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冬の風物詩

寒くなって参りましたね。
肉まんの季節です。


霖之助 美鈴








 吐く息が白に染まり、すっかり冬の装いが定着した季節。
 寒さのせいか足早に過ぎゆく人々を眺めながら、霖之助は人里の往来を歩いていた。

 時刻は昼を少し回ったくらいだろう。
 日は出ているが、気温は低い。

 人里に来た目的も済ませたので、どこかへ寄ろうかそれとも帰ろうかと思案していた矢先。


「香霖堂さん」
「うん?」


 背中から届いた聞き覚えのある声に、霖之助は振り返った。


「やあ美鈴じゃないか。奇遇だね、買い物かい?」
「はい、そうなんですよ。それにしても珍しいですね、香霖堂さんとここで会うなんて」
「いや、最近はよく顔を出すようになった方だよ」


 言いながら、霖之助は片手に提げた鞄を少し持ち上げてみせる。
 中には古本が入っている。このところ足を運ぶようになった貸本屋のものだ。

 そのまま何となく美鈴と並んで歩きながら、霖之助は口を開いた。


「君がここにいるということは、今日は門番はお休みなのかな?」
「ええ、咲夜さんが代わってくれました。今回の買い物に来たのはお嬢様の命令ですから、鶴の一声ってやつです」
「なるほどね」


 きっとまた何かワガママを発動したのだろう。
 そのたびに振り回される彼女たちも大変だなと思いつつ、当の本人達は楽しそうなので霖之助は何も言わないでおいた。
 代わりにと、美鈴の出で立ちを見て霖之助は相好を崩す。


「そのマフラー、使ってくれてるのか」
「はい。一番のお気に入りなんですよ。仕事中もお出かけの時も重宝してます」


 そう言って美鈴はくるりと一回転。
 その拍子に、彼女が巻いたマフラーがふわりと揺れた。
 淡い黄色が、彼女の赤い髪によく映えている。


「また違うデザインのとか買わせていただきますね」
「お待ちしております、お客様」
「ふふ、そうしてると店員さんみたいですね」
「……僕は店主なんだが」


 霖之助が苦い表情を浮かべていると、あ、と声を上げ美鈴は足を止めた。
 何事かと思い彼女のあとを視線で追うと、どうやら近くの商店で買い物しているらしかった。
 さほどの時間をおかず、袋片手に美鈴は意気揚々と戻ってくる。


「目的、ひとつ達成です」
「ああ、買い物って夕食の材料のことだったのかな」
「ええ、実はそうなんです。香霖堂さんは晩ご飯のメニューとか決めてるんですか?」
「いいや、まったく」


 夕食どころかそもそも昼食を食べてないのだが……まあそれはいいだろう。
 食べなくても平気な体質なので、つい忘れてしまうのだ。


「ちなみに君のところは何を作るんだい? わざわざ買い出しに来るくらいだから、さぞかし豪勢なんだろうけど」


 とはいえ買い物に付き合っておいて断食を貫くというのも侘しい感じがするので、霖之助は参考がてら聞いてみることにした。


「ふふふ、なんだと思います?」


 楽しそうに、美鈴は笑う。
 霖之助は首を傾げてみたものの、早々に諦め肩を竦めた。


「卵だけじゃ選択肢が多すぎるな。もうちょっと絞りたいね」
「じゃあヒントをあげます。ええと、たぶん和食です」
「和食ねえ」


 たぶん、と言うのが気になったものの。
 どのみち正解する確率は低いと考え、何となく思いついた単語を口に出してみる。


「……天丼?」
「残念、はずれです」


 ちちち、と彼女は指を振って見せた。
 外れたのは想定内なので、あまり残念ではないのだが。


「正解はおでんの屋台でした」
「……屋台?」
「ええ。とある漫画を読んだお嬢様が、自分も屋台でおでんをつつきたいと仰いまして。
 思い立ったが吉日、と言うことで早速屋台をすることになったのですよ」
「するって、まさか」
「はい、そのまさかです」
「……それはなんとも、スケールの大きな話だね」


 夕食がおでん、ではなくおでんの屋台というのはそういうことなのだろう。
 予想より二回りほど斜め上の答えに、霖之助は軽いめまいさえ覚える気分だった。

 さすがというかなんというか。
 彼女たちらしい、とは思う。


「八目鰻の屋台の方に協力していただいて、屋台の準備は出来たんですけど。
 でもおでんは専門外だから作れない、と仰いまして」
「まあ、それはそうだ。彼女にだって自分の仕事があるだろうし」


 白羽の矢が立ったのは、霖之助も知っている屋台の女将らしい。
 今度飲みにでも行こうなどと思いつつ、霖之助は美鈴に相槌を打った。


「それでおでんは自分たちで作ることになりましてですね。
 つい先ほど、好きなおでん種を買って来いって言われたわけですよ」
「そういえばメイド長が門番を交代したと言っていたね」
「そうなんですよ。おでんが和食っぽいって理由だけで私が買い出し担当になってしまいまして」
「……なるほど、ようやく流れを把握できたよ」


 しかし咲夜ならおでんもそつなく作れそうなものだが。
 ひょっとしたら彼女もこの状況を楽しんでいるのかもしれない。

 まあ美鈴も料理上手なので、変なものは作らないはずという信頼の元だろう。


「幸い屋台のメニューがだいたいどんなものかはわかってますからね。
 基本のメニューを押さえたら、あとはバリエーションを足してくだけですし」
「それが君の好きなおでん種、ということか」
「はい、お嬢様は小食ですからね。きっと漫画に載ってた数種類だけで満足されると思います」


 美鈴は鼻歌交じりに、周囲の店を物色している。
 それから急に霖之助に向き直ると、ぽんと手を合わせて口を開いた。


「香霖堂さんも、好きなおでん種を選んでくださって構いませんよ」
「僕も?」
「はい。私ひとりじゃバリエーションに限界がありますし、それにせっかく食べるなら好きなメニューがいいでしょうし」
「ひょっとして、僕も参加する前提なのかな?」
「せっかくお買い物に付き合っていただいてますし。それに夕食は大人数のほうが楽しいですよ」
「そうだね。じゃあ、お言葉に甘えようかな」


 話を聞いていたせいか、ちょうどおでんが食べたくなっていたので渡りに船だ。
 まず二人は漫画に載っていたというおでん種を買いそろえることにした。

 卵、大根、こんにゃく、厚揚げ。
 ちくわはあったが巾着がなかったので、紅魔館で作ることにして油揚げとお餅を購入。
 彩りとして人参にウィンナー、ジャガイモやつくね用の鶏肉なども買い物袋に入れ。

 記憶を頼りに餃子巻きの材料やうどんも買ってみたのだが、出番があるか不明などと二人で笑っていた。





「すみません、持っていただいて」
「かまわないよ。ご相伴に預かる身だ」


 右手に古本、左手におでん種の入った袋を抱えて霖之助は笑みを浮かべた。


「おかげで買い物がはかどりました。これだけあればきっと満足されると思います」
「それは何より」


 結果は上々。あとは料理をするだけだ。

 空を見上げると、日が落ちかけている時間帯だった。
 そろそろ帰って仕込みをすれば、丁度夕食に間に合うだろう。


「あ、ちょっと待っててください」


 出会った時と同じように、彼女は近くのお店に買い物をし、足早に戻ってくる。


「どうぞ、香霖堂さん」
「お、肉まんかい?」
「はい。寒い時にはこれが一番ですよ」


 ひとつだけ違うのは、今回買ってきたのは夕食の材料ではなかったということだ。

 しかしながら霖之助は買い物袋で両手が塞がっているため、受け取ることが出来ないでいた。
 どうするべきか、と思案した矢先。


「あーん」
「……いや、美鈴?」
「あーん、ですよ香霖堂さん」
「どこか座れる場所を探した方が」
「その間に冷めちゃいますよ?」


 湯気を立てる熱々の肉まんは、ちょっとやそっとでは冷めないと思うのだが。
 しかし熱いうちに食べた方がいいというのも事実。
 迷ったものの……美鈴が譲る気配を見せないので、霖之助は肉まんに齧り付いた。


「……美味い」
「でしょう? 人里に来たらいつも買うんですよ、ここの肉まん」


 美鈴は笑顔で説明し、空いている手で自らも肉まんを口に運ぶ。
 じわりと広がる肉汁を楽しみながら、再び彼女はにゅっと霖之助に突き出してきた。


「ささ、どうぞ二口目を」
「いや、だからね」


 確かに美味い。
 しかし一度ならともかく何度も町中……しかも人前でやるのには抵抗がある。


「やっぱり自分で……」


 霖之助は袋を持ったまま、彼女の持つ肉まんに手を伸ばそうとして。

 むにゅ、と感じた感触に、首を傾げた。


「店主さん、こっちの肉まんが食べたかったんですか?」


 そう言って、彼女は笑う。
 それから彼女は身を寄せ、肉まんを霖之助に押しつけながら……そっと彼に囁いた。


「私の方は構いませんけど……おやつじゃなくて、夜食でお願いしますね」

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非公開コメント

あーん、って。あーん、って!
もうね、同棲してるカップルのような仲でニヤニヤせざるを得ませんでした。

寒いとぬくもりが欲しくなりますよね。
だから霖之助が残り2つの肉まんを食べちゃっても仕方ないんじゃないですかね!

No title

ほのぼので〆ると思いきや、ネチョ・・・ だと・・・

この後は、霖之助さんと美鈴さんとで夜のニクマンを頬張るんですね。

ちょっと撮影n(ピチューン

美鈴は胸におっきな肉マン二つもぶら下げてるからね、仕方ないね
そりゃ霖之助もそっちを味わいたいよね、仕方ないね


後さっきからメイド長が物凄い顔してるけど、仕方ないね

No title

咲夜「おでんの種買いに出した筈の美鈴が香霖堂の店主さんといちゃいちゃしながら帰ってきた。どういうことなの……」

という展開が目に浮かぶような美霖ですねごちそうさまです。
美鈴は不思議とエロい筈なのにエロくないという雰囲気がなんともKENZENで良いですね。
bokuも美鈴の夜の肉まん食べt(ピチューン

迸るエロチシズムを感じ取ったニュータイプ達がこぞってコメントを残していく……今日もここは平和です。

ちなみにこちらの肉まんは大変弾力がございますので、味わいやすいようよく揉んでお召し上がり下さいませ。
……おかわり?
いえいえ、先に下半身の小籠包を(ピチューン
割ったら中から熱い汁が(ピチューン


……失礼しました。

普通のイチャラブ美霖かと思いきや
最後に+アダルティを入れてくる
油断してただけにニヤッとしました

しかし二つの肉まんですか……
これは紅魔館にて
美鈴の肉まん、咲夜さんの小籠包、
パッチェさんの餡まんからの
紅姉妹の桃まんという
中華√ですね

No title

その肉まんをおやつに頂くのは確かにもったいないですよね。夜食になんて美鈴は言っていますけど、むしろメインディッシュのような気がしますわ(笑)

・・・それにしても、門番を代わってあげた日に限ってそんな美味しいイベントが発生していたなんて知った時のメイド長のリアクションが楽しみですなwww
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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