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愉快な命蓮寺一家07

先日ムラ霖でハンモックという話題が出たので。
寝相が悪くてもいいよね!


霖之助 白蓮









「襖を?」
「はい、ちょっと壊してしまいまして。もしよろしければ、修理をお願い出来ないでしょうか」
「ああ、構わないよ。そういう仕事は慣れているし」
「本当ですか? ありがとうございます」


 霖之助の対面で椅子に座り、白蓮は深々と頭を下げた。
 その拍子に彼女の長い髪がさらさらと流れていく。

 微かなシャンプーの香り。
 ……先日売った覚えがある。


「お礼を言うのはこっちだよ。仕事は大歓迎だからね」


 こういった修理も香霖堂の業務の内である。
 霧雨の店で修行していた頃はよく駆り出されたものだ。

 修理のための道具を用意しようとして、ふと動きを止める。


「ひとつ聞くが、その襖は何か特別なものだったりするのかい?
 何か力があったり、変わった絵が描かれてたりとか……」
「いえ、普通の襖ですけど……。あ、でも、ぬえが落書きはしてましたね」
「そうか。ぬえの悪戯にも困ったものだな」
「元気な証拠ですよ」


 そう言って、白蓮は楽しそうに笑う。
 命蓮寺のメンバーを家族のように大事にしているのだろう。

 あるいは子供のように、か。


「落書きと言うことは、本堂の襖じゃないのかな」
「え、ええ」


 いくらぬえでも目立つところに落書きはしないだろう。たぶん。
 怒られることがわかっているのだから。

 それに本堂には襖より障子の方が多かったはずだ。

 霖之助がそんな事を考えていると、白蓮はなにやら言いにくそうに口を開いた。


「あの、実は私の部屋の襖なんです」
「君の?」
「はい。部屋と言っても布団を敷いて寝るだけの場所なんですけど、そこの襖がちょっと」
「なるほど、寝室か」


 それなら落書きされていても納得出来る。
 彼女が恥ずかしそうにしているのも。

 だがそこで、別の疑問が頭をもたげてきた。


「……質問を重ねて申し訳ないんだが」
「はい」


 それを覚悟していたかのように、白蓮は神妙な顔で頷く。


「どうやって壊れたんだい?」


 壊してしまった、と彼女は言った。
 人里にも修理出来る人間はいる。

 にも関わらず、どうしてわざわざ香霖堂まで修理を依頼しに来たのか。
 その答えが、そこにある気がした。


「えっと……」


 予想通り、白蓮は言葉を詰まらせた。

 霖之助は急須を持ち、お茶を注ぎ足しながら笑顔を浮かべる。
 彼女の緊張を解くように。


「言いにくいことなら、無理に話さなくても構わないよ」
「いえ、言いにくいことじゃなくて……ちょっと恥ずかしくて」


 妖怪の寺に関わることだ。
 何か理由があるのかと思ったが……どうやらそう言うわけでもないらしい。


「霖之助さんは、寝相はいい方ですか?」
「僕かい? いや特に気にしたことはないから、普通だと思うけど」


 突然変えられた話題に、霖之助は首を捻った。
 起きて変なことになっていた記憶もないし、霧雨道具店で修行していたときも何も言われたことがない。


「そうですか……」


 聖は残念そうにため息をつくと、しばらく後に視線を上げた。


「うちの子たちはみんな、少々寝相が悪いみたいなんです。
 その中でも私とぬえは、ちょっと輪をかけて悪いみたいで」
「ふむ?」
「ええ、この前も朝になったらぬえが灯籠の上で寝てましたし」
「いや、それはちょっとで済むのかい?」


 医学の心得はないのでよくはわからないが、それはもはや夢遊病の領域ではないだろうか。

 それに今までの話から推理すると、白蓮が寝ぼけて襖を壊してしまったということになる。
 そう考えれば、彼女の恥ずかしがりようにも納得がいくわけで。

 ……これ以上この件については探らない方がいい気がしてきた。


「だいたいわかった。とりあえず襖は僕が直すから心配しなくていいよ」
「ありがとうございます、霖之助さん」


 霖之助の言葉に、白蓮はほっとしたような笑顔を浮かべる。

 損傷度合いはわからなかったが、ひょっとしたら人間に見せたら引かれるレベルなのかもしれない。

 襖をほぼ作り直すことも覚悟し、霖之助は修理に臨むことにした。
 どのみち一度現物を確認しなければならない。


「で、修理するのは寺まで行けばいいのかい?」
「ええ、お願いします。持ってこようかと思ったのですが、穴を見られるのが恥ずかしくて」


 そう言って頬を染める白蓮。

 ……それなら襖を抱えて飛ぶのはいいのだろうか。

 相変わらずどこかズレてる僧侶である。
 彼女らしい、とも言うが。


「ついでと言ってはなんですけど……」


 白蓮はチラチラと店内へ視線を送った。
 無論その仕草を見逃す霖之助ではない。


「何か欲しいものでもあるのかい?」
「はい、実は……。その、さっきの話なんですけど……。
 なにか寝相の悪さを直せる道具ってありますか?」
「寝相、ね」


 さっきのと聞いて、少し思考を巻き戻す。
 考えようにと仕舞い込んだのだが、無駄な労力だったらしい。


「……寝なければいいんじゃないかな?」


 魔法使いは魔力が原動力となっている存在だ。
 食事も睡眠も必要ない。

 もちろん必要ないだけで、普通に食事もするし睡眠も取る者も多いのだが。


「私もそうしようかと思ったんですけど、習慣なのでつい。
 それに寝ないと周りが心配してしまいまして」
「ああ、なるほど」


 白蓮は封印されるまでは人間と同じ生活をしていたのだろう。
 それは封印されてからも、そして解放されてからも同じなのかもしれない。

 霖之助は腕を組み、深呼吸をして記憶を呼び起こす。


「かの徳川慶喜は、寝相を直すため枕の両脇にカミソリを立てて寝ていたらしいよ」
「カミソリですか、効果がありそうですね」
「睡眠に対しても緊張感を持って臨むべしって事なのかな。
 もっとも、寝入ったら外されていたという話もあるが……」
「参考になります。どなたかは存じませんが、有名な方なんですか?」
「……まあ、君が活動していた頃は徳川幕府なんてなかったからね」


 霖之助も会ったことなどあるはずもなく、書物で読んだだけなのだが。
 しかし自分で言ってはみたものの、この方法には大きな問題を抱えていた。


「でもお勧めは出来ないな」
「そうですか? 効果があるならやってみたいと思ったんですけど」
「とは言うがね、もし君が顔に怪我でもしたら大変だろう?」
「……そ、そうですか?」


 霖之助の言葉に、何故か白蓮は頬を赤らめた。

 ……いくら身体強化魔法の扱える大魔法使いといえど、寝ている時には怪我をする可能性もある。
 それにそんな方法を勧めてみて怪我でもされたら、命蓮寺の面々にどんな目に遭わされるかわかったものではない。


「命蓮寺はみんな寝相が……少々悪いと言ったね。他の子達はどんな感じなんだい?」


 霖之助は寺の面々をそれぞれ思い浮かべる。

 少女の寝姿を聴くのは少し抵抗があったが、問題解決のためには致し方ない。
 ぬえは先ほど聞いた通りだろう。


「ムラサも一輪も、寝相が悪いには悪いんですけど、それぞれ対処してるみたいです」
「ほう、例えばどんなのだい?」
「ええっと……ムラサはハンモックで寝てますね。滅多なことで落ちないとか。あと落ち着くそうです」
「ハンモックか、彼女らしいね」
「そうですね」


 セーラー服を着た舟幽霊。
 言われてみれば実に納得のいく姿だった。


「一輪は雲山をベッド代わりにしてるみたいです。ふよふよしてて心地いいらしくて」
「……ほう」
「たまに髭とかひっぱりながら寝てるみたいで、寝相の悪さは直ってないみたいですけど」
「……機会があれば彼と一度飲み交わしたいな」


 霖之助は雲山を思い、ひとり肩を落とした。

 しかしウォーターベッドのようなものだろうか。
 ……少し、興味が湧いてくる。


「そういえば、ナズーリンは元々寝相がよかったみたいです。
 星も昔は寝相が悪かったって言ってましたね」
「ふむ、すると今は?」
「今はいいみたいですよ。あ、そうそう、ナズーリンと同じ部屋で寝るようになってからでしょうか」
「ほう? 彼女には安眠を約束する能力でもあるのかな」
「いえ、確か寝返りを打ってナズーリンに当たると噛まれるからいつの間にか……だそうで」
「……彼女も苦労してるんだな」


 夜中に突然星の悲鳴が響く寺を想像し、苦笑を漏らす。
 とはいえそもそもの被害者はナズーリンであるのだから仕方のないことだ。


「あ、これってさっきのお話と似てますよね?」
「確かに。カミソリより怖いがね」


 ぽんと手を打つ白蓮に、霖之助は頷いて返した。
 確かに寝る前に覚悟が必要そうだった。


「私も誰かと一緒に寝れば、寝相は直るのでしょうか」
「かもしれないね」
「でもみんな、私と一緒は遠慮するんですよね。
 自分の寝相に巻き込むと悪いからって」
「多分、配慮……なんじゃないかな」


 聖を噛むのはさすがにナズーリンでも遠慮するだろう。

 だがそもそもそれは本当に彼女のことを思いやってのことなのだろうか。
 あるいは、危うきに近寄りたくないのか。


「まあ、星の場合は報復よりナズーリンを傷つけないようにという配慮もあるんだと思うよ、きっと」
「そういうものですか……でも確かに、私もお寺を壊したことはないんですよ。
 弟と暮らした大事なお寺ですから」
「なるほど」


 だから主に襖を壊すのだろうか、と思ったが言わないでおいた。

 寝相に巻き込むと言っても、もちろん白蓮に思いやりが足りないといってるわけではなく。
 気を許してる間柄だからこそ、出来ることもある。

 そんな関係も、やはり微笑ましいと思うのだ。

 そうは言っても、巻き込まれたらやっぱり被害者なのだろうが。


「とにかく、寝相を直したいって意識が一番重要だと思うよ。
 外の世界の寝具がいくつかあるから、それを試してくれないかい?
 抱き枕とか効果があると聞いたことがあるからね。本当かは知らないが」
「はい、お願いします」
「もしそれで寝相が直ったら、宣伝文句にさせてもらうよ」
「でも、私の名前は出さないでくださいね」
「わかっているよ」


 霖之助はひとつ笑みを浮かべると、彼女の注文に応えるべく商品棚絵と歩み寄った。









「……寝ている人への配慮ですか」


 そんな彼の背中を眺め、ぽつりと白蓮は呟く。


「霖之助さんが一緒に寝てくれたら、きっと直ると思うんですけど……」
「ん? 何か言ったかな?」
「いいえ、なんでも」


 わたわたと手を振る白蓮に、霖之助は首を傾げる。

 彼女の視線の意味を理解するのは、少し後のことだった。

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非公開コメント

No title

あぁ・・・心がいやされるぜぇ 南無三 

No title

一緒に寝ればいいと思うよ
そしてひじりんの恥ずかしい穴を見ることn(ry

香霖堂の匂いがしみついた抱き枕に興奮して寝不足になる白蓮さんとな

No title

なにこのかわいらしい聖萌え死ぬw

ていうか添い寝するならマジで気をつけないと
霖之助さん聖の抱き枕→メキィ→アッーー!
とかなりかねないようなww

成る程成る程、霖之助=聖専用抱き枕ですね。
そしてナズーリン達に見付かって修羅場に発展!ここ大事。

それと別に抱き(性的な意味合いでの)枕でも構わないんですよ?ここにネチョ話が一つ増えるだけですからね(チラッ

No title

「夜の」身体強化魔法ですね分かります。

No title

最後でニヤァとしてしまいました。
これからも作品作り頑張ってください!

それでは、失礼します!

切れてな~いby慶喜

聖さん乙女ですなぁ、歳の割に(ry
ヒジリサンハワカイデスヨ(゜Д(⊂


次回で聖の部屋で泊まる事になるんですねわかります。ネチョに発展しても良いんですよ(チラッ

No title

え、理解したのか朴念じ・・・霖之助さん。
顔のこと心配され(たと思っ)て照れてる白蓮可愛いかったです。

最近熱中症がやばいですね。お体にお気をつけて。
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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