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ワンダフルデイズ

今日は数年ぶりの皆既月蝕かつ赤い月だったそうで。
そしてyamotoさんに首輪ネタを振られたので。
ウフフ。


霖之助 咲夜









「開いてるわよね?」
「珍しい挨拶だね。
 終業の札を下げておいたはずだが」


 霖之助はため息を吐きながら、声のするほうに向き直った。

 いつの間にか立っていたのは、紅魔館のメイド長だ。
 突然の出来事だが……以前より驚かなくなったのは、慣れのなせる業か。


「でも、明かりがついてましたよ?
 前来た時とは入りやすさが雲泥の差ですわ」
「今まさに消すところだったんがね。
 それに、どっちにしろ不法侵入だ」


 彼女の言葉に、肩を竦める霖之助。
 きちんと入り口の鍵もかけたはずなのだが。

 とはいえ時間と空間を操る彼女のことだ。
 小さな隙間さえあれば、そこは彼女にとって大通りと同じことである。


「あら、では店主さんはこの寒空の中来客を追い出すのかしら」
「客を追い出したりはしないさ。
 ……客ならね」


 既にストーブは消してはいたが、霖之助は改めて火を入れる。
 何となく、話が長くなりそうな気がした。

 まあ、お客ならいつでも歓迎ではあるし。


「で、今日は何の用だい?」


 お茶を用意し、ストーブと部屋が温まってきた頃にようやく声をかける。
 と言ってもさっきまでつけていたので、それほど時間はかからなかった。


「はい、買いたいものと売りたいものがありまして」
「ふむ……じゃあ先に、売りたいものから聞こうか。
 金額によっては君の欲しいものと相殺してもいい」


 咲夜のあげたふたつの提案に、霖之助は少し考えた。

 物々交換は時として金銭以上の価値を生むことがある。
 もちろん買う側の目利きも必要とされるが、それはそれ。

 伊達に古道具屋の店主を名乗ってはいない。


「ええ、実はですね。
 油を買って頂きたいんですよ」
「……それはつまり、暇を潰しに来たということかい?」


 この店では労働力を対価とすることも珍しくはない。
 それどころか油の押し売りも珍しくはないのだが……。

 香霖堂の数少ない上客である彼女がそんなことを言うのは初めてだった。


「知ってます?
 今日は満月で月蝕で赤い月なんです」
「ああ、聞いてるよ」


 数年に一度。
 いや、この条件が重なることは滅多にないかもしれない。

 幻想郷の妖怪達はどこか浮き足立ち、それに伴い幻想郷の巫女も大忙しのようだ。
 今頃そこかしこで小規模な異変が起こっていることだろう。


「そう言えば、君の主人の姿が見えないね」
「はい、こんなに月が赤いから本気で遊んでくるそうで。
 今頃神社にでも行ってるんじゃないでしょうか」
「……なるほどね」


 彼女の言葉に、霖之助は肩を竦める。
 明日あたり、服を直してと霊夢がやってくるだろうことが容易に予想できた。

 無論、代金はツケで。


「私は置いて行かれました。お嬢様が霊夢とふたりだけで遊びたいと仰って」


 邪魔されずに、ということだろう。

 まあ、あの吸血鬼のことだ。
 咲夜を置いていったのには何か理由があると思うが。


「パチュリー様も魔法使いを集めてなにやら実験を試みるらしいですわ。
 なんでも滅多にないチャンスだとか……」
「ああ……それでか」


 そう言えば魔理沙もなにやら騒いでいた気がする。

 月の満ち欠けは魔術にも重要な要素だ。
 特に星の魔法をメインにする魔理沙には欠かせないイベントだろう。


「そんなわけで、私はお屋敷を追い出された私なのですよ」
「追い出された?」
「今日くらい大人しくしていろ、だそうです」
「ふむ。それで君はここに来たわけか」
「そういうことです。
 まあ、買いたいものもありましたし」


 ていのいい休暇ともいえなくもない。
 そんな時でも買い出しをするのは、さすがメイド長と言うべきか。

 咲夜は店内をぐるりと見渡し……笑顔を浮かべて、言葉を続けた。


「それでですね、今日はここに泊めて頂きたいと思いまして。
 ああ安心してください。眠る気はありませんので。
 時間の許す限り珍しい物を探そうかと。
 今夜は寝かせませんよ?」
「……まさかそれを言われる側に回るとは思わなかったよ」


 霖之助はため息を吐き……ふと、口を開く。


「しかし、満月で月蝕で赤い月か」


 視線を目の前の少女に送り、失礼にならない程度に観察。


「君は大丈夫なのかい?」
「はい?」


 首を傾げる彼女に、霖之助は言葉を続けた。


「満月は妖怪のみならず人間にも少なからず影響を及ぼすはずだが……」


 見たところ、特にいつもと変わった様子はない。


「私はこの通り、元気ですよ?」
「そのようだね」


 霖之助は頷き、息を吐いた。
 要らぬ心配だったのだろう。

 そんな彼に、今度は咲夜が疑問符を浮かべる。


「店主さんは、お変わりないのですか?」
「あいにく僕は流行に疎くてね。
 なんと言っても、古道具屋の主人だから」
「なるほど。つまり鈍感というわけですね」
「……間違っていないが、なにか引っかかるね」
「気のせいですわ」


 完璧な笑みを浮かべる咲夜に、霖之助は肩を竦めた。


「それにしても、もし僕が月に影響されでもしていたらどうするつもりだったんだい?」
「あら、それもそうですね。考えてませんでした」


 危機感のない顔。
 もっとも、彼女が危機を感じる場面をあまり想像できないが。


「もしかして、身の危険を感じたほうがよかったのでしょうか」
「……僕が多少どうこうなった程度で、どうにか出来る相手にも思えないが」
「こういう場合はもうちょっとムードを重視すべきだと思いますよ」


 唇を尖らせる咲夜に、苦笑を漏らす霖之助。
 どうにかして欲しかったのだろうか……と考えたが、止めた。
 さすがに目の前の少女でそう言った想像をするのは憚られる。

 話している間にすっかり冷めてしまったお茶を入れ替え、口を付けた。


「まあ油を買うのはいいが、それ相応の注文を持ってきたんだろうね?」
「ええ、そう仰ると思ってしっかりまとめてきましたわ」


 咲夜の書いたらしきメモを受け取り……霖之助は思わず目を丸くした。
 彼の驚いた顔を珍しいと思ったのか、咲夜が少しだけ笑みを浮かべる。


「随分大荷物だな」
「実は今度、紅魔館でクリスマスパーティを行おうと思いまして」
「……なんだって?」
「あら、ご存じないのですか? クリスマスですよ、クリスマス」
「いや、知ってはいるが……吸血鬼だろう? 君の主は」
「はい、そうですけど」


 何を今更、と言った様子で聞き返す彼女に、霖之助は呆れを通り越して笑ってしまった。


 吸血鬼は十字架に弱いとかいう弱点があったはずなのだが。
 ……レミリアは、どうだったか。


「お祭りはみんなで楽しむものだって、お嬢様が」
「……なるほどね」


 幻想郷の住人ということだ。
 彼女も、彼女の主も。

 そして……それはとてもいいことに思えた。


「了解。これだけの注文だ。
 一晩と言わず何日だって付き合おう」
「あら、口がお上手ですね。
 でも残念ながら、私はそんなに暇じゃないんですよ。
 まずはお店の中を見せてもらいますね」
「ああ」


 咲夜はお茶のカップを置くと、静かに立ち上がった。

 足音も立てずに店内を歩く。
 少し広がったスカートが商品に当たらないのもさすがと言うべきか。


「赤い月、赤い月ー。
 罪を犯した者共の、汚れを清める赤い月ー」


 なにやら歌を口ずさみながら、彼女は商品を見て回る。

 霖之助はそんな彼女を眺めつつ……ふと、言葉を発した。


「しかしクリスマスか。
 もうそんな時期なんだな……なんだか今年もあっという間だったよ」
「あら、おじいさんみたいなセリフですね」


 クスリと笑う彼女に、霖之助も苦笑で返す。
 そしてふと、おじいさんという言葉にクリスマスのもうひとつのイベントが思い浮かんだ。


「そうだ、せっかくだから何かプレゼントをあげよう」
「いいんですか?」
「ああ、大口の注文だったし……」


 頷きかけて……付け加える。


「……その辺の商品棚にあるものなら」


 その仕草に、咲夜はやや肩を竦めた。
 霖之助が指したのは、あまり高くないものが並べられたゾーンだ。

 もちろん彼女にもそれがわかっているのだろう。


「そうですねぇ……」


 咲夜は頬に人差し指を当て、少し首を傾げる。


「じゃあこれにします」


 次の瞬間、彼女の手にはなにやら小さいものが握られていた。
 やけに見覚えのある品物だ。

 彼女はそれを慣れた手つきで自分の首に付け……。


「って、僕のチョーカーじゃないか」
「ダメですか?」
「あいにくだがそれは売り物じゃないんだよ」
「そうですか、残念です」


 それはいつも通りのイタズラだったのかもしれない。
 あっさりとチョーカーを元に戻し、咲夜はなにやら選ぶことしばし。


「じゃあ、これにしますね」


 これとは言ったものの、咲夜の手にあるのはきちんとラッピングされた包みだった。
 自分で包装したのだろうか。

 そのせいで、中の品物が何なのか窺い知ることが出来ない。


「何を選んだんだい?」
「サンタさんからのプレゼントは、当日まで秘密ですわ」
「サンタは僕だろうに」


 霖之助はため息を吐くが……このメイドにダメと言っても、結局持っていくから困る。
 とはいえ無断で高価なものを持ち出しはしないし、おそらくあれも棚から選んだものなのだろう。

 たぶん。


「心配ならさなくても、たいして価値のあるものではないですよ」
「そうかい?」
「ええ。店主さんには、ですけど。
 強いて言うなら、そのチョーカーと似たようなものですわ」
「チョーカーと、ねぇ」


 咲夜はそう言って、大事そうにその包みをしまい込む。
 それでこの話はおしまいらしい。

 同時に店内の物色も終わったようで、彼女は再びカウンターの前に腰掛けた。


「さて、何か珍しい物は入荷したかしら?」
「君のお眼鏡に叶うようなもの、ねぇ」


 考え込む霖之助を見つめながら、咲夜は微笑む。


「今度は貴方の眼鏡を取ってみようかしら」
「やめてくれ。
 そうだな……例えば」


 霖之助は改めて、咲夜との会話に乗り出すことにした。











「ただいま」
「おかえりなさいませ、お嬢様」


 紅魔館の入り口で、主を出迎える。

 赤い吸血鬼の服は破れ、炭化さえもしていたが……肉体に損傷はない。
 いや、もう完治したのだろう。

 咲夜は無言でレミリアを浴場へ案内した。
 そこには替えの服も用意してある。

 全て予想済のことだった。
 レミリア風に言うなら、運命通りだろうか。


「あら、咲夜。首に付けてるのって……」
「はい、これですか?
 香霖堂さんからのプレゼントです」
「プレゼントって、それ……」


 レミリアの視線に、咲夜は完璧な笑顔で答えた。

 咲夜が付けているのは、香霖堂にあった犬用の首輪。
 霖之助のチョーカー代わりに拝借したものだ。


「私にふさわしいかと思いまして」
「……ジョークの効いた飾りにしてもエキセントリックすぎるわね」


 主の苦い顔に、咲夜は満足げに頷いた。

 クリスマスまで、サンタには……サンタに対してだけは秘密なのだ。
 それまでにどんな噂になるかは別問題として。


「似合ってますでしょう?」


 何か言いたそうなレミリアに、咲夜は澄まし顔で入浴を勧める。


 ……ああ、ひょっとしたら。
 自分も赤い月の毒気に当てられてたのかもしれない。


 ちょっとだけ、そんな事を思いながら。

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非公開コメント

No title

咲夜ちゃんが小悪魔モードにw
しかも、きっとかわいいだろうから困るw

No title

>「今度は貴方の眼鏡を取ってみようかしら」

と き め い て し ね

No title

首輪咲夜!素敵です。
今咲夜さんモデルを作っているわけですが、思わず首輪etc差分を作ってしまいました。
http://thelongestmarch.blog2.fc2.com/blog-category-9.html

赤い月は人間をも狂わせますか。

No title

まさかのディスガイアネタですかw
相変わらずいい感じに小ネタが入りますねw

No title

おや、ディスガイアっスか?
赤い月懐かしいですねー
やっぱアレですよ客と店主って言う関係性とかそこから二三歩進んだ理解しあう関係ってああもう……
咲霖最高!
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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