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子悪魔シリーズ26

エンジンかけていきましょう。
とりあえずVISIONでパチュリーデッキ組んでみる的な。


霖之助 パチュリー 小悪魔









「珍しい光景ね」


 自らのホームグラウンドである地下図書館に足を踏み入れるなり、パチュリーは少しだけ驚いた声を上げた。
 そんな視線を受け流しつつ、霖之助は苦笑しながら肩を竦める。


「やあおかえり。用事は済んだのかい?」
「ええ、一応ね。成果はなかったけど」
「ふむ……」


 浮かない表情を浮かべ、彼女は首を振った。

 準備が出来た、と館のメイドに呼び出されたのが少し前の話だ。
 察するに何かの実験をしていたようだが、どうやら不首尾に終わったらしい。


「まあそれはいいわ。それより……」


 気を取り直すかのようにそう言うと、パチュリーは霖之助の正面へと腰を下ろす。
 しかしそんな彼女の言葉を遮るように……霖之助の隣、パチュリーの斜め前から明るい声が響いた。


「どうぞお母様、さっき取り替えたばかりですのでよく冷えてますよ」
「そう」


 笑顔でお茶を注ぐ小悪魔に、改めて彼女は訝しむような表情を浮かべてみせる。
 だがそれも無理はない。
 霖之助自身、今の状況を客観的に見ればきっと同じ顔をするだろう。


「でですね、さっきの話の続きなんですけど」
「ふむふむ」


 そんなパチュリーの視線を微塵も気にせず、小悪魔は定位置に戻ると霖之助へと耳打ちを開始する。

 確かにこの光景は珍しいどころではない。それは霖之助も同意するところだ。
 ……もっとも、ただ霖之助が黙って話を聞いているだけでそんな反応をされる小悪魔の評価というのも一度見つめ直すべきでないかと思うのだが。


「つい昨日のことですけど実は……」
「ああ……うん」


 彼女の囁きに耳を傾けつつ……どこかから漂ってくるプレッシャーに、霖之助は思わず冷や汗を垂らした。

 仕方ないこととは言え、どうしてこれ見よがしに密着する必要があるのか。
 ……そしてどうして真夏の幻想郷で悪寒に震えなければならないのか。


「小悪魔」
「はいはい」


 カップを置く音が、妙に大きく響いた。
 脳天気な小悪魔の返事に、むしろ喝采を送りたい気分である。


「この本の続きを読みたいのだけど」
「それなら足元の籠に置いてありますよ。ちなみに昨日読んでた本の続きもその前に読んでた本の続きもまとめてありますからお好きなのをどうぞ」
「……そう」


 流れるようなやりとり。
 求めるものがすぐ返ってきたのにもかかわらず、しかしパチュリーは苦い表情を浮かべていた。

 まるで不完全燃焼である、と言わんばかりに。


「さーてどこまで話しましたっけ……っとああそうだ。これからが面白いところなんですが」
「ほう?」


 パチュリーがページをめくる音をBGMにして、彼女は笑う。
 それにしても地下だからだろうか。夏だというのに少し肌寒い気がする。


「小悪魔」
「はいはい」
「お茶菓子が切れたのだけど」
「今日はもう少ししたら咲夜さんが焼きたてのクッキーを持ってきてくれるはずですよ。美味しいところを見送るならおかわりお持ちしますけど」
「……じゃあいいわ。忘れて頂戴」
「わかりました」


 見事な気配りである。
 今の小悪魔はともすれば紅魔館のメイド長に並ぶほど有能な秘書だった。

 ……なにもこんな時にそのスキルを発揮しなくてもいいと思うのだが。
 きっとわざとなのだろう。楽しんでいるのだ、きっと。


「お母様、他に用事があれば何なりとお申し付けください」
「……そうね」
「ではお父様、お耳を拝借」


 そしてまた、彼女は霖之助に身を寄せる。
 見せつけるように、ゆっくりと。


「あー……」
「どうしました? まるで気になるけど輪に入れない初恋の女の子みたいになってますよ?」


 その言葉に、パチュリーが無表情になった。
 からかわれていることに気づいたのだろう。


「少し、私らしくなかったと反省するわ」


 彼女はふっと空虚な笑みを浮かべると、読んでいた本をパタンと閉じる。
 思い立ったら即実行。こう見えてこの魔女は行動派なのだ。


「人間がたまに、憎しみで人を殺せたら……なんて言うけど」


 空っぽの笑顔で、物騒なことを呟きつつ。


「魔女にとってはそんなこと、朝飯前なのよね」


 パチュリーは自分のうなじのあたりに右手を添えると、そのまま大きく払って見せた。
 動きに合わせ、彼女の長い紫の髪がふわりと広がる。
 絹糸のようなそれはさらさらと流れ……しかし一瞬、髪の束が別の何かに置き換わったような感覚を覚える。

 その違和感の正体を突き止めようと、霖之助は周囲を見渡し……。
 隣で石化した小悪魔を見つけ、おおよその見当を付けた。


「髪を依り代とした神話降臨による能力の発現、ってとこかな」
「髪は女の命だもの。触媒としては優秀なのよ」
「でもメデューサってアテネより髪が綺麗って言ったことで罰を受けたんでしたっけ?
 つまりお母様は自分の髪が綺麗だって言ってるって訳ですか。ちょっと自惚れが過ぎるんじゃないですかねぇ」


 何事もなかったかのようにクレームを付ける小悪魔は、なにやら小さな石像を抱えているようだった。
 ……どう見ても先ほどまで石化していた小悪魔をそのまま縮めたようなものに見えるのだが。

 パチュリーは不機嫌そうにため息をつくと、パチンと指先をひとつ鳴らす。


「ああっ、プリティリトルデビルちゃん1/8スケールの首が!」
「次はあなたがそうならないよう、言動に気をつけることね」
「……いや、無理だと思うよ」
「私もそう思うけど」


 諦めたように首を振るパチュリーだったが、気にしても無駄なことは気にしないことにしたらしい。
 こう見えてこの魔女は前向きなのだ。


「で、なにをこそこそと話してたのかしら」
「そりゃもちろん、面と向かっては言えない話ですよ」
「……私に隠し事するつもり?」
「隠し事って訳じゃないんだけど」


 霖之助は困ったように頬を掻いた。
 言いにくそうにしているとますます彼女の機嫌が悪くなるのだが、こればかりはどうしようもない。

 そんな状態に助け船を出したのは、石像を片付けたらしい小悪魔だった。


「まあ原因はお母様ですからねぇ」
「どういうことかしら」
「それはもちろん……あ、あとの説明はお父様からどうぞ」
「いや、その」


 切り口を与えてくれたのはいいが、肝心なところは丸投げである。
 しかもそのまま彼女はどこかに行ってしまった。これ以上の助力は期待出来ないらしい。

 霖之助は観念したかのように肩を竦めると、パチュリーの表情をじっと見つめた。


「なんだか最近悩んでるみたいだったからさ」
「そう? ……別に、あなたが気に病むことじゃないわよ」
「ほら、君に直接聞いてもそんな返事だろう? だから小悪魔から状況を聞いてたんだよ」


 そう言われて、思い当たるところがあったらしい。
 パチュリーはしばし小悪魔を睨み付けていたものの、やがて大きく吐息を漏らす。


「なるほど私が原因、ね」
「そういうことです! なのにお父様を疑うその態度! 珍しくいい仕事をした私をたまには褒めてくれてもいいんじゃないでしょうか!」
「いや、完全に君が面白がってただけだろう。あと普段からそれくらいの仕事をしたらどうなんだい」


 霖之助のぼやきは、すぐ隣だというのに聞こえなかったらしい。
 どうやらまだ耳が石化しているのだろう。
 きっとそうだ。そのはずである。


「それで小悪魔から聞いたけど、髪飾りが壊れたんだって?」
「ええ……実はそうなのよ」


 頷きながら、パチュリーは懐からアクセサリーを取り出した。
 月を形取ったそれは、ずっと昔に霖之助が彼女にプレゼントしたものだ。
 見ると、確かに端のほうが欠けてしまっている。


「魔法で防護はしてたのだけど、小さな傷は蓄積していたみたいね」
「弾幕ごっこの最中も付けてましたからねぇ」
「するとさっきの用事というのは」
「ええ、レミィの運命操作で何とか出来ないか調べていたのよ。もしくは仮想生命を与えて回復魔法を掛けようかと……それでダメなら時間逆行の秘術を開発しようとしてたところね」
「いや、そこまでやらなくても……」
「……だって」


 彼女はそこで言葉を切ると、ふっと目を伏せた。


「せっかくあなたから貰ったものだし……それに、壊したなんて言い出しにくいじゃない」


 消沈した声で呟く彼女に、霖之助は苦笑いを浮かべる。

 まったく困ったものだ。

 ……そんな顔をされたら、文句も言えないではないか。
 もう少し、自分を頼ってくれてもいいと思うのだが。


「別に気にしないよ」
「本当?」
「ああ。それにそこまで大事にしてくれたのなら、プレゼントした甲斐があったとうものだしね。
 これくらいならすぐ直せると思うよ。材料はあったはずだし……」
「そう……」


 ようやく彼女は明るい表情を浮かべた。
 そして顔を伏せたまま、そのままぽつりと呟く。


「……全部大事にしてるわよ。あなたがくれたものは」
「そうか」


 そのまま絡み合う、二人の視線。
 どちらからともなく顔を寄せた……その時。


「はいはーい! そんな中でもとりわけ大事にされているのがなにを隠そうこの私! あ、どうぞこれ咲夜さんの焼きたてクッキーです」


 場を引き裂くような明るい声と共に、テーブルの上に大皿が置かれた。
 どうやら彼女はこれを取りに行っていたようだ。

 ……そういえば先ほどそんな話をしていた気がする。


「そうね」


 ククク、と魔女は声を上げて笑う。
 堂に入った、実に魔女らしい笑い声。

 そして一瞬で空中に文字を描くと、にこりと笑いながら小悪魔に顔を向ける。


「とても大事だわ。あまりにも大事だからずっと宝石箱にしまっておこうかしら」
「いいえいえ。やっぱりこう、開放感って重要だと思いますよ」


 小悪魔の抗議の声を響かせながら、彼女が放り込まれた石棺はゆっくり地面へと沈んでいく。
 正確には床に描かれた魔方陣の中に、だろうか。
 あの先がどこに繋がっているのかは……きっと知らぬが花に違いない。


「遠慮しなくていいわよ。心配しなくていいわ、誰にも触れられないように完全密閉して深くに埋めておくから」
「それって宝石箱じゃなくてタイムカプセルですよね!? ちゃんと掘り出してくれるんですよね?」
「もちろんよ……覚えてたら、だけど」
「絶対ですよ! 約束ですからね! ちなみに1秒後の未来でも構いませんよ! あいるびーばーっく!」


 そんな叫び声も、やがて聞こえなくなった。
 静かになった図書館に、二人の息づかいだけが響く。


「ふぅ」
「まあ……お疲れ様」


 一仕事やりきった感のあるパチュリーを労うと、彼女はじっと霖之助を見て考え込んでいるようだった。


「こうしてみると、私はあなたからもらってばかりなのかもしれないわね」
「気にすることはないよ。形に残るものだけがプレゼントってわけじゃないからね」


 どことなく申し訳なさそうに言う彼女だったが、霖之助は首を振って答える。


「僕はここにいることが、なによりのプレゼント……かな」
「それは本を読みたいからかしら。それとも……」
「さて、どうだろうね」


 笑って誤魔化す霖之助に、パチュリーは少しばかりむくれてみせる。


「……じゃあ今日も、受け取ってくれるかしら?」


 霖之助の手に自分の掌を重ねながら。

 彼女はそんな呟きを、零すのだった。

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No title

あいも変わらずいいキャラだこの小悪魔はw
貰いっぱなしのパチュリー。一緒にいるだけでシアワセな霖之助。
次にパチュリーがもらうのは霖之助の種(省略されました

やべ…2828が止まらないw

久しぶりの小悪魔シリーズキター!
小悪魔にまで嫉妬するパチェに思わず2828してしまいましたよwww
そこまでパチェに想われている霖之介が羨ましいかぎりです。

プリティリトルデビルちゃん(笑) 石化解除すると思ったので虚をつかれました。おそろしい子! タイムカプセルといっても、黒歴史ノートみたいな開けちゃいけない方の封印になりそうですね!

No title

嫉妬されるほど女性が近くに居る霖之助さんよ。いつか刺されるんじゃあるまいか・・・。
嫉妬って醜い感情ですけど、裏を返せば向上心に繋がりますし悪いものでしかないわけじゃないんですよね。(嫉妬するということは相当その人のことが好きということですし。)

2828するけどとりあえず爆発しろ!

いつも拝見しています。
日々進化(?)していく小悪魔へのお仕置き、はてさて次はどんな方法でしばかれるのやら。楽しみに待ってます。

道草さんもVISIONやるんですねー。機会があればお相手してみたいです。

No title

折角アツアツほのぼのっぷりを見せてくれたのにこの子悪魔は・・・w
いいぞもっとやったってください。
そして他の少女たちに見せつk(この先は炭化して読み取れません。

No title

パチュリーの魔法を一瞬で解呪するとか、この小悪魔強いぞwww

そして霖之助さんからもらったものを大切にしたいパッチェさんマジ乙女!
あとラストは安心の甘さですな^q^
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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