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愉快な命蓮寺一家08

久々の白霖のような気がします。
白蓮さん新妻計画……!


霖之助 白蓮








「さあどうぞ、たんと召し上がってください」
「召し上がれ、とは言うがね」


 溢れんばかりの笑顔を浮かべる白蓮に、霖之助は戸惑った表情を返した。

 時刻は昼。食事にはいい時間だろう。
 香霖堂に来るなり台所でなにかやっていたかと思えば、いそいそと食事の準備を始めたのだ。

 目の前にあるのはチキンナゲットやうなぎの蒲焼き。
 トンカツや親子丼まである。


「これ全部、君が作ったのかい?」
「ええ、お口に合えばいいのですが」
「……よくできているね。まるで本物みたいだよ」
「ありがとうございます。この前いただいたレシピ本のお陰です。
 あとは豆乳でとんこつラーメンとかも出来ますよ」
「なるほど、それは美味しそうだ」


 もちろん仏門である白蓮が作った料理なので、どれもが精進料理だ。
 いわゆるもどき料理である。

 どう見ても肉にしか見えないそれは、肉もどきや大豆肉と言われる料理らしい。
 もちろん霖之助の能力を使えば判別可能なのだが。

 確かにそれ系統の本を渡した記憶はあるものの。
 霖之助自身、その本をじっくり読んでいなかったので、こうして目の前に出されると新鮮な驚きがあった。


「さすがにこんなにひとりで食べられないよ。よかったら君も一緒にどうだい?」
「え? あ、はい。ではお言葉に甘えて」
「遠慮する事はないよ。と言っても君が作ったものだがね」
「ふふ、そうですね」


 どうやら白蓮は自分が食べる事を想定していなかったらしい。
 ……それにしては量が多いと思うのだが。

 二人でテーブルにつき、いただきますと手を合わせる。


「ん、これはなかなか……美味しいな」
「そうですか? よかったです」


 正直な感想を漏らすと、彼女はほっと胸を撫で下ろしたようだ。

 そう言えばこの2日ほど何も口にしていなかった気がする。
 本物の肉のように余分な油で胃がもたれる事もなく、これならいくらでも入りそうだった。


「いや本当に、ここまで料理上手だとは思わなかったよ」
「魔界にいた時も結構料理していたんですよ。向こうの神様がいい方で、いろいろお世話になりました」


 少し話を聞いたところによると、封印されてた千年近く、白蓮はひたすら自己研鑽の時間に充てていたようだ。
 ……それだけの時間があければ、これだけの腕になるのも頷ける。


「ところで、どうしていきなり料理を作ろうという気になったんだい?」
「実は、それには深い事情がありまして」
「ふむ」


 料理に舌鼓を打ちながら、霖之助は彼女の言葉を待った。
 なにやら話しにくそうにしていた白蓮だったが、やがて意を決したかのように口を開く。


「先日、山の神様や仙人様と話す機会がありまして」
「ああ、聞いてるよ。霊夢と魔理沙じゃ正反対の感想だったがね」
「周囲への配慮が足りませんで、お恥ずかしい限りです」


 少し前の話だ。
 魔理沙と阿礼乙女が手を組んで、白蓮、神奈子、神子にインタビューを決行したらしい。
 もちろんそんな面々が一箇所に固まれば何か企んでいるのではないかと邪推してしまう者も出るわけで。
 最終的には博麗の巫女が出動するような大騒ぎになったと聞いている。

 まあ、霊夢が出動したから大騒ぎになったという可能性もあるのだが。
 当事者に聞いても自分の主張が正しいと言い張るばかりで要領を得ず、真相は闇の中である。


「そこでちょっと、お寺の面々がこっそりとお酒を飲んだり肉食をしたりしていると聞きまして」
「……ふーん。大変だね」
「一応各人に話を聞いてみたのですけど、やっぱり誘惑というのには耐え難いみたいで」
「…………」


 白蓮の言葉を聞きながら、霖之助はそっと目を逸らした。
 つい一昨日も一輪や雲山と酒を飲んだところである。

 その前はビーフジャーキーをぬえにあげた記憶があるわけで。


「どうしました?」
「いいや、なんでもないよ」


 まさか片棒を担いでいるとは言えず、霖之助は言葉を濁した。
 そんな彼を不思議そうな眼差しで見つめつつも、白蓮はゆっくりと首を振る。


「私としてもすべて絶対禁止と言っているわけではないのです。
 徐々に慣れていく事もまた修行のひとつですから……こちらから歩み寄る事も必要かなと思います」
「ふむ、幻想郷の妖怪事情に合わせた戒律を作ると?」
「そうですね。今すぐにというわけにはいきませんが、話を聞いてみんなで作っていきたいです」
「なるほど、それでまずこの料理なのか」
「はい、仏教と言えば精進料理ですからね」


 話しながら箸を進めていると、あれほどあった料理はきれいになくなっていた。
 かつてない満腹感を覚えつつ、霖之助は両の手のひらを併せて頭を下げる。


「ごちそうさま。美味しかったよ」
「お粗末様です。ありがとうございます。お世辞でも嬉しいですよ」
「いいや、本心さ。それにしてもよくここまで似せて作れるものだね」


 精進料理はお寺に行った時に食べた事があったものの、もどき料理ばかりというのは初めてだった。
 こんなに美味いものだとは思っていなかったが……白蓮の腕に寄るところも大きいだろう。


「機会があればまた食べてみたいね」
「本当ですか? じゃあ成功でしょうか」


 満足げに白蓮は頷き……そこで動きを止めた。
 もちろん霖之助も聞き逃すはずもなく。


「……成功?」
「あの、ええと」


 彼の視線に、白蓮は冷や汗を垂らす。
 やがて観念したかのように、がくりと肩を落とした。


「実は、霖之助さんに料理を作っていくよう助言くださったのは霧雨さんなんですよ」
「霧雨というと、魔理沙かい?」
「いえ、人里の道具屋さんです」
「……親父さんか……」


 その言葉だけでだいたい把握できた。
 人里での修業時代、とても世話になった恩人であるので霖之助は今でも頭が上がらないのである。


「きっとろくなもの食べてないだろうから食欲の出る料理でも作ってあげてくれって。
 それにナズーリンからも、貴方が拾いものばかり食べてるという報告もあって心配してたんですよ」
「……なるほど、事情は大方理解した」


 無縁塚の近くに住む小さな友人を思い出し、霖之助はため息をついた。

 ナズーリンが変な告げ口をしたせいで余計話が変な方向に向かったようだ。
 まるで霖之助ばかり拾い食いをしているような話である。
 本当は彼女と一緒にいろいろ食べたというのに。

 むしろ最近ではナズーリンのネズミが先に食い荒らしてしまうので外の世界の食料品が手に入りにくくなってしまっているほどだ。


「しかし食欲ねぇ。僕は食べなくても平気なんだが」
「そこをなんとかしたいらしいのですよ。霧雨さんとしては」
「ああ、修業時代にもよく言われたよ」


 まさか独立してからも言われるとは思わなかったが。
 とはいえ気にかけてくれるのは素直にありがたいと思う。

 そんな親父さんだからこそ人里でも一目置かれているのだろう。


「それに、私も同感でしたし」
「そうかい?」
「はい。ハーフの霖之助さんはどうかわかりませんけど、妖怪って突然寿命を迎える事もあるみたいで」
「……誰からそれを?」
「お寺に遊びに来てた死神さんと、あと響子さんから」
「なるほどね」


 死神のほうは言わずもがな。
 響子という少女にも霖之助は会った事がある。
 山彦と言う妖怪だが、ヤマビコは音波が反響しているだけという迷信が流行り、仲間が自然消滅してしまったらしい。

 同じように霖之助も突然消滅したりはしないか、と彼女は心配しているようだ。


「それでその、もし食べたいものとかあれば未練や目的となるかな、と」
「未練か……まるで亡霊だね」
「そ、そうですね。少し勇み足だったかも知れません」


 顔を赤らめる白蓮に、霖之助は笑みを零した。

 やることがない、と言うのは精神に重きを置く妖怪にとって致命傷である。
 だからどの妖怪も毎日の暇つぶしに一生懸命なのだ。

 とはいえ心配されるのも悪くない気分ではある。
 程度にもよるが。


「それにしても……」


 霖之助は口を開きかけ、やめた。
 そんな彼に、白蓮は首を傾げる。


「なんですか?」
「……いや。欲を捨て去る修行をするはずの寺の住職から、まさか食欲を勧められるとはね」
「あらまあ」


 彼女は少しだけ驚いた表情を浮かべてみせるが、やがてふわりと笑う。


「現世はすべて修行の場ですから。まずは生きなければ話になりません。
 食欲を捨て去るのは最期の時で十分なのですよ」
「確かに、一理あるね」


 輪廻転生をうたう仏教では、現世にいる時間が一番短いらしい。
 ならばその時間を有効に使うべきだ、と言うのが彼女の考えのようだ。

 ……彼女の言葉に乗ってみるのも、悪くないかもしれない。


「また君の料理をごちそうしてくれるかい?」
「はい、喜んで」


 霖之助の言葉に、白蓮は嬉しそうな笑顔を見せた。


「これでひとつですね」
「……何の話かな?」


 彼女が呟いた言葉になにやら不吉な予感を覚え、霖之助は思わず問い返す。
 白蓮は目を瞬かせると、不思議そうに首を捻った。


「霧雨さんに言われたんですよ」
「ほう?」
「ぜひ霖之助さんの3つの袋を握ってくれって。その中のひとつが胃袋だとか……」
「3つの袋って、それは……」


 解説しかけて、やめた。

 どうやらこれも親父さんの差し金らしい。
 妙な事を吹き込むのはやめて欲しいと思うのだが……いまだかつてこの訴えを聞いて貰った記憶がない。


「……まあ、頑張ってくれ」


 応援していいものだろうか。
 そう疑問に思いながら、霖之助は苦笑を漏らす。


「お任せください」


 自信たっぷりに頷く白蓮を眺めながら。


 ……あるいはそういう未来もあって良いかもしれないと。
 そんな事を、考えていた。

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非公開コメント

No title

久々の白霖!と思ったら既に新婚だったでござる。
まぁずいぶんと性のつく食事…と思いきや、なるほど、精進料理でしたか。白蓮らしいですねw
この先も霖之助さん好みの料理を作っていって、両家公認の仲になればいいんじゃないですかね!
あとくじゅの設定がふんだんに使われてて!

ところで3つの袋って、タマぶk(

No title

まずは胃袋を掌握した白蓮。ライバルは多いけれど、この調子で
残りの2つの袋も掴んで目指せ霖之助のお嫁さん(笑)

・・・しかし毎度の音ながら霧雨の親父さんは良い仕事しますねwww

また親父さんの差し金か(゜Д゜;)

おかげで、霖之助さんの胃袋は掴まれてしまいましたなぁ…
残る袋は給料袋と堪忍袋だったかな?
でもあるのか?給料…

そういえばドジョウ鍋も昔のお坊さんの肉を食べたいという欲からできたとかどうとか

No title

白霖はやっぱりいいですな!
この白蓮さんマジ良妻な新妻すぎて生きるのがつらすぎます
しかし魔界神様に霧雨の親父さん、貴方方の娘の魔女っ子たちが涙目ですぜ
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道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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