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料理の隠し味

ゆうかりんは乙女。
今更言うまでもないかもしれない。

前書いてた下書きの完成版。
たまにはこうやって下書きを消化していかないと……。


春の食材と一緒に、幽香が霖之助に出した課題とは。

霖之助 幽香









 香霖堂にやってきた幽香は、いきなり持っていた籠を霖之助に突きつけた。


「菜の花、土筆、ワラビ、タラの芽……すごいな」
「ええ、そうでしょう? この私にかかればざっとこんなものよ」


 見事な春に驚くと、自信たっぷりに胸を張る幽香。
 大妖怪といえど、やはり褒められるのは嬉しいらしい。


「それで、何が欲しいんだい? これだけの食材なら対価として十分……」
「誰があげるって言ったの?」
「……ん?」


 幽香の言葉に、霖之助は首を傾げる。
 ならば道具屋に食材を持ってきて、一体何をしようというのか。


「ごはん、作って?」
「なんだって?」


 思わず耳を疑った。
 霖之助のイメージにある、目の前の大妖怪の言葉とはとうてい思えなかったのだ。


「自分で作ればいいだろう」
「それが出来たら苦労しないわよ……」


 幽香の声は小さく、聞き取ることができなかった。
 慌てて隠した指に何か巻かれてたのは……気のせいだったかもしれない。


「それで、もし貴方のごはんが美味しかったら」
「……たら?」
「料理を教わってあげるわ!」


 ――そう言えば幽香の属性は木。
 五行を持ち出すべくも無く火に弱いとわかるだろう。
 水の属性を持つ霖之助に教わることは実は理にかなっていると考える。
 だが同じ属性の霊夢は料理が出来る。このことから……。


「ちょっと、聞いてるの?」
「……ああ、すまない。つい……」


 現実逃避も不可能のようだ。

 仕方なく、目の前の食材と幽香の顔を交互に見比べる。
 それにしてもここは食堂でも料理教室でもなく道具屋なのだが、どうしてこういう客ばかりやってくるのだろうか。
 目の前の相手に言っても聞いてくれないだろうが……。


「……やっぱり、笑う?」
「いや……」


 途端にしおらしくなった幽香に、霖之助は戸惑いを覚えた。

 しばしの逡巡。
 ……決めた。


「……条件がある」
「なにかしら」







 霖之助はあまり食事を必要としないが、食べるときはわりとこだわる方だ。
 そのためいつの間にか料理の腕はなかなかのものになっていた。


「天ぷら、おひたし、炊き込みご飯。
 このあたりなら、食材にも合うだろう」
「へぇ……」


 幽香とテーブルを挟んで向かい合う。
 彼女の前には、霖之助が作った料理。

 ……すごく変な気分だ。
 人間友好度:最悪と書いた阿求に今度話して……みるとまた妙なことに巻き込まれそうなので、やめた。


「……おいしい」
「ああ、そうだろう。食材がいいのもあるが、この天ぷらだってただ揚げただけじゃない。これは……」


 油切りひとつとってもいかに技術がいるか、冷めても旨い料理とはどうするべきか、等々語り続ける霖之助。
 幽香は目の前の料理に夢中なようで、聞いていない。


「これなら合格ね。約束通り、料理を教わってあげるわ」


 霖之助の語りが一段落した頃。
 あくまでも優雅に、幽香は微笑んだ。


「……別に構わないが、条件は忘れないでくれよ」
「あら、私を誰だと思っているのかしら?」




 ……と、そんなことがあったのが昨日の話。




「来たわよ」
「やあ、準備は出来ているよ」


 霖之助は幽香を迎えると、早速台所に案内する。


「それで……」
「ちゃんと持ってきたわよ。貴方の分もね」


 幽香に求めたのは、ふたり分の食材。

 あまり食事を必要としないとはいえ、やはり旨いものなら食べたい。
 昨日はひとり分の量しかなかったため結局霖之助は見ているだけだった。

 ……その分喋った気はするが。


「じゃあ、早速始めようか」
「ええ、構わないわよ」


 教わる側だというのに、幽香は堂々としていた。
 ……まあ、そういう相手は慣れているので大した問題ではない。


「さて、なにから教えればいいんだい」
「そうね……」


 幽香は台所を物珍しそうに物色している。
 圧力鍋を見て首を捻り、恐る恐るかまどをつつく姿を見て、霖之助はひとつの懸念を抱いた。


「……最初に聞くが、君はどれくらい料理が出来るんだい?」
「え? そ、そうね」


 言葉を詰まらせる幽香。
 視線を泳がせる彼女に、霖之助の懸念は確信へと変わる。


「まずは包丁の……野菜の切り方から教えようか」







 結論から言うと、幽香は料理が下手だった。

 それでも霖之助の指導の甲斐あって、なんとかまともなものができた……と思う。
 ……見た目だけは。


「じゃあ……いただきます」
「いただきます」


 霖之助と幽香は向かい合って食卓を囲んでいた。
 お互い目の前にあるのは、自分が作った料理。

 霖之助は幽香に教えながらの合間合間で作った料理だったが……
霊夢と魔理沙の相手をしながら作るよりは簡単だった気がする。

 一口料理を口に運び……。


「えぅ」


 幽香が妙な声を上げた。
 霖之助は思わず箸を止める。

 見ると、彼女が涙目で口元を押さえていた。
 そして霖之助の料理を羨ましそうに見ている。

 大方、昨日の霖之助の料理レベルを期待していたのだろう。
 教えて貰ったとは言え、最初から作れるわけがないというのに。

 ……まあ、最初のうちは誰しもそんなものだ。
 そんなものだ……が。


「……やれやれ」
「え……」


 霖之助は肩をすくめると、食事中だというのに席を立つ。

 ……この際、マナーには目を瞑って貰うことにした。
 身を乗り出すと、ふたりのお盆を入れ替える。


「料理を教える、という約束だったからね。
 僕が君の味見係だ。
 君は僕の料理でも参考に頑張りたまえ」


 霖之助は答えを聞かずに、幽香の料理へ口を付ける。
 ……火の通りがまちまちで、塩加減も甘い。

 だが、まあ……やる気だけは感じられる……気がする
 霖之助が教えただけあって食べられないことはない。


「いいね? 明日から……ちゃんと食材も持ってくること」


 箸を進めながら、未だ動きの止まっている幽香に念を押す。
 するとようやく、幽香は呪縛から解けたかのように頷いた。


「うん……」


 もじもじ、としおらしく。

 ……どうもこの状態の彼女は調子が狂う。
 何故だか気恥ずかしくなった霖之助は、料理に集中することにした。


「そうね、ちゃんと練習しにくるわ、毎日」


 噛みしめるように、幽香は呟く。


「……そう、毎日」


 彼女の言葉が、心なしか弾んでいたように聞こえたのは……気のせいだろう。





 霖之助がこうやって引き受けたのは同情からではない。

 幽香はすぐに料理が上手になる。
 理由はわからないが、霖之助にはそういう予感があった。

 彼女の目……を見たからだろうか。


 ――料理の一番の隠し味は――。


 外の世界の本になんて書いてあったのか……霖之助は思い出すことが出来なかった。

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