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子悪魔シリーズ22

幻想郷で本当に手に入らないものってあんまりなさそうよね、と思ってみたり。


霖之助 パチュリー 小悪魔








「へいらっしゃい! 何にしましょ!」


 図書館へやって来た霖之助を出迎えたのは、威勢のいい小悪魔の声だった。

 入り口の正面に、これ見よがしに設置された屋台。
 いつの間にか設えられたそれは、大きく『すし』と書かれた看板が飾られている。

 そして作業台に立つのは、はちまきとはっぴを身に纏った小悪魔。
 腰に団扇、側頭部に狐のお面をつけているあたり、なにか勘違いしている可能性もある。


「何をしているんだい、そんな格好で」
「おまかせ握りですね、かしこまりましたー」
「聞いてないし」


 まあこれだけでかでかと看板が掲げられていれば、何をやりたいかはわかる。
 仕方なく霖之助はカウンターの席に腰掛け、先に座って待っていたらしいパチュリーに声をかけた。


「こんな大がかりなもの、どうやって用意したんだい?」
「咲夜が持ってきたのよ」
「……屋台をかい?」
「実際担いで持ってきたのは鬼だけどね。
 妹様にも縁日の出店を教えたいらしいわ」


 そう言えばこの前、年末年始に寺や神社の境内で出店が出ていたという話をした記憶がある。
 そこあたりからの発展だろうか。

 出店について質問攻めにされ、困り果てるレミリアの様子が目に浮かんだ。
 思わず笑みを浮かべながら、霖之助は改めてこの屋台を観察する。

 よく見ると車輪も何も付いていない。
 文字通り担いできたのだろう。

 ともすれば、この屋台もその時のものかもしれない。


「はいどうぞ、ひらめです」
「うん?」


 そんなことをしているうちに、小悪魔がすしをカウンターの上に置いた。
 立派にすしになっている。

 相変わらず、よくわからないスキルを持っているものだ。


「ほう、珍しいな。本物かい?」
「本物よ」


 パチュリーはそう言いながら、すしを箸で口に運んだ。
 一口では食べきれず、2、3口に分けて咀嚼する。


「……あまり見ないで頂戴」
「ああ、すまない」


 霖之助には2つ、パチュリーには1つ。
 ワサビがツンと鼻に効く。


「ヤリイカです。イカのにおいは慣れてますよね」
「変なことは言わないでいいわ」


 パチュリーの注意を華麗に受け流して、小悪魔は次々とすしを握る。
 その動きに迷いはない。
 今までも何度かすしを握っていたのかもしれない。


「それにしても、よく手に入ったね」
「咲夜さんが貰ってきたらしいですよ。
 人里で買い物してたら、スキマ妖怪の式と会ったとかで」
「なるほど、それで……」


 狐のお面を被っているのかと納得しかけ、首を振った。
 素で間違えている可能性も否定できない。


「お茶です。温くなったら言って下さいね」
「今日は随分気が効くじゃないか」
「あれあれ、褒められたのかけなされたのかわかりませんね」
「本気で言ってるとしたら正気を疑わざるを得ないわよ」
「失礼な、私はいつでも全力全開ですよ!」
「しかしよく調理が出来たね、幻想郷じゃ見ない魚ばかりなのに」


 小悪魔がヒートアップしてきたので、話題を変えることにした。
 あからさまなそれにも、しかし小悪魔は気にした様子もなく乗ってくる。


「咲夜さんが全部さばいてくれました。でも薄く切るのは私がやったんですよ」
「ほう? 海魚も心得があったのかな」


 昔、河童の五色甲羅を売った際に海亀を見たことがあるようなことを言っていたし、不思議ではない。
 ……考えてみれば、この屋敷の面々はわりと正体不明ばかりかもしれない。


「はい、マグロです」
「なかなか脂が乗ってるじゃないか」
「ああ、おふたりともベッドではマグロとは無縁でしたね」
「だからそんなことは言わなくていいの」


 呆れた表情を浮かべるパチュリーに、同じく呆れたため息を吐く霖之助。


「……小悪魔を黙らせる方法はないのかな」
「お父様の熱くて太いのを無理矢理ねじ込んでくれれば!」
「放っておきなさい」
「そうだね」


 小悪魔を適当に流しつつ、霖之助はすしを口に運ぶ。
 それにしても、久し振りに海魚を口にした気がする。
 海のない幻想郷では当然だが……。


「結構ワサビが効いてるね」
「それがいいのよ」


 霖之助の言葉に応えたのはパチュリーだった。
 どうやら彼女の指示らしい。

 だがその先は続けず、無言ですしに手を伸ばす。


「ほらほら、どんどんいきますよー」


 サーモン、赤貝、ほたて、えび。
 多彩なネタに、霖之助は舌鼓を打った。


 ――それにしても、よくこれほど仕入れたものだ。


 ウナギが出てきたところで、隣の少女に視線を向ける。


「パチュリー、さすがにお腹が一杯になってきたんじゃないかな?」
「無理はしないでくださいね。
 余っても咲夜さんに預けておけばいつでも新鮮なままですから」


 捨食の魔法を拾得し、魔力を原動力とするパチュリーは、最初と比べて明らかにペースが落ちていた。
 普段食事をほとんど取らないせいだろう。
 身体がビックリしているのかもしれない。


「大丈夫よ、これくらい。それに……」


 もちろん彼女のことだ、あらかじめ消化の魔法もかけているのかもしれないが。


「ワサビとウナギは、ちゃんと食べておかないといけないもの」
「ふむ? 確かに美味いが……」


 そんなに無理して食べるほど、パチュリーの好物だっただろうか。


「……もちろん、理由があるのよ」


 霖之助の心配そうな視線に耐えかねてか、パチュリーは口を開く。


「辛味は五味の金行。金剋木。
 だから木行の巫女には効果覿面なのよ。特に頭が春だったりするとね」


 そう言って、パチュリーは湯飲みを口に運んだ。
 熱いお茶に、ほうっと息を吐く。


「そして土用のウナギは土行。
 霧雨のネズミを退治するにはぴったりの属性ね」


 彼女の言ったふたりに、霖之助はとても心当たりがあった。
 だから、ではないが。
 思わず心配になり、問い返してしまう。


「あのふたりと、何かあったのかな」
「あなたが心配するようなことじゃないわ。
 ただちょっと、そろそろ一度決着を付けておきたかっただけ」


 何についての、とは彼女は言わなかった。


「負けられない闘いもあるのよ、女にはね」


 パチュリーはそこで動きを止める。
 しばし考える素振りを見せると、ゆっくりと霖之助に振り返った。


「あなたは……」
「うん?」


 何か言おうとして……止める。
 やがて意を決したように、霖之助の目を見つめ、口を開いた。


「もし私が霊夢や魔理沙と闘うことになったら……。
 あなたは、どちらを応援するのかしら?」
「…………」


 即答することは、出来なかった。
 今までも考えなかったことはないし、実際何度か彼女たちの弾幕ごっこは見物したことがある。

 だが今回のそれは、少し違う気がした。
 何がどうとは言えないが……確かに、違う気がした。


「あのふたりは今まで散々面倒を見てきたからね。
 今度は君を応援しても……大丈夫だと、思うよ」


 ゆっくりと噛みしめるように、霖之助は応える。

 自分の言葉だというのに、内心ショックを受けていることに気が付いた。
 そろそろ彼女たちに自分の助けは必要無いと感じているからだろうか。

 そして、それを確認してしまったからだろうか。


 ――子離れの時期かもしれないな。


 霖之助は心の中で、自嘲気味な笑みを浮かべる。


「ありがとう」


 そんな霖之助の手を、パチュリーはそっと握った。
 彼女の体温が伝わってくる。
 そして、その気持ちも。


「ワサビやウナギより、よっぽど効果が大きいわ」
「ん? それはどういう……」
「まあ細かいことはいいじゃないですか。
 食べて美味しい使ってオイシイ。そんなウナギですもの!」


 小悪魔はいつの間にかせいろ蒸しを用意していたらしい。
 珍しく空気を読んで静かにしているのかと思ったら、このざまである。


「というわけでウナギ多めにしておきますね。
 そりゃもうビンビンになるくらい!」


 そして彼女はニヤリと笑みを浮かべる。


「お守りのつもりがかえって不利になるかもしれませんね。
 ウナギの効果で夜中ハッスルしまくって、足腰が立たなくなったせいで!」


 ばーん! と彼女はポーズを決めた。
 言い切った、と言わんばかりに。

 だが。


「……そろそろ突っ込んでくれてもいいんじゃないでしょうか」
「少々ベタすぎたわね。その気力すら起こらなかったわ」
「えー。もうちょっと捻るべきでしたねぇ」
「そう言いながら、どうして僕の前にウナギばかり置くのかい」


 油断も隙もないとはこのことだろうか。
 しかもわかってやっているからタチが悪い。
 無論、ふたりともに。


「私に言わせる気かしら」
「またまたー、わかってるくせにぃ」


 そしてこの返しだ。
 どう答えろというのだろう。


「しかし君たちから寿司をご馳走になるとは思わなかったな」


 霖之助が選んだのは、話を逸らすことだった。
 いつも通りかもしれない。


「『すし』は鮨、つまり魚が旨いと書く。
 また寿を司ると書いて『すし』と読むこともあるが、こちらは当て字だね。
 これは縁起担ぎの意味で語られていたようだよ」
「ふむふむほほー」


 適当すぎる相槌はもはや芸術の域と言っても過言ではないのかもしれない。
 単純にちらし寿司を作る方が忙しいのかもしれないが。


「寿とはつまり、祝い事のことだ。
 主に成就の祝いや結婚式などかな。
 外の世界では結婚して仕事を辞めることを寿退社というらしく……」
「ふぅん、寿、ね」


 珍しく、パチュリーが乗ってきた。
 つつつ、と人差し指でカウンターに寿の文字を書く。

 よく見ると、小悪魔が作っているちらし寿司も桜でんぶででかでかと寿の文字が描かれていた。
 ……器用なことだ。


「そのあたり、もうちょっと教えて欲しいわね。
 続けて?」
「あ、ああ……」


 蘊蓄を語るのに、これほど緊張するのは未だかつて無かったかもしれない。


 ……いや、これは魔女の罠なのだ。
 だがあえてその罠に飛び込んでみるのも面白い気がした。

 新しい生活が、始まる気がした。

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非公開コメント

子悪魔の台詞で吹いてしまったww

イカの臭いに慣れているパッチェさんwww

No title

「寿」に反応するとは乙女ですねぇパチュリーさん。
今回は珍しく小悪魔があまり話してませんでしたが十分楽しめました。

それにしても回を増すごとに下ネタがどストレートになってきてますね。いいぞもっとyゲフンゲフン。

No title

いつも御疲れ様です^^
今回も小悪魔は小悪魔でしたね~ww
パチュリーは霊夢と麻理沙との戦いを意識してるところにwktkですw
ある意味最強の小姑達、どうなることやら・・・
これは是非霖之助から精のついてる物・・・もとい精のつくものをもらうといいですねw
続きに期待しています、頑張ってください。

No title

これは修羅場の予感・・・・・・!!!!

あと自分の言葉でショックを受けてる子離れできない霖之助可愛いです^^(マテ
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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