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バレンタインSS23

WTNさんにチルノのバレンタインネタをもらったので。

作中では去年ですが実際は一昨年のSSの続きです。


霖之助 チルノ








 エビフライ、ハンバーグ、ナポリタン。
 香霖堂の台所には様々な料理が並んでいた。

 どれもが食事のメインを張れるものだが、今回に限ってはそうではない。
 どの料理も普通に比べて少量ずつ用意されている。

 理由は簡単である。
 これらはすべて揃って初めて、ひとつのメニューになるのだから。


「そういえばチルノ、グリーンピースは大丈夫かい?」
「ぐりーん? なにそれ?」
「知らないなら大丈夫だね」


 霖之助は料理をする手を止めないまま、隣の部屋にいるチルノに声をかける。
 そして返ってきた返事に肩を竦めつつ、グリーンピースの入った容器を手元に寄せた。

 まず鶏肉を炒め、それからタマネギ、キノコ、グリーンピース。
 バターを入れて味付けしつつご飯と合わせたら、ケチャップを絡めてチキンライスの完成である。

 赤一色にならないよう彩りにも気を遣ったのだが、チルノに好き嫌いが無くて助かった。


「おいしそうな匂いだね、りんのすけ」
「ああ、そうだろう。もう少しでできるから待っててくれ」
「はーい」


 霖之助が作っているのはお子様ランチと呼ばれるメニューだ。
 外の世界の料理本で見かけたことはあったのだが、せっかくなのでこの機会に作ってみた。

 手間と製作工程が普通の料理の何倍もあるため、これが普通のレストランで食べられるとはやはり驚きを隠せない。
 それだけ子供というのは愛されているのだろう。


「ところでチルノ、箱の調子はどうだい?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」

チル霖バレンタイン

 呼びかけてみると、元気のいい声が聞こえてくる。
 料理をしているので姿こそ見えないものの、手をパタパタと振っている様子が容易に想像できた。


「今日はそれがメインだから、よろしく頼むよ」
「うん、まかせて」


 そう言ってチルノは頷いた。と、思う。
 そんな気配がした。

 そして霖之助は再び料理に集中する。
 品目が多いので手早くやらないと冷めてしまうのだ。


「ねー、りんのすけー」
「なんだいチルノ」


 暇になったのか、はたまた匂いに誘われてか。
 いつの間にかチルノが箱を持ったまま近くに浮かんでいた。

 料理に邪魔にならないような位置で、できあがった料理の数々に目を輝かせている。


「バレンタインって、チョコレートを渡すやつなんだっけ?」
「ああ、そのようだね。だがそれもこの国独自の風習みたいなものらしいから、そこまで気にしなくてもいいと思うよ」
「そうなの?」
「そうさ。もっとも、チョコレートを渡したいという考えがあるなら当店は協力するけどね」


 幻想郷でバレンタインが本格的に流行りだしたのは山の神社が出来てからくらいだろう。外の世界から持ち込まれたそれは天狗の手により面白可笑しく広められ、実にわかりやすいイベントとして定着してしまった。
 それこそ、妖精でも知っているくらいに。

 わかりやすいと言うことは間口が広いという事である。
 霖之助はこれをチャンスと捉え、先日まで香霖堂でもバレンタインのチョコを売り出したのだ。

 そしてめでたく目論見は成功し、珍しく最近の香霖堂には客で賑わっていた。
 ……まあ、ほとんどの客は香霖堂に置いてある古道具のほうには興味がなさそうだったものの……外の世界の調理道具がある程度売れたので、よしとしよう。


「あたいもりんのすけに渡した方がいい?」
「ありがとう、チルノ。その気持ちだけで十分さ。
 それにもうチルノからは貰ったし、気にしなくていいよ」
「あれ、なにかあげたっけ?」
「去年の話だけどね。諦めない気持ちって奴かな」


 それは1年前のバレンタイン。
 チョコレート作りを失敗した霖之助はチルノに励まされ、今年のバレンタイン商戦を成功させることが出来た。

 リベンジを果たせたのはチルノとの約束があったおかげとも言える。
 すなわち、去年より美味しいチョコレートを食べさせるという。


「それにチルノには今も手伝って貰ってるし」
「うん。チョコアイスってやつだっけ」
「ああ、そうさ。外の世界では冷凍庫を使って作るらしいけど、君の能力があれば代用は十分可能だろう」
「そっか。じゃああたいが作ったチョコレートになるんだね」
「そういうことさ」


 今回霖之助はチョコレートのアイスクリームを作ることにした。
 彼女が持っているのはそのための箱である。

 チルノの力を受けて箱の中の温度が一定になるようにある程度の細工はしておいたので、上手くいくはずだ。


「これで去年より美味しいチョコができるの?」
「もちろんだとも」
「あ、でも去年も美味しかったよ」
「そうかい?」
「うん、たぶん。覚えてないけど」


 ちなみにお子様ランチを作っているのはついでである。
 食べたかったというわけではない。
 あくまでついでだ。チルノのための。

 まあ、ひとりでは名前のせいで食べにくいことこの上ないのだが。


「さて、そろそろいい具合に固まった頃かな。
 チルノ、箱を持ってきてくれるかい?」
「おっけー」


 チルノが持ってきた箱を受け取り、中を確認する
 予想通り上手くできたようだ。

 名称はチョコレートアイスクリーム。
 用途はチルノと一緒に食べること。


「チルノのおかげで完成したみたいだよ」
「ほんと?」
「ああ。上手くできたね。食べてみるかい?」
「いいの? あ、でも……」


 一瞬顔を輝かせるチルノだったが、しかし彼女は首を振った


「あとで食べる。ご飯と一緒に食べた方が美味しいんでしょ?」
「そうか、じゃあそうしよう」


 霖之助はひとつ頷くと、彼女の頭を撫でる。
 せっかくチルノが我慢しているのだ。
 これ以上待たせるのも悪いと思い、早速食事の準備に取りかかる。

 幸いなことにちょうど料理も完成したところだ。
 あとは盛りつければお子様ランチのできあがりである。


「チルノ、この皿を持っていってくれるかな」
「うん」


 チルノにふたり分の皿を渡す。
 いろいろな料理が盛りつけられるようになっている、お子様ランチの少し変わった皿だ。
 しかし場所によっては電車型や飛行機型のトレイもあるらしい。
 一度見てみたいものだと思う。あまり使うことはないと思うが。


「ごーかだねぇ」
「そうだね……ふむ?」
「どうしたの?」


 台所から食卓に運び、ふと霖之助は首を傾げる。

 盛りつけたのはいいが、何かが足りない。
 アイスクリームもあるし、料理も冷めてしまうのであまり時間はないのだが。
 そう思った瞬間、天啓のように閃くものがあった。


「僕としたことがこんな基本的なことを忘れていたとは」
「忘れ物?」
「その通り。お子様ランチには旗が必要なんだよ」
「……それ、大事なことなの?」
「もちろんだとも。なんのためにお子様ランチはこんなに数多くの品目が一皿に盛られていると思うんだい?
 そもそも旗を立てるという行為には様々な意味があるが、ここで思い出すのはかの月面に外の世界の人間が到着した時の写真だろう。
 これはつまり皿を世界と見立て、それに旗を立てることで自らの存在を、ひいては子供の将来を願って」


 ぐぅ、というチルノのお腹の音に霖之助は我に返った。
 気を取り直して、咳払いひとつ。


「……すまないがチルノ、僕は飲み物を用意してくるから。
 この爪楊枝の先にこの紙を巻き付けて旗を作っておいてくれないかい?」
「あたいが描いていいの?」
「ああ、僕の分も頼むよ。柄は簡単なやつでいいからね」


 そう言い残し、霖之助は台所に足を運んだ。

 さすがに冷たいものばかりでは身体が冷えてしまう。
 温かい緑茶あたりがいいのだが、お子様ランチに合う飲み物と言ったらやはりジュースなのだろうか。
 こんな事ならポタージュスープでも作っておけば良かったと思いながら、ふたり分のココアを用意する。
 ひとつはホット、ひとつはアイス。


「できたよー」
「ん、早いじゃないか」


 霖之助が食卓に戻ると、チルノが笑顔を浮かべていた。
 あれから5分と経っていないのだが。


「これは僕かい?」
「そうそう。んでこっちがあたい」


 チルノは嬉しそうに旗を霖之助に手渡した。
 よく特徴が捉えられていて上手いと思う。意外な才能だった。


「ありがとう、チルノ」


 旗を立てて、完成である。
 霖之助は満足げに頷くと、手を合わせた。


「じゃあ、いただきます」
「いただきまーす。ねえりんのすけ」
「ん?」


 早速どこから食べようかと考えていると、チルノが顔を寄せてきた。
 彼女の吐く吐息のひんやりとした感触が頬を撫でる。


「最初のひとくちは、りんのすけに食べて貰いたくて」


 アイスをすくい、スプーンをそっと差し出した。
 そして少し首を傾げ、霖之助の顔を見上げる。


「はい、あーん?」

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No title

うぉーう、素敵な話に。
「チョコ冷凍」なんてしょうもないネタからここまで話を膨らませる事が出来る事が凄いです
絵が簡単に想像出来てあまーーい!!

No title

・・・チルノの話なのに最初から最後までアツアツなんてけしからんですな(笑)
チルノってばやっぱり最強ねwww

No title

おぉ、マヒしてきた舌には丁度いい感じの甘さですなw
昨日だけでキロ単位の砂糖をはいたので締めにちょうどいいです。
しかし霖之助と子供の相性は抜群ですね、来年以降は旗の絵がハートマークや仲良さそうに寄り添うチルノと霖之助とかになってそうですww
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道草

Author:道草
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