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夢見る宝石箱 第02話

アリアリ霖第2話。いわゆる前編的な。前回はこちら。
後編は近いうちに。


霖之助 アリス アリス





「これはここを組み合わせて、この部分を捻るのよ」
「こうかい? ……ああ、なるほど」


 霖之助の手の中で、その小さな箱は音楽を奏で始めた。
 名称は音楽プレイヤー。用途は音楽を聴くこと。


「ね、簡単でしょ?」
「確かに。動作に必要な魔力配合さえわかれば子供でも動かせそうだね。
 これなら幻想郷でも問題なく使えそうだよ」


 外の世界の音楽プレイヤーと名称も用途もほぼ同じ。
 だがその構造と動力はまったく異なるものだった。

 霖之助が手にしているのは魔界の道具。
 数日前、大量に入荷したうちのひとつだ。

 ちなみにほとんどの道具はいまだ手つかずのまま香霖堂の床に転がっている。
 少しだけ持って来すぎたかもしれない、とさすがの霖之助も心の中でそう思っていた。


「ずいぶん手軽だけど、これは魔界の日用品なのかな」
「そうね。だいたいどこの家庭にもあるわよ。
 私が魔界にいた時にも使っていたと……思うし……」
「さすが元魔界の住人だね。頼りになるよ」
「え、ええ……ありがとう」


 言葉とは裏腹に、アリスは浮かない顔をしていた。

 霖之助がそれに気づいたのは偶然だった。
 ふと顔を上げた瞬間、視界に入ったのだ。

 そして、気づいたからには放っておくことは出来なかった。


「アリス。何か気になることでもあるのかい?」
「……珍しいじゃない、そんな事を気にするなんて」
「そんなことはないさ。僕はいつだって客の心を理解しようと努めているからね。
 まあ、君が言いたくないなら構わないが……」
「ふふ、冗談よ。ありがとう、霖之助さん」


 アリスはひとつ笑うと、長いため息を吐いた。
 少し迷うような素振りを見せたあと、口を開く。


「最近変な夢を見るのよ」
「夢を?」
「ええ、私を別の私が見てるような、そんな夢。
 夢とは思えないくらいリアルだけど、夢の中の私はなにひとつ私の思い通りに動いてくれないのよ。
 まるで映像をただ見せられてるだけみたいな……」
「前言ってた、薬のせいじゃないのかい?」
「ううん、胡蝶夢丸は飲んでないわ。あっちはもっとわかりやすい夢を見るもの」
「ふむ……」
「ただそれだけと言えばそうなんだけど。どうも気になっちゃってね……」


 実害はないのだが、気になっているらしい。
 そして精神に重きを置く妖怪にとって、それは死活問題だった。

 どう答えるべきか、いい言葉が浮かばないまま、悩むことしばし。


「こんにちは」


 それは突然の出来事だった。

 いや、前触れはあったのかもしれない。
 ただそれに、気づいていなかっただけで。


「あら、思ったより散らかってるわね」


 最初に覚えのは、既視感。
 香霖堂にやってきた少女は店内を見渡すなり、笑いながらそう零した。

 肩に届くくらいの金髪。背は魔理沙より少し低いくらいだろうか。
 精巧な人形のような可愛さは幼くも見えるし、ある程度時を重ねているようにも見える。

 腕に抱えた大きな魔道書が、彼女が魔法使いであることを主張していた。


「いらっしゃい。香霖堂へようこそ。この店は初めてかな?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるわね。
 私の贈り物、気に入ってくれたかしら」


 そう言って、彼女は笑う。
 アリスを幼くしたらこんな感じだろうか、と霖之助はぼんやり考えていた。


「贈り物……とはなんのことだい?」
「あら、この前拾っていったじゃない。
 こんな風に出してるってことは、使う気はあるのかしら。
 ……ああ、まだ調べてる途中だったわね」


 まるで見ていたかのように、少女は言葉を重ねる。
 霖之助は少しだけ眉根を顰め、ゆっくりと尋ねた。


「……君は、誰だ?」
「ごめんなさい、自己紹介が先だったわ」


 スカートの端を持ち上げる、淑女の挨拶。
 堂に入ったその仕草は、彼女の育ちの良さを窺わせた。、


「私はアリス。魔界から来たの」
「アリス……まさか」


 アリスと名乗った彼女は、驚くアリスへと視線を向ける。
 にっこりと微笑み、そして大きく頷いた。


「そこにいるお人形さんを作った者よ」











 湯飲みをテーブルに置く音が、妙に大きく聞こえた。
 向かい合って座るアリス……幼い彼女に、霖之助はため息を吐く。

 彼女から語られた事実は、彼の頭を悩ませるには十分すぎるものだった。


「……つまり、僕の知っているアリスは君の作った人形だった、ということかな」
「そういうこと。記憶も魔力もすべてを与えた、私の最高傑作よ。
 自我を持ったのは予想外だったけど」


 幼いアリスは肩を竦めると、ゆっくりと首を振る。
 人形だと言い放った彼女は、嘘を付いているように見えない。

 アリスは何も言わず、ただ俯いている。


「あら、信じられない? なにか証拠になるようなものを見せたらいいのかしら。
 私はこの子を通してすべてを見てたんだもの。何でも答えられるわよ」


 おかしそうに口元を押さえながら、霖之助の瞳を覗き込んだ。


「……いや、その必要はない。きっと君のいうことは本当なんだろう」
「ふぅん。意外とすんなり信じたわね」


 少しだけ意外そうに、アリスは首を傾げる。
 そしてその言葉を信じるということは……彼女を人形だと、認めること。


「こっちはそうはいかないみたいだけど」
「……アリス」
「わ、私は……」


 心のどこかで霖之助が否定してくれると信じていたのかもしれない。
 アリスはショックを受けたような面持ちで、霖之助へと視線を向けた。

 そんな彼女に、幼いアリスは言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「あなたが見た夢は、私からの魔力の逆流。
 私とあなたは繋がってるのよ。それが何よりの証拠だと思わないかしら」
「でも、今までそんな事……」
「そうね。今まではそうだったけど、あなたこの前この人を助けようと無理したでしょ?
 人形の身で魔界の力なんて使うからかしらね。ちょっと魔力の流れがおかしくなってるのよ。
 しばらくしたら治ると思うけど……」
「ちょっと待ってくれ。この前とは、なんのことだい?」
「あら、覚えてないのかしら。なんてことはないんだけど、転送用の魔剣をこの道具と一緒に送ってたのよ。あなたを魔界に招待しようと思って」
「僕を? どうやってだい?」
「自動道案内機能を付けた魔剣を置いてみたのよ。だけどこの子に邪魔されちゃってね。
 ちょっと術式にイタズラしちゃったのは確かだけど」
「だって……心配だったから」
「……なるほど」


 その言葉でようやく合点がいった。
 最近のアリスの言動、彼女の正体。

 そして最近原因不明の筋肉痛に悩まされたこと。


「というわけで、改めてあなたを魔界に招待したいんだけど、いかがかしら」
「……霖之助さん」


 楽しそうなアリスと、心配そうなアリス。
 ふたりの視線を受け、霖之助はため息ひとつ。

 幼いアリスに向かい、苦笑を浮かべた。


「すまない、今日のところは帰ってくれないか」
「あら、なにかお気に召さないところでもあったかしら?」


 その言葉すら予想通りであったかのように。
 アリスはひとつ、笑みを浮かべる。


「香霖堂は人、妖怪問わずすべてを受け入れる。
 しかし今日はちょっと優先事項が出来てしまったからね。
 まあ、イタズラの代償だと思ってくれると助かる」
「別にいいけど、また来て構わないわよね?」
「もちろんだとも」


 彼が頷くのを確認すると、アリスはあっさりと立ち上がった。


「じゃあ、今日のところは退散するわ。またね、お人形さん」
「アリス君」


 玄関口へ向かい、出て行こうとする彼女を、霖之助は呼び止める。
 少しだけ強い口調だったので、振り向いた彼女には微かな驚きの色が見て取れた。


「……彼女を人形扱いするのは、やめてくれないかな」
「ふぅん?」


 少女は何か言いたそうな表情を浮かべ……やめる。


「考えておくわ」


 残したのはただ一言。
 カランというカウベルの音が、店内に響き渡った。

 店内に残された、霖之助とアリスの間に。


「人形……か……」


 ぽつりと漏れた呟き。
 そしてアリスの思い詰めたような表情。


 流れる重い沈黙に、霖之助はゆっくりと言葉を探し始めた。

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No title

自分が人形だと知って呆然とするアリスお労しや・・・

でも霖之助にとっての”アリス”は今回魔界からやって来た本物のアリス
ではなく、香霖堂の常連であるアリスでしょうから、そこらへんを後編で
伝えるのかな?

・・・しかし本物も人形も気になる人物のタイプは一緒なんですねwww
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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