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浴衣とウナギとかき氷

夏祭り大妖精。
いわゆる前後編の後編だったり。

『夏の音色に誘われて』の続き。

鳥威さんに挿絵を描いていただきました。
感謝感謝!


霖之助 大妖精








 寺の敷地に足を踏み入れる前から、祭囃子が聞こえてきた。
 大きなイベントに、人里全体が浮き足立っているように感じられる。

 そしてそれは人間だけに留まらず、妖怪や妖精にとっても同じらしい。


「大丈夫かい? 足下に気をつけて」
「は、はい……」


 ……浮かれてしまったのか、バランスを崩して転びそうになった大妖精を支え、霖之助は苦笑を漏らした。


「慌てなくていいよ。祭りは逃げはしないからね」


 彼女が立ち上がったのを確認して、霖之助はゆっくり歩き出す。
 程なくして、浴衣姿の大妖精がその隣に並んだ。

 藍染めの生地に花と金魚が描かれた浴衣。
 草履と巾着袋ともども、霖之助がプレゼントしたものだ。

 着慣れないせいか、やや歩き方がぎこちない。
 転びそうになったのもそのせいだろう。


「すみません、浴衣まで貸していただいて」
「何度も聞いたよ。おまけみたいなものだから気にしなくていい」
「でもでも、私のために背中に羽根用の穴まで……これじゃ返しても、元のままとはとても」
「じゃあ貰っておいてくれ。君の働きぶりに対して報酬が少ないと思っていたからね。ちょうどいいさ」
「で、でも……」
「大妖精、こういうときは素直に受け取っておけばいいんだよ」
「ふぁい。ありがとう……ございます」


 大妖精はようやく納得してくれたらしく、照れたように俯いた。

 ……前を見ないとまた転びそうになると思うのだが。
 まあ、そうなったら助ければいい。

 立秋が過ぎ、周囲はすでに薄暗いものの、まだまだ暑い日が続く。
 天気はよく、絶好の祭り日和だ。


「晴れてよかったね」
「そ、そうですね」


 ふたつ並んだ草履の足音。

 大妖精に渡したのはごく普通の浴衣である。
 外の世界の逸品ではあるものの、ごく普通の浴衣なので、当然人里の方が流通量も多い。
 そんなものをわざわざ香霖堂で揃えようという客はおらず、その結果持っていても仕方ない商品となってしまった。

 もちろんおまけで付けたのは、似合うだろうという予想もあってのことだが。
 喜んでもらえたようで何よりである。


「せっかくの祭りだからね、楽しむためにはまず形から入るものさ」
「そういうものですか?」


 恐縮しっぱなしの大妖精に、微かに肩を竦める霖之助。

 少しは他の少女を見習って気楽にした方がいいと思うのだが。
 ただし他の少女にはむしろ、大妖精の謙虚さを見習っていただきたい。


「……でも、実際そうなったら病気かと疑ってしまうかな」
「ふぇ?」
「なんでもない。ほら、着いたよ」
「わぁ……!」


 緊張していたせいか言葉少なげな大妖精だったが、会場に足を踏み入れると表情を輝かせた。

 お盆ということで幽霊の姿もそこかしこに見受けられる。
 そして、それらを涼むために使っている人妖の姿も。

 ……これではどちらのための祭りかわかったものではない。


「霖之助さん、お店がたくさんですよ」
「設営の手伝いに来てたんじゃないのかい?」
「そうですけど、あの時はまだそんなにだったので……あっ、射的だそうですよ。あんな小さなところで弾幕ごっこですか?」
「あれはコルク銃を使ってやるんだよ」


 普段大人しい彼女の少女らしい一面を見て、霖之助は顔を綻ばせる。

 あまり入り口にとどまっては迷惑だろうと思い、とりあえず移動することにした。


「まずどこに行くかい? 君に任せるよ」
「そうですか? でしたら、チルノちゃんのところに行きたいです」
「了解。場所はわかるかな?」
「えっと、準備の時に見た気がするので確かあっちに……」


 歩き出そうとした大妖精。
 しかし。


「きゃっ」
「危ない……っと」
「す、すみません」


 人波にさらわれそうになった彼女の腕を咄嗟に掴む。
 そのまま抱き寄せ、通路脇へと移動した。


「人が多いから、流されないようにしないとね」
「すすす、すみません……あっ」
「ん? どうかしたかい?」
「えっとその」


 そこでようやく手を握ったままだったということに気がついた。
 離そうとしたものの、その前に大妖精が歩き出す。

 霖之助の手を、握ったままで。


浴衣とウナギとかき氷


「こっち……です」
「ああ。じゃあ行こうか」


 人波に逆らわず、ゆっくりと。
 身長の低い彼女の位置は、しかし繋いだ手で確認することが出来た。


「あ、大ちゃ~ん」
「チルノちゃん!」


 やがて目的の出店に到着したのか、聞き慣れた声が届く。
 大妖精もそれに応えるように、彼女に向かって駆け出した。

 残された霖之助は、チルノと大妖精、そしてもうひとりのいる出店に近づいていく。


「いらっしゃい、霖之助さん」
「やあ、美鈴。助っ人は君だったのか」
「そうなんですよ。試しに咲夜さんに行っていいか聞いてみたらOKって言うんでお言葉に甘えちゃいました」
「ほう、じゃあ君の主たちも来てるのかな?」
「いえ、お嬢様と咲夜さんは神社に遊びに行くそうです。
 客の来ない神社で巫女が拗ねてるだろうって」
「……ああ、確かに」


 敵情視察とか言ってその辺にいる可能性もあったが……。
 神社でふて寝している霊夢の姿が容易に想像出来た。

 そして喋りながらも、美鈴はかき氷を生産していく。
 このかき氷制作機も香霖堂から持って行ったものだ。


「すごい手際だね」
「氷を削るのにもいろいろとコツがいるんですよ。
 口溶けのいいふんわりとした氷にする力加減とか」
「なるほど。君はそういうの得意そうだ」
「任せてください。助っ人としての役目は全うしますよ。
 まあ、私が助太刀したいのはむしろ……」


 そう言って美鈴は大妖精と霖之助を見比べる。
 何か言いたいのだろうかと聞こうとしたが、その前にかき氷を求める客がやってきた。

 美鈴は手早く注文を聞くと、あらかじめ削っていた氷にシロップをかけ、手渡す。

 ……あのシロップは霖之助が作ったやつだ。
 思わず唇の端が上がるのを、抑えることは出来なかった。


「チルノ、氷頂戴」
「おっけー」


 売れた分を補充するためか、美鈴が声をかける。
 大妖精と会話していたチルノは、手元の水を凝固させた。

 凍らせるために持ってきたらしいその水の容れ物には、美味しい水(食用)と書かれてあった。
 多分中身も美味しいのだろう。きっと。


「チルノ、繁盛しているようだね」
「おー。りんのすけー。さいきょうのあたいにかかればトーゼンだよ!」
「チルノちゃん、霖之助さんにすごく感謝してましたよ、シロップありがとうって」
「あ、ちょっと大ちゃん……」


 胸を張ったチルノは、大妖精の声で途端に威勢をなくす。
 なにやら胸の前で手をもじもじとしていたが、ややあって恥ずかしそうに顔を上げた。


「その、ありがとう……」
「はい、よくできました」


 美鈴はにっこり笑うと、霖之助と大妖精に氷の入ったカップを手渡してきた。
 シロップはかかっておらず、氷だけ。

 味は選べと言うことだろう。


「霖之助さん達も召し上がってくださいよ。評判いいんですから」
「そうだね、じゃあお言葉に甘えて」
「いろいろシロップもありますよ。ご存じでしょうけど」
「あたいのオススメはこのブルーなんとかだよ。色がとってもいいよね!」
「ああ、ブルーハワイね」
「じゃあ私はそれをお願いしようかな」
「まいどー!」


 チルノはブルーハワイのシロップを手に取り、大妖精のカップに注ぐ。


「あれ、でもかき氷って半分くらいで一度シロップを入れた方がいいかもしれないな」
「そうなんですか?」
「だってそうしないと下まで染みないだろう?」
「あー、そうなんですけど……」


 美鈴の視線につられ、大妖精の方を見る。
 そこにはこれでもかと言うほどシロップを投入しているチルノの姿があった。

 ……あれではすぐ無くなってしまうのではないだろうか。
 思ったが、言わないでおく。

 無くなったらまた霖之助が持ってくればいいだけだ。
 いわゆる商売のチャンスというやつである。


「霖之助さんはどれにします?」
「そうだねー……」
「せっかくですからお手製のシロップなんてどうです? もうあまり残ってませんので、今のうちですよ」
「本当かい?」
「ええ」
「結構選んでいく人多いねー」


 そう言われては悪い気はしない。
 味見はしたものの、実際氷にかけて試したわけではないので出来が気になっていた。


「じゃあ、それにしようか」
「はーいよろこんで」


 美鈴は明るく言うと、慣れた動作でシロップを手に取った。
 どうやらシロップをかける担当はその場の気分であるらしい。

 ……シロップの量にばらつきがあるような気はするが、評判がいいのなら問題はないのだろう。

 霖之助は完成したかき氷を口に運び……感嘆のため息を漏らす。


「なるほど、これはたいしたものだ」
「でしょう?」
「あたいにまかせてよ! ガンガン氷を作るんだから!」
「ふふっ、チルノちゃんったら」


 シャクシャクと小気味よい音を立てながら、スプーン状のストローでかき混ぜる。
 一気に食べると頭が痛くなるので、少しずつ。

 そんなふたりの様子を見ながら、美鈴は笑みを浮かべた。


「私はレモン味が好きですかねー。舌が黄色になっちゃいますけど」
「まあ、このシロップは着色料と香料のぞけば全て同じものらしいんだがね」
「そうなんですか? 本物に思えますが」
「思い込みは重要らしいよ。元を食べたことあるってことが重要だと思うが」
「なるほど、もしかしたら霖之助さんのシロップが人気なのもその辺に秘密が……」
「確かに、あれはジュースを元に作ってるからね。あとカルピスとか……」
「あ、あのおいしいやつね!」
「そう、チルノが原液をこぼしてしまったやつだよ」
「……べとべとした」


 しばらく談笑していた4人だったが、次第にかき氷を求める客で混み合ってきた。
 やはりこの暑さのせいか、冷たいものは人気らしい。


「あまり長居しても邪魔になるかな」
「そうですね。チルノちゃん、またあとで来るから」
「わかった! 大ちゃんも楽しんできてねー」
「霖之助さん、ファイト!」


 美鈴の応援が果たして何に対してのものだったのか。
 深くは考えないまま、霖之助は出店から離れていく。

 大妖精と一緒に、かき氷を咀嚼しながら。


「食べながら歩くと、なんだかいけないことしてるみたいでドキドキしますね」
「そうかもしれないね。昔はよく行儀が悪いと注意されたものだよ。こういうのも祭りならではだね」
「はい」


 今度は人の波を避け、出店の隙間を縫うようにして進む。
 幸いなことに余裕を持って配置されているらしく、そう苦にはならなかった。
 むしろたまに知り合いに見つかり、物珍しそうな顔をされる方が気になったが。


「次はどこに行こうか?」
「えっと、ミスティアさんのところにご挨拶したいです。浴衣のお礼に……」
「そうか、確かに顔を出すように言われていたね」


 大妖精が着ている浴衣は、ミスティアに着付けしてもらった。
 顔を出すのが礼儀というものだ。

 霖之助は現在位置を確認し、大妖精に声をかける。


「ミスティアの屋台の場所はわかるかい?」
「はい。入り口から左手に歩けばわかるって仰ってました」
「じゃああのあたりかな。行ってみようか」
「え、ええ……」
「どうかしたかい?」
「いえ、その」


 彼女はなにやら言いたそうに口を開けると、しかし何も言わないまま動きを止めた。
 やがてぎこちない動作で霖之助の手元に視線を送り……迷ったように、言葉を紡ぐ。


「そ、そっちのかき氷、美味しそうだなって」
「ん、食べてみたいのかな?」


 霖之助はひとつ笑みを浮かべると、自分のカップを差し出した。
 大妖精は少し驚いた顔で、それからゆっくりとスプーンを突き刺す。


「……おいしい」
「そう言ってくれると、作ったかいがあるよ。
 もちろん僕ひとりの手柄というわけではないがね」


 彼女は頬を緩ませながらも、何故か残念そうに手を見つめ、ため息をついた。
 何か言いたそうだったが、それを尋ねる前に横手から声が掛かる。


「やあやあ、そこのおふたりさん。ちょっと寄ってってくださいよ」
「言われなくてもそうするつもりだよ、ミスティア」
「こんばんは、ミスティアさん」
「あらいらっしゃい」


 ミスティアは営業スマイルを浮かべると、お辞儀で返した。
 彼女がいるのは八目鰻の出店だ。
 いつもの屋台を引っ張ってきただけとも言う。


「大妖精がお礼を言いたいらしくてね」
「あの、着付けしていただきありがとうございました」
「いいっていいって。たいした手間じゃないし……」


 手を振りながら、大妖精の爪先から頭へと視線を動かす。
 着付けをしてもらったので、会うのはつい先ほどぶりと言ったところか。


「似合ってるようだし、それで何よりですよ。うん。お似合いな感じで」
「すまないね。僕が着せてあげるわけにも……」
「いかないんですか?」
「いかないだろう?」


 首を傾げられ、霖之助は困惑の表情を浮かべる。
 普通に考えればそうだと思うのだが。


「それに羽根の位置の処理とか、やはり君に任せて正解だったと思うよ」
「り、霖之助さん、そんなに見られると恥ずかしいです……」


 霖之助の笑みと、照れる大妖精。
 ミスティアはそんなふたりを見比べ、満足そうに頷いた。


「ごちそうさま。この光景が見られて私も満足です」
「何のことだい?」
「いえいえ、こっちの話です。私も美鈴さんと志を同じくする者ですからね」
「……ん?」


 彼女は何を言っているのだろうか。
 疑問は尽きないが、先に動いたのはミスティアのほうだった。


「あ、そうそう。ちょっと手伝って欲しいんですけど」
「はい、私に出来ることなら何でも」
「あまり役立てないかもしれないがね」
「いえいえ、とんでもない」


 首を振り、羽根をぱたぱたと動かす。
 羽根を動かしても服が乱れないのはさすがと言ったところだ。


「お祭りですから仕方ないことですけど、やっぱり焼き鳥の屋台が多いわけですよね」
「確かに、ここに来るまでにも何軒か見たね」
「そこで私は焼き鳥に対抗してウナギを売ってるわけですけど、宣伝って大事だと思うんですよね」
「確かに」
「知らないと買いようがないですからね、はい。例えば使い方とか」
「……ミスティア、余計なことは言わないでいいよ」
「これは失礼しました」


 ミスティアのサービストークに、霖之助は苦笑いを浮かべた。
 女将モードの彼女はいつもより饒舌になる。
 客商売ならむしろこれくらいあった方がいいのかもしれないが。


「私達は何をすればいいんですか?」
「そうなのよ。とりあえず、はいこれ」
「……ウナギだね」
「ウナギですね」


 ふたりは彼女からウナギの串焼きを受け取り、顔を見合わせた。
 濃厚なタレの香りが鼻孔をくすぐる。


「ちょっとそれ食べながら散歩してきてください」
「……それが、頼みたいことかい?」
「はい、もちろん。言ったでしょ、宣伝だって」


 チチチ、とミスティアは指を振った。
 確かに彼女の言わんとしていることも理解出来る。
 そして、宣伝の重要さももちろん理解出来るわけで。


「場所を聞かれたら教えてあげてくださいね」
「わかっているよ」
「任せてください」
「美味しそうに食べてくださいね」
「それは自然とそうなりそうだね」
「はい、いい匂いです」
「ありがとうございます。あ、空いたカップはこちらで処分しておきますから」


 空になったカップを回収し、彼女は真っ直ぐ指を指した。
 その方向は、祭りの中心部。


「ではでは、会場中に見せつけて来てくださいね。おふたりのこと」
「そそそ、そんな……だって私」
「ああ、ちゃんと宣伝はやってくるよ」
「あぅ……そうですね」


 何を勘違いしたのか、大妖精は頬を真っ赤に染めていた。
 それにしても今日一日赤面し通しではないだろうか。


「では、お願いしますね。お代はお安くしておきますから」
「……ああ、金は取るのか」
「当然でしょう?」


 真顔で首を傾げられ、霖之助は肩を竦める。
 いい商売人だと思う。見習いたいほど。


「ソース、零さないようにね」
「は、はい」


 仕方なく、ふたり並んで祭りの会場を歩く。
 喧噪の中を、はぐれないように。


「わっ」


 轟音、そして閃光。
 突然頭上から降ってきたそれに、ふたりは思わず足を止めた。


「わぁ……」
「……すごいな」


 驚きのそれは、しかしすぐに感嘆へと変わる。

 頭上では色とりどりの花火が咲いていた。
 少女の放つ弾幕を花火に仕立て上げているらしい。

 蓮の花のような彩りは、見覚えがある。


「あれは……白蓮と星か」
「綺麗……」


 上を向いて、気づいたことがある。

 出店は頑丈に出来ているらしく、よく見ると屋根の上は休憩所になっているようだ。
 飛行できる者が多い幻想郷ならではだ。

 こうすれば確かにスペースを有効に使える。

 だが同時に、皆の意識は上空へと向いているわけで。


「これじゃ、あまり宣伝にならないかもしれませんね」
「あとでまた新しいの買いに行こうか」
「はい」


 周囲を見渡しても、今ウナギを食べ歩いても気づく者は少ないだろう。
 ……まさかここまで彼女の考え通りだとは……思いたくはないが。

 ひときわ大きな光を受け、再び霖之助は空へ視線を移す。


「霖之助さんも」
「ん?」


 ふと、隣で大妖精が呟いた。
 彼女は空を見上げたまま、恐る恐ると言った様子で口を開く。


「霖之助さんも、やっぱりああ言うことが出来る子の方がいいと思いますか?」
「……さて、遠くで見てる分には綺麗だけどね」


 霖之助は大妖精の頭にポンと手を置き、軽く撫でた。
 その拍子に、サイドポニーテールがゆらゆらと揺れる。


「こうやって話している分には、関係ないかな」
「そ、それもそうですね」


 大妖精に笑顔が戻ったことを確認し、霖之助は大きく頷く。
 そして彼女の頭から手を離そうとした時……。


「ん?」
「あっ……」


 霖之助の手を掴むものがあった。
 その小さななにかは、先ほどと同じぬくもりで手のひらを包み込む。


「…………」
「大妖精?」


 今度ははっきりと。
 大妖精は霖之助の顔を見上げ、彼の手を掴み、口を開く。


「あの、しばらくこうしていても……よろしいでしょうか?」


 霖之助は彼女の問いに答える代わりに、軽く握り返した。
 それを了承と受け取ったのか、大妖精は少し身体を寄せてくる。


「座れるところを探そうか。ベンチも結構置いてあるみたいだし」
「はいっ」


 宣伝が失敗したのなら、このウナギを有効に活用すべきだろう。
 せっかくなのでじっくりと味わいたい。

 この綺麗な花火でも眺めながら。


「り、霖之助ひゃん」


 また噛んだ。噛んでしまった。


「あぅぅ」
「落ち着いて、深呼吸したらどうだい?」
「は、はい。あの、少し気が早いんですけど」


 大妖精は顔を赤くしたまま、それでも気丈に言葉を続ける。


「……また来年も、夏祭りに誘っていいですか?
 その、せっかく浴衣も頂いたことですし……」
「確かに気が早いね。来年の話をすると鬼が笑うというよ」
「は、はい……」


 シュンと肩を落とす大妖精。断られたと思ったのだろう。
 だが霖之助は別にイエスともノーとも言ったわけではない。


「来年は、倉庫整理も手伝って貰おうかな」
「え、それって……」


 戸惑う彼女の顔を、幽玄の光が照らす。
 見ると、術者は冥界の姫とその従者に変わっていた。

 特別ゲストだろうか。
 色とりどりの蝶が、周囲を漂う。


「……不束者ですが、よろしくお願いします、霖之助さん!」


 深々と礼をする大妖精。
 ひときわ大きな光と歓声が、周囲にこだました。

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非公開コメント

No title

まったく、大霖は最高だぜ!どことなく某バスケ少女を彷彿させる大ちゃんがもうかわゆーてかわゆーて……。ありがとうございましたっ!

No title

前後編併せて見ましたー。大ちゃんかわいすぎ!そしてみすちーと美鈴はグルでくっつけようとしてるのかw
そして霖之助…いい加減気づけw

No title

実にかわいらしい大ちゃんですな^^

しかしみすちーと美鈴ww 何気に二人の仲を喧伝して外堀埋めようとしてません?www

No title

めーりん&みすちー「大霖は私が育てた」
ですね、わかります。そして一年後、香霖堂の看板娘となった大妖精の姿が。。。

No title

大ちゃんかーわーいーいー!
まったく、大霖は最高だぜ!
あとチルノがカルピスこぼしてべとべとした所の描写をkwsk

 策士が二人おる……よくやった!これは良い大霖。

 うん、これは『次は誰を霖之助にくっ付けるか大作戦~~ダブルMが行く~~』シリーズが始まる予感!

 …無いですね(笑

No title

大ちゃんかーわーいーいー大ちゃんかーわーいーいー(大事なry
浴衣着た大ちゃんとか大ちゃんの恥ずかしがってる姿とかお祭りで元気いっぱいな大ちゃんとか・・・とにかく大ちゃん可愛いです!
霖之助のこの朴念仁っぷりと恥ずかしがってる大ちゃんとの距離感が素晴らしいですね!!
そして最後の大ちゃんのセリフがどう考えても嫁いry(ゲフン
これからの行く末が楽しみですー!!
\だいだいだいすきだいだいちゃーん/

No title

遠回しに誘いを受けるところが実に霖之助らしくて素敵です。
めんどくさいけど、根は優しいところが彼ですよね。

それにしてもこの大妖精の大和撫子のような性格。
霖の字ではないですが、幻想郷には珍しい生き物ですな……。
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
リンクはフリーですが、ご一報いただけたら喜びます。

バナーはこちら。

<wasre☆hotmail.co.jp>
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スカイプID<michi_kusa>

ついったー。

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