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因幡式健康法

てゐ霖はもっと増えるといいよね! という気持ちを形にしてみました。
『はるのあしおと』の続きかもしれない。


霖之助 てゐ にとり 穣子









「だーかーらー! 一番美味しい野菜はきゅうりだって言ってるでしょ!」
「一番はニンジンに決まってるじゃない。きゅうりなんておまけでしょ。もしくは付け合わせ」
「なんだとー! ニンジンなんて子供の嫌いな野菜のトップランカーじゃないか!」
「きゅうりも似たようなもんでしょ! ロクに栄養だってないクセに!」
「むむむ」
「ぐぬぬ」
「やれやれ、何を言い合っているんだか」


 正体不明の言い争いをするにとりとてゐに、霖之助は呆れ顔を浮かべた。
 そんなふたりの雲行きとは別に、空はどこまでも澄み切っている。

 盆が過ぎたとはいえ、残暑はまだまだ続きそうだ。


「あら、元気があっていいじゃない」
「元気だけあればいいというものではないよ、いつまで経っても終わりはしない」


 穣子の声に、苦笑を浮かべる霖之助。

 香霖堂の庭先に置かれたテーブルには、たくさんの皿とカップが並べられている。
 今日は協力者を集め、裏庭で作っていた野菜の収穫祭のようなものを執り行う予定だった。

 ……準備は遅々として進んでいないが。


「すまないね、騒がしくて」
「いいえ、気にしないで。これはこれで楽しいし」
「そう言ってくれると助かるよ」


 客側だというのに手伝ってくれている穣子に、霖之助は頭を下げた。
 それから今までのお礼も兼ねて、もう一度頭を下げる。


「君のおかげで極上の野菜を収穫することが出来た。
 大した礼は出来ないが、今日はたくさん食べてくれ」
「ふふ、ありがとう。でも女性への誘いとしてはイマイチかしら」
「やれやれ、手厳しいね」


 穣子の笑顔に、肩を竦める霖之助。

 てゐと家庭菜園を作るにあたり、協力を求めたのが穣子、そしてにとりだった。
 穣子には豊穣を、にとりには栽培道具を。
 交換条件としてきゅうりや芋を植えることになったのだが……にとりとてゐがやたら張り合うのは誤算だった。

 ……先ほどのように。


「ところで、君は夏の野菜にも豊穣をもたらせるんだね」
「あら、何を言ってるのかしら」


 何の気なしにした質問だったものの、しかし穣子はぴたりと動きが止まる。
 気のせいか、いつもより眼光が鋭い。


「今日は何日だったかしら?」
「……8月27日だね」
「立秋はとうに過ぎたわ。つまりもう秋。そうでしょ?」
「……そうだね」


 残暑の厳しいこの時期を、秋と言い張る気なのだろうか。
 いまだ言い争っているてゐとにとりを眺め、穣子は薄い笑みを浮かべる。


「そう考えると、あの子達は秋野菜のために争っているのよ。
 それに一番美味しいのなんてお芋に決まってるのにね」


 ……ひょっとしたら、組み合わせてはいけない3人だったのかもしれない。
 考えてみたものの、時すでに遅し。


「てゐとにとりも、料理を並べるの手伝ってくれるかい?」
「はーい」
「決着はあとでつけるわ」
「もうついてるってのにね」
「ふふっ、そうね」


 霖之助は思考を止めると、代わりに手を動かすことにした。

 三者三様の動きで準備が進んでいく。
 やがてメインディッシュのカレーを運び終えると、ようやく形が整ってきた。

 と言ってもてゐは何もせずずっと野菜スティックを囓っていた気がするが。


「しかしカレーで不老長寿ねぇ」
「なによ、信じないの?」
「信じないかというと、そう言うわけではないんだが。
 その例が目の前にいるわけだし」


 霖之助はてゐをじっと見つめた。
 健康に気をつけて生きていたらいつの間にか長生きしていたらしい。

 ……無論、どこまでが本当かは定かではないが。


「医食同源。昔から食は健康と密接な関係があると言われてたわよ」
「毎日のご飯が美味しいのは健康の秘訣だしね」
「確かに。そう考えると試してみる価値はあるね」
「そーいうこと」


 穣子とにとりの言葉に、霖之助は納得したように頷く。
 どのみち収穫したての野菜だ。不味いはずがない。


「まあ、てゐが長生きなのはそればかりじゃない気もするけど」
「確かにね」
「なによそれー」


 にとりの茶々に、思わず笑い合った
 それから霖之助はカレー皿にライスとカレーを盛りつけると、それぞれに配る。
 米は香霖堂にある分では足りなかったので、穣子に持ってきてもらった。
 今度何か別の礼を用意しなければならないだろう。


「カレーは少し辛めに作ったけど、それでも足りないならこのスパイスを好みでかけてくれ」
「霖之助、野菜スティックもう少し頂戴」
「ああ、了解」
「どう? きゅうりも美味しいでしょ?」
「まあまあだね」


 相変わらずてゐは手伝う気がないようだが、どうやら料理は行き渡ったようだ。

 メニューはすべて裏庭で取れた野菜をふんだんに使ったもので、てゐ曰くどれも健康長寿の料理らしい。
 レシピも彼女が持ってきたものだった。

 霖之助の隣に穣子が座り、正面にてゐ、その横ににとりが腰を下ろす。


「あ、そうそう。ジュースも忘れずにね」
「オレンジたっぷりニンジンジュース! これだけでご飯が進むよね」
「さすがにそれはちょっと……。デザートのわらびもちはクーラーボックスの中にあるわよ」


 にとりが作ったジューサーで作成した野菜ジュースをなみなみと注ぎ、準備完了。


「いただきまーす」


 一同の声が青空の下に響いた。
 店の目の前でこんな事をやっていても、一向に客が現れる気配がないのが少し悲しかったが……仕方ない。
 今日は臨時休業である。客が来なくても仕方がない。


「ん、美味しい! けど辛い!」
「確かに辛い……けど美味しい」
「そんなに辛かったかな?」
「普通だと思うけど……子供なのかしらね」


 穣子の声に、てゐとにとりは唇を尖らせる。


「別に私は平気だけど! もう少し辛くてもいいくらいよ」
「私も平気だよ、もちろん」
「おいおいふたりとも……」


 止める間もなく、ふたりは争うようにスパイスを追加していく。
 そしてその勢いのままカレーをかっ込み、食べ終わってしまった。


「……ごちそうさま」
「同じく……」
「てゐ、すごい汗だよ?」
「何よ。そう言う料理でしょ」
「無理しないで辛いって言えばいいのに」
「無理してなんかないってば。汗をいっぱいかくために辛い料理にしたんだから、何も問題ないもん」
「確かにそうだがね」
「ご飯はよく噛まないとだめよ?」


 睨み合うふたりに呆れながら、ゆっくりとカレーを食べる霖之助と穣子。


「うー……」


 そんな大人ふたりを睨み付けながらも……てゐは我慢の限界に達したのか、自らの服に手をかけた。


「ちょっとてゐ、何してるの!?」
「だってびしょびしょのままじゃ風邪引いちゃうでしょ」
「だからってこんなところで……。霖之助だって見てるのに」


 いつも着ているワンピースを脱ぎ、キャミソール姿になるてゐ。
 つまり下着姿なわけで……あまり淑女の格好とは言い難い。


「いいっていいって、霖之助に見られたところで平気だし」
「……てゐがいいなら、僕は気にしないがね」
「うーん……それなら……」
「そうそう、だって何度も見られてるし……」
「……ん?」
「でもそれよりー」


 てゐは首を傾げるにとりをよそに、彼女の服にまで手をかける。


「にとりも汗だらけじゃない。風邪引いちゃうよ?」
「はぅあ! ちょっと、服引っ張らないでよ!」
「健康になる料理で病気になられたら信用に関わるでしょ!」
「知らないわよ! そんな信用!」
「むしろてゐに信用があったと思っている方に驚きよねえ」
「……ノーコメントにしておくよ」


 今日の穣子はスパイスが効きすぎている気がする。
 この陽気のせいだろうか。

 霖之助は冷や汗を流しながら、目の前のふたりに声をかけた。


「てゐ、無理矢理脱がせるといろいろ困るからほどほどにね」
「いーの! シアワセウサギの私がやることなんだから、悪いようにはならないって!」
「それを自分で言うかね……にとり、タオルでも持ってこようか?」
「いや、いいよ。てゐが離しそうにないから脱ぐ」
「脱ぐって……君もかい?」
「うん、帰る途中で泳ごうと思って水着着てきたし……」


 言うが早いが、にとりは脱衣を開始した。
 てゐに服を破かれるよりマシだと判断したのだろう。

 下に着ていたらしい水着は紺色の、少し厚めの生地のものだった。
 にも関わらず彼女のボディラインがくっきりとわかるのは天性のものだろうか。


「……ってい!」
「何をするんだ、てゐ」


 何を思ったのか、てゐが霖之助のカレーにスパイスを思い切り振りかけた。
 真っ赤になってしまったカレーを前に、霖之助はため息をつく。


「ふーんだ、変な目で見てるからだよ!」
「……誤解だ」
「シアワセウサギのやることらしいから、きっといいことあるわよ」
「だといいがね」


 そう言って笑みを浮かべた穣子は、綺麗に食べ終えたらしかった。
 高みの見物というやつだろうか。
 一口カレーをすくい……思わず絶句する。

 辛すぎて味なんてわかったものではない。


「どうぞ」
「……助かる」


 隣から差し出されたコップを、一息で呷る。
 水だと思ったその液体は、しかし予想外のものだった。

 身体の中から熱くなっていく感覚に、霖之助は大きく息を吐く。


「焼酎かい、これ?」
「ええ。芋焼酎です。私が作ったのよ」


 馬鹿になりかけた舌にも、この焼酎はよく染みた。
 神が作った酒だからだろうか。


「あ、私にも頂戴」
「こっちにもー」
「はいはい」


 それぞれのコップに酒を振る舞う穣子。
 これではどっちが客だかわかったものではない。


「酒は百薬の長だから、こういう席には欠かせないでしょ?」
「ああ、確かにね」
「これを飲むと寿命が10年は伸びる気がするわ」
「10年かぁ、毎年飲めばそれだけで長寿だね」


 てゐとにとりはいつの間にやら仲良くきゅうりとニンジンスティックを囓っていた。

 改めてカレーを味わう。
 アクシデントのせいで予想外の味になってしまったが、なんとか完食する。


「辛い……けど、確かに効く気がするよ」
「まだまだ序の口、序の口。まず霖之助は、普段ちゃんと食べるところから始めないと」
「……僕は食べなくても平気なんだがね」


 霖之助の答えに、しかしてゐはチチチと指を振る。


「私の知ってる健康レシピはまだまだあるからね。次のニンジン料理、楽しみにしててよ」
「あ、じゃあ河童に伝わるレシピも探してくるよ。今度こそきゅうりのおいしさを教えてあげる」
「私のところにも、不老長寿を願ってお供えされた料理とかあるから、それの作り方を持ってきましょうか」


 どうやらまだまだ健康料理のネタは尽きないらしい。
 それだけ皆が望んでいると言うことなのだろう。


「これじゃ本当に、長生きしないと消化出来そうにないね」
「じゃあ、長生きしようよ。美味しいもの食べて、健康で長生きしてさ」


 てゐはニッと笑うと、身を乗り出すようにして霖之助に顔を寄せた。


「ずっと一緒にいようね!」
「……そうだね」


 妖怪と人間のハーフたる自分は、どれだけの寿命があるのだろう。
 かつて、そう考えたことがあった。

 だが、そんなものは些細な問題なのかもしれない。

 彼女と一緒に、長寿なハーフとして生きてみるのも悪くない。


 てゐの笑顔を見ながら、霖之助はそんな事を考えていた。

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非公開コメント

てゐ霖ってなんか犯罪臭がwww
むしろ穣霖を(ry

No title

てゐが普通に可愛い・・・だと・・・。

この3人は野菜ですが幻想郷の住人たちは今回みたいにちょっとしたことで喧嘩することが多そうですよね。「ちょっとした」の量が若干我々の常識に囚われない多さだとは思いますが。

それにしても穣子はすでに女房臭が漂ってますね。てっきりメインは穣子かと思いました。まぁ霖之助とアレコレするんなら誰であろうと満足ですがね!

今回も楽しませていただきました。

No title

なんというてゐEND
素晴らしい

No title

前半のにとてゐ穣子のやり取りで和んで
ラスト付近の
>「ずっと一緒にいようね!」
>「……そうだね」
で不覚にも萌え果てた^q^<モウダメポー

No title

な、なんだ最後の破壊力は・・・
2828が止まらないんですがw

 最後にちゃっかりプロポーズ。だが霖之助は自覚無し。
 確かに他のメンバーを見ても犯罪臭が薄れない…。

 だが、それが良い。

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