つかってしまったというわけだ。
 どうやら電話をかけても繋がらないことを不審に思ったらしい。


「それに学校の連絡もこれに入るんだから。いざというとき泣きついてきても知らないよ?」
「ふむ、確かにそうだな」


 蓮子は出来の悪い生徒に教える教師のように、腰に手を当て胸を張った。
 お姉さんぶったポーズは、なにやら彼女のお気に入りらしい。


「あ、でも本当に困ったら相談してきていいからね?」


 心配そうに言う蓮子に、彼は苦笑を漏らす。
 なんだかんだ言っても、やはり面倒見がいいのだろう。


「その時は頼むよ」


 霖之助は頷き、彼女の言う通りにケーブルを接続した。
 再起動させ、画面を確認する。


「よろしい。ところで、操作は覚えた?」
「ああ、だいたいは……」


 言いながら、霖之助はPDAをいじる。
 しかしその様子を見て、蓮子はため息を吐いた。


「……嘘吐き。全然じゃない」
「たまたまだよ」


 強がりを言う霖之助だったが、今どういう状態にあるのかわからない。
 幻想郷にも似たような道具は流れ着いていたが、満足に動くものはひとつもなかったため触るのはほぼ初めてなのだ。

 しかしどうやらこの世界では文字通り子供でも知っているらしい。
 そのせいか、マニュアルはひどく不親切なものだった。
 読んだはずなのだが一向に操作できる気がしない。


「ここはメニューに戻ってこうよ。ああ違うって、このボタンを……」
「……なるほど」


 蓮子は霖之助に密着するような姿勢で、操作の手ほどきをする。
 ……何か言おうかと迷った霖之助だったが、彼女の言葉でその機会を逃してしまった。


「あれ? メール来てるよ、霖之助君」
「うん?」


 蓮子はPDAを操作し霖之助のメールを勝手に見ていたようだ。
 見られて困るようなものはないので構わないのだが……。


「岡崎教授からじゃない。何かしたの?」
「岡崎……ああ」


 岡崎夢美。
 比較物理学を教えている大学教授だ。

 この前レポートを出したのだが、どうやらそれについて一言あるらしい。


「明日、研究室まで来いだってさ。
 確認してよかったね。すっぽかしてたら怒られるところだったよ」
「ああ、助かった。何か埋め合わせをしないといけないな」
「そう? じゃあねぇ……あ、そうだ。実は食べたいものがあるのよ」


 う~ん、と考える蓮子は、なにやら思いついたようにぱっと顔を輝かせた。


「あまり高いものは勘弁してくれよ」
「大丈夫大丈夫。カフェのケーキでいいよ」
「そんなものでいいのかい?」
「うん。ただし、一緒に食べてくれることが条件ね」
「ああ、それくらいなら……」
「やった、約束だからね」


 なにやら喜ぶ彼女に、霖之助は首を傾げた。
 ……考えてもわからないので、考えないことにしたが。


「でも霖之助君、あの教授の講義取ってたんだね」
「ああ、何となく気になってね」
「ふ~ん? 私も去年受けてみたけど、たまに魔法がどうとかよくわからないこと言ってたよ。
 授業自体は普通なんだけどね」
「ふむ?」


 魔法と聞いて、霖之助は思わず驚いた表情を浮かべた。
 しかし蓮子は気付かず、PDAに目を落とす。


「ま、いいや。じゃあ、操作のおさらいしよっか」
「了解。ええと、まずは……」


 霖之助は蓮子に教わりながら、PDAを操作していく。
 肌が触れ合わんばかりの距離で。


「どういうことなの……」


 帰ってきたメリーはその光景を見て、呆然と呟いていた。









 普段授業で使う教室から少し離れたところにある研究室棟。
 岡崎夢美教授の研究室は、その中でも一番奥まったところにあった。


「失礼します」
「あら、待ってたわよ。森近霖之助君」


 椅子ごとくるりと振り返り、彼女……夢美は霖之助に視線を向けた。


「前回のレポートで、話したいことがあるとか」
「ええ」


 ひとつ頷き、彼女はじっと霖之助を見つめる。
 燃える情熱を内に宿したような、赤い髪、赤い瞳。

 自前のものかカラーコンタクトかは、見ただけではわからなかった。


「あなた、初等教育からやり直してきたら?」


 あくまで真剣に言われたその一言に、霖之助は肩を竦めた。

 次に言うべき言葉を選ぶ。
 こうなることも、予想していなかったわけではない。


「……何か、レポートに不備でも?」
「不備も何も」


 そう言って、彼女は軽く首を振る。
 不機嫌そうに。そしてどこか、楽しそうに。


「森近。私の講義、ちゃんと聞いていたのかしら」
「…………」


 聞いていた、と答えるのは簡単だった。

 しかしそれでは意味がない。
 結果が伴っていなければ、経過がなんであれ……同じことなのだから。


「これが本試験だったら、不可よ。それどころかどうやって入試試験に受かったか疑問に思うでしょうね。
 でも……」


 なにも答えない霖之助に、彼女は続ける。


「私個人としては、満点をあげたいわね」
「え?」
「あなたの回答、実に私好みだわ」


 驚く彼に、夢美はニヤリと含んだ笑みを浮かべた。
 そして机の上にパソコンを引き寄せる。
 それに映っていたのは先日霖之助が提出したレポートの内容だった。


「ねえ、初等教育からやり直してきたら? きっとその方がいいと思うわ」


 彼女は馬鹿にしているのではなく、心底その方がいいと思っているのだろう。
 そう理解した上で……霖之助は首を振る。


「……僕には時間がないので……」
「ああ、あなた、短期卒業希望だったわね」


 ニーズの多様化したこの世界では、大学の有り様も変化していた。
 霖之助が受けているのは留学生などに使われる1年間の短期修学コースである。

 だから、ではないが。
 さすがに初等部から入り直している時間はないのだ。


「だったら尚更よ。私が教えてあげてもいいけど……どうせその様子だと、他の授業でもこの調子なんでしょ?」
「む……」


 確かに一理あった。
 当然ながら、大学では基礎的なことなど教えてくれない。

 短期間で、霖之助がいた幻想郷とは全く違うこの世界の常識を学ぶのには、効率の良いやり方を取らなければならないのだから。

 しかし。


「対価はなんだい?」
「ふふん、話が早いじゃない」


 彼の言葉に、彼女はますます笑みを深める。


「簡単よ。あなたの考えを聞かせて欲しいだけ。私の理論に関するね」


 そこまで言って、夢美はパソコンの画面を操作した。
 次々と表れる文章。
 おそらくこれらが、彼女の言う理論だろう。


「森近、究極のエネルギーってなんだと思う?」
「究極……ねぇ」


 夢美の質問に、霖之助は地底の烏を思い出した。
 無限の太陽エネルギー。
 確かに彼女は、究極だと言っていた。


「核……とか?」
「……はぁ。本当に、授業を聞いてなかったのかしらね」


 がっくりと肩を落とす夢美。
 なんだか悪いことをした気分になり、霖之助は気まずそうに視線を逸らす。


「いい? 全てのエネルギーは同じものなの。熱、重力、電磁気力、原子間力。全てね。
 そしてそこにあるのはは生産効率の違いでしかないわ。結局、究極なんてものは存在しないのよ。
 だけど」


 そこで彼女は言葉を切り、もったい付けたように間を置いた。
 超統一物理学。この世界ではこの理論が既に常識のようだ。


「もしあったら、魔法みたいだと思わないかしら」
「魔法、ねぇ」


 その言葉に、知り合いの魔法使いを思い出す。

 魔法とは地味なものだ。
 そう、彼女は言っていた。
 努力を重ね、材料を集め、ようやく効果を発することが出来る。

 まるで万能の象徴のように使われるのは、何となく抵抗があった。


「ふふ」


 なにやら笑った夢美に、怪訝な表情を浮かべる霖之助。


「まあ、考えておいてよ。損な話じゃないと思うから」
「ああ、そうさせてもらうよ」


 あえて即答は避け、霖之助は踵を返す。


「ようご主人……おっと客か、邪魔するぜ」


 すると、ちょうど部屋に入ってきた金髪の少女とすれ違った。

 思わずハッとして注視してしまう。
 セーラー服だろうか。
 金色の髪をツインテールにして、白い服にキュロットといういでたち。


「なんだなんだ? 私の顔がどうかしたか?」
「いや、すまない」


 霖之助は彼女から視線を外し、頭を下げる。


「……知り合いの少女に、似てたものでね」


 金髪と口調だけだというのに、何となく懐かしい気分になっていた。
 まだひと月も経っていないというのに。


「ふぅん、けったいな知り合いがいるのね」
「ひどいぜ」


 夢美の言葉に、拗ねたように唇を尖らせる少女。
 そんな彼女と霖之助を見比べ、夢美は口を開いた。


「この子はちゆり。私の助手よ」
「森近霖之助だ。すまなかったね」
「気にしてないぜ。北白河ちゆりだ。よろしく」


 さばさばとしたその仕草に、霖之助は会釈を返した。
 そういえば、彼女の講義を手伝っていた気がする。

 遠かったし喋らなかったので、こんな少女だったとは気づかなかった。


「ついでに、さっきの話だけど」


 そのまま部屋を出て行こうとドアに手をかけたところで……背中に声がかかる。


「魔法と聞いて笑わなかったのは、あなたがふたり目よ」


 彼女の声は、喜びを含んでいるように聞こえた。
 まるで探し物を見つけた、子供のように。


「普通の人は、鼻で笑うか……そもそも話を聞かないわ。
 だけど森近はそのどちらでもなかった。むしろ納得してたようにも見えた。
 まるで魔法を知ってるみたいに」
「……気のせいだよ」


 振り向かないまま、霖之助は首を振る。
 あまり深く関わるべきではないのかもしれない。


「森近、量子論くらいはわかるかしら」
「……まあ、本に書いてあったことなら」
「十分よ。電子なんかは観測しなければ確率でしか存在し得ないってことまではいいわね」
「ああ」


 量子論の本はいくつか流れ着いていたし、読んだこともある。
 曰く、『この世の物質は全て確率で存在しているというのは既に常織である』らしい。
 時代は少々違うようだが、ここもおそらく同じだろう。
 いや、むしろ超統一物理学を見る限りそれ以上か。


「じゃあ逆に言うと、確認されることで初めて確定され、力を持つと言えるんじゃないかしら。
 ……まるで信仰と神みたいよね」


 彼女の言葉に、霖之助は口を開きかけ……やめた。
 大きなため息とともに、言葉を吐き出す。


「何を言っているのか、わからないな」
「そうね。そういうことにしておきましょうか」


 楽しそうな夢美の声に、そこでようやく霖之助は振り返った。
 気になっていたことがひとつある。


「魔法のこと、僕でふたり目と言ったね。ちなみに、もうひとりは?」
「マエリベリー……だったかしら」
「なるほど」


 その言葉でだいたいわかった。
 霖之助は一礼し、研究室をあとにする。


「今の、誰だ?」
「そうね……」


 彼が出て行った扉を見つめたまま、ちゆりが首を傾げた。
 その言葉に、夢美は少し考え、口を開く。


「私の探し求めていた相手かしら」
「はぁ?」


 夢美の言葉に、ちゆりは驚愕の表情を浮かべていた。









「あ、霖之助君。もう、やっと出て来た」


 研究棟を出ると、見知った顔が出迎えた。
 蓮子は少し怒ったように霖之助に近づいてくる。


「蓮子。待ってたのかい?」
「うん。授業もなかったし、一緒に帰ろうと思って」
「それはすまなかったね」


 彼女の顔を見て安心する自分に、霖之助は思わず苦笑を浮かべた。
 いつの間にやら、この世界にもすっかり慣れてしまっているらしい。
 先ほどちゆりを見て、幻想郷を懐かしがっていたというのに。


「そう言えば、メリーはいないのかい?」
「バイトだって。どこ行ってるかは知らないけど」


 大学の授業は選択式である。
 なるべく時間をあわせるらしいのだが、当然修得する講義によって違いは出てくるわけで。
 週に何度かは、こういう日があった。


「私もバイト探してるんだけど、なかなかいいのがなくてね」
「ほう? 何か必要なものがあるのかい?」
「ううん、買い物じゃなくて、メリーと月面旅行の資金を貯めようとしてたんだけど」
「月面か……」


 霖之助は空を見上げた。
 太陽はようやく西に傾きかけたところで、まだまだ星空は遠い。

 それでも遙かな宇宙の存在は感じることが出来た。
 太陽、月、星。
 空が見えている限り、いつもそこにあるのだから。


「でも高いのよね、さすがに。普通のバイトじゃとても貯まりそうにないよ」
「そんなにするのか」
「そうだ、霖之助君も一緒にどう? 宇宙旅行に3人でさ」
「構わないよ。機会があればね」


 頷く霖之助に、しかし蓮子は首を振る。


「ダメだよ、霖之助君。機会は待つものじゃなくて作るものなんだから」
「……ああ」


 彼女の言葉に、霖之助は苦笑を浮かべた。
 確かに、その通りだ。


「そうだな。努力してみよう」
「やった。約束だからね」


 蓮子は嬉しそうに笑う。
 その笑顔を見ていると、思わず霖之助も笑顔になりそうな……そんな表情だった。


「ところで、教授の話ってなんだったの?」
「初等部からやり直したらどうだ、だそうだ」
「なにそれ、ひどーい。でも確かに霖之助君、いろいろ抜けてるからねー」


 蓮子にもそう思われていたらしい。
 これはどうやら深刻なようだ。


「私が教えてあげるよ、勉強」
「蓮子が?」


 突然の申し出に、霖之助は目を瞬かせる。
 そんな彼に、蓮子は自信たっぷりに胸を張った。


「これでも物理はちょっとしたものだし、一般科目なら大学クラスまでばっちりだよ」
「ふむ」


 そこまで言って、蓮子は首を振る。
 まるでどうでもいい、と言わんばかりに。


「それよりさ、バイト探そうよ」
「バイト? いやしかし、僕は学ぶためにだね」
「何言ってるの、バイトも立派な勉強だって。ね?」
「それはそうかもしれないが……」
「じゃ決定ね。さっそく情報見にかなくちゃ」
「端末じゃダメなのかい?」
「それじゃ気分が出ないじゃない」
「……なんだいそれは」


 蓮子に手を引かれながらも、霖之助は笑っていた。
 こういうのも悪くない、と考えつつ。

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No title

メリーの出番がwww

No title

メリーの扱いが紫ポジションになってきたwwwww

No title

熱、重力、電磁気力、原子間力。
と聞いて某ビッグワンを思い浮かべたのは俺だけ?

No title

メリーに紫ポジションがついて放置状態にw
そしてこれはぜひともシリーズ化してほしいですねぇ(チラ

メリーはアワレにもヒロインの役目を果たせずくずれかけていた

それにしても霖之助の旗揚げ能力は外の世界でも健在ですな…!

No title

メリーがディスられた!?
しかし…やっぱり来たか、この2人w
旧作を紅魔郷の1年前と仮定して、星蓮船時点で7年経ってるわけで、
そうなると今は夢美が25歳でちゆりが22歳…きっと綺麗になってるんだろうなー…

No title

やった!まさかの続きが来たw

面白かったです。
メリーがんばれww

No title

メリーは犠牲になったのだ…蓮霖…その引き立て役にな…

シリーズ化(ボソッ

No title

まさかの蓮夢霖!

No title

霖之助と秘封倶楽部との絡みは少ないので期待

メリーェ・・・

新しいシリーズの幕開けだな…
早く続きがみたいぜ!

No title

なぜだ、2828が止まらないッ!?!?
すごく面白かったですw しかしメリーの空気具合がひどいww
続きに期待!

No title

秘封霖の続きが!
意外といい組み合わせの蓮霖に2828が(ry

メリーェ……。

No title

ミンサガとエ○ゲにかまけて更新を見逃すとは、何たる不覚…!
それはともかく蓮霖と夢霖とかわいそうなメリー美味しかったです。
おこめさんの絵も可愛らしくて私は、私はもう…!
やっぱり蓮霖(と慧霖)はもっと増えるべきだと思います。

No title

はじめまして。
霖之助と蓮子というコレだけで自分はヨダレものなのに
教授まで登場してもう次が楽しみでしかたがありません。
これからもがんばってくださいね^^
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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