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作戦123

咲夜さんはかなり天然の入った乙女。
この訴えはたまに続けていこうと思います。

書いてたらいつの間にか『紅茶の飲み方』の続きになった。

追記
ゆうまさんに絵を描いていただきました。感謝感激。


霖之助 咲夜






「いやまったく、君の目利きは大したものだね」


 霖之助は感心した声を上げた。
 咲夜が選んだ商品は霖之助が秘蔵としていたものばかり。
 ……若干、悔しさを紛らわすため大げさに褒め称える。


「これくらいは嗜みよ」


 対する咲夜は涼しい顔。
 ……少しだけ嬉しそうなのは、やはり彼女も人間ということか。


「メイドとしてかい?」
「いいえ」


 咲夜は首を振り、微笑んだ。
 いつもの完璧な笑顔。


「女として、よ」
「なるほどね」


 霖之助は納得したように頷き、算盤を弾いた。
 お気に入りの商品ばかりだったために値段もそれなりになる。
 しかし咲夜は眉ひとつ動かすことなく支払いを済ませた。

 そして視線を合わせ……笑い合う。
 細かく言葉を交わさずとも、お互いの言いたいことはわかっている。


「やはりこうでなくてはね」
「店員と客が、かしら?」
「いや。君と僕が、だよ」
「そう」


 素っ気なく答える咲夜に、再び霖之助は頷く。
 少し前……紅茶の一件からしばらくは恥ずかしいような気まずい空気が流れていたのだが、最近またいつも通りに戻った。
 多少無理をしてでもいつも通りに振る舞った甲斐があるというものだ。

 ……だがしかし、やられっぱなしと言うのもいささか格好が悪い。


「ああ……やはり好きだな、うん」
「あら? 都合のいい客という意味かしら?」
「いいや」


 霖之助は首を振り、微笑んだ。
 いつもと同じ、世間話をするような表情で。


「女として、さ。好きだよ、君のこと」
「そう。……へ?」







「……は? それで顔真っ赤にして逃げてきたの?」
「あの……えっと……はい……」
「……呆れた。なんか言ってやってよ、パチェ」
「つける薬はないわね」
「それは馬鹿って意味かしら?」
「いいえ、恋だからよ」
「あのぅ……咲夜さん、固まっちゃってますけど」


 咲夜はレミリア、パチュリー、美鈴に囲まれ質問攻めにあっていた。
 普段完璧なメイドがふらふらと帰ってきたと思ったら突然部屋に引きこもったのだ。
 心配したレミリアたちは彼女の部屋に押しかけ……今に至る。

 咲夜は亀のように布団から頭だけを出し、消え入りそうな声を上げた。


「放っておいてください……私はもう生きている理由が……お嬢様しかありません」
「それだけあれば十分でしょう。まったく、心配して損したわ。行くわよ、パチェ」
「おおおお嬢様ぁ~……」
「……なに、咲夜。ちょっと、そこ掴まれると脱げるんだけど」
「あの、出来ればもう少し相談に乗って欲しいというかなんというか……」


 涙目で懇願するメイドにレミリアはため息を吐く。


「はいはい、わかったわよ。僕の面倒を見るのも主の役目だものね」
「ありがとうございます……」


 レミリアは改めて咲夜のベッドに腰掛けた。
 パチュリーと美鈴もそれに続く。
 呆れた様子を見せながらも、どうやら興味津々のようだ。


「……それで?」
「えっと、あの……霖之助さんが……」


 そのまま咲夜は真っ赤になり固まってしまう。


「貴女、この前も同じようなことやってたわよね」
「あ、あれは私からですからいいんです!」
「どっちだって同じでしょうに……」


 レミリアはパチュリーと顔を見合わせた。
 ……このままでは日が暮れてしまうかもしれない。


「でも咲夜さん、そのあと香霖堂さんがいつも通りだってヘコんでたじゃないですか。
 反応あったならむしろ嬉しいんじゃ……」
「反応してくれるならくれるで前もって教えておいてくれないと困るじゃない!」


 美鈴の言葉に、咲夜は枕で表情を隠す。
 ……きっと当時を思い出し、真っ赤になっていることだろう。

 そしてその言葉に、レミリアが目を光らせた。


「咲夜」
「……なんでしょう」
「困ると言ったわね」
「……はい」
「貴女が店主の前で困るのは何故かしら?」
「それは……その……」


 言葉を詰まらせる咲夜に、パチュリーがレミリアの言葉を引き継ぐ。


「つまり咲夜は香霖堂の前で良い格好をしたいのよ」
「ああ、なるほど」


 美鈴が納得したように手を合わせた。


「それなのに逃げ出しちゃったりなんかしたせいでこうなってるんですね」
「そうよ、美鈴。しっかりと見ておくがいいわ。この不甲斐なさを」
「理想と現実の差ってやつよね」


 咲夜は……ぴくりとも動かない。
 ダメージが大きすぎるようだ。


「さて……そうと決まればやることは決まったわね」
「……なんですか……?」


 咲夜はようやく声を絞り出した。
 身体の痛みも心の痛みも、現状を打破できるのなら悪魔にも縋りたい気分だった。


「そんなこと、決まってるでしょう? 特訓よ!」


 それが例え……さらなる困難への片道切符でも……。







 ドアベルがカランカランと音を立てる。
 ……本日2回目。


「やあ、君か。急にいなくなったから心配したよ」
「ええ、それはどうも……」


 レミリアたちが下したのは、現地特訓というものだった。
 習うより慣れろ。
 つまりもう一度行ってこいということだ。


「コホン。ちょっと急に用事が入りましてですね」


 もちろん無策なはずはない。
 ちゃんと作戦を用意してある。


「そうか。てっきり拒絶されたものかと……」
「い、いえそんな!」


 思わず叫びかけ……時間停止。

 作戦その1(レミリア)。
 あがってしまうなら時間を止めて落ち着いてからまた話せ。


「……そんなこと無いです」
「そうか、よかった」


 よかった。
 その言葉に……咲夜の鼓動が跳ね上がる。
 そして同時に作戦の破棄。
 緊張するたびにいちいち時間を止めて考えていたら会話にならない。


「どうしたんだい、そんなにじっと見つめて。何か付いてるかな?」
「……なんでもありませんよ」


 作戦その2(パチュリー)。
 一度奪った唇なら何度でも奪えるはず。こちらから攻めろ。
 ……失敗。
 そもそも前回にどれだけの心の準備が必要だったかわかっていない。


「……何か、悩みがあるようだね」


 あろうことか、悩みの大本がそう尋ねてきた。
 咲夜は一瞬言葉に詰まり……諦めたかのように、息を吐き出す。


「調子が出ないんです」
「ほう?」
「そうありたいって思ってるのに……いざその時になると、全然思い通りにならなくて」
「わかるよ」


 ――何がわかるというのだろう。

 咲夜はキッと霖之助を睨み付け……照れたように笑う彼の表情に目を奪われた。


「僕もね、君と話すのは緊張するからさ」


 そう言って、霖之助は唇を押さえた。
 あの時のことを思いだしているのか、顔が赤い。


「……ふふっ」
「どうしたんだい?」
「いいえ、なんだかひとりで悩んでるのが馬鹿らしくなっちゃって」


 瀟洒に振る舞わなければならない。
 紅魔館のメイドだから。お嬢様の僕だから。

 ……彼の前だから。


 だがそうでなくても、きっとわかってくれるだろう。
 今になって、ようやく気が付いた。

 だって、彼も自分と同じなのだから。


「ねぇ、霖之助さん」
「なんだい?」
「言ったこと無かったけど。私ね、貴方のこと……」


 作戦その3(美鈴)。
 いっそちゃんとくっついてしまえば解決しますよ。


 結果は――。

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