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CENTURY COLOR preview

CENTURY COLOR preview

紅楼夢の合同誌の体験版チックな感じで。
小町×霖之助×稗田ってノリで、はい。


霖之助 小町 阿求 阿弥









 空を見るのが好きだった。

 どこまでも広がる青い空。時代に染まらず、ただただ雄大なそれを見上げるのが好きだった。
 空を見上げている間は、自分という存在をとてもちっぽけなものに感じられたから。自分の悩みなんて、取るに足らないものだと思えたから。


「霖君。何してるの?」
「空を……空を見てました」


 霖と呼ばれた少年は、ゆっくりと声のした方向へと振り返った。

 視線を向けた先に佇むのは、艶やかな長い黒髪を揺らし深い色の和服に身を包んだ少女。深窓の令嬢といった表現がぴったり来る女性だ。
 後頭部に付けた花のアクセサリーがワンポイントとなって、大人びた雰囲気の中にも可憐さを醸し出している。


「霖君、ふたりの時は普通に話してくれてもいいのよ?」
「そうですね……そうだね」
「ついでにお姉ちゃんって呼んでくれても」
「そっちは遠慮しておくよ、阿弥さん」
「あらら。今日もダメだったわ」


 残念そうに笑うのは、稗田阿弥。身体が弱く、あまり外に出ることのない彼女は、よく霖を話し相手にしていた。
 と言っても霖にとってみれば、この屋敷で話す相手は阿弥くらいしか居ないのだが。


「何か面白いものでも見つけたのかしら?」
「先ほど天狗が飛んでいきました。珍しいものを見た気がします」
「あら、それは私のお客さんだわ。さっきまで話してたのよ」
「そうだったんですか」


 霖は少し驚いた表情を浮かべると、改めて空を見上げた。この人里周辺で妖怪の姿を見ることはあまりない。だからこそ、霖は特異な存在として扱われるのだ。
 珍しい、人間と妖怪のハーフとして。彼は観察という名目で稗田家に保護されていた。霖という名前も、梅雨時期に拾われたと言うだけだ。本当の名前も親の顔も、なにひとつ彼は知らなかった。

 ……だが、それを不満に思ったことはない。


「私、ずっと弟が欲しかったの」
「だからって、僕に呼ばせなくてもいいだろう?」
「私は貴方に対して姉の立場を楽しみたいのよ」
「だから姉じゃないでしょう、阿弥さん」
「あ、今ちょっと離れた? 心の距離が」
「さてね」


 笑いながら、阿弥は霖の隣に腰掛けた。和服の裾が足にあたり、少しくすぐったい。
 今まで霖が特に不自由なく過ごせたのは彼女のおかげによるところが大きい。
 だからこそ、彼は阿弥の役に立ちたかった。例えそれが……叶わぬ願いだったとしても。


「阿弥さん、お茶でも入れてこようか?」
「いいの。まだ仕事があるから、あんまり長くは居られないし」
「そう、か……」


 阿弥には幻想郷縁起を編纂するという使命があるらしい。それがどういうものか、霖はまだよくわかっていなかったが……とても大きく、重要な仕事だというのは理解していた。


「もっと日の当たるところに行けばいいのに。そこ、寒いでしょ?」


 霖がなにやら悩むような表情をしているのを見てか、阿弥は笑みを浮かべて手招きをした。
 彼は縁側から少し離れ、障子に隠れるようにして廊下に座っている。
 見ようによっては、日に当たることを避けているようにも見受けられた。


「いや、僕はここでいいよ」
「ふーん? 日陰からだなんて、空が好きなのに変な子ね」
「よく言われるよ。それに太陽が眩しいと満足に空を楽しめないからね」


 首を振る霖に、阿弥は思わず苦笑を漏らす。


「ほんと、日陰で暮らす専門家ね」
「え?」
「天狗が言ってたわ。私と同じ名前の新聞記者さんだけど」


 さっきの天狗だろうか、と霖は空へと視線を向ける。
 だがすでに影も形も見ることは出来なかった。さすがは幻想郷最速の種族だ。


「僕だって、日に当たることもあるよ」
「あら、そう?」
「そうさ。それが今じゃないってだけで」
「もう、ああ言えばこう言う」


 阿弥はため息をつくと、肩を竦めた。それから霖を追うように、彼女も空を見上げる。


 しばしの無言。聞こえてくるのは阿弥の微かな息づかい。
 やがて霖は意を決し、かねてからの疑問を口にした。


「阿弥さん」
「なあに?」
「……博麗大結界って、なんなの?」
「あれ、どこで知ったのかしら」
「少し、話してるのを聞いてしまって」


 阿弥の視線を横顔で感じながら、彼はあくまで平静を保った。
 後ろめたい気持ちを押し殺しつつ、彼女の返答を待つ。


「……この幻想郷を守るための結界よ。そのせいで、切れてしまう絆もあるけど」


 阿弥はそう答えると、ゆっくりと立ち上がった。
 仕事の時間なのだろう。彼女は最後にもう一度振り返ると、安心させるように笑顔を浮かべる。


「心配しないで、まだずっと先の話よ。……少なくとも、私が生きてる時じゃないわ」
 そう言って笑う彼女を見送りながら。
 霖は言いしれぬ不安を胸に抱いていた。





          ◇





「いい加減起きてくださいよ、この駄眼鏡」
「ぐぬ」


 眼球の猛烈な痛みと聞き慣れた声に、彼――霖之助は強制的に現実に引き戻された。
 ひどく懐かしい夢を見ていた気がする……が、至近距離で睨み付けてくる眼光は余韻に浸る暇さえ与えてくれないらしい。
 ありがたくも霖之助を起こしてくれたのは、九代目阿礼乙女、稗田阿求その人だ。


「寝てる時にまで眼鏡かけてるんですか、貴方は」
「別にいいだろう。というか、普通に外し忘れただけだ」
「あらそうですか。それは暗に待ちくたびれたと言ってるんですかね。確かにちょっと遅れたのは認めますけど」
「誰もそんなことは言ってないよ」


 起きたのに悪夢を見ている気分である。
 衝撃でずれてしまった眼鏡を直しつつ、霖之助はため息をついた。
 いつの間にか香霖堂のカウンターに突っ伏したまま寝ていたようだ。

 ふと見ると、空から差し込む日差しが少し傾いていた。
 阿求と会う約束をしていたのだが、すっかり寝過ごしてしまったらしい。


「まったく、起こすならもう少し普通に起こしてくれないかな。寝起きに目潰しは身体に悪い」
「自業自得です。職務放棄は制裁ですよ」
「放棄した覚えはないし、そもそも仕事を受けた覚えもないよ」
「じゃあ怠慢ですね。サボり厳禁です」
「だいたい僕が何をサボったと言うんだい」
「私の相手ですよ。当たり前でしょう?」
「…………」


 酷い横暴である。誰に訴えたらこの状況から救ってくれるのだろうか。


「確かに君の家には世話になったけどね」
「君の家、じゃなくて『私』にでしょう? その辺はっきりさせていただきませんと」
「世話になったのは先代の君だよ。いや君であることには違いないんだが……」
「最初からそう言ってるじゃないですか。わからない人ですねぇ」


 ため息をつく阿求だったが、むしろ呆れたいのは霖之助のほうだった。
 阿求の家系は実に紛らわしい。家系というか……すべて転生した本人というのが余計に事態をややこしくさせている。


「とにかく、昔世話をしたよしみで知恵を借りてあげようと言ってるんです」
「恩に着せるような物言いをするね、阿求」
「恩を忘れるような人を育てた覚えはありませんよ? ま、育てた記憶もありませんけど」


 そう言って、彼女は肩を竦める。

 幻想郷縁起を編纂するため、千年以上の昔から転生を繰り返す御阿礼の子。
 百数十年に一度、閻魔に身体を用意してもらい、本の編纂のためだけに生まれてくる。

 一度見たものをすべて記憶出来るという求聞持の能力を持つものの、転生の影響か身体が弱く、短命という宿命を背負っていた。
 記憶に関しても、幻想郷縁起に関わる一部しか引き継がれないらしい。だから昔のことを知っているのはすべて彼女の努力のたまものなのだ。


 ……だからだろうか。どうしても、霖之助には彼女を嫌いになることが出来なかった。

 例えどんなに理不尽だとしても。


「じゃあ早速取りかかりましょうか。一世一代の大仕事ですからね」


(続)

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No title

阿霖に小町か……胸が熱くなるな。

阿霖カプは寿命のことがあるから切ない(T T
しかし阿求……阿弥とは全然性格変わっちゃってwww

全部読めるのを楽しみにしてます^^
……俺が行くまでメロブに残ってたらいいなぁ

No title

駄眼鏡ktkr
AQNだからいえる

No title

阿霖で小町が出てきたら最後に待っているのは・・・(涙)
それでもギリギリまで頑張るんだろうな2人とも・・・

完全版が読めるまであと少し。他の方の作品も楽しみにしつつ委託販売まで待機しています。

やはり最後は泣ける話になるのか…?

予約はしてないけど、近所にメロンも虎の穴もある俺は勝ったwww
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
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