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衣替えは貴方と

なんとなく霊霖が書きたくなったので。
香霖堂版の霊夢の距離の近さを再確認したせいでしょうか。


霖之助 霊夢









「ありがとうございました」


 玄関のカウベルを鳴らしながら去っていく客を見送り、霖之助は頭を下げた。
 その様子を横目で眺め……胡散臭そうに、霊夢は口を開く。


「まるで異変ね」
「そんなに変かな」
「変よ」


 きっぱりと言い切られてしまった。
 霖之助は肩を竦めながら、カウンターの席に腰掛けお茶をすする。

 いつの間にか茶葉が新しくなっているのは、きっと霊夢の仕業だろう。


「1日でこんなに客が来るなんて……こんなの絶対おかしいわ」
「そう言われると、僕の立つ瀬がなくなるんだが」
「事実は事実だもの」


 まったくもう、と呟き……それから付け加える。


「そのせいでほとんど霖之助さんとお話し出来なかったし」
「話ならいつもしてるだろう?」
「私は今日話したかったのよ」
「ん、何か特別な用事でもあったのかな?」
「……それはないけど」


 拗ねたように、霊夢は唇を尖らせた。
 霖之助には彼女が何故怒っているのかよくわからなかったが、ため息をつきながらなだめるように新しいお茶菓子を用意する。

 霊夢の言う通り、今日は売り上げがよかったのでこれくらいはいいだろう。


「客と言っても、単に服を買いに来ただけだからね。
 香霖堂の本来の客層とは言えないよ。残念ながら」
「でも客が増えて嬉しいんでしょ?」
「……否定はしないよ」


 天狗の新聞で、外の世界のファッションが取り上げられた。
 そのせいで、外の世界の服も取り扱っている香霖堂に客が来た。

 因果関係はそれだけの事だ。


「ま、物珍しさから来る一時的なものさ。1週間もすればいつも通りに戻るだろうね」
「あら、意外と冷静なのね」
「事実を言ったまでだよ」


 飽きやすい妖怪の事だ。
 すぐに次の話題へ関心が向くだろう。

 それは予感であり、確信だった。
 経験則でもある。


「この店はあくまで道具屋だ。服も道具のひとつではあるが、僕の望む形ではないな」
「じゃあ霖之助さんの理想ってどんなの?」
「ふむ、それを説明するのは難しいね。何故なら理想にたどり着くということは上を目指す事をやめると言う事であり……」
「まったく、結局どんな店でも文句言うんでしょ?」


 霊夢の言葉に、霖之助は口を噤んだ。
 確かにその可能性は自分でも否定出来ない。

 霖之助は誤魔化すようにお茶を飲み、ゆっくりと息を吐き出した。


「……まあ、客が増えてわかった事があるよ」
「あら、何かしら」
「客が多いと本を読む暇がない」
「なんだ、やっぱりいつもの霖之助さんね」


 呆れ顔を浮かべる霊夢に見られ、霖之助は少し視線を逸らした。
 もう外は日が暮れ始めている。そろそろ閉店の時間だろう。

 まあ、妖怪が夜来ないとは限らないのだが。


「それはそうと、君もたまには別の服を着てみたらどうだい?」
「私が?」
「ああ。ちょうど今、在庫も結構ある事だし」
「んー……」


 霊夢は湯飲みを傾けつつ、店内を見渡す。
 臨時に置かれたいくつかのハンガー群。
 それらにかけられた外の世界の服を眺め……ため息ひとつ。


「霖之助さんが作ってくれるなら、それもいいわね」
「ん? 売り物じゃダメなのかい?」
「やぁよ」


 あっさりと言う霊夢に、霖之助は首を傾げた。


「巫女服にこだわりがあるのかな」
「ないわよ」
「ないという割には、即答だったじゃないか」
「巫女服にはないってだけよ、霖之助さん」


 そういえば、霊夢は服が破けたと言って霖之助の服を着ていた事もある。
 巫女服にこだわりがないのは本当なのだろう。

 だとすると。


「だって霖之助さんのって着心地がいいんだもの」
「そうかい? そう言ってくれると制作者冥利に尽きるがね」
「だから私は霖之助さんの作った服以外を着る気がないの」
「……なるほど」


 実に単純明快な理由だ。
 それでいいのかはさておいて。


「ねえ霖之助さん。また異変を解決するとき服を作ってくれるかしら」
「ああ、構わないよ」
「ありがとう、霖之助さん」


 だが嬉しそうな霊夢の顔を見ていると、どうしても期待に応えたくなってしまう。
 このあたり、やはり自分は甘いのだろうと霖之助は内心苦笑いを漏らす。


「でも異変の度に服を替えてないかい?」
「だってぇ、どうしても破れちゃうのよ。仕方ないでしょ?」
「確かに、大きな異変なら仕方ないけどね……」


 以前は地底、この間は魔界まで行ってきたらしい。
 きっかけは小さなことでも振り返ってみれば大事件だったというのはよくある事だ。

 異変がいつ起こるかなど、誰にもわからないわけで。
 むしろ重要なのは……。


「そもそも異変に合わせて作ってるんじゃなくて、定期的に服を替えて定期的に異変が起こってるような気もするんだが」
「細かい事は気にしちゃだめよ。でも確かに、外の世界の服も面白そうよね。
 霖之助さんが作ってくれるなら着てみたいわ」
「あくまで僕が作る事前提かい」
「いいでしょ?」
「……まあ、片手間でいいなら作ってあげるよ」
「ええ。楽しみにしてるわ」


 すっかり霊夢のペースに乗せられてしまった気がする。

 ……片手間でとは言ったものの。
 凝り性な面もある霖之助は、ついうっかり気合を入れて服を作ってしまうかもしれない。

 霊夢がそこまで想像して言っているのかはわからなかったが。


「しかしもし僕が異変を起こしたりしたら、解決に向かうとき君の着る服がなくなりそうだね」
「あら、異変の当事者になる予定でもあるのかしら」
「いいや、今のところは。例えばの話だよ。例えば僕が、遠くへ行ったら……」
「……霖之助さん、どこか行っちゃうの?」
「さて、どうかな」


 霊夢の不安そうな視線に、霖之助はゆっくりと首を振った。
 実際この先どうあるかはわからない。

 ずっと居るかも知れないし……居ないかも知れない。


「そうねぇ、その時は……」


 霊夢は何事か考えた後、ポンと手を叩いて口を開く。


「白無垢でも作っておいて貰おうかしら」
「ん? なんだって?」
「んーん、なんでもない。そう簡単にこの私から逃げられるとは思わないでねって事」
「やれやれ」


 彼女との縁は、ちょっとやそっとでは切れないのだろう。
 霖之助はため息をつきながら、ざっと商品棚を吟味する。

 霊夢に似合いそうなのは……膝丈のワンピースに長袖を1枚あたりでどうだろうか。
 これなら普段の巫女服とあまり違和感なく着られるかも知れない。


「出来たら見せてね? 早速着てみるから」
「了解。ああ、言っておくが制作費はツケておくからね」
「えー、聞いてないわよ」
「今言った。ちなみに今までのツケも忘れてないよ」


 霊夢の文句に、霖之助は知らん顔。
 締めるところは締めなければならない。親しき仲にも何とやらである。

 まあ、回収出来る目処は立っていないのだが。


「じゃあ、霖之助さんがらみの異変を解決したらその分引いてくれるかしら」
「……だからといって外の服を買いに来る客を邪魔するんじゃないだろうね?」
「ダメ?」
「ダメに決まってるだろう」
「なんだ、やっぱり現状を気に入ってるんじゃない」
「一応商人の端くれとしてはね」


 そもそも香霖堂に客が来るのは異変でもなんでもないというのに。
 いつか霖之助の目指すひとつの形でもある。

 最終形かどうかはともかく。


「そうだ霊夢、どうせ暇ならしばらく店を手伝ってくれないかい?」
「私が? 別にいいけど」


 霊夢に労働の価値というのを教えるいい機会かも知れない。
 働く事に最初は渋るかと思ったのだが、あっさりと彼女は頷いた。


「どうせ自分の読書の時間が欲しいとか、そういう理由なんでしょ」
「ないと言えば嘘になるが……やはり女性客に服を売る以上、男の店員というのは難しい場面もあってね」
「気にする人は気にするのかしら。私は気にしないけど」
「気にしない方が珍しいよ」
「霖之助さんだからね。まあいいわよ。やり方は今日一日見てたし」


 見てただけで、だいたいわかったらしい。
 天才肌の彼女ならではだろう。


「将来のためにも、勉強になると思うし」
「……ん?」


 どこかで店を開く予定でもあるのだろうか。
 疑問に思ったが……気にしないでおく事にした。


「じゃあ霖之助さん、私の分の制服お願いね」
「まずそこからかい」
「そうよ。最初は形から入らないと」


 ひょっとしたら、霊夢は誰より服にこだわりがあるんじゃないだろうか……。
 そんな事を考えながら、霖之助はデザイン帳を取りだした。







 近い将来、この時作った服が役立つ事になる。
 その時霖之助の隣で笑う少女は、幸せそうな表情を浮かべていた。

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No title

霊夢かわいいよ、霊夢かわいいよ!
霖之助がいなくなると聞いて不安になる霊夢が特にいいです!

・・・しかし霖之助の作った服しか着ないというのは言い換えると
霖之助が作った服ならどんなに大胆な服でも着るということでは・・・・
もしそうなら2828が止まりませんね!!!

No title

やったー!! 霊霖きた! これで勝つる!!!

霊夢あからさま! 隠せてないよ! 隠してないのか……?
しかし香霖堂の制服ってのは、霖之助の服を模したものなんでしょうかね。

あと、霊夢さん、香霖堂は閑古鳥が基本だから将来のためにはならな(ry

No title

霊霖はサイコーだぜ!
というかお前ら結婚しろ!

No title

おいこの霊夢はんぱねぇですよ!
嫁入りする気満々ですよ!可愛いな!

No title

ご祝儀お持ちしまし・・・え、まだ夫婦じゃない?またまたご冗談を。

No title

何という夫婦の会話……お前らさっさと結婚しろ

とか思ってたらラスト実現したwwww
しかし実にかわいらしい霊夢であるな^^
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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