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朱鷺と囲碁とうさみみと

ハzL.さんに許可を貰ったので、去年の紅楼夢にて出た朱鷺子合同に寄稿したSSです。
きっかけはしゃもじさんのうさみみ霖之助、だった気がする。


霖之助 朱鷺子









 香霖堂の屋根裏にはいろいろ棲み着きやすいらしい。
 梅霖の妖精の一件のあと、霊夢がそう言っていた。

 香霖堂は霖之助の店である。勝手に棲み着かれては困るのだ。
 ならば、得体の知れないものが棲み着かないようにするにはどうしたらいいか。


「霖之助ー!」
「やれやれ、騒がしいことだ」


 ドタドタという足音に、霖之助はため息を吐いた。
 彼が選んだ手段は、先手必勝。
 つまり害のない者に屋根裏に住んでもらい、保護しようと思ったのだが。


「霖之助、勝負しよ!」
「……得体の知れない事には変わりなかったかな」


 輝かんばかりの少女の笑顔に、霖之助は肩を竦める。


「ねー、霖之助ー、聞いてるの? 勝負しようよー」
「ああ、ちょっと待ってくれ、朱鷺子」


 霖之助は本を閉じ、彼女に向き直った

 朱鷺子、と呼ばれる彼女と知り合ったのはもう結構前のことになる。
 最初は霊夢に本を奪われての出会いだったのだが、霖之助と本好きな彼女とは話が合った。
 そんなわけで霖之助が居住者を捜しているとき、白羽の矢が立ったのが彼女なのである。
 店にある本を自由に読んでいい代わり、本を見つけたら拾ってくること。
 店の手伝いをすること。
 掃除をすること。
 このあたりの条件で、朱鷺子は香霖堂の屋根裏に住むことになった。


「今日の題目は何かな」
「うん、囲碁をやりたい!」


 朱鷺子は嬉しそうに頷く。
 たまに彼女は一日店長の座を賭け、霖之助に勝負を挑んでくることがあった。
 もし店長を譲り渡したとしても、霖之助の定位置……カウンターで朱鷺子が本を読むだけなので、特に不利益もない。
 その間に霖之助は他の仕事をしたり、無縁塚に行ったりすればいいのだ。
 客が来たら、どうせ霖之助が相手するわけだし。
 ……つまりは留守番なのだが、彼女は気付いているのだろうか。


「それで、今回は何を読んだんだい?」
「えっと……」


 朱鷺子が手に持った本に視線を移した。
 その表紙を見て、霖之助は状況を悟る。


「ああ、なるほど」


 確か主人公に碁の得意な幽霊がくっついてくる、と言った内容だったはずだ。
 まだ全部読んだわけではないようだが……感化されやすいのは感受性が高いのか。
 霖之助は苦笑しながら、彼女に尋ねた。


「朱鷺子、碁のルールはわかるのかい?」
「んー?」


 首を傾げる朱鷺子。
 漫画の知識だけではとても足りないだろう。
 わかってはいたが、一応確認する。


「よくわかんない。教えて」
「よくそれで勝負を挑もうという気になるね」


 霖之助は大きくため息を吐いた。
 だがそれもいつものことだ。実に……彼女らしい。


「まあ、いいよ。だが勝負は勝負だからね。手を抜く気はないよ」
「望むところよ!」


 朱鷺子は自信満々に胸を張る。
 ……その自信は一体どこから出てくるのか、と霖之助は肩を竦めた。

 ルールもおぼつかないのでは、指導碁くらいにしかならないだろう。
 しかし彼女は霖之助があからさまに手を抜くとそれはそれで怒るのだ。全く気難しい相手である。






 そして当然ながら……勝負はあっさりと付いた。


「よぷぷ……」
「なんだいそれは」


 碁盤の前で呆然としている朱鷺子に、霖之助は苦笑を浮かべる。


「だってもっと私のイメージではこう……」
「イメージだけで勝負事に勝てるほど甘くはないよ」
「よぷ」


 再び妙な声を上げながら、彼女は机に突っ伏した。
 とはいえ初心者にしては筋がいい。
 熱心な朱鷺子のことだ。碁の本を渡してみるのも面白いかもしれない……と、碁盤を片付けながら霖之助はそんなことを考える。


「さて、僕の勝ちだね」
「お……」


 身体をわななかせ、朱鷺子は霖之助に指を突きつけた。


「おぼえてろー!」
「ちょっと待った」


 捨て台詞を残し、脱兎の如く逃げ出しそうとした朱鷺子に声をかける。
 すると彼女は、イタズラの見つかった子供のようにビクンと身体を震わせた。


「君が勝ったら店長の座を渡すと言った。しかし君が負けた場合の条件がまだだったね」
「きょ、今日は何をさせるつもりよ」
「さて、どうしようかな」


 恐る恐る、と言った様子で朱鷺子が振り返る。
 いつもなら食事当番や庭の掃除なんかをやってもらうのだが。何となく、いつもと同じでは芸がないと考える。

 ……そこでふと、霖之助はひとつの案を思いついた。


「そうだな、得体の知れないいきものにでもなってもらおうか」
「へ?」


 霖之助の言葉に、首を傾げる朱鷺子。
 その反応も無理はないだろう。だが勝負の結果は結果である。罰は受けて貰わねばならない。


「ちょっと待っててくれたまえ」


 そう言って霖之助は腰を上げ、店の商品棚を見回した。
 確か在庫は十分あったはずだ。というか、入荷したはいいものの一度も売れたためしがない。


「ああ、あったよ。これをこうして……」


 せっかくこういう機会だから使ってみたかった。あくまで知的探求心のためである。


「……完成だ」
「なにこれ」
「うさみみといってね。見ての通り兎の耳を模した装飾品らしい」


 朱鷺子の頭の上には、布で出来た兎の耳がぴょこんと生えている。
 その姿をじっくりと観察すると、霖之助は満足げに頷いた。


「うむ、見事に鳥か兎かわからないいきものになったね」
「ひどいはずかしめを受けている気がする……」
「これも探求心のなせる業といっていいだろう。誇っていいよ」
「全力で遠慮するわ」


 嫌がる朱鷺子を霖之助はもう一度見つめる。
 彼女の頭についている羽根と相まって、すごく奇妙な感じがした。


「数えるときはやはり一羽だろうか」
「ひとりふたりで数えてよ!」


 ぶんぶんと腕を振り回しながら、朱鷺子は首を振った。その拍子にうさみみがぴょこぴょこと揺れる。
 心温まるその様子に、霖之助は笑みを浮かべた。


「今回の勝負の条件はそれでいいよ。本来は服もあったんだが……」


 バニースーツと呼ばれるそれも、その辺の棚に眠っているはずだ。しかし。
 ……朱鷺子の身体を見て、霖之助は首を振った。


「……何かすごく失礼なこと考えてない?」
「気のせいだ」


 これで十分とばかりに、霖之助は頷く。
 そしていつもの椅子に座った。
 カウンターにある彼の定位置。店長の席に。


「む~……。あ、そうだ」


 店長の座を奪い損ねた朱鷺子は不満そうにしていたが、やがて何かを思いついたような表情を浮かべた。
 先ほどの商品棚を探り、霖之助の背後に忍び寄る。


「えいっ」
「……なにをするんだ」


 突然自分の頭に付けられた何かに、霖之助は苦い表情を浮かべる。
 触ってみると、どうやら先ほど朱鷺子に付けたのと同タイプのうさみみらしい。


朱鷺と囲碁とうさみみと


「おそろいー」


 むふー、と息を吐き出しながら、朱鷺子が胸を張った。
 してやったりと言わんばかりの表情だ。


「これは男用の装飾品じゃないんだ。僕に付けるものじゃないよ」
「でもうさみみで冒険してる人もいるかもしれないじゃない。ギルドとか」
「僕は店主だからね。冒険する必要は無いよ……いろんな意味で」


 そう言って、霖之助はうさみみに手をかける。
 しかし外そうとしたそれを、朱鷺子が遮った。


「ダメよ」
「……ダメといわれてもね」
「ダメ、霖之助もうさみみ付けるの」
「断る。そもそも……」


 そもそも朱鷺子がうさみみを付けたのは勝負の結果のはずだが。
 そう思い、彼女を見ると……。


「せっかくお揃いなのに……」


 朱鷺子はシュンとした表情をしていた。
 ……その様子を見て、霖之助はため息を吐く。


「……これがなくても、僕と君はお揃いだろう?」
「え?」


 頭を撫でられ、彼女は驚きとともに霖之助を見上げた。


「僕たちふたりとも、正体不明の本読み妖怪だからね」


 正確にはハーフだが……。
 まあ、細かいことはいいだろう。


「……うん!」


 朱鷺子は笑顔を浮かべると、霖之助に抱きついてきた。
 彼女の頭のうさみみが、ぴょこぴょこと嬉しそうに揺れていた。

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非公開コメント

No title

シュールな挿絵がなんかツボったwwww

しかし流石は道草さん、安定の〆である^^

うさみみ朱鷺子かわいいです^q^

No title

うさみみ朱鷺子可愛いな///

そして、さらりと殺し文句を言う霖之助(うさみみver.)が流石ですwww
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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