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ブンキシャ! 第02話

好調な再スタートを見せた文々。新聞だったが、
阿求に急用が出来てしまい一回休み。
霖之助は魔理沙にヘルプを頼む。

起承転結の承。

霖之助 文 阿求 魔理沙








 霖之助と阿求が協力した文々。新聞の発行も4回目となり、読者数も確実に増加。
 すべてが順風満帆に見えた矢先のことだった。


「無理?」
「すみません、霖之助さん」


 原稿を取りに来た霖之助に、申し訳なさそうに頭を下げる阿求。
 その手は休むことなく筆と紙に向かっている。


「この通り、飛び込みの仕事が立て続けに入ってしまいまして……」


 阿求の視線の先には、伝票が山のように積まれていた。

 文々。新聞に連載記事と広告を載せたことにより、阿求への仕事の依頼が一時的に増えたのだ。
 幻想郷縁起の写本を求める声や文学に興味を持つ人間が増えたのは喜ばしいことかもしれないが、量が量である。
 人里には印刷技術など無いため手で書き写すしかなく、阿求もその対応に追われていた。
 さすがに割引券をつけたのはやり過ぎだったかもしれない。


「いや、もともと飛び入りなのはこちらも同じだから。また時間があるときに頼むこととするよ」
「はい……。でも休むことになった私がいうのもなんですが」


 阿求はやや恨みがましい瞳で霖之助を見る。


「霖之助さんが連載持ってなければ、写本を手伝わせてるところですよ」


 さすがに文よりこっちを手伝え、とは言わないらしい。
 稗田家に丁稚していた時にさんざん仕込まれたため、阿求の手伝いは出来るのだが。


「早く終わったら手伝いに来ることにするよ」
「ええ、期待しないで待ってます」


 霖之助の苦笑いに、阿求はため息で答えた。



     ☆



「なかなか難しいものですね」


 稗田の屋敷を出たところで文がスイッと寄ってきた。
 屋根の上あたりで待っていたらしい。

 新聞配達で人里によく現れているためか、
飛んでいる文を見ても周囲の人間が驚いた様子はない。
 人里に最も近い天狗とはよく言ったものだ。


「これも世の流れさ。しかし阿求の分の紙面を埋めないといけないな」
「そうですねえ。いざとなったら全部私が書いてもいいんですが」
「いざとなったら……ね」
「む、何か言いたそうですね」


 霖之助の返答が気に入らなかったのか、頬をふくらせる文。

 実際、文の担当している記事も悪い評判ではない。
 ないのだが……緩急というか、メリハリがなくなるのだ。
 阿求の記事で興味を持った読者なら読むだろうが、
文の記事単体では果たしてどうなることか。


「とにかくまだ次号まで間がありますし、ゆっくり考えたらいいんですよ。
 あ、あそこのお店新商品が出てますね」


 目ざとく見つけ、駆け寄っていく。
 瞳をキラキラさせながら商品を物色する文はどこか幼く見え、
霖之助は魔理沙の小さい頃を思い出した。


「人里のことも記事にするのかい?」
「使えるかどうかは二の次で、ネタがあったら拾っておかないとダメなんですよ。
 真実はどこに転がっているかわかりませんからね」


 この姿勢は大した物だと思う。
 惜しむらくは、ほとんど空回りしていると言うことだろうか。


「あ、このキュウリは安い割に質がいいですね……。
 にとりのお土産に持って行こうかな」
「真実探しじゃなかったのかい?」
「場合によってはこの射命丸自身が真実です」


 とんでもないことを言いつつ、文は次の店へと駆けて行った。
 ジャーナリストの使命とやらは一体どこに行ったのだろう。

 霖之助は一言言おうとして……やめた。
 せっかく昔懐かしい感じを思い出したのだし。
 しばらくネタ集めとやらに付き合うのも悪くない。


「じゃあ、しばらくそれに付き合うとしようか」
「あやややや、今日の霖之助さんは妙に優しいですね」


 驚いている文だったが、まんざらでもない様子だ。


「霖之助さん」
「なんだい」
「こうやって町中をふたりで歩いているとまるで……あやや、何でもありません」


 顔を真っ赤にした文が背中をバシバシと叩く。
 霖之助は困惑した表情で、されるがままになっていた。



     ☆



 香霖堂にてふたり向き合い、頭を悩ませる。

 阿求の代わりというのはなかなか難題だった。
 すでにひとつ連載を抱えている霖之助では無理。
 そもそも同じ人物が描いたところで新規層を獲得できるとは思えない。
 同じ理由で文も不可。さらに彼女では以前の状態に戻ってしまう。


「やはり、誰か別の人に頼むしかありませんね」
「僕もそう思う」


 霖之助は文の言葉に頷きながら、戸棚から手のひらに収まるくらいの小包を取り出した。


「……おや、それはなんです? 誰かさんの八卦炉によく似てますけど」
「花火だよ。専用のね」


 そのまま表に出て、地面に設置する。
 ぐらつかないように支え棒で固定して、準備完了。


「そう言えば、最近見ませんね、魔理沙さん」
「何か忙しいんだろう。とはいえこっちも用事があるので、今から呼び出すのさ」


 地面に置いたそれを霖之助がいじると、ポンという音とともに空に星形の光が舞った。
 魔理沙のスターダストレヴァリエそっくりの光。
 威力はないが、視覚的には同じようなものが作れたと思う。
 もっとも流星祈願会の時に魔理沙が置いていったものを改造した物なので、似てて当然かもしれない。


「なるほど、狼煙ですか」
「自分のスペルそっくりなものを見たら確かめずにはいられないさ。特に魔理沙はね」
「でも、見えない位置にいたら気づきませんよね。紅魔館とか」
「…………」


 言葉を詰まらせる霖之助。
 それには思い至らなかったらしい。

 やれやれと肩をすくめる文だったが、幸いにして魔理沙は近くにいたようだ。
 視界の端に黒い点が映り、どんどん大きくなってくる。

 魔理沙は少し迷うように近くを飛んでいたが、意を決してか少し離れたところに降り立った。


「なんだ、何かと思えば香霖じゃないか。何の用だ?」
「やあ魔理沙、とりあえず中に入ろうか。疲れただろう」


 いつも歓迎されないのに今日に限って迎え入れる霖之助。
 なんだか気味が悪いぜ、と言いながら魔理沙は店内へついて行く。

 3人分のお茶と菓子を用意し直し、腰を落ち着けたところで本題を切り出した。


「魔理沙、一緒に新聞を作らないか?」
「私が? 香霖と一緒に?」
「ああ」
「実は阿求が仕事で動けなくなってね。代わりの人材を捜しているんだ」
「ふぅん」


 初めは訝しげな表情だった魔理沙だが、理由を聞いて納得したのかつまらなそうに茶を啜った。
 あまり乗り気ではないようだ。
 どうしたものかと思案する霖之助の横で、文が口を挟んだ。


「本気ですか? 霖之助さん」
「ダメかい?」
「ダメとまでは言いませんけど……でも……」


 文は苦い表情を浮かべていた。
 なにやら考えていた魔理沙だったが、文の表情を見るなり勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


「そうか、香霖は私を頼りたいんだな」
「む」
「あいつの代わりってのが気に入らないが、面白そうだからやることにする。
 それと、この前みたいに手伝わせたのに置いていくのはなしだぜ」


 先ほどとはうって変わり、乗り気な表情で笑う。
 同時に魔理沙は文に挑戦的な視線を送っていたが……
霖之助の位置からはちょうど帽子が邪魔して見えなかった。


(……そんな風に思ってたのか)


 確かに手伝ってもらったわけだし、打ち上げくらい呼んであげればよかったかもしれない。
 最近店に来なかったのも、きっと拗ねていたのだろう。
 霖之助はひとりそう納得する。


「魔理沙には是非話の種になるような記事をお願いしたい。きっといい記事になると思う」
「ああ、私にすべて任せろ」


 自信満々な魔理沙。


「ただその……名前は出さなくていいよな、香霖?」
「ああ、それは別に構わないよ」


 魔理沙が気にしているのは、霧雨の名字のことだろう。
 人里に配れば必然的に噂になる。
 霧雨道具店を飛び出した魔理沙にしては気まずいに違いない。


「適当に偽名でも用意すればいいさ」
「そうだな。じゃあ問題なく参加できるぜ」


 自分たちで作った新聞が話の種になる。
 外見にこそ出さないが、霖之助はそんな未来を想像し思わず心躍らせた。


(今の発行部数なら何とかなるはずだ。秘策もある)


 魔理沙の横顔を見ながら、霖之助はほくそ笑んだ。
 自分では気づいていないが、いつの間にか文と同じかそれ以上に新聞の行く末を気にするようになっていた。


「私は不本意ですけどね」
「なんだと」


 対して文は相変わらず渋い顔。
 どうやら魔理沙の参加自体、気に入らないらしい。
 魔理沙も文に対して剣呑な雰囲気で応える。


(全く、なにがそこまでふたりをそこまでさせるのやら)

「おいおい、ケンカなら外でやってくれよ」
「……いや、ケンカするのはここだぜ」


 新聞を指さす魔理沙。
 次に文を指さし、吠えた。


「弾幕には弾幕に、新聞には新聞にだ。
 見てろ、絶対天狗には書けない記事を書いてきて、すぐに人気作家になってやるからな!」


 勢いよく魔理沙は出て行った。
 後に残されたふたりは、思わず顔を見合わせる。


「……どうしましょうか」
「彼女はやると言ったらやる人間だよ。紙面はそのままあけておいてくれ」
「ふーん」


 じー、と半眼で霖之助を見る文。


「信頼してるんですね」
「付き合いが長いだけさ」
「……そういうことにしておきます」


 やれやれと肩をすくめ、文は入り口に向かって歩き出した。


「もう行くのかい?」
「ふふ、魔理沙さんはやるといったらやるんでしょう?
 でしたら私も、負けない記事を書いてこないといけませんからね」



     ☆



「……ということになった」
「魔理沙さんですか」


 霖之助は自分の記事が一段落付いたので、阿求に報告に来ていた。
 最近はコツをつかんだせいか、わかりやすい文章というものが少しわかってきた気がする。
 反動で普段の蘊蓄がさらに堅苦しくなった、というのは文の談。


「あ、次それです」
「これかい?」


 阿求に指示された紙の束を手渡す。
 以前来たときに比べて、伝票の量はずいぶんと減っていた。
 しばらくふたり、黙って手を動かし……頃合いを見計らって、霖之助が口を開く。


「ついては君に頼みがあるんだが」
「はい? 何でも言ってください。私と霖之助さんの仲じゃないですか」


 どんな仲だ、と思ったが曖昧に返しておく。


「噂を流してほしい。阿求の代理をするのは村に住んでた人間の女の子だって」
「なるほど。それなら確実に一部、購読者が増えますね。でも、本人には伝えないんですか?」
「直接名前を出すのはさすがに魔理沙に悪い。が、それ以上に霧雨の親父さんには恩があるからね」


 魔理沙の記事がどんなものになるかわからなかったが、
とにかく彼女の活躍を紙面を通して見ることが出来るのだ。
 間違いなく購買数はひとり増え、あわよくば霧雨道具店にも委託販売させてもらえるかもしれない。

 販売経路は多ければ多い方がいい。
 どこでも買えるということはそれだけ売り上げが伸びやすいということだ、
と以前読んだ外の世界のマニュアル本を思い出した。


(上手くいけば、新聞の時使用した販売経路をそのまま歴史書販売に役立てて……)


「霖之助さん? 聞いてます?」
「あ、ああ。済まない、考え事をしていた」
「もう、私といるのに考え事なんて……」
「許してくれ」


 口を尖らせる阿求だったが、霖之助が謝りながら頭を撫でると大人しくなった。


「……わかりました、じゃあ謎の少女ってことで店に来るお客さんにそれとなく伝えてみます」
「頼むよ。いつの世も、ちょっと不思議なほうが興味をそそられるものさ」
「かもしれませんね」
「そうだろう」


 麓のヒーローみたいな扱いにすれば同年代の若い女性にも興味を持ってもらえるかもしれない。
 それに人里の端っこにある阿求の家ならともかく、魔理沙が町中まで入ることはないだろう。
 ばれる心配もない。

 というか、魔理沙のことだ。
 親しい人が見ればすぐ本人とわかるような記事になる気がする。


「じゃあ、僕は原稿の残りがあるからそろそろ」
「あ……霖之助さん」


 帰り際に、阿求がおずおずと上目遣いに切り出してきた。
 まるで宿題を忘れた生徒のように。


「私が忙しいのは今回だけですから、
 次からちゃんと仕事受けるときに余裕持たせますから」


 もう割引券の期限も切れますし、と阿求。
 たまっていた仕事も縁、もうすぐいつも通りに戻るだろう。
 だから。


「私の席、ちゃんとあけておいてくださいね」



     ☆



 魔理沙はいつだって唐突だ。
 彼女が香霖堂に姿を現したのは、依頼してから3日目のことだった。
 その間全く音沙汰無かったので少し心配だったが、どうやら杞憂だったらしい。


「出来たぜ香霖! ……なんだ天狗、またいたのか」
「そりゃいますよ」
「当然のように言われてもな」


 やってくるなりいつもの指定席に腰掛ける。
 文に悪態を吐きながらもずいぶん上機嫌なのは、言葉通り記事が完成したからだろう。


「まあまあ魔理沙、記事が出来たのかい?」
「ああ、見てくれよ」
「えーと……『お宝探検隊』?」


 手渡された原稿には、そんな見出しが躍っていた。
 横から文が覗き込んでくる。
 魔理沙は得意そうに語り出す……が、よく見れば身体のあちこち擦り傷だらけのようだ。
 またいろいろ無茶をしたに違いない。


「そうだ。話の種になるのはたいてい身近なものか、
 そうでなけりゃ絶対手の届かないけどとにかくすごいものだぜ」


 さすが河童やパチュリー、フランドールといった妖怪の相手をしている魔理沙だけあって
自信に満ちた物言いだった。
 確かに、無責任にあれこれ想像できるのは自分たちと無関係かつ何となく惹かれるものだろう。
 強力な妖怪の宝と言えば人間たちにはもちろん、力の弱い妖怪にも興味の対象に違いない。


「弾幕の記事なら私も書いたことありますよ?」
「調べたのは物自体のほうだ。そもそも普通の人間は弾幕ごっこなんてやらないぜ」


 なるほど、あくまで紹介するのは秘宝の方らしい。
 そしてこれだけすごいものを調べてきた私すごい、という感じが
文章から滲み出ているのが、いかにも魔理沙らしいと霖之助は思った。


「手始めにフランのレーヴァテインを調べ尽くしてきた」
「……よく無事で済みましたね」
「もちろん、いつも通り死にかけはしたぜ」

(やれやれ、これではかえって霧雨の親父さんを心配させてしまうかな)


 魔理沙のことだ、本当に危険なことにはならないと思うが……。
 と、そこまで考え、記事の最後の文章が目に付いた。


「というかなんだいこの『次回予告、上海人形とか賢者の石とかオンバシラとか』って」
「霊夢の陰陽玉とかも考えたんだが、まだ未定だぜ」

(むしろ連載する気満々だったのか)


 ちょっと霖之助は意外だった。
 これだけ次回の予定があると言うことは、文と一緒に仕事をしたいと言うことだ。
 反目しあっているかと思えばなかなかどうして、気があってるのかもしれない。

 と、そんなことを考え、思わず万感の思いで魔理沙を見つめる霖之助。


「なんだか香霖の視線が気持ち悪いぜ」
「ひどいことを言うね、魔理沙」
「むむ、確かにこれは絶対私では無理です」
「そうだろうそうだろう」


 記事に目を通した文が唸った。
 ただし魔理沙の期待したような褒め言葉ではなく、呆れ口調混じりに。


「組織から怒られますからね。あなた、怖いものとかないんですか?」
「怖いものか……。忘れたぜ」


 帽子に手をやり、一瞬遠い目をする魔理沙。


「とにかく、今回は認めますが……。
 それより魔理沙さん、もっと文章をきちんと練ってください。
 今のままじゃ子供の作文ですよ」
「それは私向きの仕事じゃないぜ」
「文字にするまでが新聞記者です!」


 バン、と原稿を机に叩きつける。
 熱くなりすぎてきたようなので、慌てて霖之助が仲裁に入った。


「まあまあ、それは魔理沙は初めてなんだから。僕と一緒にやろうか」
「そうだな! 天狗はひとりで売れない記事でも書いてるがいいさ」
「む、ヤブヘビでしたか……あと売れないは余計です」


 全くもう、と言いながらも文は早速魔理沙の記事を含めた紙面のレイアウトに取りかかっている。
 なんだかんだ言って、やはり嬉しそうだ。


「じゃあ魔理沙、早速始めよう。まずは3行にまとめないとね」
「う、そうだな……」


 まさか自分に返ってくるとは思わなかったであろう言葉に、魔理沙は気まずげに頬をかく。

 3人で原稿に取りかかる。
 協力して何かを成し遂げようとすることは実にすばらしい。

 ただ、ここしばらく古道具屋としての仕事を一切していないことだけが霖之助の気がかりだった。



     ☆



 新聞を発行したあとは稗田の家で打ち上げをするのが恒例になっていた。
 今回は魔理沙も参加して4人で食事会である。
 霖之助の隣に阿求、向かいに文、その隣が魔理沙が腰掛けていた。


「今回はさらに発行部数が伸びました」
「ああ、魔理沙のおかげだね」
「私にかかればざっとこんなものだぜ」


 霖之助の言う若干魔理沙のおかげはちょっと意味が違うのだが、それはそれ。

 魔理沙の連載の話を聞きつけてか、霧雨の親父さんが購買することに。
 同年代の女の子が執筆者と聞いて、本当にカフェーで人気が出てきたらしい。

 立ち寄ったカフェーで偶然文々。新聞を読んでいる若い女の子を見かけ、
文が嬉しさのあまり霖之助の背中に隠れてしまったこともあった。
 理想が実現してしまうとかえって現実を直視できないのかもしれない。
 同時に霖之助は、不遇の時代が長かったであろう文に内心同情してしまった。


「すみません、私今回参加できなくて」
「気にしないでください、店に置かせてもらってますし」
「それに代わりは私がばっちり務めたからな。何なら次も寝てていいんだぜ?」
「う……」
「こら、魔理沙……。大丈夫さ、阿求の席はいつでも空けてある」


 魔理沙の言葉に涙目になってしまった阿求の頭を撫でる霖之助。。
 いつもなら文句を言ってくる魔理沙だったが、
気まずいのかわざとらしく咳払いして明後日の方を向いていた。
 その代わり、もうひとりのすごく羨ましそうな視線で居心地が悪くなったのだが。


「あ、せっかくなら」


 魔理沙がよそ見をした隙を突いたのだろう。
 霖之助の横にいた阿求は、そのまま胡座をかいた霖之助の膝の上に乗っかってきた。


「あー!」
「あやややや」


 大声を上げて魔理沙が立ち上がる。


「その席は私専用だぜ! 離れろ!」
「ちょっと魔理沙さん、こんなところでマスタースパークは……」
「そうですよ。大騒ぎになって、道具屋の主人とか来ちゃうかもですね」
「ううー……!」


 阿求の言葉に、魔理沙はミニ八卦炉をかざしたまま地団駄を踏む。
 やれやれ、と肩をすくめる霖之助だったが、膝の上に阿求がいるので動くにも動けない。


「お姉さんじゃなかったのかい?」
「霖之助さんから甘えてくれないなら、こっちから甘えてみるのもいいでしょう?」


 至近距離でじっと見上げられると、さすがに少し照れてしまう。
 文と魔理沙は大声で文句を言っているようだが、焦っているせいかなにを言っているのか上手く聞き取れない。


「こうも騒がしいと、ひとりで本の世界に没頭したくなるね」
「ダメです、逃がしませんよ」


 阿求の言葉に苦笑する霖之助。
 ただ、こういう騒がしさは……意外と嫌いではないのかもしれない。









 同時刻。
 山の上の神社。


「神奈子様」
「ん、なんだい早苗」
「この新聞なんですけど……」


 諏訪子と酒盛りしていた八坂の神様は、現人神が差し出してきた新聞を受け取る。


「天狗の新聞がどうかしたかい」
「いえ、この記事にちょっと神奈子様の名前が出てたので気になって」
「おや。名前は変わってるみたいだけど、これは麓の魔女だね……」


 記事にざっと目を通し、にやりと笑う。
 名指しで挑戦されるのも悪い気はしない。
 つまりそれだけ名が売れていると言うことなのだ。


「ふふ、ちょっと楽しくなりそうだね」
「なんで神奈子の名前が出て私の名前がないのさー」

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道草

Author:道草
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