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ブンキシャ! 第05話

文と阿求は文々。新聞の今後と霖之助攻略について考える。

次は5、6、7話でワンセットです。

霖之助 文 阿求







 森近霖之助は魔法の森入り口にある古道具屋、香霖堂の主人である。
 つまりは一国一城の主ということだ。
 しかしひとりだけでは国は成立しない。誰かが居て初めて国となる。


 いつの間にか香霖堂は、多くの人妖が関わる店と変化していた。
 新聞を通して始まった奇妙な共同生活も、いつの間にか受け入れ始めていた。

 もっとも霖之助は隠れ家や秘密基地的な、以前の香霖堂も気に入っていたのだが。
 それを言ったら、だからお客が来ないんですよ、と阿求に呆れられた。


 ただ、受け入れ始めたからこそ、ひとりの時間もほしい。
 プライベートな時間がないと本も読めないし無縁塚に道具も拾いに行くことが出来ない。
 それにたまに店に来る珍しい物好きな瀟洒なメイドとの叡智に富んだ――文から無駄と称される――会話や、
小町との風流な――阿求からサボりだと言われる――会話をおちおち楽しむことも出来ない。


 だから霖之助はまず線を引くことにした。
 踏み込んでいい領域を最初に提示すれば流されることも少なくなる。実に合理的だ。
 状況が変われば……文や阿求のやることをもっと受け入れられるようになれば、その時改めて線を引き直せばいい。
 ゆっくり受け入れていけばいいのだ。

 このあたりは商売にも通じるかもしれない。
 値切りの際、少しずつ値段を下げていくか、いきなり限度額を聞くか。
 やり方は人それぞれだろう。
 霖之助は今回、この方法を選んだ。


「……静かだな」


 現在、香霖堂にいるのは霖之助ひとり。

 どちらかと言えば静かなほうが彼の好みではある。
 しかし連日の騒ぎのせいか、静かな店内に違和感を覚えるようになってしまった。


「変われば変わるのもだ」


 苦笑ひとつ。

 連日香霖堂に押しかける文と阿求に、自分の時間もほしい、と言ったら思いのほかあっさり了承。
 話し合いの結果、参拝客の相手をした次の日は来ないことになった。
 なんだかやけに余裕の笑みを浮かべてたように見えたのが少し気になったが……。

 ついでに参拝客が来たときの使っていい場所の線引きや、非常事態以外夜泊まらないこと、など取り決めた。


 ひとりでこうやって本を手に取るのはどれくらいぶりだろう。
 いろいろ思うことはあったが、本を開いて目を落とせばすぐに気にならなくなる。

 読んでる途中いつの間にか、この表現はいいとかこういう構成もあるのか、とか考えるようになっていることに気づく。

 ――職業病かもしれない。
 たまに自分の職業を忘れそうになるが、それは気にしないことにした。


「楽しそうね」
「ん?」


 突然横から声をかけられる。
 こういうことを出来るのはひとりくらいしかいない。
 紅白と黒白は、店に入る時点で気づかないほうがおかしいほど騒がしいからだ。


「紫か……驚かさないでくれ」
「あら、本当に驚いたのならもうちょっと反応してくれてもいいのでは?」
「驚いているさ、十分ね」


 最初の頃こそ驚いたものだが、何度もやられれば耐性も出来てくる。


「入るときは玄関から頼むよ。あと、来たならそう言ってくれ」
「少々眺めていたくなりましたので」
「……何故?」
「さあ、何故でしょう」


 真意を測りかねて紫の顔を見返す霖之助だったが、特に商品を物色するわけではないので再び視線を本に戻す。
 放置された紫は不機嫌な表情を浮かべるが……視線の外なので気づかない。


「今日は誰もいませんのね」
「ああ、僕にもひとりの時間が必要だからね」
「そう」


 視線を交わさないまま、言葉だけが行き来する。


「そう言えば最近、文さんや阿求さんと何かありました?」
「何か、とは?」


 根拠はない。
 だからこそ、ただ聞いてみただけの質問だったのだが……。

 聞いた瞬間霖之助の動きが止まり、彼の視線が本の同じ行しか往復していないことを紫は見逃さなかった。


「いえ……どうも最近、ふたりの態度が」
「何か失礼なことでも?」


 本から顔を上げ、妙に丁寧な態度になった霖之助に、
紫はいよいよもって訝しげな視線を投げかける。


「余裕というか上から目線というか……。
 そう言えば、ここの仕事を橙に任せた時からかしら。何かご存じありません?」
「……いや、心当たりがないな」


 霖之助は席から立ち上がり、紫のぶんのお茶を用意する。
 彼にしては珍しいその行動に、紫は嬉しいような戸惑ったような、複雑な表情を浮かべ……
結局、湯飲みを手に質問を誤魔化された形になった。


「こういうことこそ新聞の記事にするべきだと思うわ。職務怠慢ね」
「プライベートは守られるべきだ思うね」
「あら、知る権利もあるのではないかしら?」
「それは外の言葉かい?」


 聞き覚えのない言葉だったが、何とも胡散臭い言葉だった。使いどころを間違えているような。
 きっと紫もわかってて誤用しているのだろう。
 彼女の胡散臭い笑みがそう言っていた。


「全く、本が読めやしない」


 目を本に戻す霖之助。
 言葉とは裏腹に、視線は相変わらず同じところを往復している。


「……覚妖怪でも連れてくるべきかしら」
「何か言ったかい?」
「いいえ」


 目も上げずに答えたら、紫のため息が聞こえてきた。

 沈黙が落ちる。

 予想外の質問に動揺してしまったが、ようやく平静を取り戻してきた。
 先日の文と阿求との一件は、霖之助にしては特に隠すようなことではないのだが、
大々的に言うことでもない気がする。

 特に紫や魔理沙には。

 それに先日の一件からも、別にふたりの態度に大きく変わったところはない。
 強いて言うなら、やけにスキンシップが多くなったくらいだ。

 今まで魔理沙で慣れていたため特に気にならないが……。
 周囲の目が怖い時があるため、控えてほしいとは思う。

 特に紫や魔理沙の前では。


(紫が帰ったら無縁塚にでも行ってみるか)


 そんなことを考えながら紫の顔を見ると、彼女は何故だか照れたように視線を逸らす。
 霖之助が首を傾げると、玄関が開いて誰かが入ってきたのが見えた。

 やはりゆっくりと本は読めないらしいと考え……元からそうだったことに気づく。


(何も変わってなどいないということか)


 そう考えると、やはり現状はそう悪いものでもないと思えてきた。

 立ち上がり、商売人としての責務を果たすべく入ってきた客に向き直る。


「いらっしゃいませ、香霖堂へようこそ」



     ☆



「とまあ、そんなことになってると思いますよ、今香霖堂は」
「ほぼ間違いなくそうでしょうね。最後にお客が来るかどうかはともかく」


 文の言葉に、万年筆を動かしながら答える阿求。
 霖之助から買ったものだが、墨に付ける必要が無く書きやすい。
 とはいえ慣れの問題もあり、部分部分で筆と使い分けていた。

 文の言葉を聞き終わり、作業が一段落したのか視線を上げる。


「それで、文さんがここまで来たのはそんな話をするためじゃないでしょう?」


 阿求は稗田の屋敷で、主に霖之助の意見を聞いても仕方のないものや
ただの写し作業を主にこなしていた。

 香霖堂でも道具を持ち込んでいるため阿求の仕事は出来るが、霖之助が側にいるというのに
黙々と作業をしているだけではこの烏天狗に出し抜かれてしまう危険性がある。

 なので、霖之助の出した休みを設けるという提案に乗ったのだ。
 もちろん、他の少女たちより二歩か三歩ほどリードしている、と確信しているからであるが。
 文も了承したと言うことは、似たような考えなのだろう。


「こういうときでないと盗み聞きが怖くておちおち話も出来ませんからね」
「ああ、スキマの……」


 確かに霖之助が目の前にいる間は他に目を向けはしないだろう。
 それだけは確信できた。
 同じ少女として。


「それで、何の話をするんですか?
 見ての通り私は忙しいので、手短にお願いします」
「言いたいことはいくらでもありますけど……話したい合いたいことはいくつかですね」


 そう言って、文は文花帖を開く。


「とりあえず、文々。新聞の今後についてです」
「今後、とは?」
「女の子成分が足りません」
「……なるほど」


 文々。新聞の今の主な購買層は八坂神社の信者だった。
 結果的にはあっという間に紙面を乗っ取られた形だ。
 神の力恐るべし、である。


「確かに霖之助さんと話すべき内容ではありませんが……別にスキマ妖怪はいいのでは?」
「だって……あのスキマ妖怪の式が……」


 阿求は知る由もなかったが、文がかつて自信満々だった時に新聞の契約解除されたことがトラウマになっていた。


「……何があったか知りませんけど、まあいいでしょう。
 そうですね、稗田家の情報によると微妙にカフェーでの人気が落ちてます」
「うぐ」
「代わりにここや霧雨道具店での売れ行きは上昇。つまり年齢層が上がったと言うことですかね」
「むむむ」
「ただ人気が落ちてると言っても相対的なもので、絶対数自体は上がってるのでさほど問題はないと思いますけど。
 ただ、少々変わり映えがしないという意見がちらほら」
「……うぅ」


 文がひとりで新聞を配っていた時代では、委託販売や大規模なアンケートなど
やったこと無かったため新鮮だった。
 しかし収穫も大きいかわりになかなかダメージが大きいようだ。

 机に突っ伏して動かなくなった文を見下ろし、阿求はため息をひとつ。


「これについては文さんばかりの責任でもないのですけどね。
 どうしましょうか。八坂神社の記事を減らします?」
「それはちょっと……文々。新聞の天狗仲間に対する切り札ですから」


 早苗が新聞に携わるようになってすぐ、文は独占契約を結びに行った。
 その結果、早苗の記事だけは文々。新聞にのみ載せるということが決定した。
 『オンバシラの主張』や人気記事の『ケロちゃん(4コマ)』は他の新聞にも共通で提供している。

 ただ、早苗の記事『今日の神奈子様』は、いかに神奈子が素晴らしいかというのを
感情にまかせて書き殴ったものなので、人気のほどは推して知るべしである。
 文体も独特で単文横書きで、文字サイズの絵のようなものが多数使われていた。

 早苗が言うにはこれが外の世界で流行っていたらしいのだが。
 独占契約を結んだのは早計だったかもしれない、と文はたまに思う。
 それでも現人神という彼女の記事は天狗仲間に対して強いから悩みどころだ。


「幻想郷には若い女性が多いですからね。ここの層を逃す手はないと思うんですよ」


 う~ん、と頭を抱える文。


「若い女性、ですか」


 呟きながら、阿求は記憶を掘り返してみた。
 先代以前の知識……は、役に立ちそうにない。
 何か無いかと考え、ふと、香霖堂で見た雑誌を思い出す。


「占いと服……」
「え?」
「いつの時代も女の子は占いと服が大好き、らしいです」


 記憶にあった雑誌の見出しを読み上げる。

 もちろん実際にそんなわけはない。
 100年前にファッションの選択肢なんて無かったし、占いは権力者のものだった。
 文も同じことを思ったのか、首をひねる。


「服はともかく、占いなんて気にするんでしょうかねぇ」
「どうやら占いと言っても、迷信の類のほうが都合がいいらしいです」
「そうなんですか?」
「ええ、どうやら都合のいい結果だけを信じればいい、くらいの扱いらしくて……」


 阿求自身いまいちピンと来なかったが、やってみるのも悪くないかもしれないと思った。
 ダメなら外せばいいだけの話だ。
 それくらいなら増えることはあっても減ることはないだろう。


「でも、当てはあるんですか? 自慢じゃないけど出来ませんよ、占いなんて」
「私も出来ませんよ。でも幻想郷には、うってつけの魔法使いがいるじゃないですか」
「ああ、そういえば」


 顔を見合わせ、にやりと笑うふたり。
 霖之助にはとても見せられない表情だった。
 これだけで、ふたりで話し合った甲斐があるというものだろう。


「上手い具合に喜びそうな人材も揃ってますしね」
「はい。上手い具合に霖之助さんから遠ざけてくれるでしょう」



     ☆



「ファッションリーダーのアリス=マーガトロイドよ!」
「占い師のパチュリー=ノーレッジ」
「……は?」


 次の日。
 香霖堂に現れたふたりに、魔理沙は絶句していた。


「いつの間に魔法使いを廃業したんだ?」
「そんなことしてないわよ。ただ肩書きがひとつ増えただけね」
「大したことじゃないわ」
「いや、私が言いたいのはだな……」


 魔理沙は帽子を振って言葉を探すが、なにから言えばわからない。
 そもそも何故ふたりがここにいるのか。
 慌てて霖之助の顔を見る魔理沙だったが、彼も状況がわからないと言わんばかりに首を振っていた。


「紹介するわ。最先端の服を紹介してくれるアリスさんと」
「占いを担当してくれるパチュリーさんです」


 あれからすぐ文がアリスの家に行き、阿求が紅魔館へ手紙を送った。
 『新聞作りに参加すれば魔理沙と一緒にいる時間が増えるのではないか』と言う言葉を添えて。
 返事はすぐに来た。と言うか、本人が話し合いに来た。
 それからいろいろあって、今のような状態に落ち着いたのだった。


「アリスさんには毎号新しい人形の服を撮らせてもらうことにして」
「ええ」
「パチュリーさんにはとりあえず、血液型占いをしてもらうことになりました」
「わかってるわ」
「血液型?」


 霖之助は首を傾げた。
 聞き慣れない言葉だ。
 外の本などで見かけたことはある気がするが、まず幻想郷内では聞かない。
 しかしパチュリーが普通に話しているところを見ると、紅魔館の中では普通なのかもしれない。


「血の……属性みたいなものよ」
「そんなもの、普通の人は知らないだろう?」
「はい。もちろん血液型鑑定付きですよ。紅魔館主催で」


 確かにそれなら一石二鳥かもしれない。


「そうか……しかしふたりがそんなに協力しているとは、感心したよ」


 今までのことから仲が悪いのではないかと心配していたが、どうやらそうではないらしい。
 安心したように阿求の頭を撫でる霖之助。

 阿求は少し照れたような表情を浮かべるが、すぐに気持ちよさそうに目を細めた。


「あー、霖之助さん、私にもお願いします!」
「あ、ああ……」
「私にも!」
「はいはい……って、何してるんだい紫」


 声に導かれるように手を伸ばし……頭に手を置いたところで、動きを止めた。


「いいじゃない、せっかくだもの」
「せっかくって……わざわざそんな姿になってまで」


 文がジト目で紫を見る。
 紫は阿求と変わらないくらいの背丈になっていた。
 かなり若返っている。


「その姿、今度はどこの境界をいじったんですか? さしずめ、理想と現実の境界あたりでしょうけど」
「まあ、失礼ね。これが私の真の姿と言っても過言ではないというのに」


 阿求の質問に余裕を持って返す紫。


「そのうち人間用の服もオーダー入るかもしれないし。
 まずは魔理沙の服で練習をしたいんだけど、いいわよね?
 誰かに見せると喜ばれるかもしれないわよ」
「う、うん……」


 魔理沙はちらりと霖之助を見やり、頷いた。
 ただし、アリスの言う誰かが誰のことを指すのかは不明である。


「私は、魔理沙占いを」
「そんなの聞いたこと無いぜ」


 剣呑な雰囲気を感じたのか、逃げようとするが両腕を固められた魔理沙は動けない。
 しかし端から見れば仲良くじゃれ合ってるかのように見えるその光景に、霖之助は笑顔で応じた。


「ふたりとも、こちらこそよろしく頼むよ」
「香霖、そんなことはいいから助け」
「わかったわ。魔理沙のために」
「ええ、魔理沙のために」
「え? ああ、魔理沙のため……か」


 仲が良いのは良いことだ。
 少し良すぎる気がしなくもないが。

 仲間が増えたのはいいとして。
 やはり一抹の不安が残る霖之助だった。









「森近……店主……霖之助……霖ちゃ……」
「あれ、こんなところで何やってるんですか、慧音さん」
「ひぁっ……! あ、阿求。何故ここに」
「何故って……迎えに来るのが遅かったから見に来ただけですけど」
「コホン。そ、そうか。それは済まなかった」
「わざわざ外で待ってないで、中に入れば良かったじゃないですか。
 もう。毎回毎回、度胸が無いんだから……」
「いや、そんなことは……」
「もしかして、未だに霖之助さんのことなんて呼ぶか決めかねてて練習してるとか?
 まさか、そんなわけないですよね」
「…………」
「まさか……」
「…………」
「はぁ、今更知らぬ仲じゃないんですから気楽に行けばいいのに。
 前の時はあんなに元気よく行ってたじゃないですか」
「あれはその、勢いというやつがだな……。それに、特に用事もないのにその……」
「私を迎えに来るのが大した用じゃないと。じゃあいいです。
 不公平なのは悪いと思ってたんですけど今度から博麗の巫女に頼みます」
「いやその……ごめんなさい」
「……今から会ってきたらどうです?」
「…………」
「慧音さん?」
「だって、ふたりだけで会うのは久しぶりすぎて……」
「いや、私たちもいるんですけどね」
「…………」
「はぁ……今日も帰りましょうか、慧音さん」
「……わかった」
「私が転生してる間、本当に何の進展もなかったんですねぇ……」


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