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半月昇夜 第1話

半分の月が昇る夜。
幽遊白書のパロディです。出だしだけ。


いきなり死んでしまった霖之助。
復活させてくれるという映姫だが、その条件は……。

霖之助 ゲーム風






「すみません、手違いで貴方を死なせてしまいました」


 冥界で映姫から告げられた霖之助は、思わず言葉を失った。

 気が付いた時には閻魔の前に立たされていた。
 さっきまで、ただ香霖堂で本を読んでいただけだというのに。


「本来なら貴方ではなく、暑さで貴方のストーブが壊れるはずだったのですが……おかしいですね」


 そう言って映姫は手元に置いてあった袋から錠剤を取り出し、口に放り込んだ。
 そして水も使わず飲み込む。


「貴方も飲みます?」
「……なんだい、それは」
「ミネラルサプリメントです。
 銅とかも入ってるんですよ」


 ……そういえば閻魔は人を裁く時、煮えた銅を飲むという。
 地獄のスリム化は、こんなところにまで影響を及ぼしているようだ。


「結構だ」
「そうですか」


 映姫はさしたる感情も見せず、口に何かをくわえた。
 煙草……ではない。スティックタイプの飴のようだ。
 事務職とはいえ疲労が溜まる……のだろうか。

 もちろんそんな事は霖之助にとってどうでもいい。


「で、僕はどうなる?」
「今回の非は完全にこちらにありますからね。
 もちろん復活してもらいます」
「そうか、ならすぐに頼む」
「ただし、次の半月まで待ってもらわなければなりません」


 疑問の視線を投げかける霖之助に、映姫はきっぱりと答えた。


「復活の儀式というものは繊細なものなのですよ。
 ましてや貴方は妖怪でも人間でもないのですから」


 『閻魔』としての顔の映姫は、身震いするような威厳に満ちあふれている。
 だからこそ、言葉に説得力がある。
 まるで、有無を言わさぬ判決のように。

 次の半月……下弦の月まであと10日ほどあった。
 それまでこの状態が続くという事だ。

 まあ、ただ我慢すればいいなら問題ないのかもしれない。
 香霖堂で商売が出来なくなる事だけが心残りだが……。

 ……たったの10日、さして問題ない気もする。


「そして貴方はその時までに善行を積まなければなりません」
「善行? 僕がかい?」
「はい。ごく簡単なものです。客観的に見れば」


 彼女はそう言うと、霖之助を安心させるように微笑んだ。
 映姫の少女としての顔。


「まだ時間もありますし、しばらくはゆっくりと幻想郷を見て回ってみてはどうでしょうか。
 普段とは違う景色が見られると思います。
 今の貴方は、普通の人妖には姿は見えないと思いますから。
 あ、でもイタズラしてはダメですよ。地獄行きです」
「しないよ、そんなことは……」


 だが普段と違う幻想郷という言葉に魅力を感じるのも事実。
 これも歴史の1ページに載せる価値があるかもしれない。


「そうそう……」


 思い出したように、閻魔が呟く。


「貴方の身体ですが、現在仮死状態にあります。
 簡易結界を張っておきましたので腐ったりする事はないと思いますが……。
 まかり間違って火葬されないように手を打っておかないといけませんね」
「早く言ってくれ……すぐに伝えてくる。書き置きでも残しておけば……」
「もうひとつ」


 彼女の強い声が、歩き出そうとした霖之助を遮った。


「顕界のものに触れたりする事は出来ませんよ。
 貴方は今、魂だけの存在ですから。
 それにその状態でこの冥界から離れると迷ってしまい、自我が無くなるまで戻っては来られないでしょう」
「どうすればいい」
「小町と一緒に行動してください。
 曲がりなりにも彼女は死神ですからね。……曲がり過ぎてますけど。
 行動にさえ気をつけていただければ気楽にしてくれて結構です」


 本当は動かないのが一番なのですが、とため息。
 非は映姫たちにあるため、行動を制限する権利はないということか。


「だいたいの事はわかった。
 しかし善行を積むのはいいんだが、それはどのようなものだい?
 土壇場に無理だと言われてもどうしようもないからね」
「あら、眠りから覚める方法と言ったら決まっているでしょう?」
「……?」


 映姫の言葉に、しかし首を傾げる霖之助。


「……まあ、気づくとは思いませんでしたけど」


 こめかみを押さえ、ため息。
 そして再び錠剤を飲む。
 きっとカルシウムもたっぷり配合されているのだろう。


「半分の月が昇る夜に、誰か……貴方の事を想っている相手に、貴方の肉体に口付けをしてもらう事です。
 そしてその相手を選ぶ事が貴方に積める唯一の善行」
「な……」


 反論しようとして……映姫の目に、何も言えなくなる。
 閻魔が冗談でこのような事を言うはずがない。


「わかったらお行きなさい。小町は外で待たせてあります」


 映姫は手元の書類に目を落とし……ややあって口を開いた。


「……もし貴方がどうしてもというのなら……。
 その、私が……」
「おーい、旦那ー。暇だったんで迎えに来たよー」
「…………」


 声に顔を上げると、既に遠くを歩く霖之助の後ろ姿。


「どうしたんですか、閻魔様。鬼みたいな表情をされて」


 そんな彼女の元に、転生申込書類を携えた阿求がやってきた。


「なんでもありません。転生の手続きですね、すぐに取りかかります」
「それより閻魔様」


 ずいっと阿求は映姫に詰め寄り、視線を合わせた。
 それから……ニヤリと笑う。


「……なにやら面白い話をしてましたね?」







「旦那も災難だねぇ」


 小町の操る船に揺られながら、霖之助は顕界へと向かっていた。
 来る時には乗った覚えがないのだが……それだけ緊急に連れてこられたと言う事だろうか。


「決まった事に文句を言っても仕方ないからね。なるようになると思うよ。
 それより、この事を誰かに伝えるにはどうしたらいいんだい?」
「ああ、それは夢枕に立てばいいのさ」
「夢枕? と言うと、あの……」
「そう、寝ている相手のところに行ってね」


 つまりそれは寝室に入らなければいけないという事だ。

(地獄行きです♪)

 ……悔悟棒を手に笑顔で迫る閻魔の姿が目に浮かぶ。


「しっかし旦那、死んだってのに余裕だねぇ」
「さぁね。少なくとも悲観はしていないよ」
「ふ~ん。あ、さては誰かに当てがあるとか? ニクいね」
「そうだね……見つからなかったら君に頼もうかな、小町」


 実際、楽観視しているのは単に失敗してももうひと月待てばいいだけだ、と言う理由からなのだが。
 外に出られるなら、拾えないにしても無縁塚で道具のチェックは出来るだろう。


「え?」


 小町は霖之助の言葉に動きを止めると、しばし考え込んだ。


「そんなもののついでみたいな頼み方じゃダメだね」
「はは、考えておくよ……」







 香霖堂の前に三つの人影があった。
 ひとつは紅白、ひとつは白黒、もうひとつはメイドである。


「こーりーん」
「……おかしいわね。全然反応がないわ」
「出かけてるんじゃないですか?」
「それはないわね」
「出かけてるならちゃんと私たちにもわかるようにしていくはずだぜ。
 ……その、いない時にツケが増える真似をするなって怒られたことあるからな」
「……そうね」


 妙なところで律儀な霊夢たちに、咲夜は心の中で微笑んだ。
 ティーカップの件でも魔理沙はずいぶんと絞られたらしい。
 香霖堂からものを借りたりするのは彼女たちにとって、ただ道具のためだけではないのだろう。


「困ったわね、このままではお嬢様のお使いが……」
「まったくだぜ、いないならいないでどこに行くか書いておいてもらわないと」


 咲夜はお使い。
 魔理沙はいつもの暇つぶし。
 霊夢は……何か胸騒ぎがしたのでここに集まっていた。


「おや、お姉さんたち。おそろいで何やってんの」


 ふと、そんな三人に声をかける少女がいた。
 猫耳に猫車。
 期待一杯、といった満面の笑みで近づいてくる。


「お前は……地底の泥棒猫!」
「ひどいなー。落ちてる死体を片付けてやってるのにー」


 大して気にしていない様子で、お燐が笑う。


「……貴方、なんでここに?」


 霊夢が強い視線で睨み付けた。
 その様子に咲夜が首を傾げる。


「この辺からあたい好みの匂いがしてさー。確かめに来たってわけですよ」


 お燐の言葉に、顔を見合わせる三人。


「まさか……」
「……!!」


 言葉を発するより行動のほうが早かった。
 次の瞬間には、香霖堂の扉が吹き飛んでいた。


「…………」
「嘘だろ?」
「まさか」


 一同が見たのは倒れた霖之助の姿。


(あちゃー、遅かった)
(君が寄り道なんかしてるからだろう。こんな時にサボらなくても……。
 いや、のんきに構えてる暇はないぞ。早くあの三人を止めてくれ。店が破壊されてしまう)
(そうは言っても旦那のサポートをしてる限り、あたいもあの娘らと直接話しちゃいけないんだよ。死者が口をきいていいのはお盆と冥界の中だけだからね)
(なんだと)


 このままでは騒ぎが大きくなり、おそらく香霖堂は全壊。
 明日の新聞の一面が容易に想像出来た・


「香霖……?」
「…………」
「…………」


 霊夢と咲夜が見守る中、魔理沙が霖之助に触れた瞬間。


「そこまでです!」


 周囲を黒服を着た男たちが取り囲んだ。
 その中心にいるのは、稗田阿求その人である。


「この場は稗田が預かります。
 無駄な抵抗はやめて大人しくしなさい!」







「さて、結論から言うと霖之助さんは死んでません」


 阿求の言葉で、一同に安堵が広まった。
 ……ひとりを除いて。


(おーおー。よかったね、旦那。みんな安心してるよ)
(…………)


 ……突然の事なので稗田の屋敷まで慌てて付いてきたのだが、何となく気恥ずかしい。
 本人たちもまさか霖之助が見ているとは思っていないはずだ。


「詳しくは言えませんが……霖之助さんは現在復活の儀式の最中なのです」


(なんで阿求が知ってるんだ?)
(旦那が映姫様のところに行ったろ? そのすぐあとにあたいが運んだから……)


 立ち聞きしてた、ということか。
 意外に腹黒い……。
 いや、元々だったかもしれない。

 しかしそうするとどうやってこっち側に渡ってきたのだろう……と思い、すぐに考え直す。
 誰かに運んでもらえばいいだけの話だ。
 妖夢たち冥界の住人が船を使っているなんて聞いた事がない。

 阿求の場合……おそらく映姫直々に運んでもらったのだろう。


(しかし生者に言ってもよかったかな……?
 ……まあ、いいや)


 首を捻る小町だったが、あっさりと思考を放棄する。


(稗田のは普通に生きてるとは言い難いし、問題ないか。
 そもそも転生も似たようなものだし)
(それでいいのか、地獄のシステム……)


 頭を抱える霖之助。
 ちゃんと復活出来るか心配になってきた。


「というわけで」


 どうやらあちらの説明も済んだらしい。
 あまり聞いていなかったが、ちゃんと説明していた……と信じよう。


「霖之助さんが復活するまで体はここで預かります」
「えー」


 不満そうな声を上げるお燐。
 皆の鋭い視線が彼女を睨むがどこ吹く風だ。


「幸い結界を張り直したりする必要はなさそうなのですが……。
 だからといってあなたたちがずっと見るわけにもいかないでしょう?
 こういうのも居る事ですし」
「私は別に、それでも……」
「そ、そうよね」


 霊夢と魔理沙が言いかけるが、阿求が眉を跳ね上げる。


「いいですね」


 無言のプレッシャー。
 霊夢は金銭的な援助が、魔理沙は実家の事があるため強く出にくい。


「あの。紅魔館ならもっと安全に……」
「もう決めた事です」
「……横暴です」


 まだ不服そうな三人に、阿求は近くに置いてあった袋をたぐり寄せる。


「……そうそう。霖之助さんの死因ですが。
 疑惑の深いものが出てきました」


 阿求は三人を一瞥すると、三本の筒を取り出した。


「あなたたち、これに見覚えはありますよね。
 これらのどれかが……霖之助さんの死因」


 言った瞬間、三人の表情がこわばる。
 ……かもしれません、とこっそり阿求が付け加えたのを聞いたのは、霖之助だったかもしれない。


「そうですよね、霖之助さん?」


 阿求が虚空に向かって声を上げる。
 それを合図に三人は弾かれたように顔を上げた。
 見渡す……が、生身の人間に霖之助を見る事は出来ない。

 なるほど、かなり細かいところまで阿求は映姫から聞いているようだ。

 ……確かにあれは香霖堂にあったものだ。
 赤い筒は霊夢が持ってきた……いや、捨てていった緑茶。
 黒い筒は魔理沙が持ってきたきのこスープの素。
 青い筒は咲夜が持ってきた紅茶が入っていた。

 あの時、どれかを飲もうとして……。

 しかし、毒などではなかったはずなのだが。
 それはちゃんと確認した。

 ……映姫の言うとおり、何か予想外のものが紛れていたのだろうが。


「まあ、返事しても私たちには聞こえないんですけど」


 阿求は肩を竦めて、三人に向き直る。


「とにかく、近いうちになにかしらの連絡があると思います。
 それまで大人しくしておくべきですね」


 渋々了承、と言った様子の三人。
 会議はこれで終了のようだった。


(旦那、そうなのかい?)
(覚えてないんだ。なにか飲もうと思ったのは確かなんだが……)


 死んだ時のショックだろうか、綺麗に記憶が抜け落ちていた。


(まあ、生き返るなら些細なことだよ)
(……旦那、長く生きてると生死の境界も曖昧になるのかい?)
(君に言われたくないな……)


 違いない、と微笑む小町。
 しかしふと、表情を真剣なものに戻す。


(あの娘たちには、結構大問題みたいだったようだけどね)


 去っていくそれぞれの背中を見送る。

 ……いつもより、小さく見えた。
 もしかしたら自分が……とでも思っているのだろうか。


(本当にあれが死因かもわからないのに)


 むしろあの場を収めるための阿求の嘘だった可能性もある。
 ……本人に確認しても、正直に話してくれるとは思えないが。


(で?)
(うん?)
(誰の夢枕に立つんだい?)
(そうだな――)



1.霊夢
2.魔理沙
3.咲夜
4.阿求


(夜会話へ)










☆あとがき
選択肢を入れてゲーム風にしたい。
……という野望は尽きない。

→こんな風に
吉里吉里なのでwinでしか動かないけれど。パスはkourin

第1話、としたのはいいけどそんな事情により続きは不明。
予定も大して立ててないし。

何より続き物を無計画に増やすのはどうなのよ俺。
どうする? → 思いついたのを無計画に書く。
妖精シリーズも考え中だというのに。


・日数

13 十三夜月 ← Now(第1話)
14 小望月 ← 様子を見て回る
15 満月 ← 一日だけ身体に戻る(もしくは満月と言えば幼馴染み)
16 十六夜 ← 誰のイベントかは決まってるよね
17 立待月
18 居待月
19 寝待月
20 更待月
21
22
23 下弦の月 ← 身体に戻る(予定)



・ひとりごと(私的メモ)

桑原 → 剣 → 妖夢?
飛影 → 三ツ目 → 古明地? お空も可。むしろ妹紅か?
鞍馬 → 植物or狐→ 幽香or藍

コエンマ→ 映姫
ぼたん → 小町

幻海 → 幽々子(霊的に関係者だから)or紫(姿が変わるから)

螢子 → メインヒロイン(不明)


まあ原作をなぞる事も再現する事もないのでまったく関係ないんですがね。
それっぽいかもしれない、と思っていただけたら幸いです。
むしろギャグなので今までやらないことをやってみた。


読了感謝!

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