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藪をつついて饅頭怖い

リクをもらってそそわにアップしたさと霖。
饅頭怖いって究極のツンデレだよね!


さとり 霖之助







 さとりは地上で途方に暮れていた。

 妖怪の山に用があるのだが、代理を依頼しに行ったら先ほど巫女に断られてしまった。
 お茶を飲むのに忙しいという、何ともひどい理由で。

 普通の魔法使いにも頼んだが結果は同じ。
 紅魔館に出かけるからしばらくは無理だという。

 さとりは仕方なしに目的もなくふらふらと飛んでいた。
 人の多いところには行きたくないので、森のあたりを進む。

 すると少し離れたところに、一軒の家屋が見えてきた。


「……店?」


 さとりは店の入り口に降り立ち、中の様子を探る。

 心が読めると言うことは気配が読めると言うこと。
 どうやら店の中にいるのはひとりだけのようだ。

 よほどのことがない限り、1対1で覚妖怪が後れを取ることはない。
 ……よほどのことがない限り。

 しかし……本当にひとりなのだろうか。
 さとりは首を傾げつつ、店のドアをくぐった。


「……ずいぶん賑やかね」
「ああ、いらっしゃい」


 店の中に入ってきた少女に、店主はそれだけ言うと再び本に視線を戻した。
 思考が微塵も揺らいでいない……否。
 数拍遅れて、彼は疑問符を浮かべる。


「賑やかと言ったかい?」
「ええ、とっても」


 ゆっくりとした様子で、さとりは頷いた。
 一言一言、染み渡らせるように。


「おかしいな、店の中には僕以外いないはずなんだが」
「そうよ、貴方が賑やかなのよ」
「……ひょっとして」
「いいえ、声に出てなんていないわ」
「むぅ」


 考えたことを言い当てる。
 当然彼は驚き、不思議に思う。

 心が読めると知られれば疎まれる。
 だが心が読まれていると知ったときの感情というのは、さとりの好むものだった。

 覚妖怪というもののサガだろうか。
 相手の驚くさまを見るのは何とも言えない快感だった。

 それにどうせ、今更ひとりに疎まれたところで問題はない。
 彼女の目的の役に立てばそれでいいし、立たなかったらもう会うこともないだろう。


「そう、初めて会ったはずよ。私も貴方のこと知らないし。あら、霖之助って言うの?」
「もしかして……」
「ご明察。私はさとり。覚妖怪よ」


 彼は予想通り、驚いた表情を浮かべる。
 この瞬間はやはり、何度経験してもいいものだった。


「……その覚妖怪が、なんの用だい?」
「そうね、ちょっと頼みたいことがあって。
 誰でもいいんだけど、できれば山の上の神に面識のある人で……」
「神?」
「そう。その神のことでちょっと……?」


 神、と言う単語に彼が反応したことをさとりは見逃さなかった。
 霖之助の思考の揺らぎ。
 イメージするのは……剣だろうか。


「あら? 何か知られてはまずいものでもあるのかしら?」
「いや……」


 隠しても無駄だというのに、往生際悪く惚けようとする霖之助。
 しかしさとりはその思考の先を読んでいく。
 置き場所、由来、入手経緯。
 妙に具体的で、はっきりとしたイメージに内心首を傾げるが。


「……貴方、神器なんて持ってるの? 霧雨……あの草薙なのね」
「そうなんだよ!」


 言った瞬間……彼が声を上げた。
 驚きではなく、歓喜の声を。

 さとりはその反応に、何か地雷のようなものを踏んでしまった感覚を覚える。


「いやあ、本当は誰にも知られたくなかったんだ。しかし相手が覚妖怪なら仕方ないな」


 彼は嬉しそうに……本当に嬉しそうに、件の剣を取り出してきた。
 言葉とは裏腹に、誰かに話したくてたまらなかったという表情で。


「貴方……誘導したわね?」
「なんのことだい? それよりさあ、座ってくれたまえ。本当は話したくないんだが、知ってしまった君になら仕方がないな、うん」


 惚けた表情を見せる霖之助に、さとりはある言葉を思い出していた。

 ……藪をつついて蛇を出す。






「つまりだね。神の力というものは信仰の数に比例する。
 だが信仰を受けたものが神になることだってある。
 だがそこでひとつの疑問が出てくる。
 道具が信仰を受けるとどうなるか?
 信仰を受けた道具……つまり神器だ。
 もちろんこれにはいくつかあり、神の力が宿った道具のことを指すこともあるし神が使った道具の場合もある。
 神に信仰が集まるから使う道具にも信仰が集まり力を増す。
 道具そのものに信仰が集まり神の力を宿す。
 僕の剣は……どっちだろうね。
 ともかく、いくら神器とは言え道具であることに変わりはない。
 そう言えば道具の神と言えば九十九神が有名だが……聞いているかい?」
「私を誰だと思ってるの……覚妖怪よ……」


 ぐったりとした調子で、さとりは声を絞り出した。
 無視しようにも、嫌でも聞こえてしまう。

 ただ雑然とした思考なら、無視するのは難しくない。
 人混みの会話がうるさいとだけしか感じないように。
 ……もちろん、うるさいことはうるさいので苦手なのに変わりはないが。

 そして自分に向けられた洪水のような思考は……とても鬱陶しい。すごく鬱陶しい。帰って寝たい。


「帰るわ」


 なので、思い立ったら即実行することにした。


「そうか。おや、もう……」
「そう、貴方が喋ってる間に夜になったのよ」


 再びそうか、とだけ霖之助は答えた。
 喋る手間が省けて楽だ、などと考えているようだが……。
 あれだけ喋っておいてよく言う。


「じゃあね」
「ああ、また……」
「心配しなくても、もう来ないわよ」


 さとりはため息とともに店をあとにした。
 最後に一度だけ振り返ってみると、相変わらず霖之助は何か考えている様子だった。

 ひとりでもあの思考は留まることがないのだろう。
 だからあの店は……あんなに賑やかなのだ。


 ――疲れた。


 先日の一件から、地上と地下の行き来がしやすくなった。
 近くなったとも言う。
 物理的ではなく……精神的な距離が。


「さとりさまー、おかえりなさーい」
「おなかすいたよ~、さとりさま~」


 さとりが地霊殿に戻ると、出迎えるように元気よく駆けてくるふたつの影。


「……あ」


 そこでようやく、さとりは今日地上に出て来た理由を思い出した。









「山の上に行きたい? 行けばいいじゃないか」
「嫌よ。神がいるもの」
「じゃあなんで行きたいんだい?」
「神と話をするためよ。聞きたいことがあるの」
「じゃあ行けば……いや、これでは話にならないな」


 霖之助は頭をかいて考えを整理する。

 もう来ない、と言った少女が再び現れたのが今朝のこと。
 しかも何故か、不機嫌な様子で。


「私だって来たくなかったわよ」
「…………」
「何でって、巫女や魔法使いに断られたからに決まってるじゃない。
 それに一応聞いてたけど、昨日の話……貴方、神に詳しそうだし」


 そう言われて悪い気はしない。
 霖之助は居住まいを正し、さとりに向き直る。


「そもそも、なんで行きたいんだい?」
「私のペットがちょっとね……」


 さとりはいきさつを簡単に説明することにした。
 核エネルギーの実験として地獄鴉のお空が選ばれたこと。
 太陽神の力を与えられたこと。
 お空を心配してお燐が地上に助けを求めたこと。

 説明するのも面倒だが、仕方がない。
 何故この男は心を読めないのだろうかと、無茶なことを考える。


「……興味深いな」
「でしょう。貴方ならそう言うと思ったわ」
「ああ。神を取り込んだと言うがその鴉は神の力だけを与えられたようだね。
 そうでなくては神に取り込まれてしまうかもしれない。神には御霊分けという性質があって……」
「そんなことは置いといて、私が心配してるのもそれなのよ。このままにしていいのか、どうなのか。ちゃんと用法用量を守って与えたのか……」
「いや……僕はあまり心配はないと思うね」
「どうして?」


 あえてさとりは口に出して尋ねた
 思考を読めば素早い回答が得られるが、一番言いたいことであるとは限らないからだ。
 思考は選択されて初めて意志となる。

 霖之助は頭の中で次々と言葉を選び……。


「その神は他の神の力を道具のように扱っているようだね。
 つまりは神器さ。それがそこまで主に影響を与えるとは考えにくい。
 少しばかり気が大きくなったりはするかもしれないが……」
「ふぅん、それは貴方も神器を持っているからかしら?」


 そう尋ねて……さとりは視線を逸らした。


「あらごめんなさい。使ったことはおろか認められてもいないのね」
「…………」
「……そんなにしょげないでよ」
「僕はいつも通りだ」


 嘘ばっかり、と言いかけて……やめた。

 これから協力してもらおうという相手だ。
 たまには優しさも必要だろう。


「……それで?」
「そう。貴方が考えてるとおり。代わりに神に話を聞いてきて欲しいのよ」
「自分で行けばいいだろう」
「嫌よ、相手は神だもの」


 また話が振り出しに戻りかけたので……霖之助は話題を切り替えることにした。


「……相手が神だと、何か不都合があるのかい?」
「しっかり相対したことはないけどね……。
 さっきの御霊分けの話じゃないけど、あまり神に触れてると感化されそうで、怖いのよ」
「ふむ、覚妖怪というものはそういうのにも敏感なのかもしれないな……」


 ひとつ頷く。
 精神に強く依存する妖怪だ。
 さとりが一番恐れているのは、どうなるかわからないと言う部分だろう。
 わからないから怖い、怖いからわからない。


「そもそも神の心は読めるのかい?」
「読んだことはないわね。神のみぞ知るというやつかしら」


 まあ、こちらの能力や常識が通じなくても相手は神だから、で済んでしまう連中だから仕方がない。
 幻想郷の神もすべてがそうであるとは限らないが……。
 少なくとも、神社の神は高い神格を持っていたはずだ。


「……だがやはり、君が行くべきだと思うよ」
「ペットの面倒は飼い主が見るべきですって? 私だってそう思うけど……」


 うーん、と考える。
 行けるものなら最初から行っているというのに。


「それに神社でしょう? 参拝客とか多そうだし……」
「ふーむ」


 腕を組んで唸る霖之助。
 どうやらさとりを神社に行かせる方法を考えているようだ。


「違うわ、別に私だって絶対嫌ってわけじゃないのよ。お空のためだもの。
 でもね……」
「人の思考を覗き見……いや、いい。何か案があれば……」


 そう言って思考の海に沈む霖之助。
 使えない案ばかりね、とさとりは内心ため息を吐き……。


「あ、その案……」
「うん?」









 霖之助は途方に暮れていた。


「途方に暮れてるのはこっちよ」


 どうしてこんな事になったのか。


「私が知りたいわよ」


 何が悲しくて歩いてこの山を登らねばならないのか。


「むしろ貴方が飛べないって事に驚きだわ」
「じゃあやめればいいだろう、もしくは別の案を探すとか……」
「それがあるならとっくにやってるわよ」
「わかったわかった、あまり耳元で……」
「誰のせいで大声を上げてるのよ、まったくもう」


 これ以上離れられないんだから、とさとりは赤い顔で……霖之助と繋いだ手を振った。

 さとりの能力は遠くにいる相手には届かない。
 逆に、近くにいれば大きくなる。
 ということは、触れてしまえばより大きく読み取れるようになり他の入る余地が無くなる。
 つまりさとりの心を霖之助で一杯にしてしまおう、という案だった。
 霖之助としては半分冗談で考えた案だったのだが……本人はいたって大真面目。
 よほどペットのことが大事なのだろう。


「……まだなの?」
「やっと8合目といったところかな」


 繋いだ手に互いの汗を感じ、離れないよう強く握り直す。
 さらに歩き、ようやく神社が見えてきたところで……。


「よく考えたら……」
「……そうね、頂上に着いてから手を繋げばよかったわね……」


 すごく今更だった。
 気を取り直し……むしろ開き直り、手を繋いだままふたり一緒に境内へと向かう。


「なんだ、人間以外が登ってくるって天狗から聞いたんだけど、あんたたちかい」


 階段を上りきったところで、出迎えるかのように声が響いた。
 霖之助にしてみれば、何度か聞いたことのある声。

 フランクな山の上の神、神奈子だった。


「やあ、神奈子」
「その様子だと、手土産は何もないみたいだねぇ」


 肩を竦める神奈子。
 もとより期待はしていなかったのだろう。
 その表情には笑みが浮かんでいた。


「それで、何か用かい?」


 神奈子の視線を浴び、さとりは身体を竦ませる。

 心に敏感なさとりは、同時に神奈子の力を間近で感じていた。
 太古の軍神。
 スペルカードルールでもなければ戦おうという気にもならない、その力。


「あの……」


 さとりは口を開きかけ……ふと、手に暖かさを感じた。
 安心させるかのように強く握られた手。
 そして彼女の代わりに、霖之助が口を開く。


「実は、地獄の鴉に与えた神の力について少し聞きたくてね……」
「ああ、その話か。奥に行くかい?」
「いや、ここでいい」


 ――ここがいい。神社の方は人が多いから。


 さとりが言う前に、霖之助は答えていた。
 まるで彼女の心が読めるかのように。









「実に有意義な時間だったよ」


 笑顔の霖之助に対し、さとりはため息を吐く。


「でも良かったじゃないか。君のペットは別に心配ないらしい」


 ついでのように言うが、内心では心配していたらしい。
 しかし神相手によくもああまで物怖じしないものだ。


「いや、実際喋ってみれば気さくな神だよ」


 それは霖之助が鈍いからではないのだろうか。


「よく言われるんだが、何でだろうね。僕は別に……」


 それより――。


「ああ、触れ合っていれば何となくわかるものさ。
 読心術とまでは行かないけどね」


 そう言って霖之助は、もうお役御免かな、と手を離そうとして……首を傾げた。


「さとり?」


 繋いだ手は、離れなかった。
 手が緩んだ瞬間……さとりが握り返したのだ。


「えっと、まだ妖怪の山よ」
「そうか」


 疑問も抱かずに納得する霖之助に、さとりはため息を吐く。
 彼の思考が自分に向いていないことに腹を立て……そんな自分に、苦笑を漏らした。


「ねぇ、どうして?」
「代わりに応えた理由かい? 僕が知りたかったから……じゃダメかな」


 さとりは答える代わりに、ぎゅっと強く手を握った。
 こう言うとき、心が読めるのは便利だと思う。
 同時に、素直じゃない、とも。


「秘密を知る相手は尊重しないといけないからね。それだけだよ」
「誰かに言いたくてたまらなかったくせに」
「なんのことかわからないな。君に秘密を知られて、こんなに困ってるというのに」
「もっと読まれたらもっと困るのね」
「ああ、そうさ」
「……そんなに心を読まれたがってる人、初めてだわ」


 本当、素直じゃない。

 そんな霖之助を見て、さとりはふと思い出した。
 人間の作った落語に、似たような話があった気がする。


「何か変なことを考えているだろう」
「ええ、ちょっとだけね」


 誤魔化すように笑い、さとりは霖之助に少しだけ身を寄せた。


「……触れ合ってれば何となくわかるって言ったわよね」
「ああ、まあね」
「私も少し、わかったみたい。貴方のこと。
 能力で心を読むだけじゃ……わからないこと」


 こうしてみると、心を読まれるのもそう悪いことではないのではないだろうか。
 そんなことを考えてみる。


「ねぇ、貴方」
「なんだい」


 香霖堂が見えてきた。
 いよいよもって手を離さなければならない。
 だから、その前に。


「もう山登りはごめんだわ」
「……そんなに山の神社が好きだとは知らなかったね」


 言って、笑い合う。
 一方通行ではなく、通じ合うというのは便利なものだ。


「気が向いたときに、また」
「ええ」


 また、手を繋いで。

 ……もしかしたら、今度は手を繋がなくても大丈夫な気がする。
 他の者に感化されることはないだろう。

 だって、さとりの心の中は――。

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