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愉快な命蓮寺一家05

すでに1時間じゃなくなってる気もするけどわりと適当な感じで。
雪ぼこりさんからお題を貰いました。

お題は
・緑茶
・片思い
・背比べ
・月明かり
・日曜大工

ということでいつも通りの白霖。


霖之助 白蓮





「もうちょっと左……あ、ちょっと行きすぎですよ」
「ふむ、こうかい?」
「ええ、そこで少し待っていて下さい」


 一輪の声に導かれるようにして、霖之助は障子を抱え上げた。

 紙を貼り替えたばかりの障子は真新しく、見ていて気持ちがいい。
 ……好きで貼り替えたわけではないのだが。

 そもそもどうして霖之助が命蓮寺の補修作業を手伝うハメになったのか。

 ため息を吐きそうになった時、背後から声がかかる。


「おや、精が出るね。霖之助君」
「そうなのよ。けっこう重くて疲れちゃうわ」
「一輪、君はほとんどなにもしてないじゃないか」
「してるじゃない、雲山が」


 霖之助は相方……障子の反対側を押さえている雲山と目を合わせ、肩を竦めた。
 入道使いの仕事であることには違いないのだが。

 だからと言って働いていると言っていいかは甚だ疑問である。


「そもそもの原因は君たちだろうに。
 で、ナズーリンは何をしているんだい?」
「なに、聖に頼まれた物を探しに行くところさ」


 そう言ってナズーリンは手に持ったダウジングロッドを少し持ち上げた。
 なるほど、探索中らしい。


「じゃあもうひとりの原因はどこに行ったのかな」
「さあ、別の用事を頼まれていたみたいだがね」


 そもそもの原因。
 それはぬえとナズーリンが背比べをしていたことだ。

 どうしてそうなったかはわからないが、ふたりで柱に印を付けて背を比べていたらしい。
 ……そこまでは微笑ましい話なのだが。

 背の高さ自体はほぼ同じで、耳の差でナズーリンが圧勝……というところにぬえが待ったをかけた。
 耳をカウントするかどうかで揉め、弾幕ごっこで決着を付けることにしたという結果。

 庭だけに留まらず、廊下や障子まで被害を被ったというわけだ。


「それにしても、なかなか日曜大工姿が板についているね」
「ああ、まあ、日用品を作るのは慣れているからね」


 古道具を扱う香霖堂では、商品の補修も業務の内である。
 人間の職人があまり行きたがらない場所……例えば紅魔館などに補修で呼ばれることもたまにあるのだ。

 しかしナズーリンはくつくつという笑いをこぼし、首を振った。


「ああ、お似合いさ。
 まるで休日のお父さんみたいだよ」
「休日の……?」


 日曜大工。
 いや確かに、日曜ではあるのだが。


「すると私が次女あたりかしら」
「私は末っ子かな。
 子沢山だね、霖之助君」
「勝手に話を進めないでくれ」


 ふたりの会話を遮るように、霖之助が声を上げる。

 基本的に少女達の話を放っておくとロクなことはない。
 止めたところで大して意味がないことも多いのだが。


「だいたい母は誰になるんだ」
「誰って、そりゃあ……」
「……ねぇ」


 ふたりは顔を見合わせ、改めて霖之助を見た。
 そして長々とため息。

 まるでわかってないのは霖之助だけだ、と言わんばかりに。


「じゃあ、私は仕事の続きをするから、後は任せたよ」
「ええ。あなたの尻ぬぐいはしっかりとやっておくわ。雲山が」
「……出来れば君がやってくれるといいんだがね」


 言って、ナズーリンはいずこかへと去っていく。
 そして一輪は霖之助に振り返った。


「あ、お父さん。次はこっちの障子を直したいんですけど」
「誰がお父さんか」


 今まさに新たな事実が捏造されようとしていた。
 霖之助は首を振り……。


「霖之助ー!」
「ぐっ」


 後ろから訪れた衝撃に、思わず息を詰まらせる。


「ぬえ、頼むからいきなり飛びかかってくるのは止めてくれないか」
「ん?」


 ぬえは霖之助の頭に抱きついた格好のまま小首を傾げた。
 仕方なく霖之助はくるりと反転する。


「一輪、頼む」
「はいはい」


 一輪は頷き、雲山に何かを伝えた。

 すると雲山はぬえの首筋を掴み、霖之助から引き剥がす。
 子猫のように宙ぶらりんになったぬえは、しかし気にした素振りも見せずに疑問符を浮かべる。


「えーと、なにしに来たんだっけ」
「忘れたのか……」
「ちょっと待って。思い出すから。
 確かねぇ、聖に言われてアレをソレして……あ、思い出した」


 言って、ぬえは懐から巻き尺を取り出した。
 ニヤリと笑い、一輪に目配せ。


「ちょっと霖之助を抑えてて」
「はいはい」
「はいはいじゃないよ、一輪」


 まさかの裏切りに、霖之助は戦慄した。
 雲山はすまなそうな表情をしながらも、霖之助を押さえつける。


「おっけー。バッチリ測ったよ」
「あれ? もういいの?」
「他に何をすると言うんだ。
 いいから離してくれ」
「残念」


 何が残念なのだろう。
 ……怖いので聞かなかったが。


「聖のところに行ってくる
 じゃあまたあとでねー」


 来た時と同じように、突然ぬえは去っていった。


「ところでさっきの衝撃でまた障子紙が破けたんですけど」
「……わかったよ」


 せっかくはめ込んだ障子だったが……。
 霖之助は雲山とシンクロするように、肩を竦めた。









 月明かりの下、霖之助は命蓮寺の縁側に座っていた。


「お疲れ様でした、霖之助さん」
「すまないね。ありがとう」
「いえ、お礼を言うのはこちらですよ。
 すっかり手伝ってもらいまして……」


 白蓮から緑茶を受け取り、霖之助は一息吐いた。

 結局、障子の修理から庭の整理。
 はては水蜜の部屋の模様替えまで手伝わされた気がする。


 ていよく一足早めの大掃除に駆り出されたような感じではあるが。
 魔界の道具をいくつかもらったので、まあよしとしよう。


「なかなか賑やかだったよ」
「お恥ずかしい……」


 霖之助の言葉に、白蓮は頬を染めた。

 少し離れたところでは、いまだ騒がしい声が響いている。
 先ほどまで夕食をご馳走になったのだが、先に失礼してきたのだ。


「きちんと言う事を聞いてくれればまだいいんだがね。
 毎日大変だろう」
「かわいい娘だと思えば苦にはなりませんよ」
「娘、ね」


 今日は随分縁のある言葉らしい。
 霖之助は呟くと、緑茶に口をつけた。


「親は子供に片思いしているようなもの、らしいですよ」
「違いない」


 例え振り向いてくれても、想い続けるのだろう。
 ……霖之助にもまあ、似たような相手はいる。


「だがどうしてかな。
 不思議と嫌いじゃないよ。ああいう雰囲気はね」
「そう言っていただけると助かります」


 心底安心した表情で、白蓮は笑みを浮かべた。

 そんな彼女に、霖之助はひとつ疑問を投げかける。


「この服、君の弟君のものと聞いたが」
「ええ。倉に眠っていたのをナズーリンが見つけてきたんですよ」


 今霖之助が来ているのは古い僧衣だった。

 ナズーリンが探して来て、ぬえが寸法を調べたものだ。
 元々着物という物は融通が利くように出来ているため、比較的長身の霖之助でも着ることが出来た。


「よくお似合いですよ、霖之助さん」
「命蓮といったかな、弟君は」
「ええ」


 頷く彼女に、霖之助は言いよどんだ。

 白蓮の瞳の奥にある光。
 軽々しく踏み込んでいい領域ではないが……。

 しばらく間を開け……口を開く。


「僕は、彼に似ているのかな?」


 命蓮寺はお得意様だった。
 それもこれも、白蓮が霖之助によくしてくれるからだ。

 だがそれが弟に似ているからだというのなら。
 思い出させてしまうのなら。

 もしそうなら……。


「いいえ」


 しかし、彼女はきっぱりと首を振る。


「似ても似つきませんよ。あなたと命蓮は」
「そうか」


 縁起などによると、命蓮という僧は豪快な人物だったらしい。
 確かに霖之助と似てはいないだろう。


「ですが……きっとあなたと同じことを言ったと思いますよ」


 そう言って、白蓮は霖之助の服に手を添えた。
 命蓮が着ていたという服。


「道具は使ってこそ、ですから。
 服もそうだと思いますよ」
「そうだね」


 霖之助は頷き、白蓮に向き直る。


「君の弟君は、立派な人物だったんだろうな。
 一度会ってみたかったよ」
「どうでしょうか。
 確かに面白い子でしたけど」


 そう言って彼女は微笑んだ。
 懐かしむような瞳。
 だが、そこに未練はない。


「ご主人、なんでそこで転ぶんだ!」
「え? いやあの、すみません……」


 近くの部屋から喧噪が聞こえてきた。
 どうやらまた何かやらかしたらしい。


「片思いの相手が呼んでるみたいだよ」
「そうですね。じゃあ行きましょうか」
「僕もかい?」
「ダメですか?」


 笑いながら問う彼女に、霖之助は立ち上がった。


「これも仕事のアフターケアにしておくよ。
 と言うか、これ以上障子を破かれてはたまらないからね」
「ふふっ」


 苦笑しながら歩く彼の背中を見つめ……。
 白蓮はそっと、口を開く。


「片思いしているのは子供にだけではないんですけどね」


 彼女の呟きは夜風に流れ……。
 誰にも届くことなく、消えていった。

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