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名前で呼んで 08

相方に絵を描いて貰ったのでひとつ。
先代霖を増やしたいと思ってます。


霖之助 先代巫女 幽香








部屋とポン刀と私


「抜けば魂散る氷の刃……」


 硬質な声と共に、鋼と眼光が鋭い光を放つ。
 隙の無いその構えは堂に入っており、修練の軌跡を窺わせる。

 しかし


「巫女、商品で遊ばないでくれないか」
「もう、霖君ったらノリ悪いなぁ」


 帳簿から顔を上げず呟いた霖之助に、巫女は唇を尖らせた。
 白刃を鞘に仕舞うと、鍔鳴りの音が店内に響く。


「刃傷沙汰を未然に防いだんだ。もっと賞賛されてもいいと思うんだがね」
「大丈夫だよ。わたしがそんなヘマするわけないじゃない」
「他の客に迷惑だ、と言いたいんだけど」
「それこそ問題ないよ。だって……他のお客さんなんかいないんだもの」


 巫女は霧雨店の店内を見渡し、そう言ってのけた。
 霖之助は苦い表情を浮かべながら湯飲みを傾ける。

 断っておくと、つい先ほどまでは忙しく接客をしていたのだ。
 それが途切れると同時に巫女がやって来ただけで。


「君が来ると客がいなくなるような気がするんだが」
「気遣ってくれてるんだよ、きっと」
「……つまり、客足が遠のくのは事実なのかい?」
「冗談だって。お客さんの途切れる時間にお邪魔してるだけだし。
 ついでに霖君の仕事が一段落する時間もね」
「どうしてわかるんだい?」
「博麗の勘、かな」
「まったく、僕は暇じゃないんだがね」


 肩を竦めながらも、帳簿作業が一段落付いてしまったことに霖之助はため息をついた。
 どうやら相手をする運命らしい。
 まあ、あまり運命論は信じてないのだが。


「しかし君は刀も扱えるんだな」
「まあ、博麗だからね」


 巫女は霖之助の前、いつもの席に座って自分の湯飲みに手を伸ばす。
 持っていた刀は商品棚に戻していた。どうやらもう飽きてしまったようだ。


「妖怪退治をするため武芸全般に通じる、と言うことかい?」
「どっちかというと対処するためかな。刀を使う妖怪とかだって一応いるわけだし」
「なるほど。ちなみにどれくらいの腕前なんだい?」
「う~ん……そこそこ、かな」
「君にしては珍しく、ずいぶん曖昧な表現だね」
「だって他に適当な言葉がないもの」


 首を捻りながら彼女は答えた。
 言葉を探していたようだが、どうやら失敗したらしい。


「素人には勝てるけど達人には負けるくらいだよ」
「なるほどよくわからないな」
「実際、刀使いに襲われたことがないしね。だから訓練もあんまり役に立ってないの」
「それはまあ……いっそ発揮されないままの方が幻想郷は平和なんじゃないかな」


 確かに、妖怪は己の力のみで勝負する者が多い気がする。
 いや、人間を襲うのに武器に頼る必要が無いと言ったほうが的確だろうか。

 とはいえ鬼に金棒なんて言葉もあるので一概にそうとは言い切れないのだが。


「他にもいろいろ訓練はしたんだけど、ほとんど活かせてないの。対鎖鎌とか対要石とか……。
 あ、でも対傘戦が役に立つとは思わなかったよ。人間何事も経験だね」
「むしろどうやって訓練したのか興味があるんだが……君は実に真面目な巫女だな」
「そう、わたしほど真面目なのは歴代探してもそうそういないと思うよ」
「自分でそれを言うかね」


 霖之助は苦笑を浮かべつつ、少なくなった巫女の湯飲みにお茶を注ぎ足した。
 そんな彼を眺めながら、彼女はふと首を傾げてみせる。


「ところで霖君は妖怪退治とかしないの?」
「いいや。そういうのは出来る人に任せるのが一番だからね」
「でも身を守る手段くらい必要でしょう?」
「僕は妖怪に襲われにくい体質だから大丈夫だよ」
「そうなの?」
「ああ、だいたいの妖怪はこう言うんだ。食えないやつだ、とね」
「それって意味が違うと思うけど」


 また誤魔化された、と巫女は唇を尖らせる。
 このやりとりも何度目だろう。

 実際、霖之助を襲うような物好きな妖怪は今の幻想郷にいないのだから仕方がない。
 妖精のいたずら程度ならともかく。


「でもでも、たまに暴れたくは」
「ならないね。むしろそんなことをしたら君から退治されてしまうよ」
「もう、そんなことで幻想郷の平和を守れると思ってるの?」
「それこそ巫女の仕事だろうに」
「そんなこと言って、実は地下室に何か隠してあったりするんでしょ?」
「さて、そんな都合のいい展開はなかなかお目にかかれないと思うがね」
「どーだか」


 なおも食い下がる巫女に、霖之助はゆっくり首を振った。
 彼女はたまにこうやって霖之助に自分の手伝いをさせようとするのだ。

 今の妖怪退治は、彼女一人で十分にやれていると思うのだが。


「僕は僕に出来ることを精一杯やるだけだよ」
「じゃあ、さ」


 巫女はそこで一度言葉を切ると、霖之助をまっすぐに見つめて口を開く。


「その出来ることの中には、わたしのことも入ってるの?」
「もちろん」
「……そっか」


 霖之助の言葉に、巫女は満足そうに微笑んだ。

 実際、巫女のサポートをしているから半人半妖の霖之助が人里でも一目置かれてるという現実もあるわけで。
 もちろん霖之助自身がやりたいからやっているため、それについて苦に思ったことはない。

 結局、巫女とのこうしたやりとりも霖之助の日常の重要な位置を占めているのである。


「霖君もたまには主役になればいいのに」
「無論、いつかは独立して自分の店を構えたいと思ってるよ」
「結局お店の人じゃない。そうじゃなくてもっとこう……」
「僕にはそれで十分なんだよ、巫女」
「……そうだね」


 霖之助の言葉に、彼女はゆっくりと頷いた。


「わたしだって霖君がいるから妖怪退治もがんばれるんだし」
「そうかい?」
「そうだよ」


 そう言って笑う巫女の瞳に嘘はなく。
 だから、ではないが。


「……僕も同じかもしれないな」


 霖之助も、そんなことを呟いていた。


「じゃあ霖君が港でわたしが船かな」
「確かに船は女性名詞らしいけどね」


 巫女が船だったら、どんな船だろうか。
 ……糸の切れた凧じゃないだけマシかもしれない。


「でもたまには同じ景色を見てもらいたいと思うこともあるんだよ」
「ふむ?」
「だから一緒に妖怪退治とかどうかな?」
「断る」


 けちー、という巫女の言葉に素知らぬ顔。
 しかし彼女は諦めきれないらしく、ジト目で霖之助を睨み付ける。


「似合うと思うんだけどなー」
「そうかい?」
「あ、やる気になった?」
「いいや全然」
「むぅ」


 むくれる巫女を見なかったことにして、と霖之助はお茶をすすった。
 そんな彼に、彼女は不機嫌そうな声を上げる。


「少しは歩み寄りの姿勢を見せるのが人間関係を上手くいかせるコツだと思うんだけど」
「自分のことに関しては妥協をしない主義でね。そう言うなら、君が歩み寄ってくれてもいいんじゃないかな」
「確かにそれもいいけどー」


 霖之助の言葉に、巫女はなにやら考え込んでいるようだった。
 お店の制服似合うかな、という独り言は何を想像してのことだろうか。

 そんなやりとりをしていると、玄関に取り付けたベルが来客を告げる。


「今日は随分騒がしいわね」
「あら幽香じゃない。また遊びに来たの?」
「貴方と一緒にしないでくれないかしら。私は花の肥料を買いに来たのよ」
「……君のような妖怪がいてくれてほんとに嬉しいよ」
「こんなことで感謝されていいのかしらね」


 幽香は店に入るなり苦笑を浮かべ、霖之助と巫女の顔を見比べた。


「ところで、いったい何を騒いでいたのかしら?」
「そうそう、霖君に似合うのはやっぱり刀かなと思って」
「ふーん……」


 そんな話しをしていた覚えはないのだが。
 なんにせよ、幽香なら巫女を止めてくれると思っていたものの。


「……確かに、似合わなくもないかもだけど」
「幽香まで何を言うんだい」


 予想外の裏切りに、霖之助はがっくりと肩を落とした。
 少女二人の視線に晒され、霖之助は大きくため息を漏らす。


「そもそも僕は荒事は出来ない性質なんだがね」
「そうよね、素手で戦う姿なんて想像できないもの。
 やっぱり仕込み杖的なものはどうかしら?」
「うーん、どうせならたくさんの御札とか魔砲っぽいやつとかどうかな」
「だからといってホウキは似合いそうにないわねぇ」
「……好きにしてくれ」


 何故か始まった霖之助改造計画を、とりあえず聞かないことにして。
 幽香の分の湯飲みと、それからご所望の肥料を揃えるために彼は腰を上げた。



 まさかその計画が実行に移されることになるとはつゆ知らず。

 あの時止めていればよかったと……。
 後日、霖之助はこのときの判断を少しだけ後悔するのだった。

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No title

不真面目だと思ってた巫女が引退したら後続はもっと不真面目だった
なにをいってるか分からないと思うが僕にも分からない
ええ、先代と霖之助の話を見てると応援したくなりますね、色々と


文中の「博麗」が「博霊」になっている所が何箇所か
僭越ながら指摘させて頂きます

No title

抜けば魂散る氷の刃ww
村雨かwww

No title

香霖堂には村正があっても可笑しくないと思う今日この頃。

後に続くようですのでそれを楽しみにたかせて頂きます。

しかし村雨……

霖之助に先代に幽香、この3人に仁義礼智忠信孝悌の八徳はとことん似合いませんねww

なんだかんだ色々言いつつ、結局は自分が出かける時について来させたい先代巫女のいじらしさに頬をゆるゆるとさせられました。
やっぱり霖之助さんは銃と刀持って某悪魔ハンターや某森羅のエージェントのように戦うのが似合うんじゃないですかね!もちろん女性の相方付きで!

No title

戦う霖之助も見てみたいけれど、やっぱり彼には裏方の方が似合っていますよねwww
まぁもし前線に出るようなことがあるのなら、やっぱり自作の道具を使って戦うイメージが強いですかね。刀とかもかっこよさそうですけど。

霖之助改造計画でどんな風に改造されるのかが楽しみですなぁ(笑)

No title

仕込み杖と聞いて座頭市な霖君まで想像余裕でした。

しかしこの御三方のやり取りを見ていると、霊魔霖っぽくなりますねぇ(2828

まぁスタイル的には過去組の圧勝d(夢想封印+マスパ)

霖之助さんは裏方が似合うけどデンドロビウムも真っ青な超兵装でバカスカ弾幕張るのもロマンだと思うよね
でも一番似合うのはアサクリのアサシンブレードだと僕は思うのです、まる

動かないが動けば強い
そんな霖之助さんも格好いいと思います
基本的には刀で戦うイメージですが、
錬金術?のようなことができるので
自作の道具を使う姿もスゴくアリですね

No title

お初にお目にかかります。霖之助大好きな僕としては、彼はやはり裏方かと。
まあ、刀剣類似合うと思ってますけどね!
あとは、マジックアイテムで援護?
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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