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ワンダフルライフ

天測で練習してたのと、ドッグをプレイしてた人がいたのでつい。


霖之助 幽々子









 ピンク色のふわふわが店内をふよふよと漂っていた。
 足が地についておらず、微妙に浮かんでいるのがいかにも亡霊らしい。


「ないわねぇ」


 それから彼女はため息混じりにそんな事を呟く。
 あちらこちらに行ったり来たりするその姿は、確固たる目的があるようにも見えなくもない。


「何か探している物でもあるのかな?」
「ううん、たいした物ではないのよ」


 このやりとりも3度目だ。
 さっきから同じ受け答えをしているが、返ってくるのはそれだけである。

 しかし言葉とは裏腹、熱心に商品棚を物色する彼女に、霖之助は続けて尋ねてみることにした。


「もしよかったら、僕にも探すのを手伝わせてくれないかい?
 何か力になれるかもしれない。もちろん、僕に言いにくいような物なら仕方がないけど」
「そういうわけじゃないのよ、本当に」


 袖口で口元を隠し、亡霊の少女……幽々子はコロコロと笑う。


「それに買う時あなたのところに持っていくんだもの。
 秘密なんてあるわけがないじゃないの」
「まあ、そう言われれば確かに」


 彼女に言われ、霖之助は肩を竦めた。
 紫のようにいつの間にか商品を持って行かれることに慣れていたせいか。
 慣らされていた、が正しいかもしれない。

 幽々子はそんな彼に笑みを浮かべると、ややあって口を開いた。


「携帯ゲーム機のソフトを探してるのよ」
「ソフト? 携帯ゲーム機というと、あの」
「ええ。あらゆる物を操作する、アレよ」
「……その話は勘弁してくれないか」


 がっくりと肩を落とす霖之助。
 もうずいぶん昔の話だ。
 スキマ妖怪と知り合って間もない頃、とある携帯ゲーム機を壊そうとしたことがある。 道具の用途を見極めることの出来る霖之助には、その携帯ゲーム機というものが『あらゆるものを操作できる道具』に映ったからで……。
 その後訪れた紫に、種明かしのように使い方を教えられ、散々からかわれたものだ。

 道具自体は壊そうとしたところでスキマ妖怪に持って行かれたのだが。

 使い方を教えてもらったことには感謝するが、あの時の紫の顔を忘れることが出来ない、実に屈辱的な記憶である。
 そして紫の親友らしい幽々子はその話をしっかりと聞いていたらしい。


「ごめんなさい、つい」
「なにがつい、だい。まったく」


 笑いを堪えた様子の幽々子から逃れるように、霖之助はゲームソフトが山と積まれた商品棚へと視線を向けた。
 幻想郷では雑多な理由からほとんど使うことの出来ないゲーム機だが、たまに山の神社の風祝や幽々子、紫といった人物が買っていくので侮れない商品ではある。
 とあるメーカーのものしか買わなかったり、ひとつのジャンルしか遊ばなかったり、買い手それぞれに趣味趣向が見て取れ、売る方にもわりと楽しかったりするのだ。


「私が探してるのはこのソフトと同じ大きさの物なんだけど」
「ああ、最近流行りと紫が言っていたやつかい」
「そうそう。本体は紫から貰ったのよ」


 幽々子が指さしたのは、小窓がふたつついている携帯ゲーム機用のソフトだった。
 そして袂の中から、ピンク色をしたゲーム機本体を取り出す。

 彼女に似合う色だな、などと霖之助が考えていると、幽々子は呆れたため息を吐いた。


「それにしても、この棚並べ方が適当過ぎるんじゃないかしら。
 別のゲーム機のやつとかごっちゃになってるし」
「……耳が痛いね」
「ちゃんと整理しないと、売れる物も売れないわよ~?」
「すまない。肝に銘じておくよ」


 頭を掻きながら、霖之助はため息ひとつ。

 これ以上追及されるといろいろとよくないことになりそうなので、話題を変えることにした。


「それで、君が探しているのはどんな内容のゲームなんだい?
 もしかしたら、僕の能力に近いものが映るかもしれない」
「んーと、犬を育てるのよ」
「犬?」
「ええ、犬」


 犬と聞いていろいろと思い浮かんだのだが、どうやら考えすぎらしい。
 いわゆる普通のアレなのだろう。太古からの人類の友。


「芸を仕込んだり、コンテストに出したり、もしくは単に戯れたりするの。素敵でしょう?」
「そんなものまでゲームという遊戯になっていることの方が驚きだよ。
 実際に犬を飼った方が早いんじゃないかな」
「そういうわけにもいかないから欲しいんじゃない。わかるでしょう?」
「……ああ、なるほどね」


 幻想郷で家畜は妖怪にさらわれたり、妖怪化してしまうという危険性を持っている。
 なのでおいそれと動物を飼うのはなかなか難しいのだが。

 まあ、外の世界でそういった事情があるとも思えないので他の要因だろう。


「それに実際ペットを飼っていても楽しめるらしいわよ。うふふ」
「……そうか」


 それは何を指しての言葉だったのか。
 気にはなったが、あえて霖之助は踏み込まないことにした。

 わからないことは考えない。


「そうそう、同じゲームを持っていればペット同士を遊ばせられるんですって。今度一緒にどうかしら?」
「それは、僕にもゲーム機をくれると言うことかな?」
「そうね、紫に聞いてみるわ。充電器も必要かしら。うふふ、楽しみね」
「ああ、楽しみにしているよ。しかし残念ながら、そのゲームソフトは見たことがないね」
「あら、そうなの?」
「それ自体が過去の物になったのならともかく、人気のあるゲームは手に入りにくいんだ。
 新しい物は、誰かの忘れ物が流れ着くくらいだね。とにかく、探しておくよ」
「ええ、お願いね」


 頷く彼女に、ふと霖之助は首を傾げる。


「どうせなら紫に頼めば……」
「あら、紫はダメよ」
「……ずいぶん即答だね」
「この本体をくれたときの紫の言葉。ソフトは自分でなんとかしてね? ですもの」
「なるほど」


 実にわかりやすいやりとりである。
 紫も幽々子に甘いばかりではないらしい。

 もしかしたら、これが彼女たちの友情の形なのかもしれない。


「育てるのが好きなのかい?」
「ええ、好きよ~。それに死なないってところがとてもいいわね」
「そういうものか」


 幽々子は冥界のお嬢様である。
 そんな彼女が、そのゲームに何を見たのだろうか。


「冥界にペットはいないのかな?」
「幽霊ばかりだもの。可愛がって育てるって感じじゃないわねぇ」
「……確かに、死後の世界だからね」
「あ、でも似たようなのならいるかも」
「ふむ、どんな動物だい?」
「あらやだ、あなたも会ったことあるじゃない」
「会ったこと……?」


 彼女に言われ、霖之助は首を捻った。
 幽々子に繋がりのある、冥界の存在。

 ましてや会ったことのある相手など……。


「……君の言うペットって、もしかして」
「うふふ」


 脳裏に浮かんだのは、半人半霊の少女。
 霖之助は疲れた表情を浮かべ、大きなため息を吐いた。


「一緒にしたらさすがに可愛そうだろう」
「やぁねぇ。冗談よ、冗談」
「まったく、どこまで本気なんだか」


 幽々子の冗談のタチの悪い点はいつでも笑顔と言うところだ。
 感情が読みにくく、真意を測りかねる。
 まあそれでも、笑顔が不吉じゃないだけマシだろう。


「でもあの子ったらたまに意地悪なんだもの。
 この前もちょっと剣の稽古をサボったからって私のおやつを抜きにしたのよ。
 仕方ないから私はゲームのペットを探しに来たの」
「まるであてつけだね」
「さあ、どうかしら」


 拗ねた顔の幽々子はいつもよりずっと幼く見えた。
 普段大人びた彼女がそういう一面を見せるといつもと違ってとても新鮮に思う。

 だから、霖之助は少し照れた感情を誤魔化すように苦笑いを浮かべた。


「君があの子を可愛がっているのは見ていてよくわかるよ」
「あらそう?」


 微笑む幽々子はもういつもの表情だ。
 安堵と僅かばかりの名残惜しさを胸に、霖之助は先程話題に出た少女を思い浮かべる。


「そう言えばすっかり忘れていたけど、妖夢は君に剣を教えているんだっけ」
「そうよ、庭師と兼任ね」
「君が剣を扱うのは、少し予想外かな」
「そうかしら? まあ扱うと言ってもたしなみ程度だけどね。唄や舞の方が私は好きよ~」
「なるほど、それなら確かに似合いそうだ」
「うふふ、ありがとう」


 幽々子は懐から扇子を取り出すと、ひらひらと揺らす。
 舞を表現しているのだろう。

 妖夢と言えば、先日異変解決に乗り出したという話を彼女から聞いた。
 無事解決して帰ってきたところを見ると、その実力は侮れないものなのだろう。


「妖夢の剣の腕はかなりのものと聞いたが、君はどれくらいなんだい?」
「私は全然。妖夢に剣では勝てそうにないわ」
「ほう、それほどなのか」
「ええ。あの子の剣は祖父仕込みだもの。本人はまだまだだって言ってるけどね」


 人間と幽霊のハーフである妖夢は、その寿命もかなりの長さだ。
 その長い寿命から考えると比較的年若い彼女がそれほどの実力を身につけているのは、よほどいい師がいたのかもしれない。

 そんな事を話しているうちに、ひとつの疑問が霖之助の胸中を過ぎる。


「ちなみに、剣以外で妖夢は君に勝てるのかな?」
「あらあら、うふふ」


 幽々子が返したのはその笑みだけだった。
 だがそれが何よりの答えである。

 つまりまだまだ未熟者、と言うことだろう。


「しかしたしなみとは言え、剣の練習をする君はさすがだと思うよ」
「そうかしら?」
「妖怪は基本的に努力をしないからね。努力するのはもっぱら人間というわけだ。
 刹那の快楽を追い続けた方が妖怪らしい、かな」
「それじゃ虚しい余生が残るだけよ。私だって元人間だもの、それくらいはするわ。
 人間だった頃の記憶なんて全然無いけどね」


 あとサボりがちだけど、と彼女は笑いながら付け加えた。


「あなたも努力はしてるじゃない。実を結んではいないけど」
「一言多いよ、幽々子。僕も半分は人間だからね。それくらいはするさ」


 あとサボりがちだけど、と霖之助は苦笑混じりに付け加える。


「しかし元人間と半分人間か。僕と君は案外似たようなものかもしれないな」
「あら、だとすると少し嬉しいわね」
「そうかい?」
「そうよ。だって……」


 ふわりと幽々子は霖之助に近寄った。
 ふよふよと揺れながら、彼の耳元でそっと囁く。


「好きな人と似てるだなんて……素敵だと思わない?」









「妖夢、今帰ったわ~」
「お帰りなさいませ、幽々子様」


 白玉楼に戻った主人に、妖夢は恭しく頭を下げた。
 ふわふわと軽い足取りで漂う彼女に、ふと気づいたように首を傾げる。


「今日はずいぶん機嫌がいいですね」
「あら、わかるかしら」
「何かいいことでもございましたか?」
「うふふ~、ちょっと犬で遊んできたのよ。いえ、遊ぶ約束かしら」
「はい?」
「なんでもないわ、気にしないで~」


 隠しきれない喜びを滲ませ微笑む幽々子に、妖夢もつられて笑顔になった。


「それじゃあ私は部屋に戻るわね」
「はい……あれ?」」


 主を見送り、一礼。
 頭を下げた拍子に、妖夢の目にあるものが止まる。


「銀色の……毛? ずいぶんクセっ毛のようだけど」


 犬の毛だろうか、と考えたが、違う気がした。
 けれどなんだか、知っているような、そんな気がする。

 どうして主の服からこの毛が落ちたのか。
 ……深く考えずに、妖夢は忘れることにした。

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非公開コメント

No title

ゆったりとした感じの幽々霖。
他キャラにはあまり見いだせない素敵な雰囲気ですね。
それはそうと、洋服に謎の銀髪がついた理由について詳しい描写を(ry

No title

ゆゆさまステキ……とか思ったけどその前に、霖之助さんの紫様への好感度が息をしてない気が;;
こいつを挽回するのは至難の業だぜ

No title

幽々子様も霖之助も何だかんだで何かを育てるのが得意そうなので
結構お似合いの2人なのかも。 ・・・もっとも霖之助が育てるのはもっぱら
幻想郷の少女達の恋心なわけですがwww

今後幽々子様の機嫌が良い日には決まって服に銀色の髪の毛
が付いているんですね。分かります。(2828

No title

なんとなく子犬を抱いて微笑む幽々子様を脳裏に思い浮かべました。いいなぁ。隣に彼が居たらもっといい。
夜の間は私が犬よとかそんな感じの展開を希望したいんですけど駄目ですか駄目ですね。

No title

つやっぽい幽々子様ですねぇ。
こういう感じの話は大好きです。

しかし、幽々子様と犬か……何となく、豆柴とかって感じですね。妖夢に任せず自分で餌をやってそう。
対して霖之助は……犬より、亀とか猫の類があってそうに思えるのは俺だけかww

あと、この終わり方だと妖夢が病みそうな気がします……「犬だって言ってたのに……」「……妖夢、大人になるって悲しいことなの」「聞きたくない!!私の恋心を知っておいて、この裏切り者!!」
って感じでどうですか?
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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